こんにちは。core words株式会社・CEO兼クリエイティブディレクター、佐藤タカトシと申します。大手情報会社系列の制作会社にて、クリエイティブディレクターとして、100社以上の採用広報のサポートを行い、ディー・エヌ・エー(DeNA)にて、3年間、主としてデザイナーの方の採用に携わってきました。
さて、今回は、「これからのデザイナーのキャリア」の最終回になります。
ちなみに、前回の記事「これからのデザイナーの転職活動とは?」では、以下のことをお伝えいたしました。
企業の「ものづくりの哲学」は千差万別。その中で、自分によりフィットする場を見つけるためには、特に以下の3点が大切だとお伝えいたしました。
(1)まずは、自分自身の「軸」を決める
(2)企業の「生」に触れる
(2)自分の作品を多くの企業に見せる
そこで、最終回では、「企業側が採用したがる、これからのデザイナー像」の話をさせていただきます。ご自身の志向がある一方で、「こういったデザイナーが欲しい」という、企業側のデザイナーに対する志向も存在します。一概に言い切ることは難しいですが、ここでは全体的な最近の傾向をお話しさせてください。仮に転職活動を行うとしたら、動き出す前に知っておけば、面接での話もしやすくなるかと思います。
以下の3点を挙げさせていただきます。
(1)クオリティと同等にスピードをできる人
(2)自分のこだわりよりもユーザーの声を聞ける人
(3)哲学やストーリーを込められる人
まず(1)なのですが、「クオリティとスピードの双方を重視するべき」ということではありません。「スピードがクオリティをつくる」ということを意味します。特に、アプリ開発の世界では顕著なのですが、できる限り速くカタチにして、顧客やユーザーに審判をあおぎつつ、スピーディに改善していく、という流れが主流になってきています。企業側としては、クオリティの高いプロダクトを安定的につくれるので、このような動き方ができるデザイナーを重宝する傾向が強いです。「プロトタイピング」という考え方が浸透してきている背景も同様だと思います。もちろん、じっくりつくって、じっくり世に問う、という手法はまだまだ健在ですが、全体としては、スピードが問われる方向に向いてきていると感じています。
次に、(2)の「自分のこだわりよりもユーザーの声を聞ける人」です。ユーザーの反応を見ながら、リリース後にプロダクトをいかに磨けるかが重要視されていることが背景にあります。「使い勝手が良い」ことに加え、「使い勝手が良くなった」「不満を解消してくれた」という印象が、長期的なファンを増やすためには、欠かせない時代です。よって、自分の感性だけに頼ってものづくりを行うことは、なかなか難しくなっています。ただし、感性やこだわりが生かせる、新たなシーンが出てきているのも事実です。多くのユーザーの声から本質的な要望を抽出したり、対応するものとしないものを柔軟に分けたりといった、「ユーザーの声との向き合い方」において、新しいクリエイティビティが発揮できるようになってきていると、私は感じています。
最後に、「(3)哲学やストーリーを込められる人」なのですが、社内でもそれを語れるデザイナーに良い仕事が集まるのと同時に、ユーザーからも求められるようになってきています。モノで選ばれる時代から、クリエイターで選ばれる時代へ。プロダクトに加えて、そこに込められた制作者の想いや完成までのストーリーが共感の接点になる時代に変わってきている。よって、企業のトップクラスのデザイナーは、メディアのインタビュー対応や勉強会での登壇など、対外的な活動を期待されるようになってきています。手がけたモノに込めたストーリーとデザイン哲学を、自らの言葉で重みを持って語ることができるか。その言葉が、手がけたプロダクトのユーザー獲得に繋がることはもちろん、所属している企業、そしてデザイナー個人へのファンを生み出すことにもつながります。プロダクト、企業、自分自身の三者の真ん中にあるのは、あなた自身のものづくりの哲学であり、生き方なのです。
■多くのクリエイターの想いや生き方に触れたい方は、こちらをご覧ください。
https://www.creativevillage.ne.jp/category/interview
以上です。一人でも多くのデザイナーの方が、よりよいキャリアに出会えることを切に願っています!
次回からは、ちょっと趣向を変えまして、各企業のデザイン責任者の方にインタビューさせていただき、「その企業独自のデザイン哲学」について書かせていただく予定です(変更の可能性あり)。引き続き、よろしくお願いいたします!