日本テレビに入ってから様々なバラエティ番組、ドラマ、アニメなどの演出やプロデュースに携わり、マルチに活躍してきた渡部智明プロデューサー。守備範囲が広く、常に「面白がること」をモットーに仕事をされてきました。今回、渡部プロデューサーが目をつけたのは、マンガ・アニメ・ゲームの世界を実写で体現する“2.5次元”のイケメン若手スターたち。彼らが出演する作品は、花とゆめ「花LaLa online」で連載中の競泳部活コミック「男水!」の実写版で、日本テレビ初の試みとなる連ドラ×舞台の連動企画となりました。渡部プロデューサーを直撃し、これまでのユニークな経歴や、今だからこそ提示したいテレビの魅力についてお話をうかがいました。
バラエティ、ドラマ、アニメで培ったキャリアが生み出した「男水!」の企画
僕は元々、歌番組かドラマがやりたくて日本テレビに入ったのですが、最初にADをやったのは、バラエティ番組の「スーパーJOCKEY」でした。1年間やりましたが、1本が生放送、1本が収録ですごく勉強になりました。その次にヘイポー(斉藤敏豪)さんの部下になり、「発明将軍ダウンタウン」や「ダウンタウンのガキの使いやあらへんで!!」の特番を手伝ったりした後で「ぐるぐるナインティナイン」をやりました。ドラマに携わったのは30歳過ぎで、そこから「ごくせん」や「女王の教室」「喰いタン」「デカワンコ」などをやっていたら、上司から「渡部、アニメに興味ある?」と声をかけられ、アニメをやり出したのは40歳を過ぎてからでした。
「ばらかもん」「曇天に笑う」「金色のコルダ」などいろんなアニメをやりましたが、実際のプロデュースと、お金の管理をするライツプロデュースの両方をやれたことが良かったです。すごくジャンルとして盛り上がっているし、企画として細かいところもちゃんと描ける。アニメでどういうビジネスができるかを学べたことがとても大きかったです。
そこから「曇天に笑う」を舞台化したり、「金色のコルダ」を音楽劇にしたりする中で、2.5次元という世界を知り、いろんなキャスト事情を教えてもらったんです。その流れで、今回の「男水!」の連動企画が生まれました。昔は自分で演出したくてうずうずしていましたが、最近はようやくプロデューサー業も面白いと思えるようになりました。
2.5次元スターの知られざる魅力と実力とは
まずは2.5次元の役者さんのドラマが作りたいというところから企画がスタートしました。「男水!」なら男性の個性的なキャラクターがたくさん出ているし、競泳もののドラマは今まであまりやっていなかったからイケるんじゃないかと思いました。漫画の面白さはもちろん、本人たちも実際に水泳にチャレンジするという試みも面白いかなと。みなさんには2、3カ月前から練習してもらい、吹き替えなしでやってもらうことにしました。みなさん気概があって、練習段階から互いにせめぎ合うライバルになっていたので、その相乗効果も映像に反映されていると思います。
また、2.5次元の俳優さんは、基礎ができているところが素晴らしい。みんなちゃんとお芝居ができるので、基本的に安心して見られるんです。ベースがあり、さらに彼らの芝居の熱さが出て良かったと思います。「ごくせん」もそうでしたが、若手スターのギラギラした感じを、久しぶりに現場で見ることができました。彼らの芝居を見ているとワクワクするんです。
今回、ドラマで初めて彼らを知る方も多いと思いますが、キャストがたくさんいるから、きっと誰かのファンになってくれるんじゃないかと。彼らが有名になってくれて、連ドラなどのオファーが来るようになったらいいですね。そして、最終的に日本テレビのゴールデンのドラマの主演などをやってくれたら本望です。
プロデューサーとしては基本的に「NO」「できない」とはなるべく言わないスタンスでいようと思っています。面白いことは何でもどんどんやっていきたいなと。「こういうことをやってみたい」と言われたら、「じゃあ、1回やってみよう」と言うようにしています。
テレビ発の人気者を生み出したい
昔はテレビに出た人が人気者になったけど、今はどこかで人気者になった人がテレビに出ている。そこが悔しいんです。フレッシュな人を引っ張ってきて、テレビでブレイクさせるということをもう一度やりたい。今は新人の役者さんはあまり出る機会がなくて、朝の連続テレビ小説に出て顔と名前が売れるというパターンばかり。
今は視聴率優先で、特にゴールデンタイムだと新人をメインに出していくのが難しく、民放の連ドラで新人がぱっと出てきて注目されるということが少なくなりました。「ごくせん」の亀梨(和也)さんたちは、当時KAT-TUNのCDデビュー前でほとんど知られていなかったけど、あのドラマで盛り上がってくれました。そういう新しい人たちを見つけてちゃんと紹介するというのがテレビだったから、そういうテレビ発のブームをまた巻き起こしたいんです。
今、高視聴率のドラマは安定感があるけど王道すぎる。もちろん、それも大事ですが、テレビの制作者としては、常に新しいものを作りたいんです。深夜枠はまだそれができる場所かなと。今回ドラマと舞台を連動させて良かったことは、社内で2.5次元についての啓蒙活動がやれたことです。ようやく認知度が上がり、2.5次元というワードが一部で浸透してきたのでこれからですよね。新しいことにチャレンジしているという日本テレビの姿勢が見せられたのも良かったです。
体感したものすべてが役に立つのがエンタメ業界
今後、映像関係のクリエイターを目指す方は、何でも経験した方がいいと思います。面白そうなものがあったら自分で見に行ったり、経験したりしてほしい。体感したものすべてが役に立つのがエンタメ業界かなと。自分が嫌いだろうと思って、見ないで判断するのはやめた方がいいです。
たとえば『君の名は。』が何でヒットしたのか、映画を観ないでいろいろと言うよりは、ちゃんと観て、なぜヒットしたのかという分析ができないとダメです。何でも自分の目で見てから、こういう理由で私はこれを好きなんだ、嫌いなんだと思うことが大事です。
特に大学生は時間がめちゃくちゃあると思うので、いろんなことをやった方がいい。ドラマを演出したいのなら、主題歌にも関わるから音楽にも興味がないといけないし、役者のことも知っていないといけない。映画や舞台、コンサートに行ったりするのもいいですね。
また、演出家になりたいのなら、自分自身が恋愛をしなきゃいけないとも思っています。こんな時にこういう表情をするんだというのがリアルに分かるようになるので。恐れずに恋愛もして、新しいものや面白いものは何でも興味を持ち、自分で経験して昇華していくことが大事ですね。
作品情報
「男水!」
日本テレビ系列
1月21日(土)スタート 毎週土曜24:55〜(※放送時間は変更になる場合がございます。)
【物語】
部員が5人いなければ部から同好会に落ちしてしまう東ヶ丘高校の水泳部。部員である榊秀平(松田凌)、篠塚大樹(宮崎秋人)、小金井晴美(赤澤燈)の2年生3人組は、必死で新入生の勧誘を行う。確保した新入部員は、わがままな水泳経験者の滝結太(佐藤永典)と、カナヅチの原田ダニエル(神永圭佑)だった。その後、過去にインターハイで優勝経験を持つ川崎亮也(廣瀬智紀)がコーチとして着任し、5人は厳しいトレーニングを受けていく。
原作:男水!(木内たつや/白泉社)
脚本:吉田恵里香(映画『ヒロイン失格』アニメ『TIGER&BUNNY』)
監督:松永洋一(ドラマ「マジすか学園1」「デカワンコ」「でぶせん」)
出演:松田凌 宮崎秋人 安西慎太郎 赤澤燈 佐藤永典 小澤廉 黒羽麻璃央 池岡亮介 神永圭佑 齊藤教兵 奈須田雄大 津嘉山寿穂 櫻井圭佑 上村海成 大浦龍宇一 モロ師岡/廣瀬智紀 ほか