人を動かすクリエイティブや、未来につながるプロジェクトを生み出すデジタル・クリエイティブ・プロダクション『SONICJAM(ソニックジャム)』。
デジタルコミュニケーションの戦略立案からインスタレーションデバイス開発、Webサイトの企画・制作、映像・モーショングラフィックス制作まで、またUX/UIの設計やiPhone/Androidのアプリケーション開発などを手がけるソニックジャムの代表取締役/クリエイティブ・ディレクターである村田 健さんに、あらゆるメディアの可能性やクリエイターに求められることなど、お話を伺いました。
■ モノづくりができるチームを作りたい
幼い頃に描いていた”将来の夢”というのが2つありました。ひとつは、部屋の片隅でよく分からない薬品を調合したりロボットを作っていたりしている、漫画やアニメに登場するような発明家になりたかったです。
もうひとつは、名探偵。江戸川乱歩の『少年探偵シリーズ』や、松田優作の『探偵物語』を観るのが好きで、難問を次々と解決していく勇姿に憧れましたね。
子どもの頃は、壊れたラジオを分解したりと、機械いじりが好きだったこともあって、工学部のある大学に進学し、コンピュータ関連のことを諸々勉強しました。卒業後、システムエンジニアとして科学技術系の仕事に就いた頃、ちょうどWindows 95が発売されインターネットが徐々に普及し始めたタイミングで、会社に「インターネット担当やりまーす」みたいに立候補してやらせてもらっていたので、自分で新しいことを調べたり学んだりするのが楽しかったです。
そのころ、友人が一足早くWeb制作の仕事をしていて、「手を貸してほしい」と言われたので、会社を辞めフリーランスとして手伝いつつ、別の会社の案件も請けていました。
数年は一人でいろいろとやってみたものの、「Webはひとりで完結する仕事ではないなぁ」と感じたので、一緒に仕事をしていたデザイナーと会社にしようという話になりました。だから、起業したというよりも、“モノづくりをするチームを作りたい”という思いの延長線上で、今に至ります。
昔から音楽が好きで、当初はロックに始まり、今ではジャズからクラシックまで何でも聴きます。細々とではありますがバンドも続けていて、仕事でも曲を制作したり、サイトや映像に音をつけたりしています。そこで、「ジャムセッションのような感じで、みんなと一緒になってモノづくりをしたい」という意向から、社名を『ソニックジャム』にしました。
これまでに携わったプロジェクトの中で特に印象に残っているのは、NTTドコモの仕事で、『ひとりと、ひとつ。walk with you』というスローガンのプロモーションページを制作したのですが、動画の撮影でまさか自分が、世界の渡辺謙さんをディレクションする日が来るなんて、そのときはビビって必死でしたが今ではいい思い出ですね(笑)。
あとは、現在の時刻とダンスをする女性の動画が交互に繰り返されるプロモーションサイト『UNIQLOCK』に参加できたこと。すごく勉強になりましたし、その後の企画や表現の考え方にすごく影響を受けたと思います。
■ メディアの力を存分に発揮できる時代になった
音って原始的であると同時に、五感にダイレクトに入ってくるメディアだと思うんです。音を含んだ映像といえば、今から15年以上も前の2000年当初は、現在のようにデジタル化して手軽に使うことができるメディアではなかったんですよ。PCのメモリやハードディスクの容量も低いというスペック的な問題に加えて、インターネットの回線も遅く、動画が途中で何度も止まってしまったり。
それが、年を追うごとにブロードバンドが普及していって、映像コンテンツが持つ力を存分に発揮できる時代になった。音や動きがあることで、静的なWebページに比べ、よりユーザーに伝わり易いコンテンツを作ることができる。
ハードとソフトがうまく噛み合ないと文化も変わらないので、歴史の流れによって、あらゆるメディアの敷居が下がり、表現の幅や選択肢が一気に広がったんですよね。
これからWebや映像を使う方からすれば、当たり前の環境で何の有り難みも感じないかもしれませんが、昔はそう簡単には形にできなかったので、AdobeのFlashを駆使して動かすしか手段がなくて。だから当時は、「映像じゃないのに動かせるなんて、すごいっ!」と感動したものです(笑)。
映像が織り込まれたWebが一般的になり、今となってはSNSも単なるインフラのひとつにしか過ぎません。例えばFacebookひとつを挙げてみても、情報収集だけでなく電話やメールアドレスに近い役割を担っていて、繋がっている人と素早く連絡が取れる、もはやコミュニケーション手段の一部と化しています。
そんなSNSを使ってプロモーションもする訳ですが、肝心なことは、Webであれ映像であれ、それぞれのプラットフォーム上で、どれだけおもしろいコンテンツを企てられるかにかかっていると思うんです。
実は、“Web”という言葉自体もあまり使わないようにしているんですよ。 “Web制作会社”という肩書きはもう捨てていて(笑)。Webをひとつの手段としては当然使いますが、そこで何を展開するかが重要なので、映像だったりイベントの演出だったり、いろんな技術を駆使することで、ユーザーにいろんな体験をしてもらいたいですね。
それがひとつの新しいサービスに発展するかもしれないし、新しいビジネスやエンターテインメントに繋がっていくようなプロジェクトを自分たちで企画してどんどん立ち上げていきたいです。
■ 線引きをせずに趣味を仕事に活かす
メディアを通してコンテンツを見せるからには、世の中の人に驚いたり喜んだりしてもらいたい。そのためには、遊び心を忘れることなく「できる限りふざけよう」というスタンスで、割とまじめに“遊び”を考えているというか、ある意味逆に真面目な性格(笑)。はみ出てしまうような部分を、いかに巧くコンテンツに盛り込めるか。仕掛けを考えることは楽しいし、そういった企みを大切にしていますね。
ただ理屈や法則だけで仕事を進めていくと、まぁまぁの結果は出るかもしれませんが、それだとあまり楽しくないですよね。
社内でのブレストはよくしています。でも、会議室や机でうんうん唸っているばかりでは毎回いいアイデアも浮かばないので、たまには街をブラブラ歩いていろいろなものを見てまわったりと、外から受けるいろいろな刺激を求めることを、常に意識しています。
今となっては、趣味と仕事の区別があまり無くなってきていて、昔からやっている音楽を「趣味なのか、仕事なのか」と聞かれることがよくありますが、自分の中では特に意識もしていなければ、区別もしていなくて。
お金になれば仕事として成立する、ということでもないと思うんですよ。たとえ趣味でバンドをやっていたとしても、仕事と同じスタンスで取り組んでいれば、音楽のクオリティが落ちる訳ではないし、無理に線引きすることで選択肢も狭まってしまう気がします。
なかには「趣味と仕事は別」という方もいますが、仕事に取り組む上でも、趣味を含めた自分自身というものがあらわになるので、趣味は仕事に活かした方がいい。特にクリエイティブな仕事においては、そういった柔軟さが必要になってくると思います。
■ ひとつのことを極めることで、他のことにも応用できる
クリエイティブな仕事において大切なことは、時代や技術を気にすることなく、自分が本当に好きなものは何か。そういうものを掘り下げて、どれだけ深く追求できるかどうかだと思います。
そして、若いうちは物事を広く浅く知っているよりも、ひとつのことを深く知っている方が、後々になって役に立つような気がしますね。やっぱり深く知らないと判らないことって必ずあって、ひとつのことを極めることで、他のことにも応用ができる。
映画でも音楽でも何でもいいので、「映画のことだけは、誰にも負けない!」というくらいの自信を持っていれば、他のジャンルに対する感性も自然と養われていくものです。一般的な知識や経験というのは、後からいくらでも習得できるので、若くて時間があるときは、できるだけ好きなものにのめり込んだ方がいいかもしれませんね。
クリエイターというのは、いかに人を喜ばせられるものをアウトプットできるかが勝負になってくるので、自分を表現することについては、アートの域で思う存分やればいい。肝心なことは、人の反応を常に見て考えることです。
人を喜ばせたり驚かせたりすることに対して、どれだけ注力することができるか。また、情報にも流されすぎず、その中で、「これは面白い」と感じ取れるかどうか。そして、最終的には「あきらめない」こと。もっと面白いものができるはずだと強い信念を抱き続けることが大切だと思います。
世界を変えるようなすごいものじゃなくても、「おもしろい」や「へー」や「くすくす」のためのちょっとした小さなINNOVATIONが沢山あればきっともっと世界は楽しくなる。
SONICJAMはそんな小さなINNOVATIONのアイデアをデザインとデジタルの技術で形にするクリエイティブ・ファクトリーです。
SONICJAM TOKYO
http://www.sonicjam.co.jp/