昨今、世界を股にかけて空前の不景気が襲っています。
クリエイターのみなさんも広告宣伝費の削減や、IT投資の圧縮などの影響で
「仕事が減少した…」
「今までならすんなりと通った予算や見積もりが通らなくなった…」
といった悪影響を受けているのではありませんか?
「そう言われれば、近頃急にコンペが増えてきたし、クライアントもクリエイティブより価格を重視するようになってきたなぁ」なんて思い当たる節がありますよね。なんといっても、今は100年に一度の経済不況らしいですから…。
だからといって、嵐が通り過ぎるのを待つがごとく、ただひたすら頭を下げて我慢していればいいというわけではありません。たしかに現在の経済環境はよろしくありません。しかし、だからといって目の前の状況に一喜一憂しているだけでは何も成長につながりません。
こんな状況だからこそ、自分自身の「経営戦略」を手に入れて不況に打ち勝つ強さを身につけるべきです。今までと同じことをやっているだけではダメな状況のときこそ、変化の一歩を踏み出すときなのです。
そう。ピンチのときこそ変化のチャンスなのです。
この変化のチャンスを機会に「できるクリエイターになるための経営戦略」をたたき込んで、一気に飛躍の階段を駆け上がっていきましょう!
「できるクリエイターになるための経営戦略」の栄えある第一回目
起業・独立・フリーで失敗しないための3つの法則:その1のスタートです。
起業・独立・フリーランスの成功を邪魔するのは何?
ただ、与えられる仕事をこなすだけではなく、もっともっと自分らしさを発揮したい。
自分の裁量で仕事の範囲を決めたい。自分のチカラを試したい…。
このコラムの読者には「いつかは起業して社長になってやる」「腕一本で勝負できるクリエイターとして独り立ちしてやる」と息巻いている人がたくさんいるはずです。 また、すでにフリーランスのクリエイターとして、経営者として不況の荒波にもまれている人もいるでしょう。
実際に会社から独立するのではなく「企業内経営者」として、会社員でありながら「経営者」の視点で活躍したい人だってきっとたくさんいるでしょう。
今回は、そんな自立心の強いクリエイターのために、起業・独立・フリーで成功するための「とっておきの情報」をお伝えします。
実は、起業・独立することは別に難しいものではありません。今では株式会社だって10万円程度の予算で設立することが可能です。 しかし、大切なのは起業・独立することではなく、起業した後にビジネスを続けることです。当たり前ですね。
でもこの当たり前のことが思った以上に難しいのが現実のキビシいところ。 企業を継続的に存続させることも難しいのですが、それ以上に困難なのがフリーランスなどの個人事業主の事業継続です。個人事業主が独立3年後に事業を継続している確率はわずか37%に過ぎないという数字がその難しさを物語っています。
つまり、6割以上の個人事業主が、3年以上事業を存続させることができずに散ってしまっているわけですね。
あなたはこの数字をどう受け取りますか?思ったよりも多いですか?それとも少ない?
いずれにしても「独立すること」は比較的簡単ですが、「独立して成功する」となると、とたんにハードルが高くなることは理解していただいたと思います。 でも、そうなるとこんなことが気になりますよね。
いったい何が起業・独立の成功を邪魔しているの?
いったい何が事業の継続を邪魔しているの?
早速、考察してみましょう。
わたしが所属するきずなクラフトが創業5年以内の会社経営者を対象に実施した調査によると、経営者の62%が起業時に
・顧客の開拓、獲得
・売上の確保
・利益の確保
といったマーケティングの問題で苦労しており、その問題を解決できたと回答した経営者は44%と、半数未満にとどまっています。
それだけではありません。 経済産業省のベンチャー企業の経営危機データベースによると、ベンチャー企業が経営危機を引き起こした原因の34%が「商品・マーケティング戦略ミス」なのです。
つまり、「マーケティング」言い換えれば「しっかりとした経営戦略」を持っていないことが、資金繰りと並んで安定的な事業継続を邪魔している要因なのです。
「なるほど。じゃあ、しっかりマーケティングすればいいじゃん」と考えたあなた!
はい。そのとおりです。
しかし、経営戦略やマーケティングと言われてもいったい何をすればいいの?と途方に暮れる人も少なくないでしょう。そんな人のためにこのコラムでは3つの法則というカタチで紹介したいと思います。今回はその法則その1をご紹介します。
法則その1:ポートフォリオを見直し「下請け構造」から脱却
もし現在の仕事が無くなったらどうしますか?
この質問に、あなたならどう答えますか?
ほとんどのクリエイターの仕事が、基本的にクライアントのプロジェクトの与件・仕様に応じて業務を実施する「受託型産業」です。つまり、クリエイターの大多数が「クライアントから仕事をもらう」下請け型のビジネスモデルになっています。
規模が小さければ小さいほど、特定の「お得意先」からの仕事が生命線になりがちで、特に起業・独立したばかりの頃は1~2件の「お得意先」の仕事が収入のほとんどを占めることもあります。
しかし、今のご時世ではいつ「お得意先」から仕事を切られるかわかったものじゃありません。
みなさんも、この不況を期に自動車や電気メーカーが一気に減産を始め、下請けの中小企業がそのあおりをもろに受けてしまい、仕事が無くなって一気に在庫が積み上がってしまった…なんてニュースを耳にしたことがありますよね。
もちろん、これは、製造業だけに見られる特殊な事例ではありません。 クリエイティブ業界にも同じことが起きる可能性が十分にあるのです。
確実に広告予算もプロジェクトの件数も減少していて、コスト削減の大号令がかかっている昨今、確実にクリエイターの仕事も減ってきています。
その余波によって、いつも仕事を発注してくれるお得意先が急に仕事をくれなくなったら…。会社員なら、仕事が無くなっても給料をもらうことができます。しかし、起業・独立した経営者やフリーランスはそうはいきません。 新たな仕事を探せなければ倒産の憂き目に会ってしまうのです。
受託型産業は常にこうした「失注リスク」と背中合わせというわけです。
仕事を「もらう」下請け構造のままだと、得意先を失うという事態に対応することができず、一気に収益が悪化して事業継続が不可能になる危険があります。
こうした「失注リスク」にあらかじめ対応するためにも、早めに下請け構造から脱して、特定のお得意先にビジネスを依存しないビジネスモデルをつくっておくことをオススメします。 つまり、特定のお得意先に依存している会社のポートフォリオを見直すということです。
ポートフォリオとは株や証券などの保有資産がそれぞれどれだけの利益・収益を上げているのかを見る一覧表のことです。 ここで述べている「会社のポートフォリオ」とはクライアントという会社にとって最大の資産の一覧のことを指しています。そして、自社の収益が特定の資産(クライアント)に偏っている場合は、そのポートフォリオを見直しましょうということです。
なぜなら、ポートフォリオが極端に偏っている場合、その資産(クライアント)からの収益が途絶えてしまうと、一気に経営危機に陥ってしまうからです。 ひとつの得意先から仕事が来なくなっても、経営が傾かないようなビジネスモデルをつくっておけば、現在の仕事が無くなっても慌てふためくことはありません。
そのためには、得意先が持っている仕事を「もらい」、そのもらった仕事を型どおり「納品する」下請け構造から脱却して、得意先になりうる企業のニーズ・インサイトを敏感に把握して「仕事が舞い込む」仕組みをつくらなくてはなりません。
その仕組みを実現するには「うちの課題を解決してもらうために、ぜひこの会社に、この人に頼みたい」と言われる「ポジション」を獲得しなければなりません。 きっちりとそのポジションを獲得して、そのポジションを活かしたソリューション(課題解決の方策)を提供する仕組み。
この仕組みづくりこそ「クリエイターの経営戦略」に他なりません。
ただ仕様書どおりにデザイン・設計・制作するだけでなく、相手の真の課題を解決する仕組みを持つクリエイター、これが「できるクリエイター」の条件です。
その条件をクリアするためには「下請け構造」から脱却し、仕事が舞い込む「ポジション」を獲得し、確実に課題を解決するソリューションを提供する仕組みが不可欠です。
たしかに従来のビジネスモデルを脱却する、ということは勇気がいることです。 そして変化というものは常に不安を伴います。
「今までと同じ仕事を続けて、ずっと同じ生活を続けたい」
という思いに駆られるのもわかります。しかし、歩みをやめた時点で時代に取り残されてゆくのです。変化を恐れず踏み出す一歩踏みが「成功」への一歩です。
事業環境が悪化して、ピンチに感じるときこそ、大胆な変化をするチャンスでもありあます。次回はピンチをチャンスに変える「仕事が舞い込む仕組みづくり」の「ポジション」についてお伝えしたいと思います。
こう、ご期待ください。