■ポール・マクギガン監督の才能

『ホワイト・ライズ』や『ギャングスター・ナンバー1』、『ラッキーナンバー7』など、クールでスタイリッシュな映像美と繊細なディテールを駆使して描く世界観が持ち味のマクギガン監督。『ラッキーナンバー7』のあのラストにビックリした方、たくさんいらっしゃるのではないでしょうか。

そんなマクギガン監督が新作として選んだのが、念動力、予知能力、テレパシーなど超人的なパワーを持った超能力者たちが、ある重大な秘密が隠されたケースとひとりの美しい女性をめぐって起こす壮絶な戦いを描くアクション・サスペンス大作『PUSH 光と闇の能力者』です。

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超能力がテーマの映画と聞くと、スーパーヒーロー同士が非日常的な戦いを繰り広げるシーンを思い浮かべるかもしれませんが、この作品はそうではありません。

「ある意味、非常にリアルに感じられる空想の物語を語りたいと思った。驚くべき能力を持つ人たちの世界に命を吹き込むというアイデアに引きつけられたんだ。」と語るマクギガン監督。

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キャラクターの重要性を最も意識したという彼が下した決定のひとつが、キャラクターたちに焦点を当てる手助けとしてのみ、慎重にCGを扱うということでした。結果、超能力アクション映画にも関わらず本作でブルースクリーンを使ったのは車のシーンのみとなりました。香港は交通渋滞が多い街ですのでこれだけは仕方なかったようです。

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監督やスタッフが吟味したCG効果のおかげか、迫力あるアクションシーンの中に、超能力の存在を思わず信じてしまいそうになる程リアリティ溢れる描写が満載です。ニック(クリス・エヴァンス)やキャシー(ダコタ・ファニング)も、まるで今すぐ友達になれそうなくらい!

また、映画監督になる以前、マクギガン監督はカメラマンだったため、それが今も彼のビジュアルスタイルに影響を及ぼしています。色が好きな彼の期待に応えるため、スタッフは色が爆発するモザイクのような街作りを心掛けました。

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制作のグレン・ウィリアムソンはこう語っています。

「ロケハンの最初の頃にマクギガン監督は舞台となる香港の写真を撮りまくった。色作りは、撮影の準備期間中に彼のオフィスで、このときの写真の1枚から始まった。タクシーが連なる香港の典型的な大都会の風景だった。色は“赤”。中国文化の伝統的なラッキーカラーだ。そしてすべてのタクシーの上にグリーンのステッカーが張ってある。その現実の環境から得た2つの特別な色にポールは魅せられ、それがこの映画全体を染める色になった」。

実はつい最近私も「PUSH 光と闇の能力者」の予習も兼ねて香港に行ってきました。絵具をばら撒いたような街のカラフルな色彩が刺激的でした。
そんな香港の街にインスパイアされた画面作りも「PUSH 光と闇の能力者」の魅力の一つとなっています。

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■実はゲリラ撮影!?香港での撮影秘話

本作の製作者たちは、複数の場所でロケハンをおこなった結果、中国王朝、英国植民地文化、未来都市が魅力的に融合する香港を、舞台として選びました。

「ハンフリー・ボガートの『カサブランカ』のようなイメージを思い描いていた。1930年代と40年代のカサブランカには、あらゆる種類の悪漢どもが集まっていた。誰でも入れる街だから、潜伏するには最適の場所だったんだ。誰も彼らに手出しできない。我々は自分たちのカサブランカを見つける必要があった」とマクギガン監督は説明しています。

香港での予期せぬ撮影の難しさは、映画製作の過程で“公式な”アプローチが取りにくいことにありました。アメリカでは承認された撮影場所を守らなくてはなりませんが、香港ではゲリラ撮影が当たり前なのです。

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結局、香港の人々の日常的な喧噪に重きを置きたかったマクギガン監督は、今までの馴染んだ撮影方法を捨て、香港流の“ゲリラ”タイプの方法に撮影を切り替えました。試行錯誤の最終的に取られた方法は、カメラトラックの上のカメラを隠し、小さな穴を通して撮影することでした。俳優たちをストリートに送り出し演技してもらうのです。この方法ではワンテイクしか撮影できず、背景が変わり続けるため編集することもできません。その“勘と経験に頼る”仕事の仕方が、この映画にただならぬ緊迫感を作り出しました。

特に、カミーラ・ベル演じるキラが“ディビジョン”の捜査官に連れて行かれるシーンは見ものです。ワンチャイという活気のある市場でカメラを隠しながら撮影したというこのシーン、香港の喧騒がうまく画面に表現されています。

豪華キャスト・スタッフが贈るアクション・サスペンス大作「PUSH 光と闇の能力者」。
その面白さをぜひ劇場でお楽しみください!

 

PUSH 光と闇の能力者
11月7日(土)より新宿ピカデリー、丸の内ピカデリー他全国ロードショー

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監督:ポール・マクギガン
1963年9月19日、スコットランド・ベルシル出身。
TVドキュメンタリーシリーズのカメラマンとしてキャリアをスタートし、その後映画製作の世界へ転身。

初めて携わったのは、アーヴィン・ウェルシュのショートストーリー「The Granton Star Case」を脚色した作品で、後にウェルシュの三作品を基にしたオムニバス映画『アシッド・ハウス』(98)の一話に組み込まれた。
00年『ギャングスター・ナンバー1』で俳優のポール・ベタニーと共に国際舞台に躍り出た。
以後、『仮面の真実』(03・未)、ジョシュ・ハートネット主演作『ホワイト・ライズ』(04)、好評を博した『ラッキーナンバー7』(06)などのアメリカ映画で次々と成功。鋭いビジュアル感覚で、高い評価を得ている。

【主演】
クリス・エヴァンス、ダコタ・ファニング、カミーラ・ベル、ジャイモン・フンスー

【ストーリー】
第二次世界大戦時より国家によって育成された特殊能力者たち。彼らはケネディ暗殺やベルリンの壁崩壊など、数々の歴史的事件に関与してきたとされている。

時は現代。能力者たちは世界中に散らばり、身を隠しながら生活していた。ムーバー<念動力>の能力を持つニック(クリス・エヴァンス)もその一人だった。

ある日、ニックの元にウォッチャー<未来予知力>の能力を持つキャシー(ダコタ・ファニング)が現れ、キラ(カミーラ・ベル)という女性を探し出すのを手伝って欲しいと頼まれる。キラは“ディビジョン”の名で知られる、世界中の能力者たちを監視する謎の政府機関から脱走したという。
混乱したニックは断るが、すぐに“ディビジョン”のリーダー、カーバー(ジャイモン・フンスー)が送り込んだ能力者たちから命を狙われ始める。ニックは自分に与えられた運命、そしてキラが鍵となる政府の恐ろしい陰謀にも気づき、キャシーと共に戦うことを決意する。しかし、キャシーには、自分もニックも死んでしまうビジョンが見えていた…。

果たして彼らは自分たちの未来を変え、政府の陰謀を阻止することができるのか―。

■公式HP
http://www.push-movie.jp/