2021年にスタートしたAiming第一事業部、通称「Twilo(トワイロ)」。タクティカルRPG『ドラゴンクエストタクト』の開発メンバーを母体としており、「最高のゲーム体験を提供すること」をビジョンに掲げ、さまざまなタイトルの開発を行なっているそうです。
特に注目すべきは、「さまざまな意見を反映させたゲームづくり」を大切にしていること。開発体制の工夫について、事業部長の水島さん、副事業部長の小林さんにうかがいました。
第一事業部 プランナー/ディビジョンディレクター 2011年入社
コンシューマーゲーム、PCオンラインゲームのプランナー/ディレクターを経て、Aimingに入社。第一事業部の設立時にディビジョンディレクターに就任
小林茂
第一事業部 プランナー/副ディビジョンディレクター
PCオンライン、ブラウザ、フィーチャーフォン、スマートフォンゲームのプランナー及びディレクターを経験、第一事業部の設立時に副事業部長(ヴァイスディビジョンディレクター)に就任
直近リリースした「かみながしじま~輪廻の巫女~」のディレクターを担当
やりごたえのある楽しさを多くの方に。Twiloが目指すゲーム体験
――「Twilo」について教えてください。どんな特徴を持つ事業部なのでしょうか?
水島:2021年に社内の部署の再編があり、Twilo(第一事業部)は『ドラゴンクエストタクト』の開発チームを中心に編成されました。弊社はもともとPCのオンラインゲームなど、コアなゲームの開発・運営に携わっていたメンバーが多く、「しっかりとした遊びを提供したい」という文化が根付いています。ライトなスマートフォンゲーム(ソシャゲ)においても、「しっかりとゲーム的な面白さを持たせたい」という信念につながっています。
――Twiloのタイトルは、遊びの面白さをしっかりと感じられるゲームを目指しているのですね。
小林:はい。開発の際には、「ここを面白くしたい」「ここを楽しんでもらいたい」というポイントから出発して、開発メンバー自身も面白く感じられるかどうかを重視しています。例えばシミュレーション要素のあるRPGであれば、プレイヤーが「自分がどこにいるか」「敵が何をしているか」など、複数の要素を考慮してゲームを進める必要があります。しかし、ソシャゲのプレイヤー層は、そこまで辿り着けない方も多くいらっしゃるので、難易度が低い部分でも、面白さや気持ちよさを感じられるように、工夫しています。
水島:それに加え、ビジュアルが魅力的であること、手軽にサクサクプレイできること、スマートフォンの小さな画面でも没入感を感じられることも重視しています。スマートフォンの画面は小さいですが、その中には広大なゲームの世界が広がっているように、ユーザーに感じていただきたいのです。そこへスムーズに入っていけるように、多くのメンバーからさまざまな視点で意見をもらって調整しています。ゲーム好きのメンバーが多いため、エンジニアやデザイナーなど、ゲームプランニングが専門ではないメンバーも積極的にゲーム内容に関するアイディアを出し合う文化が根付いています。「職種の垣根を超えた先に良いものができる」という思想で取り組んでいます。
「大規模」と「小規模」。この2軸が循環するゲーム制作を目指して
――具体的に、どのような体制でゲームを開発しているのでしょうか?
水島:少人数で進めるカジュアル寄りのプロジェクトと、より大規模な開発が必要なプロジェクト、2軸の体制でゲーム開発を進めています。
小林:例えば、『かみながしじま ~輪廻の巫女~』や『脱獄ごっこPRO』は少人数で開発したゲームタイトルです。こちらはUUUM株式会社の子会社であるLiTMUS株式会社と協力し、既存のエンジンやフレームワークも活用しつつ、クリエイティブなアイディアを少人数で効率的に実現する開発を行いました。また、マーケティングにおいては、著名インフルエンサーと協力してゲームを開発し、情報を拡散するという取り組みを行いました。
※『かみながしじま ~輪廻の巫女~』キービジュアル
※『脱獄ごっこPRO』キービジュアル
――少人数でもしっかりとしたゲームがつくれる体制になっているのですね。
小林:はい。開発メンバーは10人〜20人程度の規模になります。人数は少ないですが、遊びとしての新鮮さやビジュアルの良さもしっかりと追求しています。
水島:小規模なプロジェクトでの開発は、一人で多くのパートを担当する必要があります。これにより、メンバーは経験値を積み重ねることができ、自分たちでゲームを作り上げる楽しさもより実感できているのではないかと思います。また、新しい技術を導入することも多いので、開発においても挑戦しやすい環境と言えると思います。
――まさに、ゲームの楽しみ方が変わり、ゲームの配信や実況が広まる中で、それに合わせた挑戦のようにも感じられます。
水島: ありがとうございます。一方、大きめのものとしては、アニメ『銀河英雄伝説 Die Neue These』を原作としたシミュレーションゲームのプロジェクトも進行中です。このタイトルは、ユーザーが「銀河帝国」と「自由惑星同盟」に分かれ、提督として自身の部隊を率いて戦う戦略シミュレーションゲームです。弊社はアニメの製作委員会にも参加させていただいておりまして、委員会の全面的なご協力のもと、大きな規模での開発を進めております。
※『銀河英雄伝説』キービジュアル
小林:小規模プロジェクトでつくったタイトルでの経験値が大規模プロジェクトで生かせるように。2つの間でノウハウが循環していくようにできたらと思っています。
「みんなの意見が集まるチームづくり」に込められた工夫
――ゲーム開発の際、みなさんが特に大切にしていることを教えてください。
小林:コミュニケーションですね。先ほども話しましたがTwiloでは「こんな機能を入れたい」とアイディアが出た時、企画や運営メンバーだけでなく、エンジニアやデザイナ も含めて、さまざまな視点からフィードバックをもらったり、アイディアを出す機会があります。
水島:コロナ禍でリモートワークが増えたことで、チャットベースのコミュニケーションが活発化して、セクションを超えた会話がしやすい環境になりましたよね。
小林:確かに、現在は出社とリモートワークのハイブリッド勤務なので、座席の周りだけで完結する会話と、誰でも参加できる会話の2軸でコミュニケーションが生まれています。
水島:みんなで話しながらつくる、ボトムアップ文化なので、さまざまな意見を持ち寄りながら日々、開発が行なわれています。一方、ゲーム開発・運営以外の面では、各セクションごとに定期的に1on1形式のインタビューを行う取り組みもあります。各メンバーが抱えている問題を見つけたり、次にやりたい仕事などを把握してプロジェクト編成に生かすなど、各メンバーがより充実した環境で働けるよう配慮しております。
小林:みんなでヒットしているゲームを遊びながら話す機会もあります。そこでは先輩社員が、若手の方に「ここはこういう工夫がなされているよ」と伝える場面も頻繁にあって。僕自身、社長の椎葉と一緒にゲームを遊んでいた時期があるのですが、その中でいろんなことを学ぶことができました。
水島:オフィスも少し工夫しています。キッチン周りのラウンジスペースを広めにつくって月に一回程度、懇親会を設けています。飲み会となると、どうしてもハードルが上がりがちなので、「月に一回、オフィスの端で何かやっているな」という雰囲気をつくり、よりカジュアルに交流できる機会にしています。
Twiloのラウンジスペース
――できるだけ気軽にノウハウを共有したり、お互いを知ることができる場所を作っているのですね。
小林:そうですね。現在、若手社員のアイディアを発表できる企画を進めています。個人で制作したゲームを発表する場はあるのですが、作り込みが必要となると、なかなか気軽には参加できないようで。これからは、企画書段階でアイディアを出し合ってフィードバックし合える場を設ける予定です。
水島:ゲーム制作の初期段階で、さまざまな視点からの意見を取り入れることは、独りよがりな制作を防ぐ上で重要だと考えています。また、各セクションごとにメンバーが自分の好きな話題について5分ほど語るLT(LightningTalk)も不定期に実施しています。どれも他のメンバーの考えや個性を知る良い機会になっていると思います。
――さまざまな工夫が行われていますね。最後に。今後の展望についても教えてください。
水島:競争の激しい現在のスマートフォンの市場において、より多くのお客様に我々のゲームを遊んでいただくためには、「面白いゲームであること」と「堅実なゲームづくりや運営」の両方が必要だと考えています。そのためにも、開発規模の異なる2軸にそれぞれに向き合って、その2つが循環する形をつくっていきたいと思っています。
――ありがとうございました。
インタビュー・テキスト:杉山仁/撮影:SYN.PRODUCT