以前まではライターと呼ばれる物書きの仕事は、新聞や雑誌などのマスメディアに所属する職業に限定されていました。しかし、インターネットが一大産業になった現代ではWeb上に文章を掲載できるメディアが星の数ほど存在するので、ライターという職種はより身近な存在になりました。Webメディア向けのライティングだけで生計を立てているクリエイターも少なくありません。
一方で、同じライターという職種でも人によって力量の差が顕著になってきています。売れっ子ライターに仕事が集まる反面、低単価の仕事をひたすらこなしているものの、収入アップがなかなか実現しない方もいるでしょう。ライターとして多くの仕事が受託するための秘訣は何なのでしょうか。経歴が4年以上に差しかかったベテランライターであれば、キーワードとして「編集視点」と「情報リテラシー」を注視しましょう。

「大人のなりたい職業」の第1位はライター

選ばれるライター_ライティングのイメージ

冒頭でも触れたように以前までライターという職種は、限定的な職業でした。メディアに所属していることが第一条件であり、なりたいと願ってもなれなかった方もいるでしょう。しかし、現在はWebライティングの領域であれば、未経験でも仕事を受けることが可能です。そのため、ライター職を名乗るフリーのクリエイターは増加傾向にあります。
実際にライターという職業の人気も高まっています。選ぶをもっと楽しくする商品比較サイト「エラベル」が調査した「大人のなりたい職業」では、ライターが第1位に輝きました。2位・3位は、公務員や医師などの社会的地位と収入が安定している仕事がラインナップしている中で、ライターが1位に輝くのは多くの方にとって意外に思えるかもしれません。ライターはこれまで脚光を浴びにくい職種でしたが、時代の流れとともにより身近で憧れの職業になったのでしょうか。

選ばれるライター_大人のなりたい職業調査
出典:エラベル(ELABEL)「YouTuber?エンジニア?令和時代の大人1231人のなりたい職業ランキングTOP10!」

Webライターの場合は、メディアや企業に属していないフリーランスであることが多く、収入が不安定になりがちです。また、仕事内容としてもコツコツとした物書きであることから華やかな職業とは言えません。さらに仕事が常に舞い込む売れっ子ライターはほんの一握りであり、これまで脚光を浴びることは多くありませんでした。
しかし、働き方改革や新型コロナウイルス感染症の拡大などの影響から「自分の時間で仕事ができる」「好きな場所で作業ができる」など、その働き方からライターの魅力が再発見されたことがこの調査結果にも表れたのかもしれません。企業や組織という枠組みにとらわれずに、自分の好きなことを仕事にしたいという人が増えたのも要因だと考えられます。
さらに同調査結果では「優しさや面白さがあふれた文章が書けるようになりたい」「文章を書くことは年を重ねてもできる」など、ライターという職業のスキルに興味を持っている方が多いことが伺えます。

選ばれるライター_大人のなりたい職業ランキング
出典:エラベル(ELABEL)「YouTuber?エンジニア?令和時代の大人1231人のなりたい職業ランキングTOP10!」

ライターの他には、YouTuberやWebデザイナー、プログラマーなどIT系やWeb系の職種がトップ10入りを果たしています。ライターも含めて時間や場所にとらわれない働き方の職種に興味がある方が増えていることが顕著な結果となっています。

正しい情報を精査できるライターに生まれる信頼

選ばれるライター_情報リテラシー

働き方や仕事内容などからライター人気が高まり、お互いが切磋琢磨できる環境になった点は非常に良い傾向だと言えるでしょう。仕事を依頼するメディア側に関してもフォロー体制が整備され、初心者でも段階的にスキルを身につけることが可能になりました。一方で敷居が下がったことで、意識が低いライターも残念ながら増加傾向にあります。できるライターとそうでないライター。その差を分けるのが「情報リテラシー」です。

「情報の真贋」ができるか否かがライターの評価を大きく分ける

Webライティングにおいても、人気キーワードを連発すればSEOで検索上位を獲得できる時代は終焉を迎えました。GoogleがE-A-Tを重視するように専門的で権威があり、信頼感の強いコンテンツがより選ばれやすい時代になりました。
そうした時代において真に価値のあるコンテンツを作るためには「情報の真贋」、つまりは「情報リテラシー」による目利きが重要になります。必要な情報を取捨選択し、整理して言葉にできるライターが支持される時代なのです。しかし、真逆のライターも増えているのも確かと言えます。近年は仕事に対して意識が低く、自身で執筆した原稿に責任を持てないばかりか、不確かな情報をもとに根拠のない文章を執筆するライターも一定数いるようです。

情報リテラシーを高めるにはエビデンスの明確化が重要

多くの編集者やメディアに選ばれるライターになるには、情報リテラシーが肝となります。情報リテラシーとは、情報の真贋を判断すること、目的や状況に応じて適切なメディアを活用する判断力を指します。情報リテラシーが十分でないと、SNSで流れてきたフェイクニュースを真に受け、それをあたかも事実のように拡散したり、間違った解釈で流布してしまったりするなど判断ミスが発生しやすくなるでしょう。
特に正しい情報の取捨選択が重要です。情報の正確性を見極めるには、「誰が」「どんな技法(スキル)で」「どんな価値観で」伝えているのかを把握し、エビデンス(根拠)に値するかどうかを的確にジャッジすることが求められます。ライターとして主観を述べるだけでなく、客観的に見て正しい内容であることを証明する意味でもエビデンスの明確化は最重要ポイントとなるでしょう。
情報に対して一歩距離を取り、吟味したうえで正しく取捨選択することが情報リテラシーを高めるコツと言えます。客観性やエビデンスという側面で情報を精査し、正しい情報を理路整然と文章で表現できるようになることが、ライターの理想なのです。

ライターが身につけると武器になる編集視点とは

選ばれるライター_編集視点

書き手ならば自分の考えることや主張をベースに執筆したい面もあるでしょう。ただ、その記事が載るメディアや編集者の特性を見極めずに、思い思いのライティングに終始すると選ばれないライターになりがちです。では選ばれるライターになるためには、何を意識して執筆活動に励めばいいのでしょうか。推奨するのは「編集視点」で実務に臨む姿勢です。

文章品質に加えて後工程を意識した対応が大切

ライターとして重視すべきなのは文章の品質です。しかし、それは書き手として当然のことであり、その他にもトンマナや原稿の体裁、表記、読者層への理解などに目を向けるようにしましょう。なぜなら、それらを無視したライティングは、後工程となる編集者に手間や負担をかけることになるからです。
編集者と聞くと雑誌や書籍を作るイメージがあるかもしれませんが、実際はマーケティングやマネジメント、コミュニケーション、提案、企画まで幅広い業務領域を担当しています。マルチタスクに追われる中でライターの原稿品質が悪いと想定以上に直しに時間がかかります。
「執筆後の後工程で編集者はどんなテコ入れをするのか」「自身が執筆した原稿について編集者はどんな印象を受けるのか」。そうした観点で物事を考えられるライターはやはり編集者から重宝される傾向にあります。編集視点とは、編集者の身になって執筆対応をすると言い換えることもできるでしょう。

編集者いらずの目利きのあるライターは価値が高い

単に文章を書くだけでなく、読み手にとって有益なことはもちろん、メディアにとって価値の高い記事に仕上げるという意識が編集者には求められます。たとえば、ママ向けのメディアへの出稿ならば、テーマの必要性に応じて出生率や教育環境、家族構成、社会背景などを調査するなどの下調べが必須です。
その結果、「現代のママさんは子育てしながらもファッションを楽しみたいという価値観がある」などの新しい気づきを得られることもあるでしょう。さらに調査を進めることで「ファストファッションの流行から安価におしゃれを楽しみたいママさんが多い」などというトレンドの発見につながることもあります。多角的な視野と深い考察は編集視点においては重要視されるポイントです。
このようにライターが編集視点を兼ね備えていれば、編集者にとっては頼もしいことこの上ありません。ライバルが多い群雄割拠の時代においても選ばれる存在になるでしょう。究極的には、編集者いらずの目利きのあるライターは価値が非常に高いと言えます。

まずは目の前の案件に真摯に向き合うべし

選ばれるライター_まとめ

【編集視点 情報リテラシーのまとめ】

  • 社会情勢の変化がライター希望者の増加に寄与
  • ライターが信頼される一番の要因は内容の正確性
  • 編集者いらずの目利きのあるライターは価値が高い

働き方改革や新型コロナウイルス感染症の拡大などの影響により、フリーランスの働き方がより社会に浸透し始めています。その中でライターは公務員や医師という収入の安定性が高い職業を抑えて、大人が目指したい職業として選ばれています。
フリーランス協会が発表した「フリーランス白書2022」では、主な収入源となっている職業において「クリエイティブ・Web・フォト系」が多くの割合を占めるなど、ライターへの関心の高さが伺えます。独立系フリーランス、いわゆる個人事業主の割合も増えており、今後もライターを含むフリーランスの働き方が選ばれる時代が続くでしょう。そうした時代を勝ち抜くためには、「情報リテラシー」と「編集視点」が重要です。