グラフィックデザイナーは、ポスターなどの広告や雑誌などの出版物などのビジュアルデザインを担当する職種です。特に近年は印刷物の発行数が減少傾向にあるだけに、グラフィックデザイナーへの就職や転職を目指すのであれば、求められる領域をしっかりと押さえることが大前提となります。
グラフィックデザイナーには、デザインを導く論理的な思考やこだわりへの忍耐力など、想像以上にハードな一面が求められるからです。採用の際も厳しくその素養をチェックされる可能性もあるでしょう。グラフィックデザイナーになるためのスキルや適正、必要な心構えとはどんなことなのでしょうか。
グラフィックデザイナーの49.8%は「完遂」にやりがい
グラフィックデザイナーになるには、顧客のイメージをビジュアル化することに喜びやプライドのような持つことが大切です。クリエイターワークス研究所のグラフィックデザイナー・Webデザイナーを中心に聞いた「仕事満足度のアンケート調査」によると、グラフィック系クリエイターはクリエイティブワークを通じて「仕事をやり遂げること(49.8%)」「興味のある仕事ができること(47.6%)」と数値が高く、やりがいを強く感じていることが分かりました。
出典:クリエイターワークス研究所(CWL)「クリエイターの仕事満足度調査⑨」
他にも「自分の成長を感じること(42.4%)」「仕事の成果を認められること(41.9%)」などもやりがいを感じる要素になっています。こうした結果は、グラフィックデザインはエンジニアなどと同様に分業が少ないことから、1人で仕事をやり遂げることに強い達成感を持っいてることが分かるでしょう。
その裏付けとして、「チームとして一緒に仕事ができる(14.8%)」「後輩・部下の成長を感じる(5.2%)」ことにやりがいを感じると回答した割合が少ない結果となっています。
出典:クリエイターワークス研究所(CWL)「クリエイターの仕事満足度調査⑨」
また、グラフィックデザイナーとしての信念で「できることとできないことをはっきりさせる」「クオリティ主義」「目的に応える」「制限の中で最大のクオリティを出すこと」「クライアントの希望以上のデザインをする」などの回答が目立ちました。「完遂」にやりがいを持ちやすいことが別の回答からも推測できます。
グラフィックデザイナーはビジネスプロセスを視覚化する仕事
グラフィックデザイナーの仕事には、芸術的なセンスが求められると思う方が多いのではないでしょうか。しかし、実際はポスターや出版物などのビジュアルによって、顧客のビジネス成果に結びつけることがグラフィックデザイナーの仕事です。つまり「ビジネスプロセスを視覚的に表現すること」が常に求められます。
一定のデザインスキルはもとより、ソフトウェアを使いこなすスキル、さらにビジネス理解や顧客折衝、論理的思考力なども必要なスキルとなるでしょう。平たく言うとコミュニケーション能力、顧客の求めるものを理解するスキルが求められます。そうしたビジネスプロセスを理解することは、デザインの見た目などより重要になるかもしれません。そういう意味では、マーケティングスキルやWeb領域の知識なども持ち合わせていると、重宝される人材になります。
一般的なデザイン知識やツールの基本操作の習得の重要性
グラフィックデザイナーになるには、デザインスキルや知識、デザインソフトの操作スキルを高める必要があります。デザインのスキルを磨くには、デザイン関連の本を読んだり、有名デザイナーの作品に触れたりして、日頃からインプットを増やすように努めましょう。求められるデザインは時代によって変化するため、最新のデザイン動向を押さえておくことも大切です。特にインハウスデザイナーにとっては業界の製品やサービスについても熟知しておく必要があります。
そして、IllustratorやPhotoshop、InDesignといったアドビ製ツールの操作をマスターしておきましょう。デザイナーとして常日頃からお世話になるツールなので、それらは最低限でも使いこなせるようになることをおすすめします。
知っておきたいインハウスデザイナーについて
他社から依頼された案件を制作するデザイナーとは別に、自社製品・サービスなどのデザインを制作するデザイナーをインハウスデザイナーと呼びます。一般企業に勤めているデザイナーなので、デザイン会社に勤めているデザイナーとは職場環境が異なります。グラフィックデザイナーの仕事を探すと、インハウスデザイナーの求人も多いので、仕事内容の違いやハウスデザイナーのメリット・デメリットを把握しておきましょう。
インハウスデザイナーのメリット
インハウスデザイナーは社内での仕事依頼がメインなので、クライアントから急な相談を受けたり、突発的な対応を求められたりすることはほとんどないでしょう。自社でデザイナーを雇用している企業は、規模の大きな企業がほとんどです。そのため、デザイン会社に勤めるよりも待遇が良かったり、安定していたりする利点もあります。
インハウスデザイナーのデメリット
デザイン専業の会社ではないため、雇用するデザイナーの数はそれほど多くありません。企業によっては、1人でデザイン業務全般をこなすこともあります。先輩デザイナーが少ない、もしくはいないため、分からないことがあっても質問できる相手が少ない(いない)難しさを感じてしまうケースもあるでしょう。
デザインの仕事上で発生した問題は、自力で解決する能力が求められます。また、基本的には業界内だけでの仕事を求められるため、広い視野に立って仕事をする機会も少ないでしょう。多くのプロダクトをこなしていきたい、と考える人にとっては物足りなさを感じてしまうかもしれません。
未経験からのグラフィックデザイナー転職は可能
グラフィックデザイナーは未経験からでも挑戦できる職業です。しかし、基本スキルや顧客ビジネスの理解が重要になるため、全くの初心者を採用する企業はそこまで多くないでしょう。よって、スクールに通ってスキルや知識を身につけたり、フリーランスで仕事を受けて実績を作ったりする必要があります。さらに、ツールに関する資格を取得して専門性を高めることも有効です。いずれにせよ、地道な努力が必要となります。
スクール・専門学校に通って技術を習得する
スキルを磨くには、スクールや専門学校に通うことをおすすめします。独学でデザインを勉強するのは難しく、専門の教師に教わるのが技術習得の近道です。時間に制約がある場合は、自宅で学べるオンラインスクールなどを活用してはいかがでしょうか。スクールや専門学校である程度スキルが身についたら、ポートフォリオを作成してみましょう。名刺やポストカードを自作して、印刷所に依頼するまでの一通りの流れを経験することで仕事の要領がつかめるはずです。
人脈を駆使してデザインの仕事を請け負う
デザインの実務経験を積むには仕事をこなすのが一番です。デザイン会社に勤めなくても、実績を積む方法はいくつかあります。たとえば、知人に声をかけてみるなどの方法です。「個人の名刺を作りたい」「結婚式の招待状を作りたい」「年賀状のデザインをしてほしい」などの仕事がないか聞いてみてください。
お店などに営業して仕事をもらうのも1つの手段です。名刺やチラシ、ポスター作成などの需要があるかもしれません。また、クラウドソーシングを利用する方法もあるでしょう。クラウドソーシングにはコンペ形式での仕事依頼があるので、コンペに挑戦してみましょう。うまくいけば仕事の受注につながり、実績を作るには有効な方法です。
未経験でもOKだが、仕事に向き合う姿勢が重要に
【グラフィックデザイナー 未経験 転職のまとめ】
- グラフィックデザイナーに求める素養の1つが完遂
- デザインスキルに加えて経営視点があることが理想
- 未経験からの転職は可能だが、仕事を得る努力が不可欠
グラフィックデザイナーとしての経歴がない場合においても、転職することは可能です。しかし、全くの初心者を採用するケースは限りなくゼロに近いのが現状でしょう。そのため、ツールの使い方や業界知識、コミュニケーション能力、その他のビジネススキルを習得しておく必要があります。
現在の職種にもよりますが、クリエイティブ関係の制作ディレクターなど、関連業種で活躍している方は、グラフィックデザイナーに転職できる可能性が高まります。いずれにせよ前向きに努力を積み重ねて、グラフィックデザイナーとして一人前になるという気構えが重要になるでしょう。