インタビューに答える3名からは、テレビの仕事の楽しさが伝わってきます。
テレビ朝日『家事ヤロウ!!!』の演出・米田裕一さん(写真中央)、チーフディレクター・黒柳貴仁さん(写真右)、チーフディレクター・熊川隆太さん(写真左)。
家事のまったくできない独身男性芸能人3名(バカリズム、KAT-TUN中丸雄一、カズレーザー)が家事に挑戦する番組を制作する、こちらも家事にまったく縁のなかった3名です。家事の基礎中の基礎に挑戦する『家事ヤロウ!!!』ですが、男3名の和気あいあいとした楽しげな雰囲気が人気で、4月から放送時間を約1時間40分繰り上げて0時20分スタートとなりました。“夜のゴールデンタイム”とも言われるこの時間、制作する3人の期待も高まります。
番組制作の魅力と、今の時代にテレビ制作にかける思いを聞きました。
『帰れマンデー見っけ隊!!』『10万円でできるかな』『家事ヤロウ!!!』演出。これまで『くりぃむナントカ』 『いきなり!黄金伝説。』『濱キス』『中居正広のミになる図書館』『陸海空 地球征服するなんて』など担当
黒柳 貴仁(くろやなぎ・たかと)
『MUSIC STATION』『帰れま10』『帰れまサンデー』『聞きにくい事を聞く』『天才キッズ全員集合~君ならデキる!!~』担当。企画番組『スカウちょ!』『知らない間にこんなに変わってましたTV』『日本のくすぐり方』など
熊川 隆太(くまがわ・りゅうた)
『いきなり!黄金伝説。』『嵐にしやがれ』『天才キッズ全員集合~君ならデキる!!~』『得する人損する人』など制作。『ヤバイかスゴイか カミヒトエ!』演出担当。企画番組『私、コレで成功しました。~密着!富女子2018~』演出など
出演者が楽しむ番組が、視聴者に愛される番組
――今日はテレビ番組制作についていろいろなお話を聞かせてください。3人は今『家事ヤロウ!!! 』という番組で同じチームなんですね。
米田 まず、深夜1時台の番組にもかかわらず、インタビューの機会を頂けたことに本当に感謝します。4月から放送時間帯も繰り上がるのでよろしくお願いします。(本インタビューは0時20分からの第一回目放送の直前におこなわれました)。家事番組とはいえ、超初心者向けです。
熊川 まったく家事に興味がない人にも楽しんでいただけると思います。そもそも出演者3人(バカリズム、中丸雄一、カズレーザー)が、家事がまったくできないのに楽しそうですから。家事そのものについてはたまにちょっと使えるワザがでてきた時に試していただくくらいで、基本的にはバラエティとして楽しんでいただければ嬉しいです。
米田 とにかく超簡単で、子どもっぽいことで盛り上がってます。卵の殻が一秒でポーンと剥けたとか、肉が一刀でスパンと切れたとか。家事が得意な人が見ると「そんなことからやるんだ!?」と驚くと思うんですけど…。4月の1本目は食材を切っただけで料理すらしないという低レベルぶりです(笑)アボカドの種はどう取るとか、トマトを切る時にグジュグジュにならないコツとか、そんなことに力を入れています。
――4月から放送時間が1時間40分繰り上がりますね。
米田 ものすごく嬉しいです!深夜1時台だった頃は番組を見てくれる人が少ないから、出演者の3人が楽しく家事をしているのが少し申し訳なかったんです。時間が繰り上がることでもっとたくさんの方に見てもらえるのは、なにより嬉しいです。
収録前のシミュレーションに命をかける
――番組の立ち上げはどんな経緯だったんですか?
米田 先にキャスティングが決まっていて、バカリズムさんと中丸さんとカズレーザーさんでなにができるかなと考えました。知的だし、雰囲気が優しいし、とは言え一筋縄ではいかなそうなお三方の一番の共通が「独身で男性」。普段は得意な事をやる番組が多い方たちなので、一番遠そうなテーマなら3人の新しい面が出るじゃないかなと“家事”を提案したんです。
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黒柳 バカリズムさんもカズさんも「家事はまったくやらないです」という回答で、中丸さんだけが唯一「朝、味噌汁は作りますね。一応、包丁ぐらいは握ります」と。みなさん家事はほぼ初心者でした。
米田 でも、僕らが安易に「専門家をお呼びして教わるのはどうですか?」とお話ししたら、バカリズムさんに「専門家に叱られたくない」と言われました(笑)。「教わって2回目にできなかったら怒られても甘んじて受けますけど、知らないだけなのに最初から怒られるのは絶対嫌だ」と仰って……。でも、その通りですよね。それが番組のヒントになって、上から目線で教えてもらうのではなく、その前段階の超基本をゼロから自分達だけでやってみようとする番組になりました。
熊川 僕らもほとんど家事しないですしね。
黒柳 そんな僕達が試しにやって上手くいけば、3人もちゃんとできるはず。ということで、スタッフが事前に何度も試してみてから収録に臨んでいますね。
熊川 僕の家でシミュレーションしてます(笑)
米田 シミュレーションとリサーチはものすごく多いです。90年代のスゴ技番組とか、雑誌の家事特集を読んだり…。当たり前すぎてパクリだと怒られたことはないです(笑)。それほど家事レベルが低い基礎をやってます、この番組は。
――これまでの放送で、もっとも印象的だったことは?
黒柳 チャーハンですね。ネット上に何万とあるチャーハンレシピから一番良いものを決めるというのがテーマだったので、収録までにとにかく試作をたくさんしました。これでもかというほどチャーハンを作って大変でしたね……。その結果、3つの方式を踏まえるとチャーハンの美味しさが格段に変わることがわかって、達成感がありました。
熊川 僕は、ゆで卵の殻を一瞬で剥くスゴ技かな。出演者の方が一発で成功できるように、何度もシミュレーションをしてコツをつかみました。100個分はやりましたね。
米田 卵の回では、目玉焼きを焼いただけで大騒ぎでしたね。みんなで大笑いしながら目玉焼きを作りました。他の番組収録だとバカリズムさんやカズさんを大爆笑させるのはハードルが高いですけど、目玉焼きを作るだけですごく笑うんですよ。やっぱり出演者の方が楽しそうにしてくれるのが嬉しいですね。そのためにみんな、とにかく準備を速くする。収録が始まってからも、いつでもすぐに必要な料理道具を差し出せるように、ADが出演者の後ろで忍者みたいに待機してますから。
熊川 ADはオペ中に医師から「メス」って言われる看護師みたいですよ(笑)
米田 出演者の3人には、家事だけに集中してほしいんです。待ち時間を作りたくない。盛り上がった気持ちが途切れないように気を配っています。僕たちは完璧にセッティングする事だけに命を懸けたら、あの3人だったら絶対に面白くしてくれる。結果、現場の雰囲気はすごく良いと思います。
――それぞれこれまでに様々な番組のご経験があると思いますが、今の番組制作に役立っていることは?
米田 僕と熊川さんは『黄金伝説』での経験が『家事ヤロウ!!! 』に影響していると思います。『黄金伝説』もとにかくシミュレーションを徹底する番組だったんです。というのも、過酷過ぎるのでスタッフでシミュレーションをして無事を確認しておかないと、タレントさんにやらせられない。
熊川 似てますね。二週間牛乳しか飲まない生活とかやりましたね。
米田 煎餅1000枚食べたりね。
黒柳 僕も『お試しかっ!』や『帰れま10』でやったことが活かされていますね。スタッフが場所を用意して出演者の方に面白くしてもらうスタイルは同じ。もしかして、テレ朝の傾向なのかな(笑)
米田 たしかに『家事ヤロウ!!!』はその流れの中で出てきた家事番組かもしれないですね。
テレビは”気持ち”を大事にしなければ
――番組を作っていて、どんなことが楽しいですか?
熊川 やっぱり出演者に楽しんでもらえることが気持ちいいです。とくに『家事ヤロウ!!!』はそれこそが視聴者も楽しめる番組に繋がっていると思うので、そこを一番にめざしています。
米田 盛り上がった収録後には、中丸さんが家事の手順を書いたハンドブックを写真に撮って帰るんですよ。家でやるつもりなんだな、ってすごく嬉しいです。
熊川 バカリズムさんも、基本的にはTwitterで「ロケ終了」とつぶやくんですけど、たまに、「ロケ終了、楽しかった」と一言添えられるんです。そういう時は、本当に楽しかったんだろうなと思いますね。バカリズムさんに一言添えてもらえる収録を目指してます!
黒柳 視聴者の反応も嬉しいですよね。番組が終わるのが深夜なのに、直後にネット上でコメントをされている方が多くて、それを見るとやっぱり嬉しいです。とくに『家事ヤロウ!!!』は、これまでにやってきた番組とはまったく違う反応をいただけています。番組で作った料理を実際に作ってみたと写真をあげてくれる人がものすごく多いんですよ!フレンチトーストの回の翌朝は、たくさんの人がフレンチトーストを作ってくれました。たぶんものすごく簡単なレシピだから真似できるんです。それに出演者3人が楽しそうに作って美味しそうに食べているのを見てるとやりたくなるんでしょうね。
――テレビ業界で働くことのやりがいはなんですか?
米田 ひとつは、たくさんの人に届くこと。「やってみた」とか「行ってみた」といった声が聞けることですね。今はSNSで直接視聴者の反応が見られますからね。番組で放送したことが、現実に誰かの楽しみになった事を実感できると嬉しいです。
一方で、バカリズムさんや中丸さんやカズレーザーさんのような方々とお仕事できることへのやりがいもものすごくあります!
それぞれの技を極めたからこそ人気者になったプロフェッショナルな方達なので、現場もとにかく楽しいです。そんな第一線の方々と仕事をするのは、なによりも楽しいですね。
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熊川 僕も元々芸人さんと仕事をしたくてこの業界に入ったので、今はもう幸せですね。ずっとこの仕事をやり続けたいです。
黒柳 出演者だけでなく、カメラさん、車のドライバーさん、編集でテロップつけてくれる人、CGを作ってくれる人……いろんな分野のプロの方とお仕事できるのも楽しいですね。さらにそこで僕たち制作の一番幸せなことは、彼らプロフェッショナルに「あなたとやりたいです」と決められるんです。「ナレーションはあなたにお願いしたいです」「編集は、あなたにして欲しいです」とワガママ言えるのは、制作の仕事だけ。そんな技術の磨かれた方々と面白いものができた瞬間は、本当に感謝の気持ちでいっぱいです。一緒に働く方々は大事ですよ。
――テレビ業界で働くうえで大事なこと。それはなんだと思いますか?
米田 人様に偉そうに言えるキャリアではないので恐縮ですが……僕が大事にしていることは、出演者の方々に楽しんでいただくこと。昔はなにをやってもテレビは面白がってもらえたかもしれないけれど、今は本当に出演者の気持ちが入っている番組じゃないと見てもらえない気がするんです。だから、コミュニケーションがものすごく上手じゃなくてもいいから、出演者の方がどんな人で、なにが好きで、気持ち良さそうにお仕事できているかを気遣える人がいいんじゃないでしょうか。そういうことが、画面越しに伝わると思っています。
熊川 そうですね。やっぱり丁寧なことが大事ですよね。番組編集や構成のセンスがある人はいますけれど、僕はそうじゃないし、人よりも時間がかかります。それでも真面目にコツコツやっていると良いものが作れると思うから、諦めないで、番組企画に向き合うことが大切だなと思うんです。最終的に、地道に積み重ねてきた人が勝つと信じています。
黒柳 付け加えるなら、好きなものが多い人の方が良いですね。スポーツ、お芝居、映画、テレビ……なんでもいいんですけれど、「あの時に見たアレをいつかやってみたい」とか「あの人と仕事をしてみたい」というような、モチベーションをあげられる要素が多い方が幸せだと思います。仕事はやりたいことだけをやれるわけじゃないから、好きなものをたくさん持っていたらなんでも楽しめるし、経験を重ねてできることが増えると、良いものが作れるようになっていくはずです。そうしたら、もっと楽しくなる。
米田 『家事ヤロウ!!!』も早い時間帯(毎週水曜深夜0時20分)になりましたので、番組の中身を良いものにできるよう、僕たち自身も楽しみたいです。
インタビュー・テキスト:河野 桃子/撮影:TAKASHI KISHINAMI/編集:CREATIVE VILLAGE編集部
番組情報
「ワンオペ家事」が問題となる昨今、 将来のことを考えて “家事ができる男”になっておきたい!
これまで家事に向き合う機会が少なかった独身男3人が 今さら聞けない家事の基礎中の基礎から、 今まさにメディアで取り上げられている最新家事まで、 恥ずかしげもなく家事を一から学んでいく番組です。
公式サイト:https://www.tv-asahi.co.jp/kajiyarou/
『家事ヤロウ!!!SP〜芸能人リアル家事24時〜』放送!
こちらもお楽しみに!