TVだけでなく、スマホやPC、サイネージなどさまざまなデバイスで動画視聴するのが当たり前になった昨今、画面分割の手法を用いた動画が注目されています。たとえば、複数画面でさまざまな情報を多角的に発信する電車内のサイネージに流れる交通広告はその最たる例と言えるでしょう。
画面分割が注目される理由は、1つの動画内で短時間に複数の情報を効率的に伝えることができる点に集約されます。4年以上の経歴を持つ映像・動画クリエイターであれば、今後も拡大が予測される動画市場において、画面分割はぜひ身につけておくべき手法と言えるでしょう。画面分割動画の手法、スプリットスクリーンの詳細や今後の可能性を解説します。
2026年の動画配信市場は5,250億円との予想
一般財団法人デジタルコンテンツ協会(DCAJ)の『動画配信市場調査レポート2022』によると、2021年の動画配信市場規模は前年比114%の4,230億円になると推計されています。市場が成長した背景にはコロナ禍があります。2020年以降、新型コロナウイルス感染症の流行により外出自粛を余儀なくされ、自宅で過ごす時間が増えました。その結果、有料動画配信サービスの利用が大幅に拡大。さらにオンラインのライブ配信プラットフォームも発展し、動画市場が急速に伸び始めていきました。
出典:一般財団法人デジタルコンテンツ協会(DCAJ)の『動画配信市場調査レポート2022』
2021年になると動画視聴の習慣化に合わせ、さらに動画需要が増加しました。各事業者では差別化と新規獲得に向け、独占コンテンツやオリジナルコンテンツを豊富にそろえるようになるなどの動きが見られます。ライブ配信もコアユーザーを中心に盛り上がりを見せ、配信に参入する個人・企業も増えてきています。
2026年までの4年間で1,000億円以上の成長見込み
先に紹介したDCAJの『動画配信市場調査レポート2022』では4年後の2026年までの市場予測が算出されています。今後も動画市場規模は伸長傾向にあり、2026年までに5,250億円になると推計しています。4年で1,000億円以上の成長が見込まれる理由としては以下の通りです。
【動画市場の成長が見込まれる要因】
- 既存ユーザーは自身のニーズにあった動画を今後も視聴し続けていく
- 潜在・見込みユーザーも多く、伸びしろがある
- 事業者のサービス拡大
- 民放各社のリアルタイム配信がスタート(2022年4月から)
将来的にコロナ禍が落ち着いていけば、いわゆる「おうち時間」と呼ばれた自宅で過ごす時間は少なくなるかもしれません。しかし、動画視聴が習慣化したユーザーは今後も視聴し続けていくと考えられます。サービスが拡大し「動画視聴が当たり前」になってきているので、若年層を中心にまだ視聴を始めていない潜在・見込みユーザーの獲得も望めるでしょう。また、民放各社もリアルタイム配信に乗り出すなど、動画配信サービスはこれまで以上に身近になっています。
こうした理由から、アフターコロナの世界線においても動画市場は堅調に右肩上がりで推移・拡大し、4年後には5,250億円を突破すると考えられているのです。
トレンドの動画手法「スプリットスクリーン」
今後も拡大が予想される動画市場では、ニーズを獲得できる新たな手法が模索されています。中でもTikTokなどのSNSなどを中心に動画を画面分割するスプリットスクリーンの手法が人気を博しています。マルチディスプレイで情報を収集するPCはもちろんのこと、小さな一画面で動画を視聴するスマホにおいては、スプリットスクリーンが効率的に情報を伝える手段になり得るでしょう。
スプリットスクリーンとは
スプリットスクリーンとは1つの画面を2つ以上に分割(スプリット)させたレイアウトのデザインです。分割スクリーンや分割レイアウトといった呼ばれ方もします。画面中央から均等に上下または左右に分割するだけでなく、アシンメトリーや複数に分割するスプリットスクリーンレイアウトもあります。
画面を分割することでそれぞれを独立させることができ、異なる要素を1つの画面に一度に表示させることが可能です。そのため、スプリットスクリーンでは複数の要素を対比させたり、メインエリア・サブエリアに分けて表示させたりといった自在な見せ方が実現できます。スプリットスクリーンはカードやタイルのコンポーネントを並べて表示する、カード型レイアウトから着想を得たとされています。
スプリットスクリーンのメリット
スプリットスクリーンには多くのメリットがあるため、気軽に動画を視聴するスマホユーザーに人気のコンテンツです。特にTikTokを始めとするSNSではダンス動画を中心に活用されています。短い尺で分かりやすく面白い動画を視聴したいというスマホユーザーの需要と、スプリットスクリーンの特徴がマッチしている点が要因だと考えられます。
メリット1:短時間で多くの情報を伝えられる
「全体像」「詳細」のように画面を分割することで、短い尺でもフルスクリーンの動画より多くの情報を視聴者に伝えられます。
メリット2:要素の対比構造を伝えやすい
画面を分割しそれぞれに異なる要素を表示させることで、視聴者に対比構造を伝えられます。視聴者にどちらかを選択してもらいたい時にも活用可能です。
メリット3:特別感がある
1つの画面に1つの情報といったフルスクリーン動画と異なり、2つ以上の情報を同時に表示できるスプリットスクリーンは視聴者に特別感を与えます。使い方次第ではオリジナリティあふれる動画制作につながるでしょう。
メリット4:さまざまなデバイスと親和性が高い
スプリットスクリーンは分割された画面ごとに情報が整理されています。そのため、パソコンやタブレットなど比較的大きな画面だけでなく、小さなスマホ画面でも見やすい手法です。
スプリットスクリーンで可能になる多角度の情報発信
短尺で効率的に情報を伝えることが重要となるSNSなどにおいて、スプリットスクリーンは非常に相性が良いと言えます。画面を分割して全体像と詳細を説明する動画を作成すれば、一度の視聴で得られる情報量がさらに増すでしょう。多角的な情報発信を可能にしてくれる手法と言えます。
スプリットスクリーンはSNSとの相性が良い
前述の通り、スプリットスクリーンはスマホとの親和性が高く、TikTokなどで好んで使われるレイアウト手法です。先に挙げたダンス動画以外にもさまざまなSNS動画で利用されています。
【スプリットスクリーンを活用した動画例】
- コーディネート紹介動画
- ミュージック動画
- メイク動画
- インタビュー・対談動画
- 商品紹介動画
- ノウハウ動画
SNS利用者の多くはスマホユーザーであり、短時間で分かりやすく面白い動画を視聴したいと考える傾向にあります。そうした需要とスプリットスクリーンはマッチしやすく、結果的にスマホとの親和性も高いと言えるでしょう。
多角的な情報発信が可能
右肩上がりに推移する動画市場で多くのニーズを獲得するには、SNSと親和性の高いスプリットスクリーンをどう活用していくかが鍵です。総務省が2021年に発表した「令和2年通信利用動向調査の結果」によると、2020年の国内SNS利用率は73.8%で前年比4.8%の増加でした。特に10代の利用率は86%超、20代の利用率は90%超となっており、若年層のほとんどがSNSを利用していることが分かります。また、20~39歳のインターネット利用で使用するデバイスは90%以上がスマホです。
そのため、動画市場でニーズを獲得するにはスマホでSNSを利用するユーザーに選ばれることが大切です。そして、ニーズ獲得実現に向けて有効打と言えるのがスプリットスクリーンの活用でしょう。たとえば、2つ以上の要素の比較動画、全体像と詳細説明といった形の動画を作成すれば、視聴者は一度の視聴で多くの情報を楽しみながら得られます。つまり、スプリットスクリーンは多角的に情報発信しやすく、視聴者の満足度・理解度を得やすいわけです。
動画コンテンツにはオリジナル動画やライブ配信、ショート動画などさまざまな種類がありますが、形式を問わず、スプリットスクリーンの需要は拡大するでしょう。ある程度のキャリアのある映像・動画クリエイターであれば、ブランディングや広告にも最適なスプリットスクリーンを活用し、急速に成長する動画市場のトレンドにうまく乗っかることも重要です。
スプリットスクリーンでクリエイティビティの高い動画制作を
【画面分割動画のまとめ】
- 近年動画市場は急成長し、今後もまだ伸びしろがある
- スプリットスクリーンはスマホ視聴との親和性が高い
- スプリットスクリーンは多角度の情報発信が可能
ここ数年、スマホ利用者が増え、若年層を中心にスキマ時間での動画視聴が一般化していました。さらにコロナ禍となり自宅時間が増えたことがきっかけとなり、いま動画市場は急速に成長しています。
スプリットスクリーンは、そんな急成長する動画市場において注目されているレイアウト手法です。フルスクリーン動画と比べて視聴者に特別感やオリジナリティを与えやすく、伝えられる情報量が多くなります。短時間で簡単かつ多角的に情報を得られることは、視聴者にとって満足感を与えやすいため、ニーズ獲得にも良い影響を与えてくれることでしょう。
ただし、多くの情報を伝えやすいだけに、一歩間違えればユーザーにとって視聴しにくい動画になる恐れもあります。スプリットスクリーンを使った動画を制作する際には、多くの情報を多角的に伝えられるからこそ、厳選して整理したうえで情報を載せることが大切です。また、分割比率を変えれば動画の印象も大きく変わります。そういった意味でスプリットスクリーンは、ただ複数の情報を同時に伝えられる画面分割動画というだけでなく、非常に高いクリエイティビティが必要とされるでしょう。
スプリットスクリーンを活用し、ユーザー視点に立って情報を過不足なく伝え、クリエイターならではのアイデアを活かしたユニークな動画を制作していきましょう。