SNS上で若者を中心に人気を博している縦動画。スマートフォンの向きを変えることなく手軽に撮影・動画編集・視聴を行えることから、最近、InstagramやTikTokなどのSNSで人気を博しています。一方で依然としてビジネス目的の動画の主流は横動画であり、映像・動画クリエイターの中には、「縦動画なんて邪道だ」と考えている方もいるかもしれません。

しかし、今後は生まれた時からスマホに慣れ親しんでいる、デジタルネイティブのZ世代が市場でもビジネスでも中心になっていくだけに、縦動画が主流になることも無きにしも非ずと言えます。では縦動画がより普及することも見込んでどんなスキルを今から身につけておくべきでしょうか。主に歴4年以上の映像・動画クリエイターに向けて、縦動画の可能性について解説します。

ビジネス関連の動画の主流は、依然として「横動画」

縦動画の可能性_PCにおける横動画視聴

動画配信サイトやSNS上で、若者や芸能人、インフルエンサーなどによる投稿が増加している「縦動画」。YouTubeのショート動画機能「Shorts」やInstagram、TikTok、FacebookのSNSでご覧になった経験がある方も多いでしょう。縦動画は「自撮り文化」とともに発展し、当初はTikTokにおけるダンス動画の投稿に多用されました。スマホの向きを変えずに手軽に動画の撮影・編集・投稿・視聴を行えることから、現在では数多くのユーザーが縦動画を楽しんでおり、さまざまな動画の投稿に活用されています。

スマホで縦動画を配信することのメリットとは?

縦動画はスマホでの視聴に適していることが最大のメリットです。縦動画をスマホで再生する際に「フルスクリーン」で表示されるため、表示面積が横動画の約3倍にアップ。コンテンツへの没入感を高めてくれます。「横動画を投稿した際の再生数はあんまりだったのに、縦動画に編集し直して投稿したところ再生数とフォロワーが急増した」という事例も存在するなど、スマホやSNSコンテンツとの親和性の高さを示しています。

縦動画の隆盛は、2017年にスマホの世帯普及率がパソコンの世帯普及率を上回ったこととも関連しているかもしれません。スマホユーザーが増加し、スマホでの動画視聴が一般的となった現在、「横長の動画よりも、縦長の動画の方が視聴しやすい」と感じる人が多いのもうなずけます。縦動画の視聴数が伸びやすいのもデバイスの特性から考えれば、当然と言えるでしょう。特に10代と20代の女性は、スマホの利用時間が長い傾向にあることから、縦動画との親和性の良さも容易に想像がつきます。

パソコンでの視聴が中心のビジネスでは横動画が主流

若者を中心に人気の縦動画ですが、現状ではアマチュアによる動画制作に用いられているケースが多いのもまた実情です。そのため、ビジネス関連動画での縦動画の活用はあまり進んでいません。制作規模の大きいドラマや映画(『上下関係』や『夏、ふたり』など)が縦動画で制作されるだけで話題になる状況が、いかにこれまでの主流が横動画だったのかを物語っています。

また、映像・動画クリエイターがクライアントワークとして企業から受ける案件は、依然として横動画が主流です。そのため、縦動画への興味関心を持って日々のキャッチアップに努めることは重要ですが、業務においてはまずクオリティの高い横動画を制作するスキルを向上させることに注力すべきでしょう。

静止画と同様に、以前から動画を縦の構図で撮影するケースも存在した

縦動画の可能性_以前から存在した縦写真

動画とは様相が異なり、スチール(静止画、写真)撮影においては、横の構図だけではなく、縦の構図も一般的に用いられてきました。縦の構図の魅力は、横の構図で撮影するよりも情報量が少ない分、注目すべきポイントが絞られることです。立っている状態の人物や縦長の物体を、縦の構図で写真撮影した経験をお持ちの方も多いでしょう。

動画に関しても、縦の構図がなかったわけではありません。たとえば、家庭用のビデオカメラなどでは、縦横を切り替えて撮影することもあるでしょう。お子さんを持つ親であれば、わが子の運動会などの晴れ舞台をビデオカメラで縦横いろんな構図で撮影するかもしれません。ただ、映像作品においては、急に縦横を入れ替えるということはまずないと言えます。また、ビジネスでの縦動画については、カメラ自体を縦向きにするためにさまざまな工夫を施して撮影する必要があります。横に倒せる雲台やプレートの使用が一般的です。

4Kの解像度の場合は、横動画として撮影し、後から一部をトリミングして縦動画に加工する手法もあります。しかし、狙い通りの構図になっているかどうかをリアルタイムで確認できません。編集段階で確認することになるため、最初から縦動画として撮影するやり方だと精度が高まるでしょう。

縦動画は離脱が多いため尺は短めがおすすめ

脳科学の実験により、縦動画の特徴として、「脳内の血流が活発化すること」や「視線が画面の中で散らばらずに集中すること」が判明しています。ただし、尺が長くなればなるほど離脱率が増加し、最後まで視聴してくれる人(完全視聴率)が少ないこともまた事実です。

その理由としては、スマホで縦動画を視聴すると画面すべてで表示されるため、他の作業ができないことが挙げられます。離脱を防ぐためにも、縦動画の尺は、なるべく「1分」以内に、長くても「3分」を超えないように制作することがおすすめです。せっかく「スマホの向きを変える必要がなく、見やすい」「脳の血流が活発になり、視線が散らばらない」という特長を有する縦動画を制作するのであれば、尺の問題で視聴者が減少することは避けましょう。

縦動画は、自撮りが主流のアマチュアクリエイターだけではなく、ビジネスとして映像制作を行うプロの映像・動画クリエイターからも注目され初めています。現状では縦動画の案件は少ない状況ですが、これからの普及が予想されるので、今のうちに知識やテクニックを学んでおいても損はありません。

確実に需要が増えていく縦動画や正方形動画

縦動画の可能性_スマートフォンにおける動画視聴

現時点では主流ではないものの、ビジネス分野での活用がゼロというわけではなく、製薬、飲食、人材紹介、アパレル、不動産など、さまざまな業種の企業が広告・プロモーション用に縦動画を利用しています。各SNSのプラットフォームの発展とともに、縦動画を制作する機会は、これから確実に増えてくるでしょう。

また、縦動画と同様に注目なのが正方形動画(スクエア動画)とは、アスペクト比(縦横比)が「1:1」のタイプ。縦動画と異なり、スマホ画面全体に表示されませんが、動画の上下にテキストなどを流すことが可能です。Instagramなどでは、再生時以外は「1:1」で表示されるため、縦動画の場合、上下の部分を見ることができません。正方形動画なら、再生させなくても全体が表示されるため、ユーザーの視線を惹きつける効果があることを覚えておきましょう。

縦動画は「習うより慣れよ」の精神でまずはSNSで学ぼう

すぐに縦動画の制作を担当することにはならなくても、SNSや動画配信サイトのトレンドに詳しかったり、UGC(User Generated Content/サービス利用者が作成するコンテンツ)の制作経験があったりすることは、「強み」としてクライアントにアピールできるでしょう。では横動画主流でずっと制作をしてきた映像・動画クリエイターは、まずは何をすべきでしょうか。その答えはSNSです。

将来的に仕事で制作する際の予行練習として、プライベートで縦動画を制作し、SNS上に投稿してみてはいかがでしょうか。「習うより慣れよ」の精神で、自身があまり専門としていない動画領域に飛び込んでみることも、クリエイターとしての一種のチャレンジとなり得ます。SNSで遊びながら縦動画の撮影テクニックや動画編集スキルを少しずつ習得しておくのも悪くないやり方だと言えます。

今後に備えて、縦動画に関する撮影技術も習得しておこう

縦動画の可能性_まとめ

【スマホ 縦動画のまとめ】

  • ビジネス関連の動画においては、依然として横動画が主流
  • SNSの隆盛により、ビジネスでも縦動画の利用が増えることが予想される
  • 映像・動画クリエイターは、縦動画の撮影・編集スキルはSNSで学ぶべし

今後は、SNSのプラットフォームの発展により、縦動画(および正方形動画)の広告などを制作する機会が増えることが予想されます。そのため、「縦動画はSNSでの自撮りで使われているものだから、触れる必要はない」などとは考えるべきではないでしょう。まずは仕事としてではなく、遊びでも良いので、縦動画を制作してSNSに投稿することが縦動画デビューには最適かもしれません。

またSNS上のトレンドに詳しかったり、運用経験があったりすることは、映像・動画クリエイターとしての「強み」になります。業界の動向を注視しつつ、今のうちに縦動画に関する知識・スキルの無理のない習得に励みましょう。

あわせて読みたい


あわせて読みたい