女性向けNo1ケータイポータルサイト「girlswalker.com(ガールズウォーカー)」の人気キャラクターYukichi&Momoikeyを手がける小川真治。ケータイメディアへ身を投じて7年。
コンテンツプロデューサー、キャラクター作家と活躍の場を広げ、ついにはキャラクター本を出すに至る。
原動力は「目立ちたがり屋だから」と笑っているが、ユーザー心理をつかむために女性誌を読みあさり、ヒットさせるためのメールマガジン研究に打ち込み、ユーザーのニーズを知るべくひたすらブログを書き続ける。
「いかに受け手の気持ちになってものづくりができるか。その感覚を磨くには、どんどんモノをつくって発表し、そのリターンを自分の肥やしにすることです。それができるかどうかがクリエイターの資質かもしれない」
「感じて心動かされること」と格闘してきた百戦錬磨の強者(つわもの)だ。

 

■ 「ケータイ」がメディアになる? 「ケータイ」でモノを売る!?

子供の頃から絵を描いたり、表現することが大好きでした。大学では法律を勉強していたんですが、卒業間近になって、やっぱりエンターテインメントをやりたいと思うようになりました。モノをつくって発信し、自分の痕跡を残せたら最高だろうなって。それで大学卒業後、日本工学院八王子専門学校の放送芸術科(現クリエイターズカレッジ放送・映画科)に入学しました。工学院は放送分野での教育の歴史が古く設備もカリキュラムも充実しているし、テレビ業界との関わりも深いので就職にも有利だと思ったんです。
工学院ではものづくりを一から学び、つくることの楽しさを実感しました。でも具体的に就職を考えたときに、先輩から過酷な制作現場の話を聞き、正直ちょっと尻込みしてしまったんです。長く続けられて、かつクリエイティブな仕事につくには、放送業界にアシスタントディレクターとして入る以外に方法がないのか? 悩みと焦りが膨らむ中、わらにもすがる思いで参加した学校の企業説明会で出会ったのがブランディング(旧ゼイヴェル)でした。
2004年というと、iモードはありましたが、着信音が16和音になったとか、やっと写メールが浸透しただとか、まだそんな時代でした。それなのに「これからはケータイがメディアになる」とブランディングの担当者は言うわけです。その上、「ケータイでモノを売る」とまで。ケータイを単に電話の道具としか考えてなかった僕には衝撃でした。強烈なカルチャーショックを受けた僕は、まだ社員30人程度だったベンチャー企業に入社を決めたんです。

 

■ いかに言葉で引きつけるか

ブランディングは2000年から「girlswalker.com」を運営しています。テレビはコンテンツ(番組)が勝手に流れてくる、ある意味視聴者受け身のメディアですが、ケータイはコンテンツが完成したら、まずそれをメールでお知らせし、そこからURLにアクセスして見にきてもらわなければならない。登録してもらったお客さんをメールでもう一度引き戻さないとダメなんです。
そこで僕はまずメールマガジンに着手しました。ケータイサイトはメールマガジンを配信した瞬間にアクセスが上がる。テレビの視聴率より瞬時に的確に反応がわかるんです。メールの文言だけでどれだけユーザーを引きつけられるか、そこに自分のクリエイティブを入れていく面白さってあるんです。
ほかにも僕は、ケータイサイト「占い☆walker(占いウォーカー)」を担当していたんですが、「この占い面白い」より、「この占い当たる」のほうが絶対にリピーターは多くなるんです。でもいくら無料でも、内容がダメじゃ逆効果ですよね。僕は何百回とメールマガジンを配信する中で、「内容はしっかり、そこにたどり着くまでは面白おかしく」という手法に至りました。当時はHTMLメールができなかったので、面白おかしくするために、アスキーアートを多用して顔文字を表現したり、半角カナを使って可愛く見せたり、次々にアイデアを繰り出し、凝りに凝ってやってました。
そのうちに、アスキーアートでオリジナルキャラクターをつくっちゃいましょうってことになって、生まれたのが「ユキチ」です。それがどんどん人気が出て、ついにはキャラクター事業を始めることになるんです。

イメージ

Yukichi&Momoikey

「girlswalker.com」から生まれた大人気キャラクターたち。食いしん坊でマイペース、ちょっぴりいわくありげな過去を持つクマ「モモイキー」(左)。みんなの願いをかなえ幸運を届ける、しあわせ配達人「ユキチ」(中央)。すきあらばモテたいイヌバチ(イヌ+ハチ)の女の子「キャンビー」(右)。

 

■ 受け入れてくれる人がいないと僕のクリエイティブは意味がない

ことを成していく上で一番大切なのは、「人の心の動きを察して動くこと」だと思います。ケータイサイトは意見や要望をフィードバックできる、非常にユーザーの希望が聞きやすいメディアなんです。僕はずっとお問い合わせ対応もやっていたし、掲示板も運営していたので、なぜユーザーが怒っているのか、どう答えれば納得してもらえるのか、つまりユーザーへの配慮を実体験で知ることができた。それは一緒に働いているスタッフに対しても同じで、相手の気持ちを察しないと、いくら自分が一生懸命やってもそっぽを向かれちゃうだけなんです。自分自身が自分の作品の一番のファンであり、一番の批評家でなくてはならない。常に俯瞰(ふかん)した第三者の目線で自分のつくったものを見ていないとひとりよがりなものになってしまうんです。
相手の心の動きをつかむには対話を繰り返せばいいんです。僕はユーザーと対話するために、ユキチの作者としてブログを始めました。「ユキチぬいぐるみの厚みを変えてみました。サンプルが楽しみだな」とか企画の進行具合をブログで報告すると、ユーザーからコメントが返ってくる。みんなで一緒にものづくりしている感覚を持ってもらえれば、それは強いですよね。

Yukichi&Momoikey 第1話「ユキチとモモイキー」
みんなに幸せを届けるためにユキチとモモイキーは頑張るのだ!

挫折はありません。だけど「イヤだな」と思うことはあります。そのときは、どうしたら「イヤだな」と思わなくなるかを考え、根こそぎ変えてやろうと思います。制作現場でこちらの意図したものが上がってこないのはしようがないんです。それを直せるだけの時間的余裕を自分でプロデュースしてつくっておけばいいだけの話です。流れ作業でやっているからそこまで考えてないって人も多い。でもそこを根気強くやるのもプロデューサーの仕事だし、何よりユーザーに自分の意図が伝わらないのが一番悔しいですからね。
2005年には「girlswalker.com」が5周年を迎え、そのオフ会として、第1回東京ガールズコレクションが開催されました。普段雑誌でしか見ることのできないモデルさんたちが目の前を歩き、彼女たちの着ている服をその場でケータイから買える。僕が企業説明会で聞いた「ケータイでモノを買う」というビジョンが現実になった。その過程に関われたのはよかったし、うれしかったのは、東京ガールズコレクションの準備でカメラマンとして現場に入っていた工学院時代の同級生と再会したことです。一緒に課題をつくっていた仲間の名前を人気ドラマのスタッフクレジットに見つけたときも、「あいつ頑張ってるな」って思えて勇気がわいた。少し遠回りしたけどすべて無駄じゃなかったんだ・・・・・・そう思えることが、いますごく僕の力になっています。

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『がんばらなくても彼氏ができる ホメられ女子になる方法』
(著=李家幽竹、刊=メディアファクトリー)

風水を活用した、ちょっと取り入れるだけで「ホメられ」「モテ」パワーが増すアドバイスがいっぱい。メイク、ファッション、ライフスタイルなどいろいろな場面で、楽しみながら運気を上げることができる。ユキチ、モモイキー、キャンビーが大活躍のキャラクター本としても魅力。

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