「暮らしに寄り添う、ワンマイルイノベーションカンパニー」。
そう名乗るのはトッパングループのDX戦略から生まれた株式会社ONE COMPATHです。

日本初のインターネット地図「Mapion(マピオン)」や電子チラシサービス「Shufoo!(シュフー)」など、ユーザーに長年支持され続けているサービスを運営する同社。2020年8月に本格スタートした家事代行サービスの比較サイト「カジドレ」がひと際注目を集めています。

企画から開発まで一貫して自社内で行うことで実現した、日常の生活行動圏=ワンマイルを豊かにしていくためのこだわりとは?企画担当の渡邊雄太さん(写真右)と開発エンジニアの山﨑あおいさん(写真左)に伺いました。

家事代行を、もっと多くの人が使いこなせる手段に変える

――家事代行の比較サービス「カジドレ」は、株式会社ONE COMPATH設立後初めてローンチした自社サービスとなりました。まずは、このプロジェクトがはじまったきっかけを教えていただけますか?

渡邊 発起人は、ともに共働き世代のど真ん中である弊社のCEO・早川と取締役CMO・山本です。焼肉を食べながら「家事代行」の話で意気投合したそうで (笑)。それから僕の方で調査を進めていきました。
「共働き世帯やシニア層の家事代行サービス利用が増えている」「経産省が将来的に6000億円規模の市場になると発表している」といった情報に触れ、僕の中でも「何か必要としてもらえるサービスができるかもしれない」という確度が上がっていきました。

――比較サイトにしようと思ったのはなぜだったのでしょうか?

渡邊 僕自身も5歳の子供がいる共働き世代のひとりで、以前から家事代行を利用してみたいという気持ちがありました。ただ「どこのサービスがいいのか?」「どんなことができるのか?」が分かりづらく、実際に利用したことはなかったんです。
アンケート調査を行うと、そう感じている方は多いことが分かりました。

渡邊氏

そこで家事代行サービスをより使いやすくするサイトをつくろうと思い、「カジドレ」のコンセプトに繋がっていきました。最初から比較サイトにすると決まっていたのではなく、様々な方の声を聞く中でこの形に落ち着いたという感じです。

――なるほど。ユーザー目線で共働き世代のためのサービスを考えた結果、様々な家事代行業者をまとめて閲覧できる比較サイトが生まれたのですね。

山﨑 もちろん、共働き世代だけをターゲットにしているわけではありません。
たとえば私はひとり暮らしですが、自分だけだと家のことがおろそかになってしまうので以前から「頼んでみたいな」と興味を持っていたんです。

渡邊 「日々仕事などに追われる中でどうしてもすべての家事を抱えきれない、細かなところまで手がまわらない」という方は、世代を問わず増えていると思います。
そういう方をサポートするサービスがあるということを多くの方に知って頂き、上手に活用するお手伝いができれば、と準備していきました。

“ユーザーの目”でコンテンツを磨き上げる

――サービスを形にしていく上で、何か大切にしていたことはありますか?

渡邊 「ユーザー目線に立って考える」ことです。
何か機能があったとして「本当にこれって必要なの?」「本当に使いやすい?」ということを、サービスを提供する側の視点ではなくあくまでユーザーの目線でチェックします。

山﨑 「カジドレ」のサイトを形にしていく中でも、色々な角度からの意見を持ち寄ってチーム内で何度もやりとりを重ねました。特に「比較リスト」の機能には力を入れましたね。見せ方やどんな要素を入れるか、何度も話し合って進めていきました。

比較リストイメージ
▲「比較リスト」機能

渡邊 比較リストは、どういうものが使いやすいか考えていく中で様々な業種の“比較サイトを比較”しました。項目を並べる順序や言葉選び、一つ一つにこだわっています。

――たとえば、どんなこだわりがあるのでしょう?

渡邊 そうですね、たとえば価格表示を上にするか下にするか。
これによってサイトの使い勝手が変わってくるので、ユーザーになる方たちが何を重視して使ってくださるのかを意識して決めていきました。

ここでは、企画段階で行った調査を参考にしています。
家事代行サービスを利用しない方々は「価格面での不安」や「知らない方を自宅にあげる心理的なハードル」を感じているという結果がありました。なのでこの2点については特に分かりやすく伝えることを心がけ、「家事代行サービスに対する不安や疑問を払拭できたら」と考えていました。

――たしかに「カジドレ」には、家事代行やハウスクリーニングで受けられるサービスの解説、家事や生活にまつわるコラム、診断などのコンテンツを豊富に用意していますよね。「家事代行自体のよさ」を丁寧に紹介している印象を受けました。

山﨑 ありがとうございます。それはとても嬉しいです。

渡邊 サービスを一度も利用したことがない方でも、家事代行とハウスクリーニングの違いが分かるような内容にすることを意識しています。
私たちのサービスを使ってもらうこと以前に、まずは「家事代行」そのものの魅力を知ってもらうことも大切だと思っているんです。

――なるほど。自社のサービスとして完結するのではなく、家事代行サービスそのものの認知拡大も意識したつくりにしているのですね。

柔軟にスケールするシステムで、ユーザーの負担をなくす

――「カジドレ」は開発面でも新しい挑戦だったそうですね。

山﨑 はい。「クラウドネイティブ」の技術を取り入れ、クラウドの利点を徹底的に活用するシステムを構築しました。自社の情報システムや設備に頼らず、サーバレスでの構築が実現できたのは大きかったと思います。

※クラウドネイティブとは?
クラウドネイティブとは、さまざまなクラウドサービスを利用して開発・構築された、クラウドでの運用を前提としたシステムやサービスを指します。出典:ICT Business Online

――IT業界で話題になっている技術ですね!どのようなメリットがあるのでしょうか?

山﨑 クラウドネイティブのシステムは「マイクロサービス」といって機能ごとに細かく分解されており、それぞれを連携させています。
そのためシステムの一部に障害が発生しても、その影響を局所的に抑えることができるんです。管理画面ですぐステータスを確認できるのも便利です。

何よりもメリットと感じるのは、参加してくださる家事代行業者さんや使ってくださるユーザーさんが増えた時、システムの容量を自動的にスケールしてくれることですね。多くの方にスムーズにサービスを使っていただけるものになっていると思います。

他には、コストパフォーマンスがいいという利点もあります。自社でサーバーやストレージなどのハードウェアを用意する必要がないので初期費用が抑えられるからです。
山崎氏

――クラウドネイティブの実現には開発プロセスや組織にも大きな変化が求められるといわれています。その点で苦労されたことはありましたか?

山﨑 クラウドネイティブは社内で使ったことのない技術だったので、実現のためには色々な変更が必要でした。ですが、快く「やってみよう!」と言っていただいて。
ONE COMPATHの「一歩目を踏み出そう」という行動指針の良さを感じた経験でした。
新規事業や新しい挑戦がしやすい環境にあるので、日々新しい技術やアイデアに触れられます。働いている中でやりがいを感じる部分です。

渡邊 僕は社内の新規事業創出プロジェクト・POM(Plus One Mile)の立ち上げも担当しています。そうすると、社員のみなさんが「どんなことを考えて、どんなことがしたいのか」が伝わってくるんですね。新しいアイデアが生まれたときに、「やってみたらいいんじゃない?」と後押しできるような体制を整えたいと思っています。

円滑なコミュニケーションが”思いやり”のあるサービスを生む

――「カジドレ」チームには、どんな方々が揃っているのでしょう?

渡邊 企画、開発、UIデザイン、営業、運用グループの各セクションの窓口担当5名がメインとなって進めています。一部を手伝ってくれている社員も含めると10名ほどです。
家庭を持っている人もいればひとり暮らしの人もいて、家事のでき具合も様々です。

――チームで仕事をする上で、気を配っていたことはありますか?

渡邊 「顔は知っていても一緒に仕事をするのは初めて」というメンバーが集まったチームだったのでコミュニケーションは重要視していました。
ですが開発スタート直後にコロナ禍になってしまって。

リモート作業下でも「雑談タイム」を設けるなどして、何気ない話ができる関係づくりを意識しました。そうすることで信頼感が生まれて、何かあったときお互いに色々なことを頼みやすくなると思うんです。壁がない状態でやりとりをした方が、仕事のスピードも上がっていきますしね。

――もともとONE COMPATHでは、サークル活動やオンライン交流/飲み会の費用補助など、制度としても社内コミュニケーションを促進するものが用意されていますよね。

山﨑 私はeスポーツのサークルを主催しています。こうした場所で社員の輪が広がることもありますね。

渡邊 僕はカラオケ部です。社員全体に言えると思うのですが、みんな穏やかで人柄が良いです!仕事を円滑に進めやすい環境にあるのかなと思います。

――どんなときにそう感じますか?

渡邊 取締役CMOの山本と雑談しているとき、とかですかね(笑)。
経営陣とは本当に距離が近くて、仕事の相談や判断を仰ぐ場面でもコミュニケーションが取りやすいです。

――お2人は今後「カジドレ」をどんなサービスにしていきたいと思っていますか?

渡邊 「カジドレ」を通して家事代行サービスを知る人が増え、サービスを必要とする誰かの入り口になってくれたら嬉しいです。
もちろん、家事代行の比較サイトの中でトップを目指したいとも思っています。その上で、家事代行サービス全体に寄与できたらいいな、と思いますね。

山﨑 以前の私がそうだったように、「家事代行って何だろう?」「どこに頼めばいいんだろう?」というのが分からない方がたくさんいらっしゃると思います。
このサービスが利用される方の生活の一部になり、毎日の生活が快適になる助けになったらいいなと思っています。

――ユーザーの生活圏内(ワンマイル)に自然に存在しているようなサービスになれば嬉しい、ということですね。本日はありがとうございました。

<本日のインタビュイー>
渡邊氏プロフィール
メディアサービス本部 新規事業開発部 渡邊 雄太(わたなべ ゆうた)氏
2012年株式会社マピオン(株式会社ONE COMPATH前身)にコンシューマー向けアプリの開発・ディレクターとして入社。2019年4月に新規事業開発部に着任。【僕のワンマイル・イベント】
ここ2~3年、地元付近に新しいお店がどんどんできています。
これまでにない街の変化を見ていると、アイデアが湧いてきて仕事に繋がることも。


山崎氏プロフィール
システム技術本部 基盤開発部 サービス開発グループ 山﨑 あおい(やまさき あおい)氏
大学在学中からアプリの開発を行い、その経験をもとに凸版印刷株式会社に入社。
「Shufoo!」のアプリ開発やチラシビューア改善プロジェクトにエンジニア・PMとして携わる。2018年株式会社マピオンに出向、2019年転籍。

【私のワンマイル・イベント】
UFOキャッチャーで大きめのぬいぐるみ(ピングー)を取れて嬉しかったです!

インタビュー・テキスト:杉山 仁/撮影:SYN.PRODUCT/企画・編集:澤田 萌里(CREATIVE VILLAGE編集部)