世の中に出回っている本や雑誌、Web媒体の文章を執筆するのがライターの仕事です。しかし、そうした文章はライターによる一次的な制作に加え、校正・校閲といった推敲のプロセスを経て世の中に発信されていることをご存じでしょうか。文章における二次チェックのポジションを務めるのが編集者の仕事です。世の中の出版物のほとんどには編集者が絡んでおり、筆者と読者の架け橋的な存在となることが役目と言えるでしょう。
以前までは雑誌や漫画などの編集者をイメージする方が多かったかもしれませんが、近年ではWeb媒体を主な業務領域とするWeb編集者も増えてきています。では未経験の方が編集者を目指すとしたら、雑誌・書籍・Webのどの領域がおすすめなのでしょうか。また、編集者のスキルや年収などの詳細についても掘下げています。
編集者とは掲載される前の文章を推敲する仕事
編集という業務に関わったことがない方の多くは、文章に関わる仕事と言えば「ライター」をイメージするでしょう。ライターは文章を執筆するのが役目であり、自身の発想や経験から文章を作り出すいわば「ゼロイチ」の仕事と言えます。一方の編集者は、ライターの文章を受けてその内容をより良くするのが業務の本質です。言い換えれば、「推敲」が主な役割であり、「イチジュウ」のように既存の文章をさらに読みやすく、伝わりやすくすることが編集者の務めになります。
編集者はライターが執筆した文章を客観的な視点で推敲することが求められるので、日本語の使い方など基本的な文章作成能力も必要になります。そのため、編集者になる人の多くは、「もともと自分でブログを書くのが得意だった」「好きな雑誌や書籍があってそれを熟読するのが趣味」など文章に関わることが初めから好きな人が多い傾向にあるでしょう。
そもそも編集者の仕事とは?
編集者はエディターとも呼ばれ、雑誌や漫画・書籍などの出版物、Webメディアのコンテンツを企画し、作品として仕上がるまで制作全般を管理する人を指します。編集者の主な仕事は誌面の企画発案・構成を考え、それに必要なイラストや写真・文章をデザイナーやカメラマン・ライターに依頼することが主な業務です。現在はネットでの業務が飛躍的に増加し、WebメディアやWebマガジン・電子書籍の企画や編集担当が増加傾向にあります。
編集者の仕事内容
企画
読者層に合った、独自の企画を考案し、編集会議で提案します。編集長や広告担当者などのスタッフが集まり、取り上げる企画や特集を選び、ページ数・構成を決めます。
制作
企画が決定したら、取材地の選定や使う写真・イラストなど、具体的な誌面内容を決めます。このときに問題となるのが予算です。諸経費を予算内におさめ、かつ良質な誌面にする必要があります。これが済んだら、ライターやカメラマンなど、スタッフとの打ち合わせが行われます。それぞれ得意分野があるので、企画に合う人に依頼をかけます。
インタビュー対象者や店舗への取材・撮影の依頼、スケジュール調整も重要な仕事です。場合によっては宿泊先の手配が必要なこともあります。撮影終了後は、出来上がった写真を使って、タイトルのサイズや配色・文章の配置といった、誌面のレイアウト作成に入ります。ここではデザインの知識が有利に働きます。
出版
レイアウトをもとにデザイナーやライターへデザインや文章の発注を行います。その後、原稿の校正を何度か繰り返して印刷会社に入稿すれば、編集者の仕事は終わりです。製本された書籍や雑誌は、営業部や広報担当部を通じて出版されます。
未経験から編集者になるには?
未経験の方が編集者になる正規のルートとしては、出版社や新聞社、あるいはWeb制作会社に入社する方法が一般的です。大手出版社は大卒や院卒を対象とするケースが大変ですが、中小出版社・編集プロダクション・Web制作会社などであれば短大卒や専門校卒であっても採用することも珍しくありません。そのため、まずは入社した会社で基礎を学び、経験値を積むことが重要です。
また、新卒入社だけでなく、場合によっては中途入社するケースもあります。その場合は編集者に転職する職種としたら、ライターやディレクターであることが多いでしょう。文章に関わるコンテンツの制作経験がある方のほうが中途でも採用される可能性があります。ただし、それも大手出版社で未経験から中途入社のケースは稀であるため、どちらかと言えばWeb業界のほうがそうしたキャリアチェンジにおいてもチャンスが多いと言えるでしょう。
編集者に向いている人
編集者はライターや作家のような才能や一芸に秀でているタイプよりも、平準化されたビジネススキルを持ち合わせていたほうが活躍しやすいかもしれません。その理由を知るためには、編集者という職種の仕事ぶりやポジションを知ることが大切です。編集者に必要な素養とともに紹介します。
高いコミュニケーション能力がある
編集者の仕事はいわば中間管理職のような立ち位置です。ライターからの原稿を編集し、印刷や掲載を担当する編成部門にパスする役割であり、時に納期の遅延や意見の食い違いによる板挟みに遭うポジションでもあります。また、外部対応においてもさまざまな人と取材や交渉を通して関わらなければなりません。相手が不愛想だったり、感じが悪い人であったりしても、しっかりとコミュニケーションをとれるスキルが必要です。
マルチタスクをこなし、仕事に対する責任感がある
「メディア」というと華やかなイメージの業界ですが、実際は地味な仕事内容が大半です。根気のいる作業には、関係スタッフのスケジュール調整が挙げられます。簡単なようですが、関係者のスケジュールがそろうケースは少ないので、何度も連絡を取りながら日程調整するのは日常茶飯事です。さらに、並行して撮影場所選び・撮影許可取得といった取材関連の段取りと、作成中の誌面のチェックもこなす必要があります。スケジュール調整と編集作業とをぬかりなくスムーズに行う能力が求められます。
自分の意見を持ち、周囲の意見に左右されない
編集者は客観性を兼ね備えておく必要があります。コンテンツの企画には多くの人が関わってくるので、意見の対立や食い違いが起こるのは当然のことです。また、「取材先から必要な情報を引き出せない」「必要経費が確保できない」といったトラブルも珍しくありません。そうした問題が起こった時も、平常心で客観的な判断ができると、企画の進行が予定通りに進む可能性が高まるはずです。
タフな精神力がある
雑誌やWebメディアの取材の際は、気まぐれなアーティストや作家との打ち合わせ、企業や店への取材、さまざまなスケジュール調整と一日中忙しく働くことも珍しくありません。締め切りが重なれば、仕事を家に持ち帰ることもあります。また、取材は交通網の発達した都市だけとはかぎりません。電車も通っていない田舎や山奥もあるでしょう。さらに、休日であっても最新のトレンドやネタ探しは必須です。常にアンテナを張って、仕事に活かせる情報がないか目を光らせておく必要があります。
編集者に必要な資格・スキル
編集者になるために、特別な資格は必要ありません。しかし、業務に有利に働く資格や、より良い誌面を生み出すのにプラスとなる資格があります。もし就職活動や転職活動前に余力がある場合は、資格取得も検討しましょう。
DTPエキスパート認証試験(公益社団法人・日本印刷技術協会主催)
資格の詳細 | プランナーやデザイナー、セールスパーソンなどがDTPに関連する知識を理解し、パートナーとして活躍できる人物になるために活用することができる資格(公式HPより引用)。 |
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学べるスキル | 誌面のレイアウト、印刷工程などDTP関連の知識 |
公式HP | https://www.jagat.or.jp/cat5/dtp/guidelines |
校正技能検定(日本エディタースクール主催)
資格の詳細1966年より日本エディタースクールが主催・実施する「校正」の技能を認定する唯一の検定試験。実務未経験では入りづらい出版界への足がかりとして、また身につけた技能をアピールしてさらなるキャリアアップをはかるために活用することができる資格(公式HPより引用)。
学べるスキル | 文章校正 | 公式HP | https://www.editor.co.jp/exam/ |
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上記以外でも、「MacintoshパソコンやAdobe社のデザインソフト」が使えると誌面構成(レイアウト)に活かせるので、仕事の幅がグッと広がり、会社でも重宝されるでしょう。大学の専攻学科は、慎重に選べば後々大きなチャンスを作れます。専門誌や専門メディアの場合は、特定分野の高度な知識が求められます。音楽や料理・ファッション・スポーツ・サイエンスなど、各分野に沿った学部を選べば、その道で活躍できる名編集者になれる可能性があるでしょう。
編集者の平均年収
厚生労働省が発表した「令和3年賃金構造基本統計調査」によると、雑誌編集者の平均年収は695.5万円でした。ただし、これはあくまで雑誌編集者の数値であり、Webや書籍の領域ではまた平均値も異なるでしょう。
編集者の年収は会社や年齢・経験によって異なりますが、大手や老舗出版社となると1300万円を超えるケースもあるそうです。アルバイトなど見習い的なポジションから入社するケースも多く、その場合は150万~200万円台の時期もあり、20代前半の場合は300万円程度、 20代後半は400万円前後、 30代は450万円前後、40代以上は500万円前後がおおよその平均値になるでしょう。
編集者は未経験からでも十分になれるチャンスがある仕事
【編集者 未経験 向いている人のまとめ】
- 編集者は文章を推敲してより良いコンテンツに整えるのが主な業務
- 取材現場ディレクションや関係者の調整などもタスクとして認識すべき
- 現在は出版社だけでなく、Webメディアの編集者が増加傾向にある
編集者の仕事は未経験者であっても可能ですが、その場合はライターやディレクターからの転職だと可能性が高いでしょう。編集者は板挟みに遭いやすい中間のポジションなので、文章の編集以外には物事の調整役などが得意な人が向いているでしょう。
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