ブラックの中に潜むユーモアを感じさせるイラストと文章が個性的なイラストレーターの平松 昭子さんと、書籍装丁からベーシストとしても幅広く活動されているグラフィックデザイナーのCBAさんに、これまでの生い立ちからプライベートなことまで、お話を伺いました。
一枚絵でどう表現するか
CBAさん:絵は子供の頃から好きだったのですが、「将来画家になろう!」とまでは思っていませんでした。それ以上に音楽も好きで高校生の頃からバンドを組んでいました。その後も音楽を続けながら、音楽と関連性を感じていたデザインの専門学校に入ってグラフィックを学びましたが、自分の中を占めるものは絵よりも音楽の方が大きかったです。
卒業後、編集プロダクションに入社して本の装丁やDVDのパッケージデザインなどを手掛け、29歳の時に独立し今に至りますが、紙に関する知識などは実践を通して覚えてましたね(笑)
技術を学ぶよりも“一枚絵”でどう表現するかを考えるのが奥深く好きでした。個人的には具象よりも抽象絵画の方が好きですね。
Masshiva(マッシーバ)として始動されたきっかけ
平松さん:毎年夏に開催されている『SHIMOKITA VOICE』という下北沢でのイベントがあって、昨年2010年にそれぞれ参加し知り合いました。それまではお互い存在すら知らなかったんです。初めてCBAさんを見た時の第一印象は「おもしろそう」と思いました(笑)
ちょうどその頃、ロック・フェスティバル『SUMMER SONIC』のアート・スペースでライヴペインティングをする『ソニッカート』のお誘いをいただいていて、一緒に描いてくれるパートナーを探していました。そこでCBAさんの作品が掲載されているサイトを見て「これだ!」と確信したんです。
そこからユニット・Masshiva(マッシーバ)として活躍するようになりました。
SONICART in SUMMER SONIC 2011
平松さん:去年のソニッカートに引き続き今年もMasshivaとして参加しました。これまでは着物や和装といった女性を中心に描いてきたのですが、今回は少しテイストを変えてセクシーな女性と豹柄をテーマにしました。豹柄は、ファッションとしてはよく受け入れられているものの、アート上ではあまりないと思って作品にとりいれてみました。
CBAさん:すぐ横に設置されたモニターでメインステージの様子は流れているものの、絵を描いているときは絵に集中してしまいますね。
平松さん:とにかく2日間という限られた時間の中で縦1.8m×横5.4mという大きな絵を完成させないといけないので、本当は観たい海外アーティストが何組かいたのですが、自分たちのライヴペインティングだけであっという間に時間がすぎちゃいました。
イヤだと思う事はお互いしない。
平松さん:全体の構成となるベーシックになるものはCBAさんが決めて、それに私が装飾を加えトータルディレクションをすることが多いですね。
例えるなら私が線をや物体を描いて、CBAさんがそこに色をつける。そしてできあがった作品を客観視してみる と「二人が重なったからこの作品ができたんだ」と納得できます。きっとお互いが足りないものをうまく補い合っているんです。
一緒に作品を作っていく上で大切なのは、イヤだと思う事はお互いしないこと。 ただ作品に対しての思いは異なる事もあって、私の場合は今まで経験したことをとても大切にしていて、物事を行う上で過程を大事にしています。
CBAさんと考え方が合わないときは、お互いに素材を提供し合ってそれぞれ個別のアイデアで制作する事もあります。
今後の活動の予定をおしえてください。
CBAさん:お互い今までは一枚画の作品だったのですが、その一枚画が動くアニメーションをAfter Effects(アフターエフェクツ)とPremiere(プレミア)で制作中です。
主に平松さんが原作を担当し、僕が制作を担当しているのですが、音楽の中で培ってきたものを映像化しているので、おもしろい作品に仕上がると思います!
平松さん:実は私は私で映像を作ろうと思っています。お互いに素材を提供しあってそれぞれで作るのでどんなものができあがるか楽しみです。
受ける人がいるということを忘れないでほしい
平松さん:現実と夢の両方をみながらも、今の時代の空気を読んで動くこと。
自分のタイプを把握し、自分を上手くコントロールすることが大切なのかなと思います。 何事も楽しめる人は自分のポジションをわかっている人だと思います。
クリエイターというとアイデアやデザインをとにかくたくさん出さなきゃと考えがちですが、意識しすぎるとバランスが崩れるので自分中心に考えすぎず、アイデアを世に発信するということは、受ける人がいるということを忘れないでほしいです。
CBAさん:それぞれの想いや心に描いたことをいつまでも忘れないで頑張ってほしいです。そういう想いや描いたことをエンジンにして人は動いているのだと思います。
“何かが成長していく”ってすごい
CBAさん:僧侶でもある小池龍之介さんの『もう、怒らない』という本には感銘を受けました。ストレスについての認識が変わりつつあります。また、自分の胸に一度ささった悪いものを増殖させてはいけないと思いました。
また以前から料理をするのが好きです。まずは食材を揃えて、それをどのように組み合わせて創作していくかというプロセスが、絵も料理も頭を使うところが同じだと思うんです。
平松さん:ダイアン・フォン・ファステンバーグが大好きです。 そして『息子』。
自分の中から自然に出てきて、まるで自分を映す鏡のような不思議な存在で、自分という生物の“進化系”というか、「後から産まれてきたこの子はすごいなぁ」って思えるんです。
それから最近はいろいろな植物を育てるのにはまっているのですが、子供と同じように“何かが成長していく”ってすごいことだと感じます。