インターンで訪れたカンボジアで、サッカークラブの運営スタッフとして働きながら、チームの専属デザイナーとしてクラブの認知度に貢献した大貫 友也さん。
「デザインのデの字も知らない」ところから、クライアントワークも手がけるプロデザイナーとして活躍するまでの苦労や、現役大学生である現在、デザインの仕事とどう向き合っているのかを伺いました。
大貫 友也(おおぬき・ともや)
Webデザイナー/現役大学生
1997年生まれ。法政大学4年。2019年にカンボジアの日系サッカークラブ「アンコールタイガーFC」のインターンに参加。独学でデザインを学び、チームのPR用パンフレットや、デジタル媒体での販促物などを制作。
帰国後、鎌倉インテルFCなど、サッカークラブでデザイン制作に携わる。
画像の切り抜きだけで3日。デザイン未経験からのスタート
――カンボジアでのインターンは、どのような経緯で参加されたのですか?
大学三年生の夏、周囲の動きに合わせてなんとなく就活を始めたものの、インターン参加や面接をこなすにつれ、自分が本当は何をしたいのかがわからなくなりました。
そんな時、たまたま見ていたツイッターで見つけたのが、カンボジアの日系サッカークラブ「アンコールタイガーFC」のインターン募集。もともとサッカー観戦が好きだったこともあり、「好きなことに一年間向き合ってみたら、将来へのヒントがつかめるかもしれない」と一念発起。大学を一年間休学し、インターンに参加しました。
――現地では、クラブのデザイナーとしても活躍されていました。もともと、デザインは学ばれていたのでしょうか?
それが、デザインにはもともと興味はあったのですが、大学での専攻は国際政治。これまでデザインを学んだ経験もなく、デザインの“デ”の字も知らないど素人だったんです。
はじめてデザインしたのは、サポーターへの配布物だったのですが、「画像編集にはフォトショップというソフトを使う」ということから学ぶレベル。
時代遅れのノートパソコンにむりやりソフトを入れたはいいものの、はじめは選手の写真を切り抜くだけで3日かかり、泣きながら作業しました(笑)
とにかく、ソフトの使い方にはじまり、仕事の手順や提案方法、デザインに関する情報収集方法にいたるまで、すべてが手探り状態。デザイン作業にたどり着くまでのハードルが山積みでしたね。
自らの興味にとことん向き合えた、カンボジアでの経験
――実際の制作物はデザイン初心者だと感じさせないクオリティですが、どのようにスキルアップしてこられたのでしょうか?
「絶対に投げ出さない!」と自分に言い聞かせ、経験しながらひとつひとつスキルを身につけていきました。
仕事をしていくうちに、「この仕事にはこんなスキルが必要だな」とわかるようになっていったので、YouTubeでソフトの使い方を学んだり、ピンタレストで参考になりそうなデザインを見て引き出しを増やしましたね。
一歩ずつ、着実にデザインスキルを高めていくことで、最終的には日本のサッカークラブからグラフィックデザインのお仕事をいただけるまでになりました。僕は日本でのインターンも経験していますが、日本の場合は役職や役割が固定されていて、ひとつの仕事を追求するイメージがありました。
しかし、カンボジアでは、「運営スタッフ」という役割にとらわれず、自分の興味のあることを1から10まで任せてもらえた。だからこそ、デザインの仕事にも手探りながら向き合うことができたんです。当地での経験は、自分の壁を壊して、興味のあることに1から粘り強く向き合うことの大切さを学びました。
――「アンコールタイガーFC」のデザイナーとして、特にこだわった部分や苦労したことがあれば教えてください。
「選手の魅力をどのようにみせるか」という部分には、自分なりのこだわりがありました。具体的には、かっこよくてわかりやすいデザインを意識していましたね。
カンボジアでは、国内のサッカークラブの認知度が低い。少しでもチームの名前や選手の顔が国内に浸透するように、「スマートフォン用の壁紙を作りたい」と提案することもありました。
苦労したのは、異文化でのデリケートな感覚の違い。ある時、クールな表現がしたくて選手の写真をモノクロにしてみたら「遺影を連想させる」とボツになったんです。デザインは、その国の文化と密接に関係していて、万国共通ではないということを学びましたね。
「デザイナーとしての自分を高め続けたい」
――現在は大学に戻り、就職活動をされているそうですが、今後デザインとはどのように関わっていきたいとお考えですか?
インターンでの経験を経て、それまでぼんやりと憧れていたデザイナーという仕事が具体的にイメージできました。今は、本格的にデザインの道に進むか、この経験を生かせる道に就職するかをじっくり考えているところです。
ただ、デザインが好きだという思いは自分の中ではっきりしたので、今後も何らかの形でデザインには関わり続けていきたいと思っています。
今は、「鎌倉インターナショナルFC」でインターンとしてデザインを担当しているのですが、このつながりを大切にし、デザイナーとしての自分を高めていきたいですね。
そのために、デザインの技術・知識・感性を広げるために専門書を読んだり、街に出て洋服や美術など、さまざまなデザインに触れることを大切にしています。
鎌倉インターナショナルFCについて
スポーツを通じて、世界で活躍できる人材を創出することをビジョンに掲げて活動する、鎌倉発のサッカークラブです。
公式サイト:https://kamakura-inter.com/
――C&Rアスリート・エージェンシーではこの夏、「鎌倉インターナショナルFC」とパートナーシップを締結しました。デザイナーの大貫さんから見て、「鎌倉インターナショナルFC」はどんなクラブですか?
「鎌倉インターナショナルFC」は、視覚的なかっこよさで日本のスポーツに新しい価値を与えようという、大変珍しい志を持ったサッカークラブです。
私が担当しているのは、クラブの公式SNSに掲載される試合情報やスタッフ募集、プレゼント企画等のグラフィック。来年は、大きなリブランディングがあり、より「見せ方」をアップデートしていくことになるので、クラブの目指すビジュアルのコンセプトを理解し、日々培ってきたスキルやアイデアを活かして、質の高いものを作りたいと考えています。
アスリート・エージェンシーについて
「アスリートの生涯価値の向上」と「クライアントの価値創造への貢献」をミッションとしています。
スポーツを通じて得てきた経験を指導者やコーチとして「教える」こと、様々な場で発信し「伝える」機会を創ることで「教育・人材育成」「地域活性」など社会とのつながりを実現していきます。
■主な3つのサービス
(1)カウンセリング・キャリアアドバイス
(2)ビジネスマナーやビジネススキル、一般常識、言語化力、発信力のトレーニング
(3)お仕事のご紹介
【担当窓口】
C&R社アスリート事業部
Email: athlete-info@hq.cri.co.jp
公式サイト:https://athlete-agency.jp/
取材・ライティング:原田 さつき/撮影:SYN.PRODUCT/編集:田中 祥子(CREATIVE VILLAGE編集部)