映像プロデューサーは、言わずと知れた映像・動画制作におけるトップに位置する役職です。制作における全権を担う大役ゆえに、クライアントとの折衝や企画立案、予算組みからチーム編成までその職務領域は多岐にわたります。成果責任を問われるなど、重い責任がのしかかるポジションであるため、「より良いシナリオ作りのために何をするべきか」「企画のクオリティを高めるには何が必要か」「ユーザーが面白いと思う動画はどんなものか」と日々、頭を悩ましていることでしょう。

そんな総責任者であり、多くのクリエイターと関わるポジションの映像プロデューサーだけに、素養の1つとして人望が挙げられます。つまり、多くのクリエイターと関わり、仕事を成功に導く人間力が問われる仕事でもあるのです。現場を統括しつつ、各メンバーにクリエイティビティを発揮してもらうためにはどんなことを意識すべきでしょうか。4年以上のベテランの域に達した映像プロデューサーが身につけていきたい「アサイン力」や「聞く力」について解説します。

動画制作ではプロデューサーに総合力が求められる

映像プロデューサーの人間力_映像スタジオのイメージ

映像制作においてプロデューサーは総責任者の立場です。それゆえに、映像プロデューサーにはとにかく総合力が求められます。顧客折衝から始まり、予算とスケジュールの管理、映像制作の座組構築、クリエイターのアサインなどコミュニケーション能力は基本です。対クライアントにおいてもヒアリング力や企画を通すためのプレゼンテーションや資料作りのスキルも不可欠であり、映像ディレクターよりもワンランク上の立ち回りが求められます。

映像プロデューサーの役割と業務

映像プロデューサーは制作の総責任者としてクライアントとの打ち合わせ、企画立案、制作チームの編成、予算調達など全面的に関わります。特に映像制作においては企画書の作成がシナリオにも影響し、作品全体のコアになるために責任重大です。クライアントと綿密に打ち合わせを行い、目的や対象などの共通認識を持って、そこに合わせてウィットに富んだ企画書を作成することが求められます。

また、企画の実現には予算調整や優秀な人材の確保が必要です。予算とクリエイティビティを天秤にかけ、完成度の高い作品作りへ向けてクリエイターへのアサインを行います。そのため、クリエイターとつながり、良い影響を与えられるような人望や人脈といった人間力の部分でも力を発揮することが求められるでしょう。人を見抜く力、バランス調整力、コミュニケーション力などといった能力が総合的に求められる職種です。

映像ディレクターとの違い

映像プロデューサーは総責任者ですが、映像ディレクターは現場監督という立ち位置です。撮影現場における演出や演技指導、制作スタッフへの指示出し、映像編集などはディレクターが指揮を執ります。プロデューサーとディレクターの関係は料理の世界にたとえられることがよくあります。プロデューサーはレシピの考案や必要な厨房機器の選定などを行う総料理長であり、ディレクターは実際に料理を作るシェフといったイメージです。

ただ、総料理長が料理を作ることがあるように、プロデューサーがディレクターの仕事をこなす場合も少なくありません。特にWeb動画ではプロデューサーがディレクターを兼務することがよくあります。そういった意味では、TV制作とWeb動画における映像プロデューサーに求められる役割は異なる面もあるでしょう。

映像プロデューサーに求められること

映像プロデューサーは映像制作現場での実務作業はほとんどありません。一方で、客観的・俯瞰的に制作の指示を出す、状況によっては全体の方向性について建設的にアドバイスを行う必要があります。そのため、知識やスキルに関して言えば、各ジャンルまんべんなく持ち合わせていることが求められます。制作において全知全能のスーパーマン的な存在となれるよう、日々研鑽を積む必要があるでしょう。

映像プロデューサーは優秀なスタッフと組むかが肝

映像プロデューサーの人間力_映像撮影のイメージ

制作現場の全権を託され、上流工程から制作を司る映像プロデューサーは、優秀なスタッフやパートナーと数多く手を組むことで仕事がやりやすくなります。脚本やシナリオは良い脚本家に、キャスティングであればキャスティングプロデューサーに相談するなど多くの伝手を持つことが成功の鍵を握るでしょう。映像プロデューサーに求められる、シナリオ制作やキャスティングに必要なアサイン力の重要性について解説します。

シナリオやキャスティング、チーム作りに必要なアサイン力

映像プロデューサーは業務範囲が広いため、総合的な能力が求められます。もちろん、シナリオ作成やキャスティングの決定、チーム作りにも総合的な能力が必要です。特にアサイン力は重要になります。たとえば、シナリオの場合、「企画にマッチした脚本家」のアサインが不可欠です。構成の流れや作風、対応力などといった脚本家の能力を見極めて選定するため、複数の脚本家との人脈が欠かせないでしょう。

こうしたアサイン力はシナリオに限ったことではなく、キャスティングやチーム編成時も求められます。日頃から役者さんや実力のあるディレクター、クリエイターの情報を仕入れて人脈を築くことが、適切なアサインの第一歩となります。

プロデューサーは周囲を動かす仕事である

映像の世界に限ったことではなく、プロデューサーはヒト・モノ・コトを動かして案件を進めるのが仕事です。人間はできることに限りがありますし、時間も無限にあるわけではありません。特に映像制作などの多くのスタッフが関わり、多くの要素が求められるプロジェクトにおいては有能な指揮官の存在が不可欠です。しかし、映像プロデューサー1人だけでは当然ながら現場の仕事は回りません。スムーズに制作を進めるためには、優秀な関係者と手を組むことが求められます。

たとえば、キャスティングはキャスティングプロデューサーに相談することが珍しくありません。芸能事務所への伝手がありますし、オーディション開催をサポートしてくれるなど、制作がスムーズに進む助けとなるでしょう。映像プロデューサーは各分野に特化している必要はなく、総合力が重要です。それとともに、スムーズな制作進行のためには業務を分担し、幅広い人脈、人を見抜く力、調整力を磨くことを常に意識しましょう。

プロデュースの成否を分ける「聞く力」

映像プロデューサーの人間力_聞く力

多くのクリエイターを束ねて、映像作品の完成まで導く映像プロデューサーは「聞く力」に長けている必要があるでしょう。1人だけで考えずにさまざまな人の意見を柔軟に聞き入れられる「聞く力」は重要な素養であり、多くのステークホルダーと関わって最適解を見つけることが求められます。多くの人が率先して意見やアドバイスをしてくれる関係性を築くには、周囲から慕われる「人間力」が重要になります。

リサーチやインプットする努力

映像作品は多くの人に観てもらってこそ価値が発揮されます。そのため、企画を立てる前段階として、社会情勢や流行の把握といったリサーチ能力がプロデューサーには求められます。また、企画に必要な資料を大量にインプットする根気や努力する力も重要です。

リサーチやインプットにはある程度のセンスが求められます。大量に収集したデータから企画成功につながる情報を抜粋し、再構成する必要があるためです。ただ、こうした情報の取捨選択は先天的なものではなく、日頃から情報に対してアンテナを張ることで鍛えられます。情報感度を高めてトレンドを知ることを楽しむくらいの余裕を持てるようにしましょう。

クライアントへのヒアリング力は重要

クオリティの高い企画を生み出すためには、クライアントへのヒアリング力が最重要ポイントです。映像制作の目的は、クライアントのビジネス成果の創出が第一になります。だからこそ、事前打ち合わせでクライアントが叶えたい要望や、解決したい問題をじっくり聞き出すことが大切です。「クライアント以上にクライアントのことを知り、クライアントを愛する」ことが、良い企画やシナリオを生み出す土台となります。そのため、不明点は徹底的に質問し、積極的に深掘りする姿勢が大切です。

フィードバックがブラッシュアップの鍵

シナリオのクオリティをアップさせるにはフィードバックをもらうことも大切です。シナリオがある程度の形になってきたら、さまざまな人に客観的な意見をもらいましょう。クライアントやディレクターはもちろん、照明やADなど現場で制作するスタッフら幅広い関係者から話を聞くことをおすすめします。さまざまな角度から意見してもらうことで、凝り固まった頭がストレッチされ、新たなアイデアの発想につながることもあります。

映像プロデューサーの人間力が作品のクオリティを高める

映像プロデューサーの人間力_まとめ

【映像プロデューサー 企画力 シナリオについてのまとめ】

  • プロデューサーは予算管理も含めた総合力が必須
  • 自ら手を動かすのではなく、周囲を動かす仕事
  • ステークホルダーの意見を「聞く力」重要な素養

映像制作においてプロデューサーはクライアントとの折衝や企画立案、予算管理にチーム編成と、その業務範囲は非常に幅広いと言えます。すべてを1人でこなすのは困難であり、だからこそ良い意味で周囲の協力を得ることが不可欠なポジションです。そのため、上手く周囲を動かすための人間性を高め、人脈を構築していくなどのスキルが求められるでしょう。

そのため、映像プロデューサーは各分野へのスキルの高さよりも「人間力」が求められます。人脈、調整力、カリスマ性、コミュニケーション力などを高めることが、クオリティの高い映像を作る原動力となることでしょう。