動画では音が重要な役割を果たしていることは言うまでもありません。声を含めた音は、視覚とともにユーザーの意識を動画に引き込むうえで重要な役割を果たします。しかし、音が重要だからといって、単に人の声や音声を入れれば良いというわけではありません。特にナレーションに関しては、声質にこだわることが求められます。なぜなら声質によってユーザーに与える印象が大きく変わるからです。

動画は視覚情報が重要に思えますが、声などの聴覚情報も作品の良し悪しを決め、企業やブランドイメージに影響をおよぼす要素になり得ます。動画には画面内(シーン)では伝えきれない細かい情報が少なからずあり、そのシーンを補足で説明するナレーションが不可欠です。映像ディレクターとして4、5年キャリアを積んだクリエイターに向けて、ナレーターの声質による影響、ナレーター人選の重要性について紹介します。

ナレーターの声質や世界観が作品を昇華させる

ナレーターの人選_動画のナレーションのイメージ

動画制作でナレーションを入れる際は、ナレーターの声質にも着目して人選することが重要です。人選の際に声のトーンを重視するケースもありますが、トーンの幅よりも声質が作品の良し悪しを左右するポイントになり得ます。イメージに合う声質で、表現したい世界観を上手く演出してくれるかが人選の際には重要な判断材料となるだけに、まずはナレーターの声質による影響を理解しましょう。

そもそも動画作品にナレーションを入れる役割・メリットとは?

動画作品にナレーションを入れるのは当然だと考える映像ディレクターはほとんどでしょうが、その役割やメリットは多岐にわたります。前提として押さえておくべきことは、ナレーションはユーザーが聴覚的に取得できる有益な情報という点です。人間が情報を得る際にもっとも多いのは視覚的な情報、つまり動画やアニメーションなど動きがある情報。次に情報を多く得るのが聴覚になります。そのため、ナレーションを入れることで動画から得られる情報をより充実させることができます。

極端な例ですが、ナレーションや効果音がない動画と、ナレーションなどが効果的に入っている動画では、どちらが印象に残るでしょうか。多くの方は後者を選ぶでしょう。理由はさほど難しくなく推測できますが、より多くの情報が伝えられるからです。また、映像の内容や様子に対してナレーターが感情を込めて話すことで、ユーザーへの訴求力が増します。ユーザーへの訴求力が増すことで、共感意識や興味・関心を持ってもらいやすくなるでしょう。

ナレーターの声質による影響を理解する

ナレーションはその有無で大きく動画の印象を変えますが、同様にナレーターの声質によっても受ける印象が異なる点が面白いところです。たとえば、男性ナレーターと女性ナレーターでは聞き手の感じ取り方も変わってきます。

男性ナレーターは基本的に低い声であるため、説得力や信頼感を与えやすいという特徴があります。落ち着いた内容のコンテンツなどに向いている一方で、聞き取りにくいこともある点には注意しましょう。一方、女性ナレーターは明るく高い声で話せるため、聴きやすい点が特徴です。そのため、カーナビやコンピューターの音声ガイドなどでは、女性の声が使われるケースが多いと言えます。汎用性が高い点も女性ナレーターの特徴でしょう。

ただし、それぞれの性別に共通していますが、年齢によって声質が異なります。個人の特性によっても声質が変化することが考えられるため、イメージに合う声質で表現したい世界観をうまく演出してくれる人材選びが不可欠です。

声優・役者出身者の表現の幅は注目ポイント

ナレーターの人選_音声収録のイメージ

ナレーターにもさまざまな人がいるので、その人のバックボーンを参考にしたうえで人選することでミスマッチをさらになくせる傾向にあります。キャリアによるので一概には言えないものの、声優・役者出身者は表現の幅が広い傾向にあり、作品に深みをもたらしてくれることも。なるべく表現力豊かなナレーターをアサインできるように作品にマッチする人材を深くイメージしておくことをおすすめします。

ナレーターの人前は動画のテイストに合わせて

ナレーターといってもさまざまな人材がいるため、バックボーンを踏まえて人選することがポイントです。これまでの実績や得意分野などを考慮することでミスマッチが防げます。ナレーター自身のポートフォリオサイトを閲覧したり、音声データを提出してもらったりすると声質や表現力を確認できます。発注後の意思疎通を円滑に行いたい時は、実際の原稿、もしくはサンプル原稿を読んでもらうと良いでしょう。そのうえで動画制作のターゲット層に適するナレーターであるかを見極めることが大切です。

たとえば、幼児向けの動画においては、母親世代に近い20代や30代の女性のナレーターを起用すると、親近感や安心感につながります。一方で、幼児向けといっても戦隊ヒーローものであれば、ヒーローを演じるであろう若い男性のナレーターが適任でしょう。高齢者向けの健康食品のナレーションならば、同年代の男性などが向いています。

それから、動画のテイストに合わせた人選も大事なポイントです。具体例で考えると、美容アイテムの動画コンテンツではキレイな女性が登場します。この場合、ナレーターは明るくて高い声が出せる女性が適しているでしょう。アニメーションやポップな動画であれば、できるだけ優しい声質のナレーターが向いています。ナレーターによりリアルな反応を求める場合は、あえてキャリアが浅い人材にイメージを指定せずに素の喋りをしてもらうのも方法論の1つです。

ナレーター選びで声優や役者出身者には要注目

ナレーターを選ぶ際には、声優や役者出身の方に注目しましょう。キャリアによって異なる場合があるものの、声優や役者出身の方は表現の幅が広い傾向にあります。表現力の高さから作品にも深みが出てくるのです。ナレーションは声だけの表現になりますが、こうした職業の方は常に表現力を磨いています。

ナレーションでは伝えたいことを深く・適切に考えること、ハキハキとした滑舌などが求められます。声のボリューム感、正しいイントネーション・アクセントなども含めて、常に伝え方を工夫している方を採用しましょう。常に技術を磨いているからこそ、表現力が高まり、ナレーションを依頼した時も高いクオリティが期待できるのです。

人選の際の情報共有や認識のすり合わせが不可欠

ナレーターの人選_人選のイメージ

ナレーターはナレーションに協力してくれる単なるパートナーというよりは、共に動画制作を行ううえでのいわば同志とも言える存在です。そのため、アサインの際は最大限の敬意を払うのはもちろんのこと、こまめな対応と丁寧な連携は欠かせません。ナレーターの人選やその後のコミュニケーションの仕方は、映像ディレクターとして大成するうえで重要なポイントだと言えるでしょう。

トラブル防止のための事前すり合わせが重要

ナレーターをアサインする際に、複数名に声を掛けるのであれば、必ずサンプルを提出してもらいましょう。サイト上やポートフォリオとしての音声データで判断することも可能ですが、依頼する原稿のさわりを読んでもらった方がイメージしやすくなるはずです。さらに実際に発注することになった場合も、サンプルを踏まえコミュニケーションが取れるので意思疎通がしやすくなるという面もあります。

後々のトラブル防止のためには、スケジュールや費用も明確に提示し、尺の長さや概算の文字数などもあらかじめ伝えておきましょう。特にスケジュールや費用については、柔軟に対応できる方ばかりではありません。ナレーター側の不信感を生まないためにも、必ず事前に共有しすり合わせを行うことが大切です。

原稿確認や修正の際の情報共有の重要性について

ナレーション原稿については、実際に声に出して読んでみることで不自然な点に気づきやすくなります。また、原稿を確認する際は、内容の変更などを話し合ってより良いナレーションにつなげることがポイントです。その結果、原稿の内容や尺の長さに変更が生じた場合は、円滑な進行のためにも収録の最初に忘れずにナレーターに伝えましょう。映像ディレクターが率先してナレーターとコミュニケーションを取る姿勢は、基本的に安心材料になるはずです。

なお、収録当日に自社で立会人がいるのであれば、最初に紹介するとナレーターからの心証が良くなります。声を使う仕事であるため、発注側が飲料を差し入れするなどの気遣いも忘れないようにしましょう。

質の高いナレーションが動画をより上質にする

ナレーターの人選_まとめ

【ナレーター 声優 動画制作についてのまとめ】

  • 作品に合う声質を見極めて人選することが肝
  • 表現力豊かなナレーターは作品に深みをもたらす
  • ナレーターとの意思疎通が制作における生命線

動画制作でナレーションを入れる際は、作品に合う声質のナレーターを選ぶことが必須条件です。なぜならナレーターの声質によって、ユーザーが受ける印象が大きく変わるからです。ナレーターは数多く存在するため、ポートフォリオを提出してもらったり実際の原稿を読んでもらったりして、入念に人選を行うようにしましょう。

その中で声優や役者出身の方であれば、要チェックです。表現力が豊かな傾向があり、動画作品に深みをもたらしてくれる可能性が高いと言えます。ナレーターの人選が終わったら、映像ディレクターが率先して意思疎通を図ることで、現場の雰囲気作りや関係性向上に努めましょう。ナレーターは、動画制作における同志とも呼べる存在なので、動画完成まで一丸となれるように協力体制の構築を心がけることが大切です。