「オシャレ」「クリエイティブ」といったイメージから、学生時代、漠然とデザイナーという職種に憧れる方もいるでしょう。しかしながら、デザイナー系職種は、「Webデザイナー」「グラフィックデザイナー」「UI・UXデザイナー」「ファッションデザイナー」など多種多様なのが特徴です。職種の非常に幅が広いので、それぞれの特徴・本質をしっかりと理解したうえで、ご自身の領域を選ぶことが求められます。
本記事ではデザイナーへの就職や転職を目指す方に向けて、デザイナー系職種に就いている方の実情を紹介。働くうえでのポイントをくわしく解説します。
デザイナー系職種で年収満足・やや満足は40%
出典:クリエイターワークス研究所『クリエイターの仕事満足度調査②(年収)』
株式会社ユウクリの「クリエイターワークス研究所」は、2022年にデザイナー系職種に就する方を対象に「仕事満足度」の調査を実施。調査対象者は、合計411名のWeb/IT系のデジタル人材や各種グラフィック系クリエイター(Webデザイナー、グラフィックデザイナーなど)です。
調査ではそれぞれの年収に関しても行っており、正社員・契約社員では「年収300万円~400万円」および「年収400万円~500万円」の層が、派遣社員・パート・アルバイトでは「年収300万円~400万円」の層が多数を占めました。フリーランスでは「年収200万円~250万円」の層が最多ですが、「年収700万円以上」の方も存在するなど、仕事が充実している方と層でない方で二極化する傾向にあります。
出典:クリエイターワークス研究所『クリエイターの仕事満足度調査②(年収)』
なお、年収に満足しているデザイナー(年収について「満足」「やや満足」と回答した割合)は「40.1%」でした(正社員・契約社員では34.2%、派遣社員・パート・アルバイトでは57.1%、フリーランスでは46.6%)。「自分の能力を活かし、今よりも年収をアップさせたい」と考えるクリエイターが一定数存在するのが現実です。デザイナーを目指す方は、そうした実態を踏まえたうえで、自身の能力をどう活かすことでデザイナーとして大成できるのかを真剣に検討すべきかもしれません。
デザイナーの仕事とは?職種ごとの違いを紹介
デザイナーとは見た目の装飾に関わる仕事ではあるものの、本質的にアートとは異なります。未経験者の中には、その点の認識が不確かな方も少なくありません。デザインの最大の目的は、「ビジネス成果に導く設計を行うこと」です。意匠性に加えて機能性に気を配るべき職種と言えるでしょう。また、一口にデザイナーと言っても、Webデザイナー、グラフィックデザイナー、UI・UXデザイナーらそれぞれの役割は異なります。
そもそものデザイナーの職種について
デザイン関連の仕事をする職業には「デザイナー」という肩書きが付くのが一般的ですが、デザイナー以外にも「アートディレクター」「CGクリエイター」などさまざまな仕事があります。デザインの仕事をする上でキャリアのベースとなることが多い「デザイナー」は、色や形・模様・フォント・レイアウトなどを工夫してモノを美しくしたり、親近感を醸成したり、機能的にするための仕事をします。
一見、プロダクトの外観や見た目を作り上げる仕事と捉える人が少なくありませんが、実際は視覚的な要素にとどまらず、製品の使いやすさなど、目的に応じた部分まで踏み込むのがデザイナーの仕事になります。
デザイナーとアーティストは似て非なるもの
デザイナーはセンスが問われるため、時にアーティストと混同されることもあります。しかし、アーティストはテーマに応じて自身が考えるクリエイティブを「表現」をする職種です。一方デザイナーはクライアントの意向を反映し、クリエイティブによって商品を売る・使いやすくする・分かりやすくする「目的」のために設計する、商業的な要素が大きい職種です。
たとえ素晴らしいビジュアルを制作したとしても、それが人に受け入れられず目的が達成できる設計でなければ、デザイナーとしての評価は下がります。デザイナーの仕事は、自分がデザインしたものが他人に受け入れられて評価される=対価を得る必要がある事に加え、クライアントの問題解決の責任も担います。この点が自身の表現を軸にしたアーティストにはない要素になります。
理解しておきたいWeb、グラフィック、UI・UXデザイナーの違い
有形無形を問わずこの世に存在する「モノ」にはデザインが施されています。ホームページなどをデザインする仕事には「Webデザイナー」の職種が関わり、広告や出版物のデザインには「グラフィックデザイナー」、ユーザビリティやユーザー体験の設計に特化した「UI・UXデザイナー」などが各方面で活躍しています。そうした、デザイナーの種類をきちんと把握したうえで、ご自身の「デザイナー特性」を見極めることが大切です。
Webデザイナーとは
Webデザイナーとは、Webサイトなどのビジュアルやビジネス設計を行う職種です。ビジネス成果への意識が重要視されるため、デザイン力に加えて、企画力やコーディングのスキルも求められます。
「コンセプトに沿いつつ、使いやすくて見やすいWebサイト」を制作するために、クライアントに対して「こんな機能を実装しましょう」「このデザインのほうがユーザーの目に留まりやすいと思います」など提案する能力も必須です。なお、Webの変化のスピードが速いので、常に新しい情報をキャッチアップする必要もあります。
グラフィックデザイナーとは
グラフィックデザイナーとは、主に印刷物(映画のポスターや、各種商品のパッケージ・ロゴなど)のデザインの企画・制作を行う職種です。広告代理店などから依頼を受けるケースが多く、コンセプトやクライアントの意図・要望を踏まえながら、魅力的なデザインを完成させるスキルが求められます。
企業に所属して経験を積み、実力を身に付けたら、フリーランスとして独立したり、アートディレクターなどにキャリアアップしたりすることも可能です。
UI・UXデザイナーとは
UI/UXデザイナーとは「ユーザーにとって使いやすく、スムーズにサービスを利用できるWebサイト」を構築するために、UI(User Interface、ユーザーインターフェース)やUX(User Experience、ユーザーエクスペリエンス)を意識した設計を行う職種です。
なお、UI/UXという言葉に馴染みがない方は、WebサイトにおけるUIとは大まかに「レイアウト」などを指し、UXとは「UIを通じて得られる体験」(「楽しい」と感じることなど)を意味すると覚えましょう。そのうえで、ユーザー視点を追求したいと考える場合は、UI/UXデザイナーに関する探究を深めてみてもいいかもしれません。
デザイナーは「美的好奇心」と「ビジネス感」が重要
デザイナーはビジュアルをキレイに制作する「美的好奇心」だけでなく、顧客のビジネス面をサポート「ビジネス感」も重要となります。感覚的な美意識はもちろんのこと、顧客ビジネスを理解したり、ロジカルに物事を考えたりする思考力も欠かせません。顧客ビジネスを成果に導く設計をするのがデザイナーなだけに、どのデザイナー系職種になるにしても、そうした根幹部分を押さえる必要があります。
デザイナーは意匠性に加え、「設計力」が重要
【デザイナー 仕事の種類のまとめ】
- デザイナー系職種は年収に満足している人は少ない
- デザイナーも分野や職種ごとに仕事内容は異なる
- 顧客ビジネスを成果に導く設計をするのがデザイナー
「デザイン」という英単語は、日本語では「設計」と訳されます。デザイナーには、美的センスだけではなく、論理性・客観性こそが重要な職種です。「ビジネスをどのように設計するか」「顧客のビジネス面をどのようにサポートするか」という点を意識しながら業務を遂行することが求められます。
ビジュアルをキレイに制作する能力に加えて「ビジネスを創る」という観点も有しているデザイナーは、成功しやすく、高収入を得やすい傾向があります。どの領域に進むにせよ、自己満足のためのアート作品の制作ではなく、「クライアントの意図を実現する仕事」であると心得ておきましょう。