「NARUTO -ナルト-」「ONE PIECE」「ポケットモンスター」・・・・・・大人気シリーズに次々と参加している田中志穂。
原画マンとして歩み始めて4年。最初から徹底的にプロ意識を叩き込まれてきた。「仕事だから締め切り守るのは当たり前。それだけはしっかり意識してやっています」
メジャー作品をやれる高揚感とプレッシャー、チャンスを得た喜びと挫折。それらを繰り返し乗り越えることで、アニメーターとしての未来が開かれていくことを、田中はこの数年で知った。
だから、これからも足りないものをひとつずつ埋め、1段1段階段を上っていく。

 

■ とても感謝しています

現在、テレビや映画のアニメーションの原画を担当しています。去年は「劇場版アニメ 忍たま乱太郎 忍術学園 全員出動!の段」(2011年3月12日公開)の原画をやらせていただきました。「忍たま乱太郎」はずっとテレビで見ていた大好きな作品だったから、参加できてとてもうれしかったです。実はフリーでやっている先輩から劇場版の原画が足りないという情報をもらって、それで電話したんです。そしたら本当にやれることになって! やっている最中は挫折の連続で、実力が足りてない、もっと頑張らなきゃって、落ち込んでばっかりでしたけど。
初めて原画マンとしてやらせていただいた作品は、テレビ「ゲゲゲの鬼太郎」第5シリーズでした。普通は動画で経験を積んでから原画に上がるんですが、私の所属しているスタジオグラフィティでは、新人でもいきなり2原(第2原画)から入るんです。自分が初めて描く原画がテレビで放送されるなんて、すごく緊張しました。2010年には「劇場版NARUT -ナルト- 疾風伝 ザ・ロストタワー」の短編作品「劇場版NARUTO-ナルト-そよ風伝 ナルトと魔神と3つのお願いだってばよ!!」にも参加させていただきました。私ぐらいの年齢だとまだ動画をやっている人も多いのに、劇場作品の原画までやらせていただけるなんてすごいことだし、とても感謝しています。
小学生のときから9年間ずっとバドミントン部に入っていて、学生時代は部活動にあけくれていました。アニメはそこまで見るほうではなかったんですが、絵を描くこととマンガも大好きでした。マンガは自分でもずっと描いていて、本当はマンガ家になりたかったんですがストーリが考えられなくて、結局あきらめてしまいました。でも小さい頃から、将来は絵を描く職業につけたらいいなとは思っていました。
中学校3年生のときに、ゲーム「テイルズ オブ エターニア」のアニメーションを見て感動し、アニメーターという職業があることを知りました。そのアニメーションを手がけていた松竹徳幸さんはいまでも尊敬しています。それで将来はアニメーターになりたいと思うようになりました。

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劇場版アニメ 忍たま乱太郎 忍術学園 全員出動!の段
(2011年3月12日 全国ロードショー!)
© 2011アニメ版「忍たま乱太郎」製作委員会

 

■ 頑張りが就職につながった

高校卒業後はアニメーターになるために専門学校に進もうと思っていました。日本工学院八王子専門学校マンガ・アニメーション科(現クリエイターズカレッジ マンガ・アニメーション科)に決めた一番の理由は設備が充実していたことです。校内も広く環境も気に入ったし、体験入学のときの先生方の印象もよかったので、こんなところで学べたらいいなと思いました。でも入学してからは焦りました。クラスのみんなはアニメーションにとても詳しくて、好きなアニメーターさんの話とかで盛り上がっているのに、私は「原画って何?」って感じでアニメーターの仕事も実は全然理解できてなかったんです。見るもの聞くもの何もかもが新鮮でしたし、すべてが勉強でした。
日本工学院の2年間で一番の思い出は、卒業制作をものすごく頑張ったことです。友だちとふたりで、ディズニーっぽくワンカットで見せる、あえて古めかしい印象の短編アニメーションを制作したんですが、それがとてもいい評価をいただいたんです。一生懸命やったことが評価されとてもうれしかったし、一緒に作品づくりに取り組める友だちと出会えたことも貴重でした。その友だちとはいまも職場の同僚として一緒に頑張っています。
あるとき講師の木下(ゆうき)先生から声をかけていただき、卒業後は木下先生が代表をつとめるスタジオグラフティに参加させていただくことになりました。授業にきちんと出席し、課題にも真面目に取り組んできたつもりでしたから、その頑張りが就職につながったんだと思います。
夢だったアニメーターにはなれたんですが、1年目は大変でした。辛い思い出しかないぐらいです。2日間ぐらい布団で寝られなかったり、1週間会社に泊まり込みなんてこともあって、本当に辛かったです。手が遅い上に、締め切りが重なってしまい、もうどうにも間に合わない。その上、レイアウトがとれてない、背景がきちんと設計されて描かれてない、目指す動きがコンテで出てないと先輩からはダメ出しされまくり全部突き返されるし。クオリティーを上げなきゃ、締め切りも守らなきゃって、気だけが焦ってしまって。さすがにいまはそんなことはありません(笑)。手も早くなりましたし、周りが見えるようにもなり、要領もわかってきましたから。

 

■ 好きなことを仕事としてやれる幸せ

作業はすべて手描きです。私はパソコン苦手ですし、手で描くのが好きなので合っているんです。現場では自分の目と感覚を養えと言われています。学校で基礎は学べるんですけど、やっぱり現場に入ってからが本当のスタートで、一から努力して自分の実力をつけていくしかない。甘くない世界です。でも好きなことを仕事としてやれるって本当に幸せなことです。1年目は、「なんでこんなキツいことやってんだろ?」と思ったこともありました。でもとりあえず3年間は続けなきゃって踏ん張って、やっと動かすことが楽しいと思えるようになってきたんです。最近たまにですが、「このシーンは上手くいったな」ってこともあるんです。ほとんど反省ばかりなんですが。
現在参加させていただいているテレビ「ポケットモンスター ベストウイッシュ」も念願の作品でした。小さい頃から「ポケモン」のゲームで遊んでいたし、テレビアニメは小学生の頃から見ていたので、職場のみんなとも「『ポケモン』に仕事として関われるなんて感動だね!」って言いながらやらせていただいています。上手いのに仕事場が合わなくて辞めちゃう人もいるし、家庭の事情で続けられなくなる人もいます。自分は親の支えもあるし現場にも恵まれていて、ありがたいと思っています。でも一番は描くことが楽しいから。どんなに大変でも、好きだったら続けられるんじゃないでしょうか。いつかはゲームのアニメーションも手がけてみたいですし、「やればできる、頑張れば夢はかなうんだ!」っていまは思っています。

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テレビ「ポケットモンスター ベストウイッシュ
(テレビ東京系にて毎週木曜日よる7時から大好評放送中!)
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