角川アスキー総合研究所が発表した「ファミ通ゲーム白書2022」によると、世界のゲーム市場は約22兆円にまで成長を遂げたとされています。昔からゲーム好きでずっとプレイしてきた方はもちろんですが、ゲーム業界は常に右肩上がりの成長企業だけに、ゲーム関連の就職先を意識している方も多いでしょう。しかし、業界未経験の方だと、「ゲームを仕事にすること」をあまり深くイメージできないかもしれません。
ゲームを生業にする職業の総称を「ゲームクリエイター」と呼びますが、その中でも今回は企画や営業を担当する「ゲームプランナー」に注目。どんなスキルや知識、素養が必要なのか、仕事内容や目安の年収も踏まえてゲームプランナーを目指す未経験者の方に基本を紹介します。
ゲームプランナーとは
ゲームプランナーは、端的にゲームの企画を作り出す仕事です。ゲームはプログラマーやデザイナーといったクリエイターだけで作り上げているわけではありません。仕様や内容などの企画を提案するプランナーが発起人となってゲーム作りはスタートします。
自身のアイデアをもとに、顧客や社内のメンバーに作りたいゲームの構想を提案し、共感・共通認識を持ってもらうという大切な役割があります。ゲーム全体に関係するルール・キャラクター・画面レイアウト・シナリオ作成など細かい部分の設定に携わることもあるので、ゲームプランナーの精度がゲーム全体の出来に関わると言っても過言ではありません。会社によってはゲーム企画担当者、ゲームデザイナーと呼ぶケースもあります。
ゲームプランナーの仕事内容
(1)企画
ゲームプランナーの仕事内容は多岐にわたります。どんな新作ゲームを制作するかを決める企画段階では、ゲームディレクターやゲームプロデューサーなどと一緒にユーザーニーズを分析し方向性を考えるのが基本です。今どんなゲームが人気なのか、どの年齢層をターゲットにするのかなど、あらゆる視点からアプローチしていき新作ゲームを企画します。
(2)社内でのプレゼン
概要が決まると次に企画書を作成し、社内でのプレゼンを行います。「このゲームは売れる」「人気ゲームになる要素がある」という部分をプレゼンでアピールしたうえで、プロジェクトメンバーに承認される必要があります。
(3)仕様書作成
企画書が通ると制作準備へ移ります。仕様書を作成しゲームのより細かい部分を説明することで、具体的にどんなゲームになるのかを制作スタッフにも理解してもらいます。この段階でメンバー間の共通認識を得られるかどうかが非常に重要です。ゲーム制作の段階ではこの仕様書が設計図ともなるため、重要なプロセスとなります。
(4)ゲーム制作
仕様書が完成するといよいよゲーム制作が始まります。制作時にはデザイン、プログラミング、シナリオなど各パートが仕様書に沿って作業が行われているかを確認して、必要な時には指示を出し、スタッフからの質問にも答えます。ベータ版が完成すると、修正点がないかを確かめリリースを目指します。
(5)改善点の分析・運用
新作ゲームが発売されたらゲームプランナーの仕事は終わりという訳ではありません。売れ行きやユーザーからの反応を参考に次回作への改善点の分析、リリース後の運用業務を担当することも、ゲームプランナーとして欠かせない仕事です。
ゲームプランナーに欠かせない素養は「ゲームの仕組みを理解していること」
ゲームプランナーとしての才覚があるかどうかは、「ゲームの仕組みを理解しているかどうか」で判断されます。ゲームをプレイしてユーザーがどういうところで楽しめるのか、どんなキャラクターが登場するから面白いのかなど、ゲームとしての根本の目的や本質を押さえる必要があるでしょう。そうしたある意味、“ゲームに関するセンス”を磨くためには、多くのゲームをプレイすることも必要かもしれません。それは家庭用ゲーム機やスマホゲームだけでなく、カードを使うようなテーブルゲームなども発想の源泉とすべきでしょう。
また、知識やスキルとしてはプログラミングの知識もあると現場では重宝されるはずです。また、知識がなくとも、昨今のゲームエンジン等で簡単なゲーム開発の経験があると、尚よいでしょう。制作側への理解が高いゲームプランナーは現場で必要とされる人材です。
ゲームプランナーの年収
ゲームプランナーの年収は年功序列よりも実力重視の傾向が強く見られます。350万円からスタートし、経験やスキルによって年収は上がりますが、上限700万円程度が相場のようです。(クリーク・アンド・リバー社調べ)
大手有名企業では年収1000万円のゲームプランナーも存在します。制作に携わったゲームがヒットすると臨時ボーナスや年収アップにもつながるため、やりがいのある職種といえます。
ゲームプランナーのニーズと将来性
スマートフォンやタブレットの普及によって、ソーシャルゲームやゲームアプリが広く浸透しているため、ゲームプランナーのニーズは今後も続くでしょう。同時にゲーム制作会社も増加傾向にあるため、ゲーム業界全体で熾烈な競争が見られます。人気のゲームを開発するだけではなく、人気を持続させることも課題の1つとなりそうです。ゲームプランナーとして活躍し続けるためには市場ニーズに敏感であることが必要です。
そういう意味では「雑用」をこなすように動けるゲームプランナーは貴重で、需要があります。昨今はマルチプラットフォームおよび日本国内版の他、多国語版の同時リリースも必須の販売環境となっています。全t内的に情報量も増えており、そういった部分についてもゲームプログラマーより先回りして提案できるとなお重宝されるでしょう。
ゲームプランナーになるには
ゲームメーカーやゲーム制作会社にゲームプランナーとして就職する方が大多数です。ゲーム制作における幅広い知識と経験が必要とされる仕事ではありますが、プログラマーやデザイナーといった技術職に比べると、プランナーの方が未経験でも入りやすい傾向があります。
ソーシャルゲームの会社では「地頭が良い若手社員」であれば、将来性を見込んで未経験でも採用するケースも少なくありません。ゲーム専攻の大学や専門学校に進学することで、ゲームプランナーとして活躍するために必要なスキルを身につけることも重要になります。
ゲームプランナーに向いている人
何よりも大事なのはゲームが好きであることです。ゲームが好きでゲームを作りたいという情熱を持っている人はゲームプランナーに向いています。売れるゲームを企画するためには、流行やニーズに常に敏感である必要があります。今話題のゲームは何か、自分でプレイしてみておもしろかったポイントは何か。そんなふうに常に向上心を持ってゲームに取り組む姿勢もゲームプランナーとして求められます。
新しモノ好きが力を発揮できる仕事でもあるため、何事にもチャレンジしてあらゆる分野での情報網を拡げておくことも大切なポイントです。
ゲームプランナーに必要なスキル
ゲームプランナーとして企画書をプレゼンし、仕様書に沿ってスタッフの作業を指示するために高いコミュニケーション能力が求められます。良い企画書でもコミュニケーション能力がないと社内会議で新作ゲームの魅力を伝えることができませんし、細かい部分の作業についてスタッフと連携を取るのも難しくなります。
また、今までにないゲームを開発するためには、企画力や発想力もなくてはならないスキルです。ゲームのコンテンツが増えると必然的に似たゲームが増えます。他のゲームとの差別化を図り、ユーザーの心をとらえる魅力的なゲームを発売するためには発想力が必要でしょう。
必要な資格orおすすめの資格
ゲームプランナーになるために、必要な資格は特にありません。ただしパソコンでの仕事が多いため、ワードやエクセル、プレゼン用ソフトであるパワーポイントなどを使えるスキルは必要です。
また制作段階ではゲームデザイナーやプログラマーとも連携しながら作業を進めていくため、デザインやプログラミング知識も持っているとコミュニケーションがスムーズになります。必須ではないものの、CGデザインに関わる資格をもっていると一定の評価を得られる会社もあります。
未経験からゲームプランナーを目指すには
未経験者であれば、まずゲーム業界における経験と知識が不可欠です。ゲームプランナーとして活躍するまでには時間と努力が求められるでしょう。会社によっては未経験者であっても積極的に採用しキャリアをつめるようサポート体制が整っています。未経験者でゲームプランナーを目指すのであれば、会社内での研修やサポート体制などもチェックしてみましょう。
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ゲーム業界もゲームプログラマーがすべてを創り出していた時代から分業スタイルになってから数十年が経ちます。理想のゲームを創り出すことへのハードルは、職種に限らず徐々に平均化して来ています。ただ、最終的にはゲームプログラマーがゲームを形にすることに変わりなく、その形の原型を用意するのがゲームプランナーです。ゲーム制作の最初の工程を担う人材として幅広くゲームへの関わりを持つことをおすすめします。
ゲームプランナーを目指せる学部・学校
東京や大阪などの大都市圏では、ゲームプランナー学科がある専門学校が数多く存在します。
将来ゲームプランナーになる事を具体的に目指しているのであれば、ゲームプランナー学科へ行くことで就職後も早い段階でゲームプランナーとして仕事ができるでしょう。ゲームデザイナー学科、プログラミング学科を専攻したとしても、就職後に経験を積んでゲームプランナーとしてスキルアップすることは可能です。
専門学校や大学のゲーム専攻科へ進学する場合には、就職実績も忘れずに確認しておきましょう。大手企業とのコネクションがある学校であれば就職にも有利になるでしょう。自分が働きたいと思う会社・企業への就職実績がある学校を選ぶことも一つの方法です。
ゲームプランナーについて学べる学校をいくつか紹介するので、参考にしてください。
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ゲームへの情熱と学習意欲があればゲームプランナーへの道が開ける
【ゲームプランナー 未経験のまとめ】
- ゲームプランナーはゲームの企画を作り出す仕事
- 「ゲームの仕組みを理解していること」が欠かせない素養
- デザイナー・プログラマーら技術職より学習意欲や情熱が武器に
新作ゲーム開発に携わるゲームプランナーの仕事は多忙を極めます。しかし、ゲームが完成して発売されるのを見た時に大きな満足感とやりがいを感じるでしょう。ゲームプランナーとして活躍したいのであれば、ゲーム制作、ゲーム業界に関する知識やスキルも必要ですが、高いコミュニケーション能力や企画を通すための情熱が必要です。自分の考えを伝えて共感してもらうためにも、プレゼンスキルを磨きましょう。自身の努力次第で年収も大幅アップが可能なので、ゲーム好きにとってはとても魅力的な職業として人気を集めています。