2018年5月、IT人材事業を主軸に事業展開を行うギークス株式会社のゲーム事業部門を基盤とし、ゲームに特化した新会社G2 Studios株式会社が設立されました。『アイドリッシュセブン』をはじめとした女性向け人気コンテンツのゲームアプリ開発を一手に担いながらも、新しい分野にも積極的な展開を目指す、ゲーム業界で現在大注目の会社です。

今回は、G2 Studiosでデザインを手掛ける三人の女性にインタビュー。それぞれ異なる経験を積んでG2 Studiosに転職した彼女たちは、今の環境をどう見ているのか。女性デザイナーのキャリアの考え方や転職での経験談をお伺いしました。

Case.1 「ゲーム業界一筋」Qさんの場合

ゲーム業界で通算7~8年のキャリアを積むQさんは、姉の通う美大で見たグラフィックデザインに心を奪われ、デザイナーになることを決意しました。ゲーム業界一筋のキャリアを持つ彼女には、この業界がどのように見えているのでしょうか?

Qさん
大学卒業後、女性向けゲーム(コンシューマー)会社に勤め、イラストの着色、UI、漫画のタイトルロゴや中のデザインなどを行う。
その後、ゲーム(ソーシャルゲーム)会社へ転職し、UIデザイナーとして、イベントロゴやアイテム作成、カード作成などを手がける。
女性向けゲームに携わりたいという思いから、ギークス(現:G2 Studios)に入社し、UIデザイナーとしてゲーム内イベントデザイン全体の作成やガシャバナー、アイテム作成などを行っている。
ここ最近よく2.5次元舞台を見ている。

――G2 Studiosに入社されるまでの経緯をお聞かせください。

Qさん:新卒で女性向けコンテンツを手掛ける会社に入社したのですが、会社都合で転職を余儀なくされて。男性向けを主力とする会社に転職することになったのですが、しばらくして私が本当にやりたいのはこれではないと感じるようになり、二度目の転職を決意しました。ギークス株式会社(G2 Studios株式会社の前身)に入社したのはその時です。最初からこの会社に狙いを定めていたので、他社の面接は受けていません。


――どのような点が魅力で、この会社を希望したのですか?

Qさん『アイドリッシュセブン』(※1)が大好きで。こんなに素敵なゲームをつくるためには、つくっている会社に入るのが近道だと思ったんです。

(※1)『アイドリッシュセブン』…2015年8月にリリースされたスマートフォン用ゲーム。開発をギークス(現在はG2 Studios)が担当

――なるほど。落ちた時のことは考えていましたか?

Qさん「落ちたらその時考えよう」と思っていました。複数の会社を並行して進められるような性格でもなくて。

――転職して、思っていた働き方は実現できましたか?

Qさん:ええ、もちろん!前職は毎日定時で帰宅できる環境でしたが、つくりたいゲームの方向性が違ったので、仕事にやりがいを感じることができなかったんです。でも今は、本当にやりたいことがやれている充実感があります。G2 Studiosではイベントやリリースのタイミングなどで残業することもありますが、フレックスタイム制を活用して、業務が立て込んでいない日に早く帰ったり、昼に出社したりできますし。自分で時間を調整できるので、この働き方は私に合っていると思います。


――やりがいのある仕事になり、プライベートの時間も充実。素敵な転職ですね。
話は変わりますが、Qさんはプライベートでどんなキャラクターを推していますか?

Qさん『Free!』のイワトビちゃんがイチオシです。かわいい…(照)。

――あれ? 人間じゃないのですか?

Qさん人も好きなのですが、マスコット系も同じくらい好きなんですよ。G2 Studiosの手がけているコンテンツだと、『ツキパラ。』(※2)のナビウサも好きです!

(※2)『ツキノパラダイス。』(通称:『ツキパラ。』)…2017年4月リリース。『ツキウタ。』キャラクターなどが登場するリズムゲーム

――女性向けコンテンツを手がけるうえで、女性の視点はどのような時に活かされますか?

Qさん:ユーザーに好まれるデザインを考える上で、女性の視点は有利です。私の場合、女性向けコンテンツを手がけるのはG2 Studiosで二社目ですから、この視点は特に養われていると思います。


――Qさんから見て、「ゲーム業界あるある」だと思うようなことはありますか?

Qさんデザイナーは女性が多いです。なかでもUIデザイナー。今までいた会社でもほぼデザイナーは女性でした。この業界では女性のほうがデザインを考えることが好きな方が多いのかなと思いました。

――ゲーム会社に転職するうえで、何を重視したらいいと思いますか?

Qさん自分がやりたいことと、会社の方向性が一致しているか。私がそうだったように、「このコンテンツのようなゲームがつくりたいからこの会社に入る」という明確な軸があるなら、それだけで面接を受けてみる価値があると思います。

――説得力のある言葉です。この後のキャリアプランはどのようにお考えですか?

Qさん:私は入社してそんなに長くないので、まずはお仕事を頑張って給与UPしたいですね。G2 Studiosには「Buddy賞」といって、頑張った社員を評価してくれる制度があって、マネジメントのスペシャリストも、技術のスペシャリストもフラットに見てくれますから、仕事に集中できます。

私は人に指示を出せるほどのスキルがあるわけでも、人の上に立ちたいという欲があるわけでもないので、これからもずっと何かをつくっていく、デザインのスペシャリストになりたいです。

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Case.2 「印刷からゲームへ」Sさんの場合

趣味の絵を仕事にしたいと専門学校に入学し、印刷会社でデザイナーとしてのキャリアをスタートさせたSさん。全くの未経験からゲーム業界に挑戦することになった彼女は、ゲーム業界での仕事をどのように感じているのか。率直な思いを語っていただきました。

Sさん
専門学校卒業後印刷会社にデザイナーとして勤務。
元々絵を描くことや漫画・ゲームが好きだったので同じデザインでも、よりイラスト色の強いことができるゲーム会社への転職を考えギークス(現:G2 Studios)へ入社。主にSDの作成、他ゲーム内でのアイテムイラスト作成を担当している。

――印刷会社からゲーム会社への転職。異業種への転職に踏み切った理由はなんでしょうか?

Sさん前職の印刷会社は漫画とかゲームとか一切関係ない会社だったので、趣味を仕事にしたくなって。

――言いづらいかもしれませんが、待遇に不満があったとか?

Sさんいいえ。前職の会社に不満はなかったのですが、長いこと一社に留まっていましたから、キャリアアップもかねて転職を決意しました。

――未経験ともなると、面接を通過するのも大変だったと思いますが、工夫されたことはありますか?

Sさん:当時、ギークスからリリースされていたコンテンツのイラストに合わせてポートフォリオを作成したり、自分が関わりそうなコンテンツをプレイしたりしました。

女性向けの会社を狙っていたわけではないのですが、私が入社した頃はソーシャルゲーム業界が勢いをつけ始めた時期だったので、なかでも勢いのある会社に入った方がよいかなという考えでこの会社を選びました。


――入社してみて、未経験だから困ったこと、前職と違うと感じたことをお聞かせください。

Sさん:前職は小さな会社だったので、コミュニケーションを取らなくても一人で完結する仕事が多かったんです。ところが、G2 Studiosは人数が多いし、業務中にコミュニケーションをとる機会がよくあって。まったく違う環境で最初は戸惑いもありましたが、業務で使うソフトは前職と同じでしたし、わからないことは自分で勉強して、それでも困ったらチームメンバーや同期が支えてくれる。そんな環境でしたので、未経験をハンデに感じることはなかったです。


――待遇面での変化はいかがでしょうか?

Sさん前職はいつも定時で上がれる環境だったのですが、ゲームをやったり、絵を描いたり…家に帰ってもやることがいっぱいあるので、朝がしんどかった。でも今はフレックスタイム制だから、夜更かしした翌日は少し遅く出社できて助かっています。

――Sさんはどんな絵柄の作品が好きなのですか?

Sさん「無双」シリーズのような、ガタイのいい、女性向けにはなかなかいないタイプのキャラクターが好きですね。あとは人以外のキャラクター。ジークレストさんの『夢王国と眠れる100人の王子様』は人間キャラクターだけでなく獣人キャラクターも出てくるのでこういった女性向けには珍しいところに興味をもちました。

――注目するポイントが独特ですね。休みの日もゲーム・お絵描き三昧な姿が想像できます。

Sさん:お仕事絵と趣味絵は違いますから、気分転換にちょうどいいんですよ。もちろんそれだけじゃなくて、雑貨屋に行って女性が好むデザインをインプットしたり、アニメショップに行ってグッズの売れ行きからファンの好みをリサーチしたりもします。

――入社してみて、ゲーム業界ならではと思うことはありましたか?

Sさんプライベートで遅くまでゲームやっているから、朝弱い人が多い!(笑)
でも、みんな楽しそうに仕事しているんですよね。趣味と実益を兼ねているなと思います。

――今後のキャリアについてお聞かせください。

Sさん:「好きなことをし続ける」キャリアを歩みたい。役職に就きたいといった欲はなくて、私がつくったものをユーザーが「いいね!」と言ってくれるような、そんなものをつくり続けることが私の目標です。

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Case.3 「紙・Web・ゲーム、3分野を経験」Mさんの場合

紙好きが高じて新卒でDTPオペレーターとなるも、その会社でWebサイトのコーディングを経験し、Webデザインに興味を持ったMさん。紙・Web・ゲーム、3分野のデザインを経験した彼女が目指すキャリアとは?

Mさん
専門学校卒業後、紙媒体で DTPオペレーターとして従事。
その後、Webデザインに興味を持ち、Webデザイナーへと転職。
「もっとゲームのデザインしたい」と思い、ゲーム会社へ Webデザイナーとして転職。
スマホで 3Dオンラインゲームを主に制作している会社で、WebViewで表示するお知らせやショップ等部分のデザイン、コーディング本番反映、ショップのバナー、公式サイト、事前登録サイトなどを担当。
その後、現在の G2 Studios(ギークス)へ UIデザイナーとして入社し、UIデザインに携わっている。

――DTPデザイン・Webデザイン・UIデザインの3つを経験されていますが、なぜ、ギークスに転職されたのでしょうか?

Mさん:ゲーム会社でWebデザイナーとして働いているうちに、幼いころにファイナルファンタジーを遊んでいた時のワクワクが蘇り、「ゲームをつくりたい」と考えるようになって。いろんな会社を受けたなかで、ギークスの面接が一番フランクで、面接が苦手な私でも素直に本音を出せたこともあり、ここに決めました。


――入社してみて驚いたこと・予想外なことはありましたか?

Mさん実は、担当するだろうと勝手に思っていたコンテンツがあったのですが、入社したら違うところにジョインすることになって(笑)。まだまだ始まったばかりのコンテンツで、やることも多かったので、いろんなものをつくらせてもらいました。

――転職して一日のタイムスケジュールはどのように変化しましたか?

Mさん:前職は定時出社・毎日残業が当たり前でしたが、G2 Studiosはフレックスタイム制があるので、自分の裁量で時間を調整できていいですね。早く帰れた日やG’Friday(ジーフライデー※「G2 Studiosの制度・福利厚生の一例」参照)の日は、部活動に参加して映画を観にいくこともあります。

ただ…早く帰れることは確かに素敵なことなのですが、私たちにとって一番嬉しいのは、頑張ってつくったものでユーザーが喜んでくれること。自分たちが一番のファンであり、ユーザーだと思っていますから、時間ができたら、コラボカフェに行ったり、イベントに行ったり、いつもコンテンツのことを考えています。

――ファンの皆さんを大事にされているのですね。

Mさん版権モノにはファンがいらっしゃるので、ファンを大事にしなければ、という思いは強いですね。版権元も私たちを信頼して、我が子のように育ててきた作品を預けてくれているのですから、その責任は重大です。版権を扱う場合、開発元は意見を言えないことが多いと聞きますが、G2 Studiosの場合は意見をしっかり言って開発していますので、より愛着が湧きます。

――Mさんはデザインチームのリーダーと伺っていますが、仕事の進め方で工夫されていることはありますか?

Mさん:チームのデザイナー陣がなるべく同じ仕事をできるようにしています。私が他のメンバーの仕事をすることもあれば、その逆もある。こうすることで、急なお休みにも対応できるし、私も休みが取りやすくなりました(笑)。それに、いろんな方面の仕事ができた方が、メンバーがアートディレクターなどの道に進むときに良いと思うんです。一つの業務だけに特化してしまうと、後々どこかで困ってしまいますから。


――メンバー思いですね。チーム内のコミュニケーションの特徴をお聞かせください。

Mさんコミュニケーションが苦手な者はチャットツールを使いますし、そうでない者は直接やり取りをする。どちらか一方を重視する環境ではないのが特徴です。自分の意見をしっかり言ってものづくりがしたい人にはお勧めだと思います。

また、私たちのチームの場合は女性の意見に耳を傾けてくれる男性が多い。G2 Studiosでは、男性のゲームプランナーが多いのですが、必ず女性の意見を聞いてくれます。ゲーム業界は男性社会というイメージをお持ちの方も多いと思いますが、もうそんなことないのかもしれませんね。

――Mさんは採用にも一部関わっているのだとか。G2 Studiosのデザイナーに必要なスキルはなんだと思いますか?

MさんG2 Studiosで取り扱っている案件は版権ものが多いので、クライアントがつくりたい!欲しい!と思うものを形にできる、ビジネスデザイナーのような感覚が必要だと思います。たとえば、UIデザイナーで言えばユーザー視点でデザインを制作するということに加えて、プランナーに近い考え方もできるとなお良いと思います。デザイナーとしての仕事に徹するだけではなく、デザイナーの視点から見て、施策に対しての意見を言えると良いですね。

――Mさんの今後の目標を教えてください。

Mさん:一緒に働いているメンバーが気持ちよく仕事ができる環境をつくれる人になることです。みんながキャリアアップできれば、チームの評価も上がる。私の評価が上がるかもしれませんが、それよりも、チームのみんなが楽しく頑張れたら私も楽しいと思うんですよ。

そういえば、デザイナーで近々結婚の予定がある者がいるのですが、結婚してからも働ける環境がG2 Studiosは整っています。たとえば、もし将来、子どもができたとしても現在産休を取得している者がデザイナー陣にいますので、私もそういう時がくれば安心して取得できますし。女性特有のイベントでお仕事を諦める時代ではなくなってきていると思います。

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まとめ

三人の女性に共通していることは、コンテンツを愛し、G2 Studiosの仕事を楽しんでいるということ。彼女たちが関わっているコンテンツの話を振ると、途端に目を輝かせて、キャラクターの魅力やアイテムの制作意図などを語ってくれました。「自分が携わっていると、まるで子どもを育てているかのような気持ちになる」と三人は口をそろえますが、開発したゲームがユーザーに評価される喜びは、自分の子どもが人から拍手を受ける姿を見る親の気持ちと同じなのかもしれません。

子どもがぐずれば忙しく、寝入れば落ち着きをみせる育児のように、ゲーム開発の忙しさに波が存在することは覚悟しなければなりません。しかし、フレックスタイム制などの制度がある会社であれば、時間に融通を聞かせることもできます。G2 Studiosでは2018年5月からこの制度を導入しており、以前と比べて働きやすくなったそうです。三人がそれぞれプライベートをどのように充実させているのかは、是非インタビューを見返してみてください。

ゲーム業界は男性比率が多いとされていますが、彼女たちが楽しそうに話す姿を見ると、ゲーム業界に女性が少ないのは不思議だと感じさせられます。G2 Studiosのような評価制度をもつ会社は珍しいかもしれませんが、今では福利厚生や待遇を整える会社も増え、業界未経験者でもステップアップできる環境が生まれてきました。いろんな経験をしてきた彼女たちも、周りの支えを受けつつG2 Studiosで活躍しています。経験者も未経験者も、ゲーム業界への転職を検討してみてはいかがでしょうか。

G2 Studiosの制度・福利厚生の一例

名称 待遇・福利厚生の説明
Buddy賞 ギークスグループのメンバーである「Buddy」の中で最もプロフェッショナルな活躍をし、Buddyが大切にする10の価値基準『Buddyの心得』を体現、実践した者に与えられる賞。評価に反映されると共に、豪華景品が送られる。
ママサポ ワーキングマザーに経済的な支援を行う制度。復職以降に到来するお子さんの誕生日ごとに3歳まで10万円、最大30万円支給。また、出産祝金として、出産時に別途3万円支給。時短勤務も可能。
部活動 社員が自ら手を挙げてつくることができ、認定されると補助金が支給される。サバゲー部・温泉部・パパママ支援部など現在17の部活動がある。
G’Friday ゲームのリリースなどのイベントが比較的少ない毎月第3金曜日にゲーム部門の全社員が16時に退社する制度。高いモチベーションを維持し、時間への意識を強く持ちスケジュール管理やコスト意識を高めるための制度。
ランチ交流会 社員交流を目的に月に1回開催するランチ会。ランダムで選出された異なるプロジェクトチームのメンバーで、会社で用意したお弁当を囲み、ランチの時間を過ごす制度。
G’Tech 働きやすい職場環境や技術をつくっていく仕組み。複数ある運営タイトルで培った知見を共有することで課題を解決したり、技術を高めるために教えあったりと、組織のことを考えて、メンバーが自発的に企画している。

インタビュー・テキスト:加川 愛美/撮影:TAKASHI KISHINAMI/編集:CREATIVE VILLAGE編集部