渋谷ユーロスペース他全国順次公開中のパペットアニメーション映画『ちえりとチェリー』『チェブラーシカ 動物園へ行く』。今年で生誕50周年を迎える人気キャラクター・チェブラーシカの最新短編映画と、星野源、高森奈津美、尾野真千子ら豪華キャストが声の出演を担当した『ちえりとチェリー』2作品の公開を記念して、「コマ撮りアニメを語る昼下がり」トークイベントが開催されました。イベントでは、2作品の監督を務めた中村誠さんと、『どーもくん』『こまねこ』の生みの親、合田経郎さんによるトークが展開されました。
共に全く違う道から、人形アニメーションの監督として名を馳せるようになった中村さんと合田さん。
そのきっかけについて合田さんは「最初はTVコマーシャルの会社にいて、CFディレクターをやっていたんです。今から17年前くらいに、NHKの『どーもくん』で自分のデザインが採用になりまして。最初、僕は『どーもくん』を着ぐるみでやろうと思っていたんです。今よりもっと悪い感じで、どこか凶暴性もあって、よだれとかも垂らして…と思っていたのですが止められて(笑)、プロデューサーに2Dのアニメーションを提案されたんですね。そこで折衷案というか、いろいろな方法論を探す中で、コマ撮りにたどり着きました」と明かします。
そこで、いざコマ撮りの現場に入って、何もないスタジオにセットが置かれ、人形に照明があたって動き出すと、途端に生き生きと時間が流れだして「うわっ、楽しい、この楽しさ知ってる!」と子どもの頃におもちゃで遊んでいた感覚と近いものを感じ、その面白さからだんだん抜け出せなくなったそうです。
それには中村さんも共感したようで、「僕もコマ撮りを知ってはいたのですが、最初からすごくやりたいと思っていた訳ではなくて。それが『チェブラーシカ』をやる事になって、 “キャラクターが生き始める瞬間”に立ち会って、これはすごいぞ…!と思って、今に至ります」と語りました。
その後、合田さんから中村さんに「『ちえりとチェリー』は2Dアニメーションの感覚をもった新鮮なコマ撮りですよね。最初からコマ撮りでやろうとしたのですか?」と質問が投げかけられました。
それに対して中村さんは「日本にもっとコマ撮りの映画を広げる方法のひとつとして、受け入れてもらいやすい方法論はないかなと思って、皆が見慣れている2Dのフィーリングを入れようと思ったんです」と応えました。
そして「日本では人形アニメーションというと、CFか外国のアートアニメーションになってしまって、普通の劇場映画とは区分けされている感じがするんですね。フルCGの映画も受け入れられない風土があるし、ディズニー作品は観るけど、日本のものはなかなか浸透しない状況がある中で、僕はそうした垣根を外せる未来があればいいなと思っているんです。2Dや3DのフルCG、コマ撮りなどいろんな表現方法の作品がフラットに垣根がなく受け止めてもらえればいい」と語りました。
合田さんも「コマ撮りをやりたい、っていう人はたくさんいるんですね。やりたいのにやれないのは世知辛いなと思って、ドワーフというスタジオを作ったのですが、それが上手く続いていくためには『ワクワクこまちゃん』のようなTVシリーズも必要かなと思います。ビジネスだけではないのですが、作り続けられる環境を作りたいですね」と将来を見据えての想いを明かしました。
様々な映像表現がある中で、コマ撮りアニメの第一人者であるお2人が、今後どのような作品を生み出していくのかにも、ますます注目が集まりそうです。
■『ちえりとチェリー』オフィシャルサイト
http://www.chieriandcherry.com/
■『チェブラーシカ 動物園へ行く』オフィシャルサイト
http://www.cheb-project.com/gotozoo/
■『ワクワクこまちゃん (仮題) (吹替版)』視聴ページ
https://www.amazon.co.jp/dp/B01G9FLVM0
(2016年8月5日 CREATIVE VILLAGE編集部)