WebサイトはHTMLやCSSコードを1つひとつ記述してデザインを整え、時間をかけて積み上げて制作していきます。これはとても労力がかかることで、時間をかけられない案件などの場合は困ってしまうものです。近年は構築を少しでも効率化するためにCSSフレームワークを活用することが増えています。
その中でも初心者でも使いやすいテンプレート・テーマが豊富なCSSフレームワークの1つが「Bootstrap」です。「キレイなレイアウトのWebサイトを作りたい」「CSSでレイアウトを作るのが難しい」という場合は、一度コードを自分で書くのではなくBootstrapを活用してみるのも1つの手だと言えるでしょう。
CSSフレームワークの1つである「Bootstrap」
Bootstrapとは
BootstrapはHTML、CSS、JavaScriptによって構成されたフレームワークです。世界トップクラスのSNSシェアを誇るTwitter社が開発しました。CSSフレームワークは数多くありますが、Bootstrapは2010年半ばに開発され、長い歴史を持ちながら現在でも世界中で利用されています。
BootstrapはWeb制作に必要なフォームやボタンがあらかじめ用意されており、多数あるテンプレートを活用して、CSSの知識がなくても簡単にデザインの整ったWebサイトを作成できるツールです。レスポンシブWebデザインにも対応しており、端末に合わせて最適化させることができます。
Bootstrapに用意されているクラスをHTMLに書けばコンポーネントをすぐに作成できるため、コーディング量を減らして作業を効率化できる点も特徴です。Web全体の雰囲気を見たいケースでも手間を削減できるため重宝することでしょう。
Bootstrapの種類
Bootstrapは1つだけでなく、機能が拡張されたものが複数存在しています。「まだBootstrapを使ったことがない」という初心者の方にとって、どのBootstrapを使うべきなのかは判断しにくいことでしょう。ここでは4つのBootstrapについて簡潔に紹介します。どのBootstrapを活用すべきかの参考になれば幸いです。
Twitter Bootstrap
Twitter社が最初期に開発したBootstrapをTwitter Bootstrapと呼びます。2012年にオープンソースとなり、Twitterの冠が外れて現在はBootstrapのみとなります。ここではあえて分かりやすいようにTwitter Bootstrapとしておきます。
Angular directive for Bootstrap
JavaScriptのWebフレームワークであるAngularJSと連携できるのがAngular directive for Bootstrapです。AngularJSはアプリケーション開発をするのに便利なフレームワークで、作業効率化を図ることができます。しかし、フレームワーク同士で干渉しやすいため使用する場合は注意が必要です。
Angular directive for Bootstrapは、そんなAngularJSと干渉することなく併用できるBootstrapとなっています。
BootstrapWP
BootstrapWPは、世界でもっとも使われているブログソフトウェアであるWordPressと併用できるBootstrapです。WordPressは集客力・収益力の高いブログを誰でも簡単に作成できるのが強みです。
BootstrapWPはそんなWordPressと併用できるBootstrapであり、デザイン性に優れたWebサイトやブログを作成したい人が使います。
Bootstrap Themes
Bootstrap Themesは、デザイン性が高く美しいテンプレートが販売されているBootstrapの公式テーマです。カスタマイズ性に優れているBootstrapはテンプレートも多く販売されており、自分のセンスに合わせて購入・無料利用することができます。
見た目だけでなく使いやすさにこだわったテンプレートも数多くあるため、作業効率を高めたい方にもおすすめです。
Bootstrapを使用するメリット・デメリット
Bootstrapのメリット
Bootstrapのメリットは大きく3つあります。
コーディング量を減らし作業効率化
サイト上のボタンやメニューといった部品(コンポーネント)はHTMLやCSSを使ってコーディングして作成します。もちろん、コンポーネントの数が増えれば、コードの量も物理的に増えることとなるでしょう。細々した作業が増えてしまえば、Webサイト制作にかかる全体の時間も増えるのは当然のことです。
また、コードの量が多くなるといざカスタマイズや変更が必要になった時に困ります。どこを変更すればいいのかが分かりにくくなり、ミスが発生しやすくなるのです。
Bootstrapにはテンプレートやテーマといった雛形がすでにあり、それを使用すればコンポーネントは簡単に作成できます。CSSをいじる時間が物理的に減るため、Webサイト作成の時間が削減され、ミスも抑えることができるようになります。
デザインの知識・センス不要で美しいデザインにできる
デザインの知識がなくセンスにも自信がない方にとって、レイアウトやコンポーネントデザインを1から行うのはほぼ無理ではないでしょうか。もしできたとしてもかなりの時間を要することになるでしょう。
Bootstrapのテンプレートやテーマからサイトイメージに合うものを選べば、それだけで質の高いデザインのWebサイトを制作可能となります。コンポーネントの色やデザインを元テーマから少し変更したいのであれば、HTMLのクラス名を変更するだけでOKです。ほぼワンタッチで自由にサイトデザインできるイメージと考えて良いでしょう。
誰でも簡単にレスポンシブ対応のサイトを作成できる
10年前であれば、PC専用と携帯専用のページを作成しなければならず、美しいデザインのサイトと言えばPCのみというのが当たり前でした。しかし現在はスマホやタブレットが普及し、PC・スマホ・タブレットなどさまざまな端末でレスポンシブに表示できるWebページを作るのが常識です。
総務省の「令和3年版 情報通信白書」によれば、スマホを含むモバイル端末全体の世帯保有状況は96.8%、一方PCについては70.1%となっています。25%以上の差があることからも、PCより複数のモバイル端末を優先して設計する方が有意義であると言えます。
Bootstrapにはグリッドシステムという機能があり、誰でも簡単にレスポンシブ対応のWebサイトを制作できます。これはBootstrapの大きなメリットと言えるでしょう。
Bootstrapのデメリット
メリットの多いBootstrapですが、もちろんデメリットもいくつかあります。
カスタマイズには知識が必要である
Bootstrapは多くのテンプレートやテーマがあり、誰でも簡単に一定レベル以上のデザイン性を持つWebサイトを制作できます。しかし、カスタマイズにはCSSやJavaScriptの知識が必要となります。そのため、知識がない人がBootstrapを活用してWebサイトを制作すると、キレイだけどどこかで見たような無個性なものに仕上がる可能性が高まります。
機能を多く詰め込むことは難しい
BootstrapはWebサイトの開発を簡潔にすることを目的にして開発されたフレームワークです。多くのテンプレートやテーマが存在し、その目的は間違いなく達成できています。しかし、多様性や独自性を求め、多くの機能を詰め込みたいという場合には向きません。
どちらかと言うと、シンプルで制作にあまり時間をかけられないような案件で利用されるのがBootstrapです。
使用しないコードが出て表示が遅くなる
BootstrapでWeb制作をすると、わりと多い頻度で使用していないコードやファイルが導入されます。たとえば使用しておらず不要なjsファイルが含まれてしまい、Webサイトの読み込み速度が遅くなることがあるのです。軽量なサイトを目指すのであればBootstrapの使用は向きません。
日本語の表示を調整しなければいけない
BootstrapはアメリカのTwitter社が開発したフレームワークであるため、基本的には英語圏向けのものです。日本語はアルファベットと異なりフォントが特殊であるため、Bootstrapで日本語のWebサイトを制作すると表示がおかしくなって見づらくなる場合があります。これを調整するのは手間となります。
Bootstrapのメイン対象はバックエンドエンジニア
Bootstrapは学ぶべきものなのか?
Bootstrapは効率よく美しいデザインのWebサイトを制作するのには便利なフレームワークです。ですが、わざわざBootstrapを活用するために専門的に学ぶ必要はありません。というのも、そもそもBootstrapはHTMLやCSS、JavaScriptなどの雛形を備えたフレームワークでしかありません。特別な構文やルールが数多く存在しているわけではなく、Bootstrapを構成する言語の知識を有しているのであれば簡単に使用できるためです。
つまり、Bootstrapはマークアップ言語やプログラミング言語のようなスキルや知識とは異なり、Webサイト制作の便利ツールにしかすぎないというわけです。
Bootstrapを利用するのは誰か
ではBootstrapを利用するのは誰なのでしょうか。Web制作会社で時間が足りずに利用される可能性はありますが、積極的に活用されることはないでしょう。好んで利用するのはデザインを専門とせずCSSに触れる機会が少ないバックエンドエンジニアなどです。個人開発のバックエンドエンジニアであれば、時間をかけずに簡単にレスポンシブデザインを可能にするBootstrapはとても有効なツールと言えるでしょう。
HTMLとCSSの根本を理解したうえでの活用を
【Bootstrap 使い方 初心者のまとめ】
・Bootstrapは作業効率化・手間削減に貢献する
・テンプレートであることによる良し悪しを理解すべき
・Bootstrapは便利だが、履歴書に書けるスキルではない
Bootstrapは誰でも簡単に美しいデザインのWebサイトを作成できるフレームワークです。サイト制作経験が少ない、CSSやHTMLの知識が少ないのでBootstrapを試してみたいという方ならば、とても有用なツールとなるでしょう。また、バックエンドエンジニアのようにCSSに触れる機会が少ない開発者であれば有効に活用できます。
Web制作の入り口としてBootstrapを触り、それをきっかけにぜひCSSやHTML、JavaScriptも学んでみてください。初心者であればまずは触れることが大切ですので、そういった意味ではBootstrapはとてもおすすめのツールです。