2019年11月27日に行われたトークイベント「超体験型研修の世界」。

株式会社スノーピークビジネスソリューションズ・藤本洋介氏、株式会社未来言語・河カタソウ氏、株式会社ニューズピックス・宇尾野彰大氏、株式会社クリーク・アンド・リバー社・藤澤恵太が約2時間半に渡って組織の課題解決に必要な「体験」について語りました。

それではイベントで語られた「組織の課題解決」についてレポートをお届けします。チームビルディングやコミュニケーションに課題を感じているクリエイター・人事担当者はぜひご活用ください。


藤本 洋介(ふじもと ようすけ)氏
株式会社スノーピークビジネスソリューションズ
取締役 事業戦略本部長

大学卒業後、大手専門商社にて営業を担当。
2005 年に Web マーケティング会社で商品企画開発・運営業務を経験後、
2009 年から IT 会社でコンサルティング業務に従事する。
2016 年、株式会社スノーピークビジネスソリューションズの取締役に就任。アウトドアを活用した働き方改革の新規事業を担当。2019 年、株式会社 JTB と共同で「キャンピングオフィスハワイ」をリリースするなど、現在は異業種アライアンスを中心に事業化支援を手掛けている。



河カタ ソウ(かわかた そう) 氏 
Verbal Designer + Project Manager
株式会社未来言語 取締役 共同創案者

コピーライターとしてキャリアをスタート。
その後、クリエイティブディレクター / プロジェクトマネージャーとして、
Webサイトや広告、イベント等、様々なプロジェクトに従事。
現在は、ワークショップやインタビュー等を取り入れながら、ブランディングやディレクション、コピーライティングを行う「言葉のデザイナー」。100BANCH運営事務局の一員としても活動する。近年では街歩き恐怖体験イベントを企画・プロデュース。猫好き。


藤澤 恵太(ふじさわ けいた)氏
株式会社クリーク・アンド・リバー社
第一事業開発グループ 舞台芸術事業部 部長

大阪府出身。高校を中退し芸人になった経歴を持つ。
大学卒業後、新卒でクリーク・アンド・リバー社に入社しゲーム領域のエージェントとして従事。
新規プロジェクトやサテライトオフィスの立ち上げなどを経験し、2018年3月に舞台芸術事業部を設立。
舞台芸術の力をビジネス領域に落とし込み、新しい価値を創造することミッションとして事業部を推進している。
現在は、仕事のかたわら、落語や漫才・コントなど社会人芸人として自ら舞台に立っている。


宇尾野 彰大(うおの あきひろ)氏
株式会社ニューズピックス
Head of Culture&Talent / Business Partner

早稲田大学卒業後、リクルート(現リクルートホールディングス)にて営業、新卒採用、人事企画を担当。
グループ会社へ転籍し、事業開発、経営企画、事業企画を担当。
その後、ソーシャルゲーム開発会社のトライフォートに移り、開発マネジメント・PMOを担当。
2018年4月にユーザベースへ参画し現職。


“体験型イベント”のアイスブレイク

イベント開始前に「特別ルール」として2人以上の参加者と握手をする。そして自己紹介と最近した”体験”を共有する。
普段は中々しない握手に最初は戸惑う参加者。しかし、握手と会話を通して会場内はすっかり打ち解けた雰囲気に。

「握手」で目線を合わせることから始まった本イベント。自然にコミュニケーションが生まれます。

課題解決のプロが語る自社サービス

オフィス(環境)から組織を変える――スノーピークビジネスソリューションズ

スノーピークの本社は5万坪のキャンプフィールドの中にあり「日々お客さまがキャンプしているシーンを見ながら仕事をしている」と述べる藤本氏。そんな藤本氏が現代のビジネスマンに問いかけたいこと――

「文明の発達に伴い、自然との距離が離れ、“人間性”が失われつつあるのではないか?」

アウトドア(自然体験)を通じて人間の営みを見ると、コミュニケーションの希薄さなど、日本が抱えている問題はキャンプ場には見当たらないとのこと。

約190社の研修導入を行ってきた中で最終的に残る組織の課題は「対面のコミュニケーション」であり、それを解決するために「オフィスとコミュニケーションを変える」ソリューションを提供してきました。

【研修例】

  • コミュニケーションが必要なオフィススペースに植栽やキャンプ製品を活用
  • テント設営・食事などの共同作業や役割分担の体験
  • 焚火を囲んで肩書を外し”本音”でビジョン・ミッションを語り合う

100年後のコミュニケーション!?未来言語の問いが生む共感性とは?

「普段はクリエイティブプロジェクトのマネジメントやコピーライティングをしている」と語る河カタソウ氏。2年前に発足した「未来言語」は好評で2019年に株式会社化。河カタ氏を含めてコアメンバーは5名。「100年後のコミュニケーションを発明する」という実験的なテーマを掲げ、コミュニケーションの課題に向き合う。

そんな河カタ氏が社会に投げかけた問いは

――「現代の言語は不完全ではないか?」

コミュニケーションのメインストリームである「音声」と「文字」。それ以外は本当に「障害」としかいえないのか…?解決方法はないのか…?

「見えない」「聞こえない」「話せない」状態でコミュニケーションをとる「未来言語」を登壇者が“体験”することに。

お題は「互いの出身地の共有」

「目が見えない」藤本氏は不安から近くにいる藤澤に自然と触れます。そして「聞こえない」藤澤の耳には大音量の音楽が流れているため、自然と声が大きくなります。

この“体験”のよいところは相手を思いやった先に言葉が伝わったときの喜びを共有できることにあるといいます。

互いの出身地が分かったときの二人は“共感”を体験した喜びを分かち合っていました。

未来言語の研修は以下のような課題を抱えている企業に効果があるそうです。

  • 外国人社員と日本人社員のコミュニケーション
  • 新入社員の伝える力
  • 部署内外や労働組合のチームビルディング

観劇型で感情を動かす研修――コミュニケーションと仕事の充実は豊かな感受性から

「未来言語」の体験で「聞こえない」に当たった藤澤。大声で話していたことが恥ずかしかったのか伏し目がちに話し始めます。

「高校中退して芸人をやっていたが、スベり過ぎて引きこもりになった過去あり。2018年に舞台芸術部を創設。」そんな波乱万丈な人生を送る藤澤が語る「舞台芸術」が解決するコミュニケーション課題とは?

テキストや言葉にしづらい想いを演劇化することで、企業理念や創業史などを体感・共感させ深く浸透させるプロジェクトを行う当事業部。演劇を中心とする舞台芸術には以下のような特徴があると述べました。

  • 舞台芸術に普段から触れている人口は少なく、非日常体験である
  • 五感で体感するコンテンツである
  • 物語をビジュアル化しイメージを共有することができる

“体験”と”共感”を通して、組織を変える

ニューズピックス・宇尾野氏がモデレーターを務めたトークセッション。三者が提案する「組織のコミュニケーション課題解決」に共通点はあるのでしょうか?

企画担当者が盛り上がる企画の特長とは?

モデレーターの宇尾野氏は組織開発・採用・制度設計など、人事課題に横断的に取り組んでいる。

まずは河カタ氏。BtoC向けのサービス提供が多く、依頼者は実際にイベントで「未来言語」を体験した方が多いと話します。
スノーピークビジネスソリューションズ・藤本氏は「事例」「エビデンス」「費用対効果」を依頼者に問われる中で、重要視しているのは、企画から依頼者に参加してもらうことだと述べました。

これも多くの事例の中で「”何のためにやるのか”を考え、主体的にやった組織は強い」と考えるようになったからだと言います。

コラボレーションするなら…?

「三者のプレゼンを聴いてコラボレーションしたいと思った企業は?」という質問に藤本氏が未来言語を挙げました。実はスノーピークビジネスソリューションズで提供した研修で「特定の機能を使わない状態でテントを立てる」企画があったそう。

これに対して未来言語の河カタ氏は「機能を失うと不安になり、接触したくなる。非日常だと心の距離が縮まる」と述べました。

研修効果を伝える難しさ

定性的な言葉をただ伝えるだけでは研修担当者や関係者に納得してもらうことはできません。研修後の効果を数値化・言語化しにくい中、三者はどのようにサービスを提案しているのでしょうか…?

河カタ氏は「最初は一部署の有志に体験してもらい、風呂敷を広げていく」と述べました。

人事担当者が気になる「効果の定量化」については「外国人と日本人の接触回数をセンサリングなどのテクノロジーで可視化できれば」と感情論だけでは説得しづらい課題について補足しました。

”体験”後の過去事例を紹介する

「企業史演劇」を提供する藤澤は「共通理念や考え方を同じ基準に上げられること」。未来言語の河カタ氏は「実際に未来言語を体験してもらった企業の声を紹介する」。

実際に未来言語を体験した企業さまからは「伝え方がわかれば自分たちは能動的に動けると気付いた」と嬉しいコメントをもらうこともあったそうです。

研修後に必要なフォローとは?

研修を受ける側も企画する側も課題を感じている「研修後のモチベーションを維持する方法」…。
藤本氏・河カタ氏・藤澤の3名はこの課題解決方法を次のように述べました。

  • 藤本氏
研修時に「やろう!」と思ったことを誰かに話すこと、文字にすることだと思います。自己満足せずに、伝えられるくらい自分の気持ちを理解して、理解してもらって頑張るのが一番です。
  • 河カタ氏
「明日からすぐに実践してください」とは言わないようにしています。
私自身が一歩踏み出す難しさを知っているので。それよりも「まずは今日できたことに自信をもってください」と伝えています。
  • 藤澤
とにかく感受性が豊かになっている状態をキープしてもらいたいなと思っています。そして、目の前の仕事に向き合ってほしいです。

まとめ・参加者の声

  • テレビ業界関係者さま
「社員のエンゲージメントを上げるために大変役立つと感じました。トップの声が大きく、入社1・2年目の社員の離職率が高い現状なので、課題の解決につなげたいです」
  • 楽描人(らくがきじん)カエルンさま

素敵なグラフィックレコーディングを作成いただきました。ありがとうございました!

三者のアプローチの仕方は異なりますが、知識やスキルを学ぶだけでなく同じ体験を通して相互の共感を高め、社内エンゲージメントを向上させることを「研修」と定義している点が共通していましたね。座学研修で得られる“情報”の先にある体験と共感の重要性に気づかされるイベントでした…!
「CREATIVE VILLAGE」では引き続き”「行きたかったけど、行けなかった!」クリエイターのための”イベントレポートを公開してまいります。

(CREATIVE VILLAGE編集部)