結婚式をオンライン上で配信できる「WeddingLive(ウエディングライブ)」が注目を集めています。
同サービスの仕掛け人である橋本健士郎氏は、開発系のプランナー/ディレクターとして経験を積み、同サービスを副業として立ち上げ起業。現在も会社員として働きながら、「WeddingLive」に携わっています。
今回は、会社員時代から副業を始め、「WeddingLive」をリリースするまでの軌跡をインタビュー。副業を考えているクリエイターにとって、ヒントになる動き方を伺いました。
株式会社WeddingLive 代表取締役。2013年に株式会社サイバーエージェントに入社し、2018年に六本木のIT企業に転職。2019年にWeddingliveを創業。
──コロナウイルスの感染拡大により結婚式が延期・中止になるなか、式自体をオンライン上で配信するサービスは画期的ですね。着想は橋本さんの経験からきているとか。
社会人になってから、地元・熊本で行われる同級生の結婚式に出席することが難しくなって。久しぶりに地元へ帰ったとき、同級生に「結婚式、来てくれなかったよね?」と言われて関係に溝ができていることに気づきました。
出席したくてもできない人は沢山いるはずなので、結婚式の参加バリエーションを増やすことで皆の課題を解決できるんじゃないかなと思いました。
──参加したくても参加できない人のためのサービスだったんですね。現在は、各メディアにも取り上げられ、話題になっています。
サービス開発中にコロナウイルスの感染拡大が深刻化したことが大きいです。もともと、「どうしても参加できない人に使ってもらえたら良いな」と思っていたサービスですが、挙式をまるごとオンラインにする需要も日々高まっています。
5年で10部署…ゼロイチ経験を豊富に積む
──サービスを立ち上げる前の経歴を教えてください。
学生時代は開発系のゼミでアプリを作っていました。インターンでIT業界を3社ほど経験した後、株式会社サイバーエージェントに入社しました。
サービスの改善点を洗い出す“開発系プランナー/ディレクター”として、エンジニアやデザイナーと業務を進めることが多かったのですが、5年で10部署ほど経験しましたね。
──2、3カ月に1部署を経験するスピード感ですね。大変ではなかったですか?
事業部がPCからスマートフォンにシフトするタイミングだったので新しく立ち上がるサービスも多くて……(笑)当時は大変でしたが、ゼロイチの経験を豊富に積んだことは今に活きています。
「培ったスキルで小さく実験する」を繰り返した
──現在、勤めている2社目から本格的に副業を始めたそうですね。どんな副業から始めたのですか?
WEBサイト作りの経験を活かして専門学校で講師としてWEBサイトの作り方を教えました。その後、ベンチャー企業で新規アプリを作る開発ディレクターとして携わったのですが、このタイミングで、副業メンバーだけで開発ラインを構築するチーム体制を作りました。
──ディレクター職だけでなく、ご自分でチームを作って動いたのですね。
そうですね。企業がミニマムで新規サービスを出すときエンジニア職を採用しようとすると、採用費だけで数百万かかってしまうんです。
そこで、「これくらいの金額で、僕たちがアプリを作りますよ」とアプローチをかけることができれば、外部にも委託してくれることに気づいて。 チーム化した翌年には有名YouTuberのファンアプリを作ったりと、受注案件も安定的に増えました。
信頼できるメンバーで“副業チーム”結成
──チームメンバーは、どうやって集めたのですか?
1社目の同期で仲が良かったメンバーをアサインしました。あと、信頼できるエンジニアづてに「仕事がしやすいエンジニア」を紹介してもらいました。
──「WeddingLive」も、同じメンバーで取り組んでのでしょうか。
はい。今勤めている会社にベンチャー企業のライブ配信システムを使って日本で初めてアプリを作ったエンジニアがいて、一緒に副業チームを組んでいたんです。その人に「Wedding Live」の構想を思いついて話した時に、「面白そうだから、安くやりますよ」と言ってもらえたことが実現につながっていますね。
今、「WeddingLive」を作っているのは、そのエンジニアさんと、その人の前職の同僚。デザイナーは1社目の先輩という構成です。今まで一緒に仕事してきた人たちばかりなので、やり取りもスムーズでした。
──いちからではなく、他サービスのシステムを使っているのですね。
大きな会社が作った仕組みの上に乗れば少数チームでも高さを作ることができる……いわゆる「巨人の肩に乗る」と表現されるようなやり方が今の時代に合うと思うので、既存システムを最大限活用して作りました。
「無理してでも、やるべき」コロナ禍で怒涛のリリース
──開発からリリースまでは、スムーズにいきましたか?
コロナウイルスの感染拡大が深刻化した2月頃から結婚式の延期・中止を検討している新郎新婦がいることは、なんとなく把握していました。ちょうど、そのタイミングで広報の友達数人から、「今がチャンスだと思う。何かキャンペーンを考えてプレスリリースを出すべき」と連絡が来て。
サービスのリリースは先を予定していましたが、「必要とされているのは今だ!」と思いエンジニアに相談したんです。「コロナウイルスの影響で、結婚式の執り行いに悩んでいる新郎新婦がたくさんいるから、サービスのリリースを少し早めることで、一助になれるんじゃないか」と言ったら、「それならば無理してでも、やるべきだ」と言ってくれて……。
──当初、想定していた「結婚式へ参列できない人」のためのサービスとは少し違いますね。
はい。コロナウイルスの影響で需要も変わると思ったので、臨機応変に対応しました。その日に開発中の「WeddingLive」をβ版でユーザーに提供することを決めて、翌日にプレスリリースを出して、その後、たくさんのメディアから取材依頼が入って……。
当時はきっと目が血走っていたと思います(笑)エンジニアさんが快く動いてくれた分、きちんと結果を残さないと、と思ってスピード感を重視して動きました。
──結果的に、テレビ局や新聞社など、さまざまなメディアで取り上げられて認知拡大にも繋がりました。
1週間ほど各メディアから来る取材対応に追われるくらい反響がありました。ただ、まだ実例はなかったので、申し込んでくれた新郎新婦の中からお話を伺える人を探したり、その時点で集められる情報をかき集めました。
ここでしっかりと初速を作れたことが、サービスの認知向上に繋がったと思います。サービスにも、たくさん新しく事前登録がきました。
何かを始めたいなら「選択肢になること」が大事
──橋本さん自身が、ここまでチャンスを繋げられた理由は、なんだと思いますか。
「外部発信」が大事なポイントになったと思っています。副業に関わらず、自分が会社で行っている仕事をSNSに投稿することによって共通の知人に対して「この人は、こんなスキルセットがあるんだ」ということを認知してもらえます。僕はFacebookで自分がやっていることを定期的に発信してました。
──定期的に自分がやっていることを発信することが大事、ということですね。
はい。発信しておけば、SNSで繋がっている知人や友達が近い領域のサービスを作るとき、選択肢のうちの一つになれると思うんです。その流れで、「こういうことを考えてるから、壁打ちで相談させてくれない?」という話が来たら、「コンサルしましょう」とか「僕が作りますよ」というような提案がスムーズにできます。
とにかく、相手の選択肢になるような種を蒔いておけば、自分から営業することは必要なく案件を取ることができます。
──進めるにあたって気をつけたほうがいいことはありますか?
一度だけ仕事をしたことのないメンバーと一緒にチームを組んだことがあるのですが、通常3ヶ月でできる仕事が半年以上かかってしまいました。初対面の人とチームを組むと、まずはその人のスキルから確認しないといけないので、予想以上に時間もかかってしまって……。
普段、チームを組んでいる人が、いかに自分の足りない部分を補完してくれているか気づくことができた瞬間でもあります。クライアントにも迷惑をかけたので、今は慣れ親しんだ信頼できる人としか組まないようにしています。
──最後に、副業を考えている方に向けてメッセージをお願いします。
まずはラフに始めるべきだと思います。やってみないと分からないことが多いので動いてみることが大事だと思います。
撮影:SYN.PRODUCT/取材・ライティング・編集:向井美帆(CREATIVE VILLAGE編集部)