Webマーケッターは日々幅広くデータを集積して、分析、施策への反映などに取り組んでいるでしょう。正確なデータは、さまざまなマーケティング施策を考えるうえでの出発点となります。そのため、4~5年以上のキャリアのあるWebマーケッターであれば、「DMP(Data Management Platform/データ マネジメント プラットフォーム)」をすでに活用している方も多いでしょう。
DMPを活用するとデータの集積が楽になり、Webマーケティングが効率的に行えます。ただ、データは活用してこそ成果になるので、積極的にいろんなデータを集めて分析して施策を考察するのがWebマーケッターの役割というのが基本と言えます。
パブリックDMPとプライベートDMPの違いとは
DMPとは「データ・マネジメント・プラットフォーム(Data Management Platform)」の略称です。大量のデータを蓄積、管理して多角的な視点から分析し、活用するためのプラットフォームと言えます。マーケティング領域では顧客情報がメインですが、年齢や性別などの属性のほかにも問い合わせ履歴、Webサイトへのアクセス履歴、Webサイト内での行動履歴など、設定次第で詳細な情報を集めることが可能です。DMPにはプライベートDMPとパブリックDMPの主に2種類があるので、まずはその違いを紹介します。
プライベートDMPでは「1stパーティデータ」を収集
プライベートDMPは、自社サイトの購入履歴、ユーザーのサイト上での行動履歴、会員登録、商品の受発注・発送、店舗での購入など「自社で集められるデータ(1stパーティデータ)」をマーケティングに活かせます。個人が特定できるレベルの情報が収集できるため、顧客それぞれに合わせたアプローチを可能にするデータです。
パブリックDMPでは「3rdパーティデータ」を収集
パブリックDMPは、「自社以外で収集されたデータ(3rdパーティデータ)」から提供されるサイトのユーザー年齢、サイトの閲覧情報をマーケティングに活かします。「オープンDMP」と呼ばれることもあります。Cookie、デバイス、IPアドレスなどの匿名情報で構成されており、それらを取り込むことで顧客との接点がなくても情報収集が可能です。
DMPとMAの連携でマーケティングの効率化を
DMPでは膨大な量のデータを集積することができますが、それらのデータを活用せずにいるのであれば、ツール導入の意味がありません。DMPで集積したデータをマーケティングに効果的に活用する際は、MA(マーケティングオートメーション/Marketing Automation)ツールとの併用がおすすめです。Webマーケッターが企画したプランをもとにマーケティング施策を自動化することが期待できます。
効率化のためにはDMPとMAの役割を明確化することが重要
DMPとMAを連携させる際は、DMPでデータを分析、さらにセグメント化することから始めます。そして、セグメントに対するマーケティング施策のシナリオを構築、MAで実行するという流れです。MAで施策を実行したら効果測定とフィードバックを行い、改善を続けます。
「ビッグデータなどの膨大な量のデータをさばき切れない」「データのクレンジングに時間がかかる」などの、DMPに集積したデータの処理の課題にもMAを活用しましょう。データをどのように処理するか設定すれば、MAが自動で処理してくれるわけです。
DMPとMAは、データの集積とマーケティング施策とその用途が明確に異なるので、それぞれの活用する役割を明確にすることが先決だと言えるでしょう。そのうえでデータの収拾がDMP、クレンジングがMAなど役割分担をきちんと分けたうえで連携させると、マーケティング活動がより効率的になるでしょう。
知的財産に昇華させる「DIKWモデル」の実践
DMPを活用して膨大なデータを集めると、それだけで満足してしまうWebマーケッターがいます。しかし、データを苦労せずに入手できる時代になったからこそ、上手く活用する方法を学ぶ必要があります。データをいかに活用するかは、そもそもデータをいかに知的財産に昇華させるかという仕組みを知ることが大切です。データを知的財産に昇華させる「DIKWモデル」を紹介します。
DIKWモデルとは
DIKWモデルとは「データ(Data)、情報(Information)、知識(Knowledge)、知恵(Wisdom)」の頭文字をとった略称です。
【DIKWモデルとそれぞれの役割】
- データ(Data):目的をもって客観的に集められた素材(ex:顧客データベース)
- 情報(Information):データに構造や体系を与え整理した内容(ex:売上データ)
- 知識(Knowledge):人の分析・洞察を加えた情報(ex:人材配置と売上の相関関係)
- 知恵(Wisdom):知識をもとに発揮できる価値(ex:組織改編や多角経営)
上記のように、データは、情報、知識、知恵と知的財産の階層を昇華させることで、より価値を高めることにつながります。特に知識と知恵の領域は、知的情報(Intelligence)に分類されるなど、単に収集されたデータや整理された情報とは異なる点に注目です。データや情報を使いこなすうえでも、知的情報として価値ある財残にいかに昇華できるかが、マーケティングにおいては重要です。
なお、DIKWモデルの考え方は、ダイエットにも活用できます。
【ダイエットに当てはめたDIKWモデルの考え方】
- データ:日々の体重の記録
- 情報:日々の体重の記録を月別にグラフ化、その中で前月の体重推移を抽出
- 知識:前月の体重推移を見ると「月末に体重が減りにくい」と判断
- 知恵:月末の飲み会の多さを要因と判断し、月末の飲み会を減らす動きに努める
DIKWモデルのマーケティング活用例
DIKWモデルを実際のマーケティングに活かす場合には、どんな活用ができるでしょうか。DIKWモデルのマーケティングへの応用は、経験や勘ではなく、さまざまな種類と膨大な量のビックデータとアルゴリムによって処理された分析情報をもとに考えることが重要です。
【スーパーAの食品Bに関するPOSデータ】
- データ:ユーザーの購入日時、性別、購入個数などのすべての数値
- 情報:DMPとMAによってデータが整理されて、グラフ・図の作成、フィルタリングが可能なデータ
- 知識:毎週火曜日の早朝7時から9時にかけて30代の男性が食品Bをよく購入する傾向が分かったことにより、毎週火曜日は30代男性向けの商品在庫を増やすと売上が見込めるという判断
- 知恵:全国的に30代男性は疲労回復に効果が見込める食品の需要が高いという気づき
上記のように、DIKWモデルに基づく「データドリブン(データ駆動)」の仕組みを理解することで、より一層のマーケティング効果が見込めるでしょう。データドリブンとはデータにもとづいてアクションを起こすこと。DMPでデータを集めつつデータドリブンで情報を整え、DIKWモデルに沿って知識や知恵に昇華させることがポイントとなります。
DMPの上手な活用でマーケティングの効率化を
【DMP マーケティングオートメーションのまとめ】
- 市場のデータと自社のデータの使い分けを理解
- マーケティングの効率化のためにDMPとMAの連携を
- 「DIKWモデル」の実践こそ知的財産の価値を生む
近年、集積できるデータ量は、それこそインターネット黎明期に比べて、ビッグデータなどの台頭により、比較にならないほど膨大になりました。ある程度データを苦労せずに入手できるようになったからこそ、上手く活用する術を学ばなければなりません。どんなに「有益なデータ」だったとしても、集積は出発点に過ぎないのです。そこから分析し、精査して、価値ある「情報」にし、その方法論を知ることで「知識」が身につき、最終的にはビジネスの現場で役立つ「知恵」にまで成長を遂げます。
つまり、Webマーケッターは「DIKWモデル」で考える頭が必要です。ツールが著しい進化を遂げているだけに、データ→情報→知識→知恵とどんどん昇華させられる仕組みを作って、楽にマーケティング施策を行えるスキームを構築することが何より重要だと言えるでしょう。