30万点以上に及ぶコスメのデータベースを有し、累計クチコミ数1500万件を突破する日本最大級のコスメ・美容総合サイト「@cosme(アットコスメ)」。それだけでなく、同サイトを運営する株式会社アイスタイルは@cosmeを中心として関連メディアやマーケティング、ECサイト、実店舗など多岐にわたる事業を展開しています。

そんな@cosmeはまさに「美」の一大プラットフォーム。その中で、美容コンテンツの編集者として約10年間キャリアを積んできたのが同社の尾崎舞子さんです。新卒で入社後グループ会社に出向し、無数の美容情報の中から“魅せる”コンテンツを創り出した経験や、複数のメディアを新規で立ち上げた経験から見えてきた、尾崎さんならではの仕事との向き合い方とは?お話を伺いました。

株式会社アイスタイル プラットフォームエンゲージメント本部 エンゲージメント部 商品コンテンツグループ 尾崎舞子
2010年4月アイスタイルに入社。同年5月、@cosme関連のECサイトを運営するグループ会社のコスメ・コムに出向し、美容を軸としたサービスの立ち上げや販促企画のコンテンツ提案、編集など幅広く携わる。2015年7月アイスタイルの編集部に帰任。プロデューサー兼編集者として「A-Beauty by @cosme」「@cosmeダイエット」などのメディアを立ち上げる。2017年11月〜2019年4月末まで産休・育休を取得した後復職し、7月より現在の商品コンテンツグループで勤務。

クチコミサイト、メディア、ECサイト…@cosmeに限らない、多様な事業展開に魅力を感じ入社

――尾崎さんは新卒でアイスタイルに入社されたとのことですが、まずは入社までの経緯を教えてください。

私はアイスタイルに入社してすぐグループ会社のコスメ・コムへ5年ほど出向した後、本社の編集部に帰任し、産休・育休を経て現在の商品コンテンツグループに配属されました。そもそもの会社選びは「人」、そして「ビジネスの面白さ」が基準です。元々大学で組織論を学んでいたため、人材や会社組織に漠然とした興味を持っていました。

ですから、就職活動中は人材派遣会社や人材コンサル会社を中心に受けていました。そんな中、人材派遣サービスなども手がけているアイスタイルの選考で、@cosmeのようなクチコミサイトもメディアもECもキャリア関連事業も運営している幅の広さと、CEOの吉松が「まだまだやりたいことがたくさんある」とキラキラした目で語る姿に惚れ込み、入社を決めました。

私自身も高校生の頃から@cosmeを楽しく利用していましたし、欲張りな性格なので「アイスタイルに入れば色々な業務ができるのではないか」と思ったのです。

――実際に入社してからはいかがでしたか?

まずは人やお金の流れ方、関わり方が分かりやすい、より小さい組織でやってみたいと思い、化粧品ショッピングサイト「@cosme shopping」を運営するコスメ・コムへの出向を希望しました。同社では店舗の運営や商品を仕入れるMD、メルマガの作成及び配信からお客様からの問い合わせ対応まで何でもやりましたね。Amazonや楽天などのモール店の新規立ち上げにも携わりましたし、当時は日々降ってくる仕事をがむしゃらにこなしていました。入社前の希望通り、さまざまな業務を担当していたわけです。

その一方で、だんだん「器用貧乏になっているな」と感じ始めました。
もっと専門的なことをやってみたいけれどどうしようか…と考えていた矢先、専任でコンテンツを作ることになったのです。特集ページの企画から撮影、デザイナーへの発注まで、全て自分で行っていましたね。

「クチコミはいいのに売れない」不遇の商品が、コンテンツの見せ方を変えることで5~10倍売り上げるように

――コンテンツ作りに専念していく中で、印象深かった出来事はありますか?

私がやってみて良かったなと感じたのは「@cosmeのクチコミでは高評価がついているのに、売り上げが芳しくない商品」の特集ページ作りです。
某メーカーのリキッドコンシーラーだったのですが 、クチコミでは絶賛されていたのにあまり売れていなかった。そこで「ユーザーが買いたくなるようなひと押しがないのでは?」と考え、クチコミを何百件もチェックして「ユーザーを惹きつけるポイント」を整理し、コンテンツに反映させたのです。

具体的に言うと「意外にテクスチャが柔らかくて、肌馴染みが良かったから買いました」という声を参考にしつつ、テクスチャが分かりやすいよう実際に塗った写真を掲載したり、コンシーラーの選び方や活用法、商品が生まれた歴史などを事細かに説明したりしました。そのために@cosmeのリアル店舗である@cosme storeの店長に「どうやったらコンシーラーを上手く使えるか」と教えを請うなど、アイスタイルの資源をフル活用しましたね。

それまでは簡単なキャプションに商品画像を入れているだけの作りでしたので、見栄えはガラリと変わりました。結果、この商品はそれまでより売り上げが5〜10倍近く跳ね上がりました。

――売り上げ5〜10倍アップはすごいですね!取り扱う商品は同じでも、コンテンツの見せ方を工夫することによって、ユーザーの購買につなげられたということですね。「編集力」の大きさを感じます。

とにかく情報量が多いのでそれを見やすい形に編集してあげること、ユーザーの心を動かして最終的に買ってもらうところまで意識して作れているかということが重要だと強く感じました。特に、コスメ・コムは「明日の売り上げが足りない、どうやって集客しよう」と日々考えなければならない現場でしたので、今でも「メンバーさんにもっと知りたい、買いたい、試してみたいと思ってもらえるコンテンツを作りたい」という想いがありますね。こうやって経験を次のキャリアに直接活かせているのは、同じグループの中でずっと美容に関わってきたからこそです。

アイスタイルの世界観が「@cosmeを介して商品を買ったり、情報を発信したりといった消費者の一連の行為が、全てアイスタイルというプラットフォームの中で実現する」というものなので、私の考えはブレていないと確信しています。

本社に戻り新たな目線で会社を知ることで、キャリア観に変化が生まれた

――コスメ・コムでの成功体験の後、@cosmeで新規事業を立ち上げる人材として抜擢されアイスタイルに帰任されたとのこと。本社に戻られてからはいかがでしたか?

いざ戻ると、決裁フローもスピードも何もかも全く違いましたね。
コスメ・コムは小さな組織でしたので、サイトのカラーやレイアウトの変更をするのに現場で判断してトライ&エラーを常に繰り返す…という感じだったのですが、今は影響範囲が大きいぶん、ひとつ動かすのにもさまざまな部署を渡り歩いて調整をしなくてはいけません。まるで社内転職したようで、フレッシュな気持ちで仕事にかかることができました。私が10年アイスタイルで働き続けられているのは、そのおかげではないでしょうか。

私が立ち上げたのはエイジング世代向けのビューティー&ヘルスケアサイト「A-Beauty by @cosme」とダイエット情報を提供するサイト「@cosmeダイエット」の2つ。一からの企画・運用は大変でしたが、アイスタイルの各部署にいる同期や仲間にかなりフォローしてもらい、乗り切ることができました。本当に人に恵まれているなと感じます。
また、「A-Beauty by @cosme」の企画の際に社外の編集者の方をお招きしたのですが、お子さんがいながら編集者としても第一線で活躍されている非常にポジティブな女性で、人としても「こうなりたい」という目標ができました。

――「まるで社内転職したよう」とおっしゃいましたが、アイスタイルに戻られたことでキャリア観の変化はありましたか?

コスメ・コムにいた頃は「器用貧乏になってしまっているのでは」と考えていましたが、コンテンツ作りに携わり、アイスタイルの編集部でメディアを立ち上げるときに「マルチプレイヤーでもいいじゃないか」と吹っ切れました。
「がむしゃらに何でもできる」というのはそれはそれでひとつの武器ですし、「美容」を軸に部署を横断するような働き方を展開できるのは、アイスタイルならでは。それを活用しない手はありません。育休中に自分の働き方についてぼんやり考えていたのですが、やっぱりこの会社に所属している以上はそのメリットを活かしていきたいなと思います。

今後はまたコンテンツ制作を離れてECに行くもよし、商品開発を担当するもよし、幅広くビューティーの領域を見ていけるようなキャリアを積んでいきたいです。

会社にとってもユーザーにとっても新たな文化を作る「仕掛け人」になりたい

――日本最大級の「美のプラットフォーム」で、社内転職を経験してきた尾崎さんならではのキャリア選択と言えますね。今後「こうしていきたい」という具体的な目標があれば教えいただけますか。

大きなことを言うようで恐縮ですが、何かしらの“文化”を作っていきたいです。
会社にとってもそうですし、ユーザーにとってもそうですね。
弊社は「美容」という領域において全てのユーザーがつながり、さまざまな活動ができる「ビューティープラットフォーム構想」を掲げています。そのプラットフォームの中で、「毎日見たい」「ここに来ればワクワクする何かに出会える」と思ってもらえるような仕掛けを創り出す「仕掛け人」になりたいと考えています。

また、若手の女性社員にとって、ひとつのモデルケースになるというのも目標のひとつです。私が若手だった頃、出産・育児をこなしながらバリバリキャリアアップしていく女性の先輩が少なくてすごく困りましたから。
現在、アイスタイルは育休を2年取得できたり、在宅業務に関してもフォローが受けられたりするなど、とても働きやすい環境になっています。その中で、多様なロールモデルの一人になれればと。それが、10年働いている私が仕事以外で唯一会社にできるお返しかなと思います。

――お話を伺っていると、アイスタイルで学んだことが、キャリアという面でも、個人のマインドという面でも尾崎さんの財産になっているように感じます。

大学で組織論を学んだと申し上げましたが、組織の文化を作っていくのはやっぱり人。なので、そのひとつになりたいというのは10年間ずっと変わりません。
弊社はビューティーが基軸で掛け合わせは無限にあるので、仕事を自分事として楽しく捉えられます。時に消費者視点になって、ワクワクしながら仕事をしています。大規模に事業を展開している一方で、弊社には現場のああしたい、こうしたい、がそのまま反映されるというベンチャー精神もまだ根付いているので、これからもどんどんビジネスが広がっていくと思いますね。どれくらい広がるかと想像するだけでワクワクします。

インタビュー・テキスト: 小泉 ちはる(YOSCA)/撮影:SYN.PRODUCT/編集:岩淵 留美子(CREATIVEVILLAGE編集部)

会社プロフィール


「生活者中心の市場創造」のビジョンのもと、@cosmeに登録される商品データ、クチコミデータ等が集まる独自のデータベースを活用し、リアル店舗「@cosme store」やEC「@cosme shopping」等、ネットとリアルを効果的に組み合わせながら、ビューティを軸とした垂直型の事業展開を行っています。
日本だけでなく、世界中のビューティに関わるヒト・コト・モノをつなぎ、グローバルプラットフォームをつくり、「Beauty×IT」というキーワードで、一番はじめに想起される会社になることを目指しています。

■ 社名  :株式会社アイスタイル
■ 所在地 :東京都港区赤坂一丁目12番32号 アーク森ビル 34階
■ 設立  :1999年7月27日
■ 代表者 :代表取締役社長 CEO 吉松 徹郎
■ 事業内容:コスメ・美容の総合サイト@cosme(アットコスメ)の企画・運営、関連広告サービスの提供
■ URL:https://www.istyle.co.jp/