Webサイトのデザインを担うWebデザイナー。興味はあるものの、美大やデザイン系の学校を出ていないため、Webデザイナーになるのは難しいと考える方は少なくないかもしれません。
結論から伝えると、文系出身で、さらにデザイン未経験であっても、Webデザイナーになることは可能です。この記事では、デザインの経験がない文系出身の方でもWebデザイナーになれる理由や、Webデザイナーに求められるスキルを解説します。
Webデザイナーの収入や将来性も合わせて紹介しますので、Webデザインに興味がある方は、ぜひ参考にしてみて下さい。
文系大学出身のWebデザイナーは多い
Webデザイナーは、デザイン系の仕事であることから、美術大学、またはデザイン系の学校を卒業していることが条件だと思うかもしれません。また、Webサイトを取り扱うIT関連の職業のため、文系の人には向いていないというイメージをお持ちの方も多そうです。
しかし、学生時代は文系の学部を専攻していたというWebデザイナーは少なくありません。異業種から転職したWebデザイナーも多いと言われています。
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学生の頃にデザインやITについて学んでいなくても、社会に出てからWebデザインに関する知識やスキルを身に着ければ、可能性は十分にあります。
法学部→カンボジアにてWebデザイナーになった大貫さん
法学部の学生だった大貫さんは、大学3年生のときに、大学を休学してカンボジアの日系サッカークラブ「アンコールタイガーFC」のインターンに参加。サポーターへの配布物のデザインを担当しましたが、画像編集ではどのソフトを使うのかも知らなかったのだとか。
デザインをしながら、コツコツとスキルを積み重ねた、叩き上げのWebデザイナーさんです。
異業種を経てスクールに通いデザイナーになった林さん
アパレル販売をしていたときにWebデザイナーに興味を持ったという林さん。
学生時代は社会問題や国際ボランティアについて学んでいたそうです。
半年ほどスクールに通い、デザインツールの使い方やプログラミング言語を学んだ後、Webデザインの仕事に携わります。最初は、Webサイトの運用が中心だったため、成長が見えず、Web制作会社に転職。デザインを手掛けるようになりました。その後、さらなるステップアップのため、現職の企業内でデザインを担当するインハウスデザイナーに。
スクールに通った後、どのようにキャリア展開しようか考えている方の参考になりそうです。
Webデザイナーの必須知識とスキル2つ
Webデザイナーになるためには、何を学べば良いのでしょうか。まずは、Webデザイナーになるなら、必ず身に着けておくべき知識とスキルを4つ見てみましょう。
デザインに関する必須知識
Webサイトにおけるデザインの目的は、Webサイトを見やすくしユーザーに届けたい情報を伝わりやすくすること。ユーザーに伝えたい情報を整理してデザインに反映させ、見やすいWebサイトを作るには、デザインの知識が不可欠です。
例えば、次に紹介するのは基本的なデザインの知識です。
デザインの4大原則
Webデザイナーなら、誰もが知っている知識です。この原則に則ってデザインをすると、視覚的に理解しやすくなります。
- 1.近接:関係する要素を持つ文字や画像を近づけて配置すること
- 2.整列:見やすくするために、テキストや画像などの位置を揃えること
- 3.強弱:色を付けたり、大きく表示させたりして、特定の要素を目立たせる。または、差別化する
- 4.反復:一貫性を出すために、一つのデザインの中に同じ要素を繰り返して使用する
(参考:デザインの現場で絶対に必要になる基礎知識7選 | DevelopersIO)
視線誘導
視線誘導とは、Webサイトに訪れたユーザーの視線の流れを意図的にコントロールするものです。
人は、視線を動かすときに、無意識に動かすパターンがあると言われており、そのパターンを踏まえてテキストや画像などを配置することで、重要な情報をユーザーに伝えやすくなります。
(参考:デザイナーなら知っておきたい「視線誘導」について|SPC)
情報収集スキル
デザインのトレンドを追ってキャッチするスキルも必要です。なぜなら、人々に求められるデザインは時代によって変化し続けるため。ユーザーに「デザインが古臭い」と感じさせてしまうと、自社に良いイメージを持ってもらえないかもしれません。
さらに、制作するWebサイトのターゲット層に訴求できるようなデザインをすることも大切です。そのためには、ターゲット層の嗜好や心理などを把握し、デザインに反映させなければなりません。それゆえ、最新の情報をキャッチするスキルも重要と言えるでしょう。
デザインツールを操作するスキル
デザイン系大学や専門学校出身なら、学生時代からデザインツールを使っていたという方がほとんどでしょう。
しかし、文系でデザインツールを触ったことがなくても、ツールを使いこなしてデザインできるスキルを身につけることは必須です。
用いるツールは制作会社によって異なりますが、多くの場合は、用途に応じて以下のツールを使ってWebサイトをデザインします。
- Photoshop:画像の加工や編集をするときに使われる
- Illustrator:ロゴやバナーなどの作成をする
- Figma:ブラウザ上でWebサイトの画面をデザインするツール
- Sketch:Figmaと同じ目的で使われるが、ソフトウェアをダウンロードして使用するタイプ
まずは、PhotoshopとIllustratorを使いこなせるようになることを優先すると良いでしょう。なぜなら、デザイン業務が未経験でも比較的取り組みやすい画像加工・編集、ロゴ・バナー作成などは、これら2つのツールを使用するためです。
また、Webデザイナーの求人では、PhotoshopとIllustratorを使えることが必須条件であることがほとんどです。
PhotoshopとIllustratorが使いこなせるようになったら、FigmaまたはSketchの使い方を学ぶと良いでしょう。
Webデザイナーになるためにあると良いスキル3つ
次に紹介するのは必須スキルではありませんが、身に着けておくとスムーズに仕事ができ、重宝がられるでしょう。
コーディング・プログラミングのスキル
近年、StudioやWixなどのWebサイト作成ツールを用いれば、HTMLやCSSなどのWebサイトを作るためのプログラミング言語を使わずとも、Webサイトを作れるようになりました。
しかし、言語を使わずにWebサイトを作るノーコードツールは、自由度や拡張性が高くありません。そのため、ノーコードツールを使う案件は少なく、プログラミング言語などに精通している人物をアサインすることになります。
プログラミング言語を使ってコードを書くコーディングのスキルを保有しているWebデザイナーは、活躍の幅が広がるでしょう。
Webマーケティングに関するスキル
Webサイトには、集客や商品の購入、ブランドイメージ向上などの目的があります。これらの目的を達成できるようなWebサイトをデザインするためには、以下のような、Webマーケティングに関する知識があると有利です。
- Webサイト解析:Webサイトの課題を見つけ改善する施策。
- LPO(ランディングページ最適化):ユーザーがWeb広告などをクリックしたときに表示されるLP(ランディングページ)をユーザーのニーズに合わせて最適化し、ページの成約率を上げる手法
- SEO対策(検索エンジン最適化):ユーザーがあるキーワードで検索したときに、自社のWebサイトを検索結果ページの上位に表示させる手法
- ABテスト:WebページやWeb広告、LPなどの要素が異なる複数のパターンを用意して比較し、最も効果が高いパターンを見つける為のテスト
Webサイトは一度制作すれば終了、というわけではありません。Webサイトの流入数や問い合わせや資料請求、申し込みなどのコンバージョン率(成約率)が思うように伸びない場合は改善が必要です。
改善が必要になったときには、課題を見つけてデザインに反映しなければなりません。そのようなときには、Webマーケティングの知識が役立つでしょう。
コミュニケーションスキル
Webサイト制作に関わるさまざまな人とスムーズに意思疎通できるよう、コミュニケーションスキルを高めることもおすすめです。
Webサイト制作はデザイナー一人で行うのではなく、PM(プロジェクトマネージャー)やエンジニアなどさまざまな人と協力して進めることがほとんど。コミュニケーションスキルが高いに越したことはありません。
また、クライアントとのコミュニケーションを通じて、要望を正しく読み取ることも重要。意図が正確に伝わらないと、何度も手直しが発生する可能性がある上、出来上がったものがクライアントの要望通りではないかもしれません。
企画段階からプロジェクトに参加する場合は、プレゼンを任されることもあるでしょう。相手の話から要望を引き出す能力だけでなく、意図が伝わりやすい話し方や、人前で話すときの立ち振る舞いなどのスキルは、現場で役立ちます。
Webデザイナーになるための方法2つ
Webデザイナーになるには、新卒でWebデザイナーとしての採用を目指す方法があります。しかし、情報系・工業系、または美術・芸術系の大学で、情報学やWebコンテンツ制作、デザインなどを学んでいないと、採用されるのは難しいかもしれません。
文系出身者がWebデザイナーになるには、スクールで学ぶ、または独学で学んだ後に、Webデザイナーの求人にエントリーする方法があります。
次からは、スクールで学ぶ方法と独学のデメリットとメリットを紹介します。
専門のスクールで学ぶ
Webデザインを学べるスクールで知識やスキルを身に着けてから、Webデザイナー職にエントリーする方法です。
スクールは、通学制とオンラインなどの通信制があり、自分のライフスタイルに合ったスタイルを選ぶと良いでしょう。
メリット
デザインの知識を学べるだけでなく、実際の仕事で使えるスキルや現場でのマインドも身に着けられることが最大のメリットでしょう。スクールによっては、学びながら実務制作に携われます。
学校ごとに独自のカリキュラムがあるので、短期間でスキルが身に付きやすいのも特長です。
また、一緒に学ぶ仲間がいることや、お金を払ったから元を取りたいという理由などで、モチベーションが続きやすいでしょう。
デメリット
スクールの最大のデメリットは、お金がかかること。受講スタイルやカリキュラムの量などによって料金は異なりますが、一般的な料金相場は20万円~50万円ほどです。
また、授業に参加するために、ある程度時間を捻出しなければなりません。働きながらスクールで学ぶ場合は、タイムマネジメントをしながら学ぶことになるでしょう。
独学で知識を身に着ける
もう一つの方法は、スクールに通わず自分自身でデザインを勉強する独学です。独学だと、正しい知識が身につくか不安という方もいらっしゃるかもしれません。
しかし、独学でデザインを学んでWebデザイナーになったという人は、多いと言われています。
Web制作が学べるYouTube動画や学習サイト、書籍などで知識を学びながら、実際に自分のWebサイトを作ってみると良いでしょう。実績を積むために、安い料金で友人や知人のWebサイト制作をさせてもらうという人も多いです。
独学である程度スキルが身についたら、Webデザインのアルバイトをして経験を積むのもおすすめです。
メリット
独学のメリットは、何と言っても、仕事などの合間に勉強するなど自分のスケジュールに合わせて学習できることです。また、費用を抑えられることもメリット。
仕事をしながら、Webデザインの勉強をして転職を目指すという人にはおすすめの学習方法です。
デメリット
人によっては、モチベーションを維持できず三日坊主になってしまう可能性があります。また、デザインを学ぶ資料や実践する場を自ら探さなければなりません。
コラム:Webデザイナーに有利な試験・資格
Webデザイナーになるのに、資格は必要ありません。
しかし、実務経験が乏しい場合は、Webデザイナー職にエントリーするときに提出するポートフォリオに掲載するものがなく、自分のスキルを証明するのが難しいでしょう。
そこで、資格を取得したり、試験を受けたりして、自分の実力をアピールするのも有効な方法です。
Webデザイン技能検定
デザインやシステム構築など、Webデザイナーなら身に着けておきたい知識や実務能力などを問う試験です。スキルに応じて3級から1級まであり、2級及び1級を受験するには、Webデザインの実務経験、または教育機関で学んだ実績が必要。まずは3級に挑戦しましょう。
(参考:Webデザイン技能検定)
Webデザイナー検定
Webサイト制作の一連の流れや、基本的な知識に関する資格試験です。Webサイトに関する基礎的な知識や能力を問うベーシックと、専門的な知識が求められるエキスパートの2種類があります。
(参考:Webデザイナー検定|CG-ARTS検定)
HTML5プロフェッショナル認定
プログラミングなどのスキルをアピールするなら、こちらがおすすめです。HTML5(HTML Standard、CSSなどのWeb技術)などの実践的な知識や技術を認定する資格です。
HTML5を使用してWebコンテンツの設計・制作できる力などが求められるレベル1と、Webコンテンツの開発や設計の能力を問われるレベル2があります。
(参考:HTML5プロフェッショナル認定とは|HTML5プロフェッショナル認定試験)
Webデザイナーの将来性とは
「Webデザイナー」と検索すると、検索エンジンの推測ワードに「やめとけ」と表示されることがあります。そのため、Webデザイナーを目指すのを躊躇してしまうかもしれません。
しかし、実際のところ、Webデザイナーは「やめとけ」と言われてしまうような職業なのでしょうか。Webデザイナーの収入や将来性を見れば、決してそうではないことがわかります。
今後Webデザインの仕事はある?
近年、以下の理由から、Webデザイナーの仕事がなくなるのではないかと言われています。
SNSの普及
自社のWebサイトを持たず、SNSだけで情報発信やユーザーとのコミュニケーションを図る事業者が増えてきました。また、店舗などの予約は予約サイトを利用するため、お店のWebサイトを持たないという事業者も少なくありません。
容易に扱えるWebサイト作成ツールの登場
Webデザインの知識がなくとも、「Wix」や「Studio」などのWebサイト作成ツールを使えば、比較的容易にWebサイトを制作できるようになりました。Webサイトをデザイナーに依頼せず、自作する人が増えています。
WebデザインができるAI
近年、素材をアップするだけだったり、いくつかの質問に答えるだけだったりというプロセスのみで、AI(人工知能技術)が自動的にWebデザインを作るサービスが登場しました。
Webサイトの作成はAIによってさらに簡単になり、「今すぐ自社のWebサイトが必要」「とにかく低予算で作成できるホームページが欲しい」などのニーズに応えられるようになっています。
とはいえ、今後もWebデザインの需要がゼロになるわけではありません。なぜなら、簡単に扱えるWebデザインツールを用いたWebサイトは、デザインの自由度の低さから、似たような見た目のWebサイトになってしまうからです。
オリジナリティのある、他のWebサイトと差別化するようなWebサイトを持ちたい事業者なら、Webデザインを制作会社に依頼するでしょう。
Webデザインの案件が減少傾向にある中、他のデザイナーと差別化できるスキルを保有しているか否かが重要なポイントです。
Webデザイナーの収入は低め?
Webデザイナーの収入は全職種の平均年収に比べて低いと言われています。
2022年の転職サイトdodaによると、全職種の平均年収は約400万円であるのに対し、Webデザイナーは360万円ほどです。
しかし、Webデザイナー職の年収は低いとは言い切れません。なぜなら、平均より年収が低いのは、Webデザイナーは20~30代の若い世代が多いからです。
どの職種であっても、若い世代は上の世代と比べて、収入は低くなりがちです。経験を積み、高いスキルや専門性を身に付ければ、収入を上げることは可能です。
そのためにはWebデザイナーになった後も継続的にスキルをブラッシュアップしていくことが重要です。勤務している会社の人材教育環境が整っているなら、それを利用するのも手。
たとえば株式会社ミクシィには、希望を出せば社内異動が可能な「ミクシィ・キャリア・チャレンジ」という制度があります。制度を活用してスキルアップを図る2名のデザイナーのお話から、Webデザイナーになった後の展望を考えてみるのもよいでしょう。
社内育成制度を活用した遠藤さん・小林さん
年収アップは狙える?
Webデザインの豊富な経験と幅広い知識を身に付ければ、収入アップは十分狙えるでしょう。
まず、Webデザイナーで経験を積み、アートディレクターやクリエイティブディレクターに転身するのもおすすめです。
マーケティングやデータ分析などの知識を身に着け、CDO(チーフデジタルオフィサー)やCXO(チーフ・エクスペリエンス・オフィサー)などの最高責任者のポジションにつけば、年収1,000万円台も夢ではありません。また、営業力や人脈、セルフマネジメント能力があるなら、フリーランスとして独立するのも手です。
幅広い知識と高いスキルを持つ専門性の高いWebデザイナーほど、チャンスを手にする機会が多くなるでしょう。
文系が生き残るWebデザイナーになるには
Webデザインは仕事をしながらでも学べ、スキルアップを図れば、活躍できるWebデザイナーになれます。幅広い知識やスキルを見つけて、対応可能な範囲を広げれば、収入アップも可能です。また、コミュニケーション能力など、社会人として経験を積んで身に着けたビジネススキルも役立つでしょう。
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イベントレポート:未経験からWebデザイナーになるには
design fleet inc. 代表取締役 内田 祐生氏が、Webデザイナーになるために必要なことや、プロのWebデザイナーのマインドやスキル、Webデザイナーとして仕事の幅を広げる方法などを解説します。
Webデザイナーになるだけでなく、デザイナーになった後のビジョンも描きながら、たくさんのチャレンジをしてみてください。