TV放送やソーシャルメディアなどと連動した、インタラクティブコンテンツを続々と世に送り出している株式会社バスキュール。クリエイティブディレクターの馬場さんに、バスキュールが目指すクリエイティブとご自身のキャリアについて、お話を伺いました。
業界を志したきっかけ
学生時代はジャズサークルに所属しバンド活動に熱中していました。気付くと4年。就職活動どころか卒業も危うい状況でした。結果的に4年半で卒業しましたが、卒業間際まで「何をしたいか」は明確でなく、「どこかに就職しなくちゃ」という感じでしたね。
そんなタイミングで、友人が教えてくれたのが中村勇吾さんの作品。すごくカッコ良くて、一気にWebの世界に関心が高まったことを覚えています。「今からグラフィックをやるのは大変だけどWebならできそう」という安易な考えもあって、プログラムの勉強を始めたんです。
当時、Flashを使っている人たちのコミュニティーがメーリングリストで動いていて、そこで「こんなことができる」なんて発言していたら、社長の目にとまって。それがバスキュール入社のきっかけになりました。
最近のクリエイティブ
いちばん直近の仕事は、アディダス ジャパン/JFA様とご一緒させて頂いた「サッカー日本代表スタジアム」。W杯最終予選を戦う日本チームを、スマホで応援するアプリです。TVの前でもスタジアムに居るかのような臨場感で、試合の感動をみんなと共有できる。そういうコンセプトで作ったコンテンツです。ゴールシーンや得点に絡みそうなシーンで「いけぇぇぇぇぇ!」と連打してシャウトしたり、いろんな感情を即座に表現できるスタンプや、バルーンを打ち上げられる機能などを盛り込みました。もちろんTwitter、Facebookで友達とつながる機能も。2012年2月のウズベキスタン戦に合わせて、まずiPhone版β版としてリリースし、6月にAndroid版あわせて正式リリースしました。
このアプリ開発にはスマホ側・サーバサイド合わせて約10人のメンバーが関わり、僕は主にスマホ側のディレクションを担当しました。難しかったのは、どうやったら試合の興奮に寄り添う形でスマホ上で盛り上がれるかということ。そのためのアイデアを具体的な要件にしてテクニカルディレクターと相談しつつ、実装の重さとのバランスをとっていきました。それに加えて、PCと比べるとマシンとして非力だしノウハウのまだあまりないスマホでリッチなコンテンツを作るには、トライ&エラーが不可欠でした。
バスキュールが目指す方向性
そのほか日本テレビ放送網株式会社様のJoinTVサービスを拡張し、テレビ、データ放送、スマートフォン上でテレビ視聴を楽しむプロジェクトもスタートしています。金曜ロードSHOW!との連動企画が直近の仕事で「ヱヴァンゲリヲン新劇場版:Q」の公開に合わせ前作の「序」「破」がオンエアされましたが、その番組と連動したスマホコンテンツです。ヱヴァンゲリヲンの名場面、例えば碇シンジが「逃げちゃダメだ」と呟くシーンまでのタイムをカウントダウンしたり、スマホ連打の蓄電で「ヤシマ作戦」※に参加するなど、映画のシーンにあわせて手元のスマホも変わる、リアルタイム視聴の楽しさを存分に盛り込んだコンテンツができました。
このようにバスキュールや僕が関わる場は、かつてのWebサイト単体から移行しつつあります。変化の一つはメインのデバイスがスマホへシフトしていること、もう一点はTVを中心としたマスメディアとの連動が増えたことが特徴です。バスキュールでは今、TVを中心としたマスメディアと、個人が主体となるスマホなどのメディアを結びつけたとき、どんな新しいコミュニケーションが作れるかに注目しており、その先により効果的な広告の器もできると考えています。そのため、このような実験的に想える新しい試みにも、果敢なチャレンジをしているわけです。
※ヤシマ作戦
ヱヴァンゲリヲン新劇場版:序のエピソード。日本中の電気を集めて、攻撃兵器の威力を高め敵を倒す作戦。
クリエイティブへのこだわり。バスキュールで活躍するために必要なコト
バスキュールは、「人に届くモノ」を作るためにはどうしたらいいか、という点においてすごく貪欲で、そのために不遜にもまず新しい領域をつくるところからチャレンジしてしまったりします。そのため、目の前の仕事だけ見てると、本当になにをやってるのか分からなくなるし、スピードにもついていけなくなります。なにを目指しているのか、一歩引いた視点から自分の役割を把握する力が必要だと思います。
それともうひとつ、新しいものが世の中に受け入れられるかどうか、結局は出してみないとわからないです。もちろん成功するため、失敗しないための考えうる策はすべて行いますが、それらは結局は仮定でしかなくて、最終的には、このチームだったらやりきれる、この企画だったらみんなが楽しめる、と自分で信じられるかどうかしかないんです。行動は徹底的にプラクティカルじゃないと確実に失敗しますが、その行動のきっかけとなる気持ちの部分は本質的に楽観的でないと、全ての決断が難しくなるように思います。
そしてそういうマインドのありかたと同時に、常にディティールへのこだわりを持つことが重要だと思います。コンテンツの内容が面白いことは当たり前ですが、僕は同時に「ピクセルがずれてないか」などの細かい部分がすごく気になったりします。作るものが変わっても最終的には良いコンテンツと評価されるには、クラフトとしてのクオリティが非常に重要だと思います。細かいところも気を抜かないクリエイター魂が必要です。
これから、やりたいこと
少し前になりますが、文部科学省の「キッズワンダープロジェクト(子供向け学習コンテンツ)」として、海・宇宙・南極を知る3つの作品が作られ、僕はそのうちの「深海ワンダー」「宇宙ワンダー」2コンテンツに関わりました。また子供が遊びながらPC操作をするうちに簡単なゲームができる「プログラミン」というコンテンツも制作しました。父親になったこともあり、個人的にはこういう子供向けコンテンツへの関わりを増やしたいと思っています。
ヱヴァンゲリヲン
日本テレビ放送網株式会社と組み金曜ロードSHOW!「ヱヴァンゲリヲン新劇場版:序 TV版」「ヱヴァンゲリヲン新劇場版:破TV版+ヱヴァンゲリヲン新劇場版:Q冒頭6分38秒TV版」視聴時に誰でもスマホから参加できるJoinTV「ムーヴィシンクロナイザ」をリリース。有名な映画内の台詞にあわせてシンクロ率を高められたり、名シーンにスマホ連打で参加できたり、リアルタイムにテレビとお茶の間が双方向につながり、テレビ視聴を楽しむソーシャル視聴体験を提供した。
日本代表スタジアム
日本中の人々をサッカー日本代表のサポーターにするためにアディダス ジャパン/JFAリリースの「サッカー日本代表STADIUM」。 Facebook、Twitter、mixi、ゲスト参加ができバーチャルスタジアム内で友達と一緒にサッカーの試合観戦を楽しむ事ができます。 試合に集中しながら手軽につぶやけるエモーショナル・スタンプを駆使して日本代表をアプリ経由で応援することが可能です。
バスキュール
私たちバスキュールは、世界中の人々に喜んでもらえるインタラクティブコンテンツ を生み出すことを目標に、2000年に設立された企画制作会社です。
「従来」や「常識」といった枠を飛び越え、高度なコミュニケーションデザインを提 供することと、その制作活動を通じて、新しい仕事や会社のカタチも探っています。
近年のチャレンジはテレビとスマートフォン、ソーシャルをつなぐソーシャル視聴、 ダブルスクリーンの可能性の開拓。テレビ局や関係ソーシャルメディアサービスの 方々も巻込み新しいインタラクティブコンテンツのあり方を切り拓いています。
私達とともに切磋琢磨していただける方からのご応募を心よりお待ちしております。