クリーク・アンド・リバー社がゲームタイトルの開発に本格的に参入したのは2015年。その後社内にゲームスタジオを設け、同社オリジナルで開発を手掛けた3DリアルタイムバトルRPG『戦国修羅SOUL』のほか、国内の大手ゲーム会社を中心に多数のゲームタイトルの開発を手掛けてきました。
現在、社内のゲーム開発スタジオでは約400人ものクリエイターを擁し、昨今のクライアントのニーズに合わせた柔軟な体制を設けています。特に3DCGデザイナーの層を厚くし、盤石な開発体制を築いています。

そんな業界でもトップクラスの人員規模を誇るスタジオをまとめているのが3Dスタジオリーダーの畑中幸誠さん。
派遣社員として同社でのキャリアをスタートさせた畑中さんは、一体どのようにスタジオの成長を支える立場へとステップアップしたのでしょうか?そして、現在のスタジオをどのように捉えているのでしょうか?畑中さんにお話を伺いました。

株式会社クリーク・アンド・リバー社 3Dスタジオリーダー 3Dスペシャリスト 畑中 幸誠(はたなか・こうせい)
3DCGデザイナーとして某ゲーム制作会社に勤務した後、2015年7月に同社に入社。
これまでに開発に携わったゲームは「戦国修羅SOUL」「ドラゴンクエストXI 過ぎ去りし時を求めて」「桃太郎電鉄2017 たちあがれ日本!! 」など

キャリアアップを目指し、転職でスペシャリストからゼネラリストへの転身を図る

――畑中さんがクリーク・アンド・リバー社に入社するまでの経緯を教えてもらえますか?

以前は3DCGゲームのデザイナーとして別の制作会社にいましたが、より自分がステップアップできる環境を求めて退職しました。それから転職活動をしましたが、なかなか条件の合う企業に出会えず、なんとか食いつながなければと思っていたとき、クリーク・アンド・リバー社のクリエイター派遣システムを知り、すぐに登録して働き始めたんです。そのまま3年間ほど派遣で仕事をしてから、スタジオに声をかけてもらい、2015年の7月に入社しました。

――派遣での仕事はどうでしたか?

私が派遣登録したときはたくさんの案件があり、1週間ほどで働き始めることができたのは有難かったですね。また、自分のスキルに合わせてピンポイントで仕事を選べるというのは派遣という働き方のいいところだなと思いました。私はもともと背景のモデリングが得意だったので、そのスキルを存分に活かすことができました。

一方で、1人のデザイナーという枠を超えた、より責任のある仕事を任されることはありませんでしたね。それに、プロジェクトが終了するたびにチームが解散してまた新しいプロジェクトが立ち上がる、という流れの中で、組織運営に関わることもできませんでした。

――つまり派遣は「スペシャリスト」の仕事であり、「ゼネラリスト」の仕事ではない、ということですね。

そうですね。私としては、今後のキャリアとして、そろそろマネージメントを経験したいと考えていました。そうした自分のキャリア志向について、当社のエージェントに相談したところ、社内のゲームスタジオを紹介していただいて。当社で社員になってからはいろいろな裁量が与えられて、ゼネラリストとしてのスキルも身についたと感じます。

大規模スタジオで量と質を両立。クライアントには「金額以上の満足を提供したい」

――畑中さんが現在働かれているクリーク・アンド・リバー社のゲームスタジオの規模感を教えてください。

ゲームスタジオには全員で約400人のメンバーがいて、そのうち100人が3DCGのチーム。その中でプロジェクトごとにディレクターがアサインされます。

――その中で現在畑中さんはどのような仕事をされていますか?

3DCGチームのリーダーとして、各プロジェクトの進捗をチェックしながら、今後スタジオ全体としてどう動いていくのかを舵取りをしています。入社後、最初はプロジェクトのディレクターからスタートし、進行管理やクリエイティブチェック、クライアントとのやりとりなど、徐々にマネージメントの経験を積んでいきました。

――クリーク・アンド・リバー社のスタジオの特徴はありますか?

大型案件もお受けできる人員体制を敷いている、国内でも数少ないスタジオです。例えば「10ライン用意してください」と言われても、自社ですべて対応できてしまいます。

――それはすごいですね。しかし、大型の案件となるとクオリティの担保が難しいのでは?

いえ、全て社内で一括対応できるので、データの作りを統一でき、品質も担保できます。スタジオの規模が小さいと、一部を下請けに発注してラインを確保しなければならず、データの作りが違ってきてしまう。うちはそういったことがないので、クライアント様からはよく「データが綺麗ですね」とお褒めいただきます。
私たちの仕事は基本的に受託で行うクライアントワークがメインなので、自分たちのところで完結するのではなく、その後クライアント側のエンジニアが修正しやすいデータでなければいけません。

――大規模なスタジオの体制で「量」と「質」を両立しているということですね。そうしたクライアントワークにおいて他に意識していることはありますか?

クライアントとの“対話”を大切にしています。一方的に作って納品するのではなく、コミュニケーションを密に取り、クライアントの声にとことん耳を傾け、金額以上の満足を感じていただけるよう、こちらからも積極的に提案します。

――スタジオの内部環境についてどんな特徴がありますか?
スタジオのフロアは広いですが、各メンバーの席が近く、チームの意識統一がしやすいです。コミュニケーションを常にとる雰囲気ができています。また、3Dに特化したテクニカルアーティストが複数名いますので、生産性が高まるように常にフルサポートしてくれます。
作業環境を整えていただけるので非常に助かっています。
ちょっとお願いすると便利なツールが魔法のように出てきて、この辺りは規模が大きいスタジオならではの強力なサポートが特徴ですね。

このスタジオが最終キャリアでなくてもいい。若手デザイナーの巣立ちの場所として

――リーダーとしてチームを良くするために取り組んでいることはありますか?

毎週月曜日は朝礼の後に「技術共有会」を開催しています。各プロジェクトが長期で進んでいると、別の案件のメンバーと接する機会が少なくなってしまいます。この会では、案件ごとに総当たり戦のような感じでノウハウやリテラシーを共有します。

――若手の育成という点で気をつけていることはありますか?

“社会人の基礎”を身に付けてもらうような意識付けをしています。
例えば、とても基本的なことですが、勤怠はかなり厳しくチェックしています。こういう業界って「朝は個人が好きな時間に出社してダラダラ働く」みたいなイメージを持たれがちですが、うちは毎朝出社時間には全員が揃っていますよ。これから若い子達がこのスタジオを卒業して次のキャリアに進んだ時のことを考えると、絶対に今は厳しい環境で育つべきだと思うんです。

私がそうだったように、いつかはデザイナーという枠を飛び越えて、さらに責任ある仕事を担う日がくるかもしれません。その時に、小さな約束を守れない人が大きな約束を守ることなどできません。勤怠は初歩的な小さな約束。ここで厳しくするのは愛情と信じてやっています。そんなうちのスタジオを踏み台にして、ぜひ自分の夢を叶えて欲しいです。

実際スタジオを使ってスキルアップし、別の会社に転職する方もいるのですが、このスタジオはクリエイターの生涯価値を高めることを主軸においていますのでポジティブな転職、起業、夢の実現には協力的です。

また、向上心のある子が成長の機会を得られるような環境を社員全員で整えています。例えばデザインの技術で苦手なことがある子がいたとして、それでもその子が克服したいという熱意があれば、仕事から外すのではなく、得意になるために初歩的な仕事から関わってもらうとか。どんな支援をすればその子が叶えたいキャリアを手に入れることができるのかを周りが考え、バックアップする雰囲気ができていて、とても手厚いと思います。

――最後に、今後スタジオをどのようにしていきたいか、展望をお聞かせください。

今の仕事の精度をさらに高めていきたいです。クライアントにさらにハッピーになってもらえるよう、スタジオ全体で成長し、業界の中で存在感を出していきたいです。

編集:CREATIVE VILLAGE編集部