2016年7月23日(土)、大阪のAP大阪東梅田日本生命ビルにて、クリエイターのキャリア支援を行うクリーク・アンド・リバー社とディレクターの地位向上を推進する日本ディレクション協会によるWebディレクターのキャリアイベントが行われました。
当日は、定員いっぱいの50名の方々が参加し、有名制作会社ディレクター、大手メーカーのインハウスディレクター、フリーランスディレクターなど様々なキャリアを持つ現職ディレクターの声に、熱心に耳を傾けていました。
【男女比】5:5
【年齢】20代:25%、30代:60.4%、40代:14.6%
【主な現職種】Webディレクター:31.2%、デザイナー:30%(うちグラフィックデザイナー6.5%)、
コーダー・プログラマー:16.9%、Webコンサルタント:3.9%
以下そのレポートをお送りします。
★Webデザイナーから Webディレクターへ
NPO法人クリエイター育成協会 監査/合同会社ワイヤーフレームズ 役員
藤井 梨恵(ふじい りえ)氏
トップバッターの登壇者は藤井 利恵さん。
元々ごく普通のOLだった藤井さん。その後、デザイン業界にキャリアチェンジし、映像制作やデザイン業務を経て、現在制作会社でWebディレクター兼デザイナーとして働いています。
当日は、ご自身のご経験をもとに、デザイナーとディレクター両方に焦点を当ててお話をされました。
Web業界で働く方には、ディレクターとデザイナーを兼務されている方が多く、今回の参加者の中にも何人かいらっしゃいました。兼務の大変さややりがい、またちょっとした「あるある」に深くうなずく姿が印象的でした。
特に興味深かったのは「デザイナー脳」と「ディレクター脳」についてのお話。当然ながら、それぞれの職種に課せられる役割は違い、兼務の場合は視点の切り替えが非常に重要だそうです。また、デザイナーとディレクター双方の視点から見たプロジェクト成功のコツは、参加者の方々にとって、今後の部署間の調整にも役立つ有意義なお話でした。
★制作会社のWebディレクターとして活躍するには
1→10design, Inc.ディレクター
中間 淳(なかま じゅん)氏
続いての登壇者は中間 淳さん。
中間さんはイベント企画や映像制作を経て、Webプロダクションに入社。国内外のキャンペーンサイトや大手企業サイトのディレクションに携わる一方で、体験型インスタレーションイベント、IoTアプリなど最新のデジタルクリエイティブの制作実績もお持ちのWebディレクターです。
世の中では新たな技術が生まれ、新たなサービスがどんどん出てきています。
印象的だったのは、「時代の流れについていくにはインプットあるのみ!」という力強い言葉でした。世の中の流れと同様に、Web業界も新しいものを次々と作り出さなければならない時代が来ているとのこと。
新しいものの大半が陳腐化していく現代において、いかに情報をインプットし、整理し、アウトプットしていくかが重要と話されていました。
スライドでは、主にIT関連で話題となる新技術の認知度や期待度が、時間経過と共にどのように変化していくかを表したハイプサイクルをもとに、VRの遍歴などにも話は広がりました。
最後にWebディレクターの役割・メリット・トレンドや制作物が変わってもディレクションしていく制作知識ではなく製品知識をインプットしていくことの重要性について語られ、とても興味深い時間でした。
★大手企業のWebディレクターとは
株式会社ケイ・オプティコム
入谷 剛(いりたに つよし)氏
前半最後にご登壇いただいたのは、入谷 剛さん。
防犯・警備のセコムにて14年従事した後、Web業界へキャリアチェンジ。現在は、クリーク・アンド・リバー社からeo光のケイ・オプティコムへWebディレクターとして出向中ということです。格安スマホサービス「mineo」のサイト立ち上げから運営までを一貫して担当している入谷さん。
今回の登壇者の中では、唯一のインハウスのWebディレクターです。普段なかなか聞くことのできないインハウス事情や制作会社とは違った仕事の進め方についても丁寧にお話されていました。
インハウスにおいて、ディレクターの仕事をうまく進めていくにはとにかく「コミュニケーション」と「人脈」とのこと。大手になればなるほど関わる部署や人物が多種多様で、社内での関係値で仕事がうまく行くか行かないかを判断していますと入谷氏。制作会社とはまた違った観点でのお仕事のお話でした。
その中でも、コンペティション(コンペ)の話題にも触れて、制作会社や広告代理店向けに、コンペを勝ち取るポイントや判断ポイントなどのちょっとした豆知識も披露され、普段なかなか聞くことのできないインハウスの内情が垣間見えて、今後のお仕事にもつながるお話でした。
ここで一旦休憩となり、
イベントスペースの一角に、クリーク・アンド・リバー社の求人票が貼り出され、参加者の方々が興味深そうに見ていました。
以下、後半のレポートとなります。
★フリーランスとして活躍するために
樫本祐輝(カッシー)氏
後半最初の登壇は、樫本祐輝(カッシー)さん。
フリーランスとして企業の問題解決やマーケティング・人材教育のアドバイスを行う傍ら、転職・独立支援として有料コミュニティTheCreativeを運営。Webデザイナーから始まりゲーム会社、マーケティング会社、NPOなどの経験を得て現在独立し活躍をされているカッシーさん。
今回唯一のフリーランスとして活躍するカッシーさんからは、フリーランスという立場でのディレクターの価値、存在意義についてお話しいただきました。
スライドにて「スキルはないのに、ディレクターとして独立できるのか?」という問いを参加者に投げかけ、「できます!」と断言されました。それには、Web業界での存在価値について理解することとカッシーさん。世の経営者の悩みとフリーランスの悩みを両面の視点でお話しされました。
現在のWeb業界は、情報が進化し、プロでないと判断がつかないことが多くあるとのこと。また、課題を抱えて悩んでいる経営者は、ディレクターに相談すれば解決するという考えをハナから持っておらず、お互いがうまく結びついていない。その結び付ける動きをしていくことが重要とお話しされました。
最後に「自分の強み」についての考え方にも触れ、フリーランスとして独立という選択肢を考えている方はもちろん、現在お勤めの方にも刺激のあるお話となりました。
★ Webディレクターに求められていること、今後の可能性。
株式会社イノセンティブ 取締役 :一般社団法人 日本ディレクション協会 理事
助田 正樹(すけだ まさき)氏
本イベント最後にご登壇いただいたのは、助田 正樹さん。
2005年からインターネットベンチャーでWebディレクターとして数社経験後、「LINKAGE」という商号でフリーランスとして活動。2012年6月に株式会社イノセンティブ取締役に就任。合わせて日本ディレクション協会の理事も務めるという多忙な日々を送る助田さん。
冒頭、「日本全国にWebディレクターは何人いると思いますか?」という問いかけから入り、Webディレクターの市場における現状をスライドにて詳細にお話しされました。
そのなかで、「Web業界において、Webディレクターに求められる仕事や能力はたくさんあり過ぎて大変ですが、それだけにニーズはメッチャあります。将来の選択肢が増える魅力的な職業です!」と助田さんはおっしゃいます。
10年前と現在で、Webディレクターの置かれている環境の変化、ニーズについても説明。また、事業会社・制作会社でWebディレクターに求められる相違点にも触れられました。
最後に、Webディレクターのキャリアパス、キャリアの考え方、設計の仕方などもお話しされ、大谷翔平選手が取り入れたことでも有名な、マンダラアートを使った棚卸のシートもご紹介いただきました。
フリーランスの方、企業にお勤めの方すべてのディレクターに向けてタメになるお話が多く、参加された方の満足度もかなり高かったのではないでしょうか。
■終わりに
現在Web業界は、成長を続け、新たなサービスとともに更なる発展を遂げていく業界です。その中で慢性的な人員不足でもあり、様々な場所、場面でWebディレクターは求められています。業界に携わる方はもちろん、フリーランスで活動をされる方も、様々なニーズがあり求められているからこそ、今後のキャリアについてあらゆる角度から考えていくことが大切だと感じたイベントでした。
ご参加いただいた全ての方がアンケートに答えていて、非常に満足度の高いイベントだったと実感しています。
今後も継続的にキャリアアップのきっかけをつかむ場を企画・提供していきたいと思います。