近年、注目を集める職種の1つがUXデザイナーです。Webサイトやスマホアプリ、SaaSサービスなど、UXデザイナーの活躍する場が増えています。一方で「UXデザイナー なくなる」という検索母数は多く、他のDX人材に比べ必要性が認知されていないことも現状でしょう。しかし、顧客体験を最大化するためには、UXデザイナーの存在が不可欠です。
そこで今回は、未経験からUXデザイナーへの転身をめざす方に求められる「マーケティング思考」「デザイン思考」について解説します。Webデザイナーからの転身を検討している方にも必須の内容です。
そもそもUX(ユーザーエクスペリエンス)とは?
UXとは「User Experience:ユーザーエクスペリエンス」の略称で、製品やサービスを使用することで得られる体験を指します。 ただ単に使いやすい・わかりやすいだけではありません。ユーザーの行動を導き、ユーザーがやりたいことを「楽しく・心地よく」実現するためにサービスや製品を設計することをUXデザインと呼びます。
UXデザイナーの役割
UXデザインを専門に行うデザイナーを文字通り「UXデザイナー」と呼びます。
比較的新しい職種のため、UXデザイナーの仕事内容がどんなものか想像がつきにくいかもしれないので、業務内容の一例を以下にご紹介します。
【UXデザイナーの業務内容】
ユーザーインタビュー
SEO
ABテスト実施
マーケティング
情報設計
サイト解析
工数管理
「UXデザイナー」という言葉から、絵が描けないといけないのでは?デザインができないといけないのでは?と思われがちですが、実は違います。
業務内容の一例を見てもわかるように、マーケティングやアクセス解析、SEOなどサイトの情報設計の仕事が大半です。
売り上げ達成も含め、サービス全体の設計を通してより良いユーザー体験を実現するのがUXデザイナーの仕事です。したがって、たとえデザインの経験がなくても、UXデザイナーになるチャンスがあるとも言えます。
「UI・UXデザイナーが不足」の回答は約4割
出典:独立行政法人 情報処理推進機構(IPA)「DX白書2021」
IPA(情報処理推進機構)が発表した「DX白書2021」によると、デジタル事業に対応する人材は大きく7種類にわけられ、その1つがUI/UXデザイナーです。UI・UXデザイナーは、デジタル事業に関するシステムのユーザーインターフェース(UI)や、ユーザーエクスペリエンス(UX:ユーザー体験)の設計を担います。
出典:独立行政法人 情報処理推進機構(IPA)「DX白書2021」
デジタル事業に対応する人材の「量」の確保状況に目を向けてみると、日本と米国におけるUI・UXデザイナーが「不足している」と答えた割合は、それぞれ44.4%、36.8%でした。ただし日本においては「わからない」「自社には必要ない」と答えた企業が41.7%も存在したことから、UI/UXデザイナーに対する認知度はまだ低いことが垣間見えます。
米国においては20%の回答だったことから、日本と海外におけるUI・UXデザイナーの必要性の違いに、かなりの温度差があることが分かるでしょう。
少子高齢化で労働力不足である日本企業において、優秀なIT人材の確保は非常に困難な状況です。中でもUI・UXデザイナーは希少な人材と言えるため、多くの企業が獲得に苦慮しています。
UXデザイナーに求められる仕事内容とスキルとは?
UXデザイナーの主な業務内容
UXデザイナーの業務内容は多岐にわたります。たとえば、ユーザー体験を可視化する「カスタマージャーニーマップ」の作成をはじめ、ユーザー体験を市場調査する「UXリサーチ」や複数のUI・UXを比較検討する「ABテスト」、Webサイトの設計段階でUXを設計する「ワイヤーフレーム」の作成などが一般的な業務です。
ユーザー体験を最大化するためには、これらすべての業務をこなす必要があるため、UXデザイナーは多忙を極めるでしょう。
UXデザイナーで必要とされるスキル
UXデザイナーは顧客目線に立った思考が求められるため、マーケティングのスキルが必須です。また、カスタマージャーニーを最大化するUXの実現には、デザインのスキルだけでなく、UXデザイナー自身がSEOやコーディングといったWeb制作のスキルに精通しておく必要もあるでしょう。
求められるスキルは非常に多いですが、これらすべてを身につけておかなければ、UXデザイナーとして成功することは困難です。
UXデザイナーへの転職成功事例
«元SIer Kさんの場合»
プロジェクトマネージャーとしてキャリアを積んできたKさん。前職はシステム開発会社にて、SIerとしてシステム構築する際のコンサルティング業務や、スケジュール・プロジェクト管理を行っていました。
アプリやWebサービス全般に関わることで、本格的にUXのキャリアを構築することを目指し、大手事業会社へ転職を決意。SIerとしての分析能力、ユーザーの課題解決の能力を評価され、希望の会社へ転職することができました。
転職成功のポイント
Aさんはシステムインテグレーターとしてクライアントの問題解決、改善提案などの経験が買われ、UXデザイナーへの転職を実現しました。
«元コンサルタント Yさんの場合»
コンサルティング業界にて、マーケティング、サービスのグロースなど、課題の本質を見つけ解決していく経験を常日頃から行っていたYさん。
上流工程を担うUXの業務と合致する部分が多々あるため、UXデザイナーへの転職を実現しました。
転職成功のポイント
BさんのようにWeb業界とは直接関係がない職種の方も、分析や改善などの経験はサービス作りの上流工程とつながることが多いため、UXデザイナーへの転職において有利になります。
「マーケティング思考」と「デザイン思考」が武器に
「マーケティング思考」とは
マーケティング思考とは、簡単に説明すると顧客目線で施策を検討することです。顧客の立場に立って、どのような課題解決や価値の提供につなげるかについて思考します。
マーケティング思考は、UXデザイナーが自社の商品やサービスをユーザーがどのように活用するのか想像し、より使いやすいものにしていくために欠かせない考え方です。
「デザイン思考」とは
デザイン思考とは、デザイン制作で使われる考え方や手法を、ビジネスに活用し顧客や経営の課題解決につなげる考え方です。デザイン思考は、顧客すら気がついていない課題やニーズを発見し、イノベーションを起こすために活用されます。
デザイン思考はGAFA(Google、Amazon、Facebook、Apple)でも積極的に活用されており、我々の生活に多くのイノベーションを起こしたことは、周知の事実でしょう。
UXデザイナーの価値は今後さらに高まっていく
【UXデザイナー dx人材 不可欠のまとめ】
- 世間のUXデザイナーの価値への理解は乏しい
- ユーザー視点の徹底と多岐にわたる業務・スキルが必須
- UXデザイナーは市場把握とビジネス設計力が重要
日本企業におけるUXデザイナーの認知度は、まだ低い状況です。UXデザイナーは業界でも稀有な人材であり、多くの企業が獲得に苦慮しています。
UXデザイナーは徹底したユーザー視点を持つことが求められ、さまざまなフレームワークを活用して、ユーザー体験の最大化を実現することがミッションです。そのため、UI/UXデザイナーとして成功するためには「マーケティング思考」と「デザイン思考」が欠かせません。
日本企業でUXデザイナーを担う人材はまだ少ないため、今がチャンスとも言えるでしょう。本記事の内容を参考に、UXデザイナーの道をこころざしてみるのもよいかもしれません。