動画や映像を作成する際に必要なのが、カラーコレクションとカラーグレーディングです。
作品の印象や雰囲気は、色の選択や調整によって大きく変わります。訴求力の高い映像を作る上で、カラーコレクションとカラーグレーディングは欠かせません。

本記事では、カラーコレクションとカラーグレーディングのやり方や基礎知識について、詳しくご説明していきます。

カラーコレクションとカラーグレーディングとは?

カラーコレクション

カラーコレクションとカラーグレーディングは、動画制作で必要な編集作業の1つ。色の補正を中心に行います。
ここからは、その概要について見ていきましょう。

カラーコレクションは動画のカラー補正のこと

カラー補正
カラーコレクションは、映像制作で動画の色彩を補正する作業のことです。

#画像出典:https://www.adobe.com/jp/creativecloud/video/discover/color-correction-vs-color-grading.html

撮影時の条件や照明の違いによって、実際の色と映像の色が異なることがあります。
例えば、白色を表現する場合でも、撮影機材や撮影時間帯によって、実際の白色よりも赤っぽい映像になったり、青っぽい映像になったりすることがあります。

こうした色のズレを補正し、より撮影時の実際の色に合わせていくことがカラーコレクションです。撮影時の状況によって変化する色を正確に再現することで、実際の色により近づけ、臨場感のある映像を作ることができます。

カラーグレーディングとは動画のカラー効果のこと

色彩を強調したり追加したりすることで、場面の雰囲気を作り出す作業がカラーグレーディング です。

カラーグレーディングとは
画像出典:https://jp.cyberlink.com/blog/videoeditor/990/best-video-color-grading-correction-software

例えば、モノクロの映像に映し出されたバラの花だけに赤いカラー効果をつけると、花の存在を際立たせる演出ができます。カラーグレーディングによって映像に魅力や深みなどを追加することができるのです。

さまざまな映像の雰囲気を表現することができるため、映画や広告などさまざまなコンテンツで頻繁に利用されています。

カラーコレクションとカラーグレーディングの違い

カラーコレクションとカラーグレーディングは、両方とも動画の色調を調整する作業ですが、それぞれ異なる目的と特性があります。

まずカラーコレクションは、映像をより自然な色彩に近づけるための調整を目的としています。色彩補正の基礎作業というイメージです。

一方、カラーグレーディングは映像の雰囲気を調整することが主な目的です。色彩補正の応用作業というイメージです。

色の心理効果をカラーコレクションとカラーグレーディングで演出

カラーチャート紙を選ぶ人

ここでは、色が人の心に与える心理的効果について解説していきます。

カラーコレクションとカラーグレーディングは、色で映像の印象を大きく変化させます。色彩心理学を知っておくと、どこかで役立つことでしょう。

食べ物のシーンを例にあげてみましょう。ホワイトバランスを赤みのある色に調整すると、食べ物がより赤っぽく映ります。赤は食欲を刺激する色とされており、視聴者が食欲をそそるような映像を作成できます。

また、黒塗りのハイヤーが登場するシーンがあれば、車体を「つややかな黒」に調整することで、重厚感を演出できます。黒は高級感やフォーマル感を表現する色のため、映像に優雅な雰囲気を加えられます。

色がもたらす心理的効果を理解しておくと、カラーコレクションやカラーグレーディングの表現にも深みが出ます。初心者レベルから一歩踏み込んで、視聴者の心を掴むような映像を演出したい、と考えている方は、参考にしてみましょう。

これだけはおさえたい!カラーコレクションの基本作業3つ

カラーコレクションの基本作業

カラーコレクションの基本的な作業として、輝度調整やホワイトバランス、彩度調整の3つが挙げられます。詳細について見てみましょう。

明暗の調整には輝度調整

輝度調整Before

輝度調整After

画像出典:https://www.ediusworld.com/jp/pimopic/cat7_160.html

輝度調整は、適切な明るさを設定することによって、映像の印象を変えることができます。映像の明暗を調整することで、より見やすい映像にしたりインパクトのある映像に仕上げたりする効果があります。

例えば、撮影時の照明の状態により室内の映像が暗くなってしまった場合、カラーコレクションによって明るさを調整することで、登場人物や背景がよりはっきりと見えるようになります。

また、臨場感のある映像を作り出すためには、シーンに応じた明るさの調整が必要です。ドラマや映画などでは、重要なシーンの表現に合わせて輝度調整を行い、感情や雰囲気を伝える演出を行います。

臨場感が出るホワイトバランス

ホワイトバランスの調整

画像出典:https://www.ediusworld.com/jp/pimopic/cat7_160.html

ホワイトバランスは白色(光の色)を調整することで、映像を見たままの色に近づける効果があります。

例えば、日の出のシーンでホワイトバランスを調整するとき、オレンジなどの暖色に近づけると、映像に温かみが出ます。
また、お葬式など悲しみを表現したい場面では、ホワイトバランスを寒色寄りに調整することで、より悲愴なイメージを演出することができます。

シーンに応じて適切なホワイトバランスの設定を行い、映像に深みを加えてみましょう。

撮影時の鮮やかさが蘇る彩度

彩度の調整

画像出典:https://www.blackmagicdesign.com/jp/products/davinciresolve/color

彩度を調整することで、色が鮮やかになり、いきいきとしたイメージの映像になります。

例えば、自然の風景を撮影した場合、撮影時の日差しが強すぎて色が褪せたり、グレーがかって見えたりすることがあります。このような場合、彩度を調節することで、緑の木々や青い空を、元々の風景の色とほぼ同じに仕上げられます。

さらに、彩度の調整は映像の表現力を高めるためにも使えます。
華やかなイベントの映像や明るいアニメーションの場合、彩度を高めることで活気を強調できます。一方で、シリアスなシーンでは彩度を抑えることで重厚さを演出することも可能です。

LUTでカラーグレーディング

LUTでカラーグレーディング

カラーコレクションが完了した後の次のステップは、カラーグレーディングです。
色味の変更やシーンごとの色調調整など、より高度なエフェクトの追加を行うことで、訴求力のある映像に仕上がります。

LUT Presets

画像出典:CyberLinkサイト

編集ソフトを使っても、色味の調整や追加を一つ一つ手作業で変更することは膨大な手間と時間がかかります。
労力を省き効率的に編集作業を行うためのツールが、LUTです。具体的には、「映像の色調整」に用いられる数式が格納されたデータのことです。

LUTは、LOGという方式で撮影された映像データに対して使用します。「プリセット型」としてソフトに取り込むと、その数式を元に、映像の色味を瞬時に変えることができます。
インターネット上には多くのLUTが公開されており、自分が求めるイメージに合ったLUTを選べます。LUTを使うことで表現の幅を広げられるため、好きなものをダウンロードしておくと良いでしょう。

一方、「LOOK」によるカラーグレーディングもあります。LOOKは、LOG方式以外で撮影された素材に使われます。

LOOKで表現できるのは、インスタグラムのフィルターのような映像です。LUTほどの調整の幅広さはありませんが、うまく組み合わせることで、独自のカラーエフェクトが追加できます。

カラーコレクションとカラーグレーディングのおすすめソフト3つ

ここでは、カラーコレクションとカラーグレーディングの作業に適したソフトウェアを紹介します。
初心者から中級者〜プロ向けのものがありますので、自分のレベルや加えたい編集内容に応じて選んでみると良いでしょう。

  • Premiere Pro(プレミアプロ)

Premiere Pro
画像出典:https://helpx.adobe.com/jp/premiere-pro/using/import-media.html

Adobe社が提供するプロフェッショナル向けの動画編集ソフトウェアです。業界標準とも言えるソフトです。豊富なカラーコレクションとカラーグレーディング機能を備えており、映像の色調を細かく調整することができます。

  • DaVinci Resolve(ダヴィンチ リゾルブ)

DaVinci Resolve
画像出典:https://www.blackmagicdesign.com/jp/products/davinciresolve/color

Blackmagic Design社が提供するソフトウェアです。カラーグレーディング機能の豊富さが特徴で、映像制作のプロからも支持されています。無料版と有料版に分かれ、初心者でも始めやすいソフトです。

  • Wondershare Filmora(ワンダーシェア フィモーラ)

Wondershare Filmora
画像出典:https://filmora.wondershare.jp/color-correction.html
フィモーラは、マニュアルいらずの直感的な操作が可能で、動画編集初心者にも使いやすいソフトです。
動画に特殊効果を挿入する、エフェクトの種類は500種類以上。対応する動画フォーマットも、MP3やGIF、AVIを始め12種類あります。無料版と有料版がありますが、無料でも全機能を使えるところが魅力です。
無料版では、作成された映像にウォーターマークが挿入される仕様となっています。気になる方は買い切りの有料版(バージョンアップ対応なし、8,980円)かサブスクリプションの有料版(バージョンアップ可、6,980円/年)を使ってみるのもオススメです。

まとめ:カラーコレクションとカラーグレーディングでクオリティの高い映像を作ろう

カラーコレクションとカラーグレーディングは、映像の出来を左右する重要なプロセスです。
ただ撮影しただけの映像からは、作品に込められたメッセージや表現の深みが視聴者に伝わらず、内容が読み取りにくいものです。見る人の心を揺さぶるような映像を演出するためにも、カラーコレクションやカラーグレーディングが欠かせません。
動画編集スキルを磨いて、よりハイクオリティな映像を作りたい!という方は、身につけてみると良いでしょう。