分かりやすいレシピ動画が話題となり、リリースからわずか1年半という早さで日本最大級の規模へと成長した「kurashiru(クラシル)」。シンプルで見やすいデザインや、レシピ動画を見て実際に作った料理を投稿できる機能など、ユーザー目線で考えられたサービスへのこだわりが人気の理由です。

今回はクラシル開発部のUI・UXデザイナー三笠斉輝さんに、キャリアスタートまでの道のりやデザインで大事にしていることなどを伺いました。

三笠 斉輝(みかさ・としき)
dely株式会社 UI・UXデザイナー
同志社大学商学部卒業。在学中、スタートアップにてwebサービスの立ち上げを経験。その中でインターネットを通じたものづくりに強い興味を抱き、独学でUIデザインを学び始める。
delyに入社以来、クラシルの1人目のデザイナーとしてプロダクトのUIデザインを担当。
現在は主に、データ分析から施策考案、UI設計まで一貫したプロダクトデザインを担当している。

授業の履修選択がめんどくさかったことがキッカケで……

僕は現在「クラシル」の開発チーム内でUI・UXデザイナーという立ち位置で仕事をしていて、アプリのデータを分析した上で施策を考えたり、もちろんUIデザインをつくったりということも担当します。

とは言え、UI・UXデザイナーとしては入社と同時にキャリアがスタートしたのでまだ1年半程度で、大学時代も文系、プログラミングとは無縁の生活でした。元々はUIデザインに興味を持つ以前に“インターネットのサービスを作る”ということに興味を持ったのですが、理由は大学の授業の履修選択がめんどくさかったこと(笑)。いわゆる“楽単“という簡単に取れる科目を検索できたらいいのに……じゃあ自分で作っちゃおう、という感じでした。

そこからプログラミングを勉強して1週間くらいかけて楽単を検索できるサービスを作り、リリース。自分が所属する学部だけの科目を検索できるサービスだったんですが、実際100人くらいに使ってもらえたんですね。その体験が原点となり、インターネットのサービスをつくる面白さを実感しました。

さらに面白さをもっと味わいたいと思い大学を1年休学し、スタートアップの立ち上げに参加。その会社にはデザイナーがいなかったので、僕がフォトショやイラレを使って資料を作ることになり、企画職のようなポジションでも関わりながら現在の仕事へ繋がるキッカケにもなりました。

「デザインがサービスを差別化する時代になる」の言葉でUIデザイナーへ

就活の時期に入り、いろいろな企業の方からお話を聞くうちに、UIデザイナーへの興味が強くなってきて。ある方が「これからのインターネットサービスは、同じようなアイデアがたくさん出てくる。そのアイデアを実現した先の使い心地や普及力はデザインが決め手になり、デザインがサービスを差別化する時代になっていく」という話をしてくださったのがとても印象に残ったんです。

僕は元々サービスを作りたいと思っていたし、UI・UXのデザインがサービスをよりよくする上で大事なんだということが腑に落ち、改めて本格的にUIデザイナーを目指しました。そんなときにクラシルを運営している会社として知っていたdelyと出会い、是非ここで働きたいなと。

自分がどんなサービスをやりたいかと掘り下げたときに、人の生活に密着したものがやりたかったので単純にクラシルというサービスに興味があったし、レシピ動画の可能性も感じていて。クラシルはまさに自分のやりたいことと重なる部分が多かったんです。

念願叶って昨年の8月に入社し、UI・UXデザイナーとしてクラシルのアプリ立ち上げから参加しています。

「検索」だけじゃない、新しいレシピの探し方を提供したかった

クラシルアプリを立ち上げ時に注力したのは、ユーザーがいかに使いやすいかという基本的なデザインの磨き上げです。クラシルはレシピを動画で簡単に見られるサービスなので、例えばレシピを見るときに何も邪魔にならないようなデザインにしたり、レシピを簡単にお気に入り登録できたりというところですね。
ユーザーがレシピを探す・見る・台所で実際に作るという一通りの体験をする際に、探しやすい・見やすい・作りやすい方法を提供することを意識しました。

また、クラシルには「たべれぽ」という機能があって、ユーザーがレシピを見て実際に作った料理を写真に撮って投稿できるんですね。
レシピを検索する際に、もちろん食材や料理のジャンルからも検索できるけれど、たべれぽの投稿数が多いから絶対おいしいんだろうなと思って作ってくださるユーザーさんも多い。
なので、たべれぽをもっと見やすくしたいなということで以前からデザインも改善しています。
たべれぽを見るためだけの画面を新機能として追加したところ、たべれぽの投稿数がグッと上がったんです。
人が作ったたべれぽのおいしそうな写真から、その写真は何のレシピなのかという興味が湧いて、じゃあ私も作ってみようというところに繋がる。今までとは違うレシピの探し方を提供したくて作った機能が数値的にも良い結果が得られたので、僕としても新しい体験ができましたし、嬉しかったです。

定量データと実際のユーザーの声をかけ合わせて開発した「献立」機能が好評

また、特に反響が大きかったのは今年の9月頃にリリースした「献立」機能のコンテンツです。
今までは1品ごとのレシピ動画でしたが、同時に3品ぐらいの料理を実際の手順通りに全部見せています。3品作るために3回動画を見る必要がなくなって、1回見れば晩御飯が完成すると。

着想のキッカケは、ユーザーさんから「1品だけじゃなくて、同時に数品作る献立の動画が欲しい」と言われたことからでした。僕も含めユーザーには料理初心者の方も多いので、晩御飯のために3品作ろうと思っても、どれから作っていいか分からないんですよね。

で、クラシルの動画の良さのひとつに、動画のマネをすれば勝手に完成するくらいの簡単さがある。じゃあ、毎日の献立がクラシルを開けば一瞬で決まるっていう体験をしてもらうためにも是非やりましょうということで、献立機能用に10パターン以上画面を作ってみんなで話し合いました。
デザインについて、いつもの1品よりも情報量が多いので、それをキレイにどう見せたらいいかという点で時間はかかったものの、他のサイトではまだやっていないコンテンツですし、ニーズに沿った機能が作れたと思っています。

実際にユーザーの声を聞くということはすごく大事にしていて、1ヶ月半ごとくらいのペースでユーザーさんを会社にお招きして取材する機会を設けてるんですね。
アプリ内のシステムによる分析で、ユーザーさんがどのような行動を取ったかというのはある程度分かりますし、数字で読み解ける部分もあるんですが、その裏側にある思考というか“今なぜこの操作をしたのか”っていうのは数字じゃ分からない。

なので、それを直接聞けるのは貴重ですし、新しい機能のアイデアも頂けたりするので、システムで分かる定量的なデータと実際のユーザーの声、両方バランス良く取り入れています。
特にUI・UXデザインに関しては操作性に関わる部分も多いので、ユーザーが操作しているところを見ながら意見を聞くことも大事で。

これからもユーザーにもっと楽しんでクラシルを使ってもらえるようにすることがデザイナーとしての存在意義だと思うので、もっと良いデザインを追求していきたいですね。

文系でも、グラフィック力がなくても、デザイナーになれる

僕自身、就職前はデザイナーという職業自体にコンプレックスを感じていました。美大に通っている人くらいのグラフィック力がないとデザイナーにはなれなんじゃないか、とか。

でも、実際に働いてみて感じるのは、もちろんグラフィック力があるに越したことはないんですが、その力がなくてもデータ分析力や企画力があれば、人とは違う強みを持ったUIデザイナーになれるということ。
僕の場合は分析や企画が得意だからUIデザイナーをやっているし、それが強みでもあるという自負があります。
だから、今全くデザインに関わる勉強をしていないという人でも、インターネットのサービスを作りたいという思いや、分析・企画が好きであれば、UIデザイナーはやりがいを感じられるおもしろい仕事なんじゃないか、と思います。

(取材・ライティング:上野 真由香/編集:CREATIVE VILLAGE編集部/
撮影:TAKASHI KISHINAMI)


クラシル

クラシル は、専属料理人(クラシルシェフ)が考案した12,000件を超える簡単で美味しいレシピをお届けする、日本最大のレシピ動画サービスです。(※)
2016年5月にApp StoreとGoogle Playにて同時総合1位を獲得し、現在はApp Storeのレビュー平均5.0点(5点満点)と高評価を獲得しています。
(※)2017年8月23日時点 Appliv調べ 料理レシピ動画掲載アプリ内レシピ動画数
https://www.kurashiru.com/