CGデザイナーとして活動する三井智弥は、明確な目的をもって職場を選び、着実にスキルとキャリアを重ねてきた。
「辞めようと思ったことはないです。寝れなかったり、作業が果てしなく続くとか、辛いことはたくさんありますけど。学生時代からずっとCGをやりたいと思ってきたし、卒業してからもずっとCGだけでやってきましたので」
三井には遥か先までずっと続いているCG道が見えている。

■ やっと入り口に立てた

けっして上手いというわけではないんですが、昔から絵を描くのが好きでした。それと、子どもの頃からマンガが大好きでした。少年マンガはもちろん、妹がいるので少女マンガも、なんでも読んでいました。小学生の頃は、将来はマンガ家になりたいと思ったこともありました。あと興味があったのはパソコンです。小学校からパソコンの授業があって、家にはパソコンがなかったので普段なかなか触れないぶん、よりパソコンに興味を持つようになりました。親戚や友だちのところでパソコンを触らせてもらったりするうちに、中学生の頃から、将来はCGをやりたいと考えるようになりました。絵を描くのが好きなのと、パソコンへの興味がCGに結びついたんだと思います。
パソコンの勉強がしたくて、高校は工業高校の電子科に進みました。CGの授業はなかったんですが、後半からは自由研究のような時間があり、そこで初めてShade(シェード)を使いました。独学で、友だちの顔なんかをCGでつくったり。CGってこうやってつくるんだってことがわかって、やっとやりたいことの入り口に立てた気がしました。
高校生のときにプレステ2に移行したゲーム「ファイナルファンタジー」のCGムービーパートの進化にはすごく衝撃を受けました。それで高校卒業時に進路をいろいろ考えて、できるならCGの道で頑張りたい、何もやらずに諦めるのはイヤだと思い、専門学校への進学を決めました。いろんな専門学校の資料を見て体験入学にも参加し、日本工学院八王子専門学校CG科(現クリエイターズカレッジCG映像科)に決めました。ほかの学科でしたけどちょうど八王子校に行く同じ高校の友だちもいたし、八王子の環境が自分には住みやすく感じたんです。

■ 成長できる場所を求めて

入学してからは日々日々CGの毎日でした。学校で使っていたソフトはMayaでしたけど、僕は高校でShadeをやっていたのでとっかかりはラクでした。CG制作は楽しかったです。専門学校に進んだ時点で、やれるだけのことはやってなんとかCGの仕事に就きたいと考えていたので、学校の課題も真面目に取り組みました。2年間はあっという間なのでやらなきゃダメだって思いが強く、毎日頑張っていました。すごいなって思う同級生もいて悔しい思いもしましたけど、刺激にもなりましたし、いまでも彼らはいい仲間です。
卒業後はすぐに就職という気持ちにならなくて、もう少し勉強したいという思いもあり、教育アシスタントをやりつつ、時々バイトでCG制作の仕事を請け負いながら、スキルを磨きました。2009年にCG制作会社に就職し、約1年半後にポリゴン・ピクチュアズに入社しました。転職したのは、いろんな人と知り合える環境がほしかったのと、最初に入った会社が少人数だったこともあり、広く浅くなんでもやれるようにはなっていたんですが、逆に自分には特別得意なものがないと気づいたからです。しっかりとした分業制でひとつの役割に専念できる現場に入りたいと考えていたところに、ちょうどマスターしたいと思っていたNUKE(ニューク)という合成ソフトをポリゴン・ピクチュアズが導入したことを知り、応募しました。
ポリゴン・ピクチュアズではライティング&コンポジットのスペシャリストとして約3年間経験を積みました。面白い作品や実験的な作品に関わることができましたし、プロジェクトの中心部分でいろいろな人たちと関わって仕事をできるという環境は、すごく刺激的でした。2014年の冬に、現在所属しているCG制作会社のに入りました。少し停滞してしまっている自分を感じていたので、環境を変えて、また新しい挑戦をしたいという思いからの転職でした。

■ 面白いことならなんでも!

不規則ですし拘束時間も長いし、けっこう過酷な業界だとは思います。すごい技術を持っているのに辞めてしまう人もいますし、人間関係で悩んでつまずいてしまったという話も聞きます。辞める理由は人それぞれなのでなんとも言えないですが、続いている人に共通しているのは、弱くはない精神力を持っているということでしょうか。
好きだけでやれる仕事ではないですが、それでもやっぱり好きだからこの世界にいるという人が多いと思います。好きは一番のモチベーションですから、学生の頃は特に、CGへの興味やつくる楽しさ、そういった熱い気持ちの赴くままに、がむしゃらにCGと向き合ってやるのが一番のような気がします。
作品が世に出たときは本当にやりがいを感じますし、達成感が味わえる貴重な仕事です。今回、映画「イニシエーション・ラブ」に参加しました。映画は作業期間も長いし、クオリティーも求められる、何より僕にとっては初めての映画作品ということもあり、とても勉強になりました。僕は面白いことならなんでもやりたいというタイプなんです。今所属している回に参加したのも、フットワーク軽く動けて、チャンスがあれば新しいことにどんどん挑戦できると思ったからです。何より、メンバーがみんな僕より実力があるというのも魅力的で、僕は実写の経験が浅いのでもっと勉強しなければならないし、大変ではありますが、成長できる機会を得られたことを今はとてもうれしく思っています。
テレビや映画やゲーム以外にも、プロジェクションマッピングやドローン(無人航空機)を使った映像など、CGの表現媒体が増えています。そういったものにもすごく興味がありますし、今後は、新しいことにどんどん挑戦し、CGの可能性や魅力を開拓していきたいと思っています。

イメージ
©2015 乾くるみ/「イニシエーション・ラブ」製作委員会

映画「イニシエーション・ラブ」
監督:堤幸彦 出演:松田翔太、前田敦子、木村文乃ほか
2015年5月23日(土)全国東宝系にてロードショー

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