近年、デジタル界隈ではしきりにNFTという言葉が取り沙汰されています。NFTとはNon Fungible Tokenの略であり、非代替性トークンと日本訳される仮想通貨と同様のデジタル資産です。世界で1つだけのオリジナルのデジタルデータであることの証明になることで注目されています。

NFT は3DCG作品においても例外ではありません。メタバースプラットフォームが急成長している現代において、3DCG作品の盗作対策が急務と言えるでしょう。これからはNFTアート化のさらなる普及が予想されるだけに、4年以上のキャリアがある3D/CG/VFXデザイナーであれば、NFTについてより理解を深めることをおすすめします。

クリエイターが知っておきたいNFTの仕組み

メタバースとNFTアート_NFTのイメージ

NFTは「代替不可トークン」「非代替性トークン」などと呼ばれます。偽造や改ざんが難しいブロックチェーン技術によって、所有するデジタルデータについてオリジナルであると証明する仕組みであり、価値証明において効力を発揮します。「代替不可トークン」「非代替性トークン」は、それ以外のものと交換ができない唯一無二の価値を持つトークン(証拠/印)です。そのため、代替不可トークンを正確に理解するには、代替可能なトークンの仕組み把握することが先決です。

代替可能なトークンは貨幣や仮想通貨など

代替可能なトークンの例としては、仮想通貨のビットコインやイーサリアムなどが挙げられます。私たちが日々、買い物などで使う日本円(法定通貨)もいわば代替可能なトークンです。それらの代替可能なトークンは、誰が保有しても価値が変わりません。たとえば、自分と知人が1万円を持っていたとしても、両者の1万円の価値には差がありません。ビットコインやイーサリアムなどの仮想通貨も同様です。所有者によって価値は変わりません。法定通貨や多くの仮想通貨は他のモノに交換することも可能です。

NFTは唯一無二であり、代替できない価値を持つ

代替不可トークンは独自の価値を持っているので、等価のモノに代替えできない点が特徴です。たとえば、自身の創造力を駆使して描いたアート、人気のアーティストや国際的なスポーツイベントのプレミアムチケットなどは、それとまったく同じモノはこの世に存在しません。そうした1点モノをデジタル化してブロックチェーンの技術でトークン化されたものがNFTです。

アナログの作品では鑑定士が本物かどうかを鑑定しますが、デジタル作品はNFTによって価値あるデジタルデータであるかどうかを証明できます。NFTはいわばデジタルにおける「ハンコ」です。本物の証しを示すことができるデジタルデータであることを理解しましょう。

メタバースの浸透で想定される3DCG作品トラブル

メタバースとNFTアート_3D作品のトラブルのイメージ

近年、社会一般にもメタバースが浸透し始めています。メタバースとは、インターネットを介して利用する仮想空間であり、超越を意味する「Meta」と世界を示す「Universe」を組み合わせた造語です。インターネットを介して同空間でのやり取りがリアルタイムでできる、独自の経済圏がある、現実との連動性があるなどの理由から、メタバースへの注目度が一気に高まっています。ではメタバースが浸透すると、3D/CG/VFXデザイナーの仕事にはどんな影響があるのでしょうか。

メタバースの浸透度を深めたFacebookの企業名変更

メタバースが浸透した背景には、Facebookの企業名変更が挙げられます。Facebookは時代の変化を敏感に察知し、Facebook やInstagramといったSNSサービス主流の企業からメタバース領域でもビジネス展開できる企業へと変貌することを視野に入れて「Meta」に改名しました。Metaはメタバースサービスとして「Horizon Worlds」を展開しており、新たな市場においても先駆者的な立ち位置で社会革新を担っています。

メタバースで形成され始めた独自経済圏

Metaの参入が起爆剤となり、メタバースでは独自経済圏が発生するなど、新たな機会創出を狙った企業の出資が増加傾向にあります。そこで注目されているのが「NFTアート」です。NFTアートとはデジタル上の芸術作品をNFTによるオリジナルの証明を指します。たとえば、日本人VRアーティストのせきぐちあいみ氏のNFTアートが約1,300万円で落札されるなど新たなビジネスとして注目度を高めています。メタバース内でNFTアートが売買されるというかつてにはないビジネスが展開され始めています。

新規産業には付き物の悪事を働く人間の存在

メタバース内でNFTアートが落札されるなど、新しいスタイルのビジネスが確立されようとしている事実は、3D/CG/VFXデザイナーにとっても好材料と言えます。しかし、そうした新規産業では必ず悪事を働く人間が出てくるものです。3DCG作品が世の中にありふれるようになると、これを利用して私腹を肥やそうとする存在も現れるでしょう。その場合のリスクヘッジのためにも、自身の作品を守るための仕組みとしてNFTをクリエイターが理解することが重要です。

メタバースがさらに世の中に浸透することで、クリエイターの機会が広がると同時に作品トラブルへのリスクは増大するでしょう。自身の作品を、ブロックチェーンの技術を活用したNFT化することが重要になります。デジタルというアナログよりコピーがより簡単にできてしまう環境下だからこそ、作品をNFTで守るという意識を強める必要があるでしょう。

NFTは3DCG作品の盗作防止や二次利用の規約にも

メタバースとNFTアート_ブロックチェーンのイメージ

3DCG作品をNFT化するメリットは、クリエイター自身の作品であるという証明ができ、盗作対策ができることです。これまでのデジタルデータは無限に複製ができて、それがメリットでもありました。一方で複製が簡単にできることで、所有権の証明が難しい一面もありました。だからこそ、3D/CG/VFXデザイナーが制作した3DCG作品についても、NFTでオリジナルである証拠を明示することが重要になります。

NFTのアート分野での活用はいち早く注目されている

NFTはブロックチェーン技術によって所有権を主張できることに加え、権利保有の証明が可能です。また、NFTは取引次第で権利の譲渡も可能であり、データの移転をブロックチェーン上で追跡もできます。NFTは他の仮想通貨と同様に、ウォレットアドレスを追跡することで所有権の移転も把握できます。ブロックチェーンの技術によって権利の来歴管理ができることが、デジタルデータのNFT化に適する大きな理由です。

そうした背景から、NFTの活用事例ではアート分野が早くから話題になっています。利用者間の二次流通を含めて、デジタルアート作品の売買金額の一部を制作者に還元する仕組みも出来上がっており、新たな市場が形成されてきています。

アート領域でクリエイターが自身の作品の利益を守るためにも、NFTによる3DCG作品の盗作防止や二次利用の規約にも目を向けてることが大切です。著作権表記を作品ファイル内の情報や発表したプラットフォームの説明欄などに記載することは基本となるでしょう。また、オリジナルキャラクターなどは二次利用についての規約も予め明記し、クリエイターが著作による収益を得られる仕組みを構築すること大切です。

法整備やユーザーのリテラシー向上は必須事項となる

NFTはデジタルデータに付随する発行枚数、作成年月日などのメタ情報をブロックチェーン上で公開でき、他のデジタルデータと異なることも識別できます。加えて作品ファイル内の情報や、作品を発表したプラットフォームの説明欄などに著作権表記を記載することも基本です。それらがクリアできれば、3DCG作品に限らず、土地の権利書などの資産のデジタル化も可能でしょう。音楽や動画などのデジタルコンテンツの著作権情報なども、NFT化が検討されています。コンテンツの所有権や作者の著作権を守りながら、コンテンツの流通ができる時代が来ることも期待されています。

しかし、ブロックチェーンやNFTが必ずしも順風満帆とは言えません。NFTの取引はウォレットやマーケットプレイスなどが必要であり、それらに関する知識が必要とされます。まだまだ難解な点が多く、広く普及する障壁となっています。仮想通貨や関連事項に関する法整備なども含めて、どう市場が変化していくかを注視したいところです。

NFTアートを学び、将来の自身の作品の保護を

メタバースとNFTアート_まとめ

【3D NFTアートのまとめ】

  • NFTはデジタルデータのオリジナル性を証明する
  • メタバースの浸透で作品をNFT化することが重要に
  • NFTアート化はクリエイターの権利や利益を守る

NFTは非代替性トークンとして、他の同等の作品とは交換できない唯一無二の存在として扱われます。二次流通によって手数料が入ってくるなどの付加機能をデータに付与できる点も魅力です。たとえば、制作したオリジナルキャラクター作品がクリエイターの手を離れても、購入時に代金の一部を支払うようなプログラムを組むこともできます。そのため、著作権管理団体が存在しなくても済むようになるかもしれません。

近年のメタバースの浸透により作品をNFT化することの重要性が増しています。デジタル作品をNFT化することで、改ざんが困難になり作品の著作権などを守ることにもつながるでしょう。鑑定書や所有証明書をブロックチェーン上で作成することで、改ざんができなくなるうえに、誰でも参照することが可能になります。クリエイターの権利や利益を守るために、今後はNFTアート化の重要度がさらに高まるでしょう。