テレビ朝日で人気の深夜番組『あざとくて何が悪いの?』が、3回の単発放送(2019年9月、2020年4月、7月)を経て、10月からレギュラー放送化。
山里亮太×田中みな実×弘中綾香 が“あざとさ”について語り尽くす同番組は、毎回SNSでも即トレンド入り、翌日にはネットニュースにもなるほどの熱狂ぶり。
インターネットにおける盛りあがりを作るためには何が必要なのか? 演出・プロデューサーの芦田太郎さんに、若者に注目される番組の作り方を伺いました。
芦田太郎(あしだ・たろう)
1985年、東京都生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業。2008年 テレビ朝日入社。以来バラエティ番組の制作を担当。『あいつ今何してる?』『さまぁ~ず論』『シタランドTV』『なにわ男子と一流姉さん』の演出・プロデューサーを担当。10月10日よりレギュラー放送がスタートした『あざとくて何が悪いの?』の演出・プロデューサー。
『あざとくて何が悪いの?』とは?
世のはびこる“あざといエピソード”をVTRで再現。そのテクニックについて、「許せない」「これは私もやる」など、田中みな実と弘中綾香アナウンサーが徹底的にトークし、山里亮太がツッコむスタイルで人気を博してきたバラエティ番組。これまで単発番組として放送されてきたが、今秋からレギュラー放送化。
田中みな実の魅力を引き出すワードが“あざとさ”だった
──この企画は「田中みな実さんのパワーを120%発揮できる企画って何だろう?」という着眼点からスタートしたそうですね。
企画を思いついたのは田中みな実さんの写真集が大ヒットする前。“ぶりっこキャラ”でバラエティ番組に出演し、嫌われる役目を何周かまわったところでした。その頃から田中さんは自分の美を突き詰めたり、“どれほど計算してかわい子ぶっているか”を自らネタばらししていたのですが、そんな唯一無二の個性を「企画」というお皿に乗せて、より輝かせられないかと思ったのが始まりですね。
──「魅力を見せたい」という思いが先行していたんですね。
自分の企画に出ていただくならば、自分にしかできない方法で魅力を引き出したい。それに、人と違う番組を作らないと意味がない。「田中みな実さんを輝かせるためになにがいい?」と彼女のストロングポイントについて考えた結果、『あざとい』という言葉に繋がりました。
──番組内容も、『あざとさ』を武器にする人を馬鹿にせず、魅力だととらえる肯定的なスタンスになっていますよね。
「こんなに努力して人の気を引いてるんだから、悪く言われる筋合いないよね?」と、肯定の姿勢で世の中をとらえたら、もっと世の中が平和になる気がします。あくまでも「何が悪いの?」という番組なんですよ。ぶりっことか計算を悪いことのように見せるステレオタイプな番組にはしたくないんです。
とはいえ、自分があざとい計算をされたら「なんだこの人!?」とむかつくかもしれない(笑)でも、むかつきながらも「可愛いからいいか!」と思うんじゃないかな。それはつまり魅力的だということ。大事なことですよ、「あざといけど、可愛いからいいか!」って思えることは。
SNSで“小さな熱狂”をたくさん作ることが大事
──視聴者層は20代が多いとのことですね。
僕はずっと19時からの『あいつ今何してる?』(テレビ朝日系)という番組を担当しているのですが、ファミリー層や自分の親の世代が中心でした
──若い人達が盛りあがるように、どんな仕掛けを工夫されていますか?
ネットニュースになったり、SNSで盛り上がったりすることは意識しています。1回目の反響は予想外だったんですけど、2回目の放送を経て、3回目からは『局所的な熱狂をたくさん作る』ということを意識しました。
写真は、2018年インタビュー取材時を流用
──というと?
3回目の放送では、元欅坂48の今泉佑唯さん、元AKB48のぱるる(島崎遥香)、人気声優の内田真礼さん、女優の中村ゆりかさんなど、それぞれ固定ファンを持つ方をブッキングしています。すると、その方々のファンが発信してくれ、トレンドになって盛りあがる。また、番組の公式YouTubeでオリジナルダンス踊ってもらったのもネットニュースになりました。元AKBのぱるると元欅坂の今泉さんが一緒に同じ画面で踊ったことで、ファンの方に喜んでいただけました。
──キャスティング部分、かなり意識されているんですね。
番組の画づくりも工夫していて、パッと見た時に「面白そう!」と思える画作りを心がけて、テロップなどを入れています。大喜利的にすることで、SNSでツッコんでくれる人が増えているような気がします。
──説明なしで面白さが伝わる画づくりは、今の時代にとって強い武器になります。
もうひとつ重要なのが音楽ですね。本編で流す音楽を、音楽チャートでトップに入るようなどメジャーものではなく、しっかり番組の世界観にあいながらも、局所的に熱狂するファンの方がいるような選曲を心がけています。
僕も音楽が好きなので、いろんなアーティストさんの良い曲を聞いてもらえたらなと思って番組内に散りばめたら、それぞれのファンの方が喜んでくれて小さなバズが起きたんですよ。「あの番組はカルチャーに精通した音楽を使っているらしい」という雰囲気がうまれてきたので、番組で使っているBGMのプレイリストを作って、番組のTwitterで公開したことでまた反響がありました。
──反響を拾って繋げることで、更なる熱狂を生んでいるんですね。
そうですね。最近は、放送開始10分くらいでSNSでトレンド入りするようになりました。視聴率にはあまり繋がらないですが、今の時代には大事なことなのかなと思います。
二度、三度、見返して完成する“あざとさ”の楽しみ方
──田中みな実さんと弘中綾香さんとの組み合わせには、どんな狙いがありましたか?
今や好きな女性アナウンサー1・2位にランクインするふたりですが番組が始まった頃は、そのランキングが出る前でした。それでも抜擢した理由は、田中みな実さんと掛け合わせる時に、先が予想できない人の方がいいと思ったんです。どうなるかわからない、ヒリヒリする組合せ。
──確かに、あまり想像がつかない組み合わせでした。
弘中さんは田中さんと真逆なんですよ。田中さんは計算して綿密に準備するタイプ。弘中さんは、男性に対してあざとい計算をしないタイプで、物怖じせずに一発で跳ね返すワードセンスや肝の据わり方がある。
結果的に番組も、田中さんの計算されたあざとさの解説に対して、弘中さんが「みな実さんはそこまで考えてやってるんだ、勉強になります!」とあざとさ初心者の視点と、「こういう女性はちょっとやりすぎでいけすかない」という本人の知見の広さがうまくマッチングしました。仲良くならないんじゃないかなと思っていたので、2人には「プライベートでも仲良くしないでくれ。緊張感が面白いから」とリクエストしたんですけど、今では無視して2人で食事に行くくらい仲良くなってしまいましたね(笑)
──意外な組み合わせがバッチリとハマったと。そこに山里さんが入り、3人が互いを受けあっているトークも見どころですね。
想定していたよりも、3人の突っ込む力が大きかったです。番組構成はVTRが主ですが、そのVTRを数倍面白く見せるワイプの力も強い。突っ込んでほしいところをコメントしてくれ、しかも独自の視点があるので引き付けられるんです。放送回を重ねるごとに、3人が喋っていることをテロップ化する回数も増えました。
──思わず、2度、3度、見返してしまうこともあります。
そこが狙いでもあります。まずは集中してVTRを楽しむ。次にあーだこーだ言いながら見る。そして、3人あるいは第2回に出演した千葉雄大さんなど含めて出演者らがなんて突っ込みながら見ているかを一緒に楽しむ。
そもそも、みんな同時にしゃべるので、そもそも一度じゃ出演者の発言が聞き取れないと思うんですよ。何度か見返すと「ここに田中みな実は気づいてたんだ!」と細かいところまで気づけて楽しいのではないでしょうか。田中さんや弘中さんの独特な視点と分析力が、僕たち制作陣の想定を超えたパワーを生んでいると思います。
──10月からレギュラー放送がはじまりました。過去3回の放送との違いはありますか?
基本的にあまり大きくは変わりません。ただ、ゲストが毎回違うので、そのゲストに合った企画をします。あと、短い連載ドラマを作ろうと思っています。たとえば1話5分くらいの7話完結で、主人公のあざとい女の子が気になる男性を落とせるか……というショートドラマを連載するとか。うまくいったらドラマ化したらいいなと、夢は大きく持ってやろうという気持ちです。
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インタビュー・テキスト:河野桃子/企画・編集:向井美帆(CREATIVE VILLAGE編集部)