「将来はゲームクリエイターになりたい!」「YouTuberとして活躍したい!」時代と共に多様化している子どもたちの夢。そんな子どもたちと日々向き合う小学校教諭の松下隼司さんは、クリエイティブな世界で活躍するために、本当に大切なことを伝えたいと言います。

22年間の教員生活で培った経験と、2児の父親としての視点から、子どもたちの夢を応援するためのヒント、そしてクリエイティブな仕事の魅力を語っていただきました。

松下隼司
大阪府公立小学校教師 教員22年目 2児の父親
著書に絵本2冊と教育書2冊。ネットラジオVoicyのパーソナリティー。全日本ダンス教育指導技術コンクールで文部科学大臣賞やプレゼンアワード2020で優秀賞、日本最古の神社である大神神社の短歌際で額田王賞など多数の受賞歴をもつ。2024年から劇団活動を再開

クリエイターに憧れる子どもたち


拙著、絵本『せんせいって』(文:まつしたじゅんじ/絵:夏きこ)より

子どもたちに将来の夢を聞くと、ゲームクリエイター・YouTuber・ゲーム実況・イラストレーター・声優など、私が小学生の頃には挙がらなかった職業があります。私が小学生の頃は、スポーツ選手や芸能人や社長・お金持ちと答える友達が多かったのですが…。
クリエイター関係の職業に就きたいと言う子どもが年々、増えていると感じます。自分が今、好きなことを仕事にしたいと思うのは、昔と変わりません。
将来の夢としてクリエイター関係の仕事が挙げる背景には、子どもたちの生活の変化があります。スマホをもつ子どもが増えました。

また、スマホをもつ子どもの低年齢化も進んでいます。スマホを使って、オンラインゲームをしたり、YouTubeを見たりするようになりました。私が小学生の子どもの頃にはなかったことです。
休み時間や給食の時間、放課後の子ども同士の話題も、好きなオンラインゲームやYouTubeに関してが多いです。私も子どもたちのついていけないことが増えてきました。


拙著、絵本『せんせいって』(文:まつしたじゅんじ/絵:夏きこ)より

子どもたちに伝えたい「コミュニケーションスキル」の大切さ

でも、クリエイター関係の職業に将来、就きたいと思っている子どもたちに伝えていることがあります。それは「コミュニケーションスキルが大切」だということです。クリエイターの仕事は、技術職、1人でパソコンやスマホと向き合っているというイメージをもっている子どももいます。普段、1人でオンラインゲームやSNSをやったり、YouTubeを視聴したりしていることが多いからです。でも、どんな仕事も人と関わりながら仕事をしています。
例えば、ユーチューバーやゲームクリエーターは、趣味でなく仕事として成功するには、スタッフや取引先など多くの人たちとの関わりが必要です。仕事(収入)が大きくなればなるほど、関わる人たちが多くなってきます。そのときに大切になってくるのが、コミュニケーションスキルです。

コミュニケーションスキルがなかったら、人と上手く関われません。相手が何を考え、どんな態度、どんな言葉がけをして、相手の話を聞いてどうリアクションすればいいかが仕事の人間関係で重要になります。教科書に書かれていることを読んで知るだけなら、家でもできます。
でも、たくさんのクラスメイトと一緒に考え、話し合いながら、勉強することで、コミュニケーションスキルを身につけているのです。体育や音楽などの実技系の教科もです。クラスメイトと協力して運動したり、合唱や合奏をしたりすることを通して、コミュニケーションスキルを身につけているのです。休み時間や給食時間、掃除時間もです。

休み時間に友達と話したり遊んだりしながら、給食を食べながら、掃除をみんなと協力して取り組みながら、コミュニケーションスキルを少しずつ身につけているのです。これらの経験の積み重ねは将来、大人になって働くときにとても大切だと子どもたちに伝えています。

「学校の先生」という仕事のクリエイティブ性について

そして、「学校の先生」もクリエイティブな仕事の1つだということを子どもたちに伝えています。多くの子どもたちと関わりながら、毎日、毎時間の授業を創り、学級を創っていく仕事だからです。学校教員は公務員です。私の場合、8時半から17時までが勤務時間です。

ただ、公務員としてだけでは割り切れない仕事の魅力、クリエイティブな仕事内容の魅力が、学校教員にあります。私は教員になる前から、関西の小劇場を中心に10年間の演劇活動をしてきました。公演の台本をもらうと当然、稽古時間・稽古場だけでなく、家でも台本を読み込み、役作りをしたり、セリフを覚えたりします。学校教員になってからも、役者をしていたころと同じやりがいを「教師の仕事」だと感じています。

家で台本を読み込み、役作りをするのが楽しいと同じように、勤務時間外でも授業のことや学級のことをあれこれと考えるのが楽しいです。あまり、このことを強く言い過ぎると「やりがい搾取だ」と教員の方から批判を受けるかもしれません。
もちろん、学校教員の長時間労働は深刻な問題です。残業代も出ません。休憩時間もほとんどとれていません。
でも、授業の準備や工夫をすればするほど、子どもたちの反応が良くなるところが、演劇の舞台と似ていると感じるのです。しっかりと稽古を積み、共演者やスタッフさんとコミュニケーションを積み重ねて本番を迎えた公演は、お客さんの反応も良くなります。


拙著、絵本『せんせいって』(文:まつしたじゅんじ/絵:夏きこ)より

学校教員だけでなく、どんな職業もクリエイティブな面があります。たとえ決まった仕事であっても、働く自分次第で、創意工夫をすることができるからです。そして、どんな職業でも人と関わりながら働いています。そのときに大切なことの1つが、コミュニケーションスキルです。