近年のゲーム業界の発展は著しく、グラフィックやサウンドの発展やオープンワールドなどのゲーム形式の多様化は目を見張るものがあります。しかし、どんなにゲームに関する技術が向上したとしても、ゲームを面白くするための根幹はアイデアであり、制作者の想いです。つまりは、いかに面白いストーリー展開であるかが重要になります。
ゲームクリエイターにはさまざまな職種がありますが、ゲームを面白くする筋書きを考えるのがゲームシナリオライターの仕事です。では、ゲーム業界で働きたい方がゲームシナリオライターを目指すにはどんなことを意識すべきでしょうか。また、仕事内容や年収に関しても掘下げていきます。
ゲームに特化した「ゲームシナリオライター」とは
ゲームのストーリーや展開に関する台本(シナリオ)を作成するライターです。以前はプランナーやディレクターがこの仕事を兼任していることも多々ありましたが、現在ではゲーム業界においてもシナリオライティングを専任するゲームシナリオライターが増えています。
シナリオライターの仕事は、ストーリー展開を作り上げるのはもちろんのこと、キャラクターの性格やセリフなど作品作りの根幹から幅広くゲーム制作に携わります。手がけたゲームがヒットするなどして自身にファンがつけば、その後のゲーム人気を左右する要因にもなるでしょう。売れっ子の場合にはフリーのゲームシナリオライターとして活躍することもあります。
仕事内容
シナリオを書くのが仕事ですが、そのシナリオに関わるサブストーリー、キャラクター同士の会話など、ゲーム内容の全ての制作に関わることになります。ストーリー展開はもちろん、キャラクターの関係などすべてを把握する必要があり、仕様に変更が生じた際はそれを反映しないといけません。業務量も多ければ仕事の責任も重大です。
シナリオの出来がそのゲームの人気を大きく左右するため、スタッフの中でも非常に重要なポジションとなります。また、ゲームのシナリオにおいては分岐点が存在するため(ノベルゲームでは特に)、一連のストーリーをどのような順番で見せていくかということも大切になります。より魅力的なシナリオとなるよう構成を考える必要もあり、ただ書けばよいというだけの仕事ではありません。
年収
一般的には300万~500万前後とされています。もちろん、それぞれのゲームシナリオライターの力量や会社の業績・規模に左右されるところが大きいため一概に金額を言い切れません。
有名タイトルのシリーズとなれば平均を大きく上回る額になりますし、フリーランスとして企業に属さない働き方でも高収入が狙えるケースもあります。一方、立ち上げたばかりのゲーム会社の新作となると平均値の金額を下回ることもあります。どれほどの収入になるかはその人の実力次第であり、まずは面白いシナリオを作ってヒット作を生むことが収入アップの最大の近道だと言えます。
ゲームシナリオライターになるには
専門学校などで勉強したことがない、まったくの未経験の場合は、シナリオ作成を学べるスクールに通うのがまずは1つの方法です。未経験の場合、授業を受けることで基礎知識の習得ができます。課題に取り組むことで執筆作業を実践できるなど、シナリオライティングに関する知識・実践方法を体系的に学習できるでしょう。
また、ゲーム会社などの募集情報を集めてくれて、就職先の斡旋を行ってくれる学校もあるので、仕事を見つけやすいというメリットもあります。シナリオ作成の知識が身についている場合は、まずはオリジナルのシナリオを書きあげてみましょう。未経験・経験者にかかわらず、シナリオライターになるためには必ず作成したシナリオの提出を求められます。シナリオがないと選考のスタートラインに立つこともできないため、必須条件になります。
また、シナリオコンテストなどの受賞を機にシナリオライターへの道を進むこともあるでしょう。ゲーム会社の他、SNSのイラスト交流サイトなどでシナリオコンテストを企画していることもあるので、こういったチャンスを活かすことができれば、シナリオライターへの一歩が踏み出せます。
ゲームシナリオライターに向いている人
想像力、発想力、好奇心が旺盛な人、自分の世界観がある人が向いています。たとえゲーム業界での経験がなくても、シナリオを作れることが重要です。自分で書き上げた文学作品がきっかけでシナリオライターになったケースも存在するため、必ずしもゲームのシナリオでなくても不利になることはありません。
また、ゲームの根幹に関わる仕事のため、ゲームディレクターとの協業がメインとなります。上流工程から多くの人と協力して制作に携わるので、コミュニケーション能力に優れていることも大切です。シナリオライター専任として担当する以外にも、ディレクターやプロデューサー兼任でシナリオライターを務める場合、制作の流れなど全体を把握する力や統率力などが求められます。
必要なスキル・知識
話の根幹を理解して、継続的に物語を書き続ける力が必要です。ゲームのシナリオライティングでは限られたイラストや部分的なボイスのみでユーザーにゲームの世界観や、キャラクターへの愛着を感じていただけるようなシナリオを創り上げるのが難しい部分だと言えるでしょう。ドラマや演劇のように、実際にそのシーン全体を見ながら物語が進むものではないため、文章だけでいかにユーザーの想像力を掻き立て、引き込めるかが鍵となるのです。
また、文章を長々と書き連ねるだけではユーザーは退屈してしまうので、キャラクターのセリフを効果的に組み込むことも重要になります。1つの文章が長すぎると、スマートフォンでプレイする場合などは特に読みにくく、ユーザーが離れてしまうきっかけとなりがちです。パワーワード的なものを取り入れるなどの工夫をしながら、短い文章で表現することが非常に重要です。ユーザーに分かりやすく状況を伝えるために、さまざまな表現を自分のなかに蓄積しておくと、大変役立つので、日ごろたくさんの文章に触れるようにしましょう。
必要な資格orおすすめの資格
ゲームシナリオライターになるために必要な資格はありません。ただし、日本語力、表現力は必須となります。表記に迷ったときには辞書や記者ハンドブックなどで調べたり、事実確認が必要な場合は一次ソースを用いたファクトチェックを行ったりすることが不可欠です。ゲームシナリオライターというと、華やかなイメージがあるかもしれませんが、実際は地道な作業がたくさんある仕事と言えるでしょう。
ユーザーが少しでも「この表現はおかしいのでは?」と感じるような内容があると、それだけでゲームに集中できなくなってしまいます。日本語や表現を磨くことは、ゲームのクオリティを上げるうえで非常に重要な作業となります。調べものも慣れてくるとやり方がわかるようになるので、最初は大変に感じるかもしれませんが、習慣化させながら丁寧に取り組んでみましょう。
表現力を磨くためには、さまざまな文章に触れることはもちろんですが、動画やSNSなどからトレンドの表現や言葉、ホットなワードを知り、必要に応じてシナリオにも用いることも必要です。想定するユーザー層によっても対応も異なるので、ターゲットとなる層を理解し、そこに響く表現を抽出し、効果的に使用するスキルも必要と考えましょう。とにかく根気よく、シナリオと向き合う姿勢が求められるので、愛情を持ってシナリオと正面から向き合ってみることが大切です。
ゲームシナリオライターのやりがい
世界中のユーザーに自分の書いたシナリオでゲームをしてもらえるチャンスがあることが、最大のやりがいです。自作のシナリオが、世界のユーザーにプレイしてもらえたと思うと不思議な気持ちになれるでしょう。それと同時に作品の1つとしてどう評価されると思うと、背筋の伸びる思いになるかもしれません。
ゲームがヒットすれば続編やスピンアウト作品が生まれたり、ボイスドラマ化したりとさまざまなチャンスがあることもあります。自分が担当したシナリオがSNSで取り上げられていたり、キャラクターのグッズやファンブックなどに展開されたりすることもあるでしょう。ゲームシナリオライターの仕事は、作品づくりの一翼を担うプレッシャーはありますが、その分やりがいも大きい、夢のある仕事なのです。
ゲームシナリオライターの主な業務
基本的にはベースとなるプロットをゲームディレクターから共有してもらい、イラストレーターからは先にイメージイラストを受け取って、それをベースにシナリオを作成します。その工程の中で、シーンによってはゲームディレクターに確認したり、意見したりして調整を依頼するケースもあります。小さな違和感でも、何か感じた場合はすぐに相談し、確認しながら作業を進めることで、結果としてクライアントのイメージに近いものに仕上がることにつながるでしょう。コミュニケーションは密に取るように心がけてください。
「世界観が間違っていないか」「キャラクターの設定が先方のイメージに近いか」をすり合わせる作業を、より具体的に直接的な表現で行うようにするのもポイントです。作業に取り掛かる前から最終的な仕上がりのイメージを共有できるため、双方納得のいく作品づくりがしやすいでしょう。
ゲームシナリオライターの将来性
ゲーム業界が右肩上がりの産業であり、人気が高くニーズのある仕事なので将来性は高いと言えるでしょう。素質があれば、活躍するチャンスは大いにあります。また、昨今はソーシャルゲームでもストーリーが重視されます。ゲームシナリオライターの仕事は実力主義であり、魅力あるシナリオを生み出すことができれば、自らが人気タイトルを生み出すヒットメーカーとなるチャンスも期待できます。
常にゲームシナリオライターとしての表現力を磨くことを意識
【ゲームシナリオライター 年収 仕事内容のまとめ】
- ゲームを面白くする筋書きを考えるのがゲームシナリオライターの仕事
- 話の根幹を理解して、継続的に物語を書き続ける力が必要
- ゲームの作品づくりの一翼を担うやりがいと夢のある仕事
ゲームシナリオライターの道を目指すのであれば、日常生活においてもさまざまな物事に好奇心を持ち、情報収集しておくことが重要です。「このシーンでは、こういった表現だとわかりやすいかも」「このアイテムを用いると、ユーザーに響くかもしれない」と、つながる瞬間と出会うことができるかもしれません。
シナリオライターは、少し前まではゲームプランナーと兼務することも多くありました。しかし、家庭用ゲームだけでなく、ソーシャルゲームも成長している昨今においては、兼務が基本であったゲームシナリオライターを単独のポストとして採用する動きも多くなっています。ゲームシナリオライターは「物語が書けるかどうか」「面白いものが書けるかどうか」を重視する企業がほとんどです。まずは自身の表現力を磨くためにも、シナリオを書いてみることから始めましょう。
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