近年、都市部での競争激化や生活や仕事にかかるコスト負担の増大がクリエイターにとって課題となっています。
一方、クリエイティブ産業の地方進出やリモートワークの広がり、さらに地方自治体の積極的な誘致策により、地方でのクリエイティブな活動が盛んになってきています。
CREATIVE VILLAGEでは、読者・会員の皆さまにご協力いただき地方移住に関するアンケートを実施!調査結果をもとに、地方移住を検討する際に留意すべきポイントや、地方ならではの魅力を具体的にご紹介していきます。
地方でのキャリア形成に興味のある方や、将来の移住を検討している方はぜひ参考にしてみてください。
記事のポイント
- クリエイターが多く移住している都道府県 1位:福岡 2位:大阪・京都・北海道
- 経験層/検討・関心層/無関心層の比較からみる、地方移住の実現背景やモチベーション
- テキストマイニングで紐解く、移住経験者が感じる地方クリエイターのメリット・デメリット
約8割が地方移住に関心を示し、4人に1人は移住経験あり
24%が地方移住経験者。
移住予定者を含めると30%弱、検討中まで含めると40%弱が、地方移住の検討を具体的に進めていることがわかった。
経験層/検討・関心層/無関心層の比較
さらに移住パターンや移住のモチベーションなどいくつかのポイントで、移住経験があると回答した経験層/予定・検討・関心ありと回答した検討・関心層/無関心層の回答を比較してみた。
移住のパターン
まずは経験者が実際に行った移住パターンと、検討・関心層が行ってみたいと思っている移住パターンを比較してみた。
経験者の中でもっとも多い移住パターンは、地元以外の道府県への「Iターン」(40%)、次いで生まれ育った地元への「Uターン」(23%)となった。
一方、検討・関心層にもっとも人気の移住パターンは「二拠点移住」(30%)、次いで「Iターン」(28%)となった。
「二拠点移住」「海外移住」は金銭・労力面の壁の高さからか、検討・関心層ではそれぞれ30%、14%の回答者が関心を寄せている状況に対し、実現した人は経験者全体の11%、6%に留まった。
移住先の都道府県
経験者の移住先、また検討・関心層が移住したい候補として、多かった都道府県は以下の通りだ。
今回、経験者の移住先としてもっとも多かった自治体は「福岡県福岡市」。
福岡県は検討・関心層のランキングでも4位にランクインしており、福岡市以外に政令指定都市である北九州市の名前も挙がっていた。
一方検討・関心層が関心を寄せる都道府県は「長野県」「沖縄県」が同率1位となった。
自治体単位でみると、長野県においては松本市、上田市、飯田市など、沖縄県においては那覇市、石垣市、南城市、うるま市などの名前が挙がった。
移住候補地の選定理由・背景
次に、経験者が移住先を決めた理由と、検討・関心層が移住先候補の場所に関心を抱くことになった理由を比較してみた。
経験者/検討・関心層ともに、「豊かな自然に囲まれて暮らしたい」にもっとも多くの回答が集まった。
次点では、検討・関心層が「暮らしてみたい場所」や「理想のライフスタイルの実践」など精神的な充足感を求めて地方に関心を寄せる一方、経験者や20%超が「勤務先の転勤」という外的な要因から移住先を決定している事実が判明した。さらに「両親の見守り・介護」「子育てに適した環境」の項目でも、経験者の回答割合が検討・関心層をわずかに上回っている。これらのことから移住先決定の背景やモチベーションには、本人の内発的な意志に加えて、家族や仕事など暮らしに関わる環境変化が影響していることがうかがえる。
また一部の移住経験者は「知人・友人の移住経験」や「情報発信の充実」を移住先選定の因子として回答しており、質の良い情報のあたることができたことで移住を決めた可能性がある。
さらに、経験者が移住先を決めた理由については、年代によって異なる傾向があった。
20代 | 親の見守り・介護 |
---|---|
30代 | ・豊かな自然に囲まれて暮らしたい ・理想のライフスタイルを実践したい |
40代 | ・勤務先の転勤 ・故郷に愛着があった |
50代 | 首都圏にいる必要性を感じない |
60代以降 | ・豊かな自然に囲まれて暮らしたい ・親の見守り・介護 |
移住にあたっての不安・懸念
続いて、検討・関心層と無関心層で、移住に対する不安や懸念にどのような違いがあるのかを見てみた。
「地方移住に関心がない」と回答した未検討層が、検討・関心層と比べて強く不安・懸念視した項目として、以下の4つが挙げられる。
・日常生活の利便性・快適性が損なわれる
・公共交通機関の利便性が損なわれる
・賃金が安い
・レジャー・娯楽施設が十分でない
※回答数に約2倍程度差があった項目を抜粋
利便性やエンタメ性、収入額を重視する層から、地方は敬遠されがちであることがわかる。
移住にあたり求める支援
では、どのような支援があれば移住をさらに前向きに検討しやすくなるだろうか。同じく検討・関心層と無関心層にヒアリングした。
住環境や就業・起業支援など、移住先でも生活基盤を維持するための支援が上位を占めた。
また検討・関心層のニーズが無関心層のニーズを大きく上回った項目として、「地方移住者交流支援」「空き家体験」「田舎暮らし体験」がある。このような体験型の支援があることで、検討・関心層の移住モチベーションの引き上げに繋がる可能性があるだろう。
移住経験者に聞く!地方クリエイターのメリット/デメリット
地方でクリエイターとして働くメリット
地方に移住したクリエイターが仕事をするうえで感じたメリットとして、もっとも多くの回答が集まったのは「クリエイティブな感性が刺激される」だ。特に50代以降の回答者から多くの支持を集めた。
一方、20代は「面倒な人間関係が少ない」点、30代は「生活費が安価で生計が立てやすい点」にメリットを感じており、年代ごとに価値観の差があることがわかる。
さらに、テキストマイニングツールを使って傾向を見てみた。
「仕事」
・趣味のイベント出店などを通して、観光協会の方からお声かけして頂いたり、デザインの仕事を頂けた。
・場所は関係ないが自宅で仕事をするようになって家族との時間が圧倒的に増えた。
「東京」
・東京での経歴が役立つため、仕事の幅が広がった(依頼が増えた)。
「リモート」
「家賃」
「美術館」
地方でクリエイターとして働くデメリット
デメリットとしては、「案件数が少ない」「制作単価が安く収入が減る」の回答が多かった。
メリットとして挙がった「生活費が安価」と合わせて考えると、地方での暮らしは「収入は減るが、支出も減る」状況がうかがえ、生活における収支のどこに比重を置くかで見方が変わってくるといえそうだ。
また東京などの主要経済圏と物理的に距離がある状況に対して、働き方・トレンド情報収集の観点から「リモートで仕事ができるので問題なし」と必ずしも割り切れない状況も見えてきた。
「動」
・クライアントに専属のパートナー企業が入っていて、その方が異動にならないと入り込んで大きな仕事を獲ることはできない
「時間」
・打合せなどで都心に出る事は皆無ではなく、移動に時間がかかり、交通費もかさむ。急なハード機材などを直接購入する際も困った。
「場所」
「機会」
「興味のあるイベント」
どのように情報収集するのがよい?
「移住情報・紹介サイト」「自治体のHP」が比較的よく活用され、次いで「SNS」という結果となった。
経験者の中には家族や親戚がもともと住んでいる地域に移住されている方も多く、そのような場合家族からの提供情報や、暮らしぶりを実際に見て感じ取ったことが主な情報源となるようだ。
またUターンで地元に帰省するケースを含めて「特に情報収集はしていない」という意見も一定数存在した。
クリエイターの移住支援に力を入れていると思う地域は?
最後に、全回答者にクリエイターの移住支援に力を入れていると思う自治体を聞いた。
都道府県別のランキングは以下の通りだ。
1位:徳島県
2位:北海道
3位:福岡県、長野県(同率)
5位:静岡県、和歌山県、岡山県(同率)
もっとも多くの名前が挙がった自治体は「徳島県神山町」。1991年から行っているアーティスト・イン・レジデンス事業の継続や移住セミナーの開催などを通して、国内外のアーティストならびにIT人材の移住イメージが浸透していたことが今回の結果に繋がった。
調査方法
期間:2023年4月13日(木)~2023年4月28日(金)
対象:クリーク・アンド・リバー社(以下、C&R社)会員と一般ユーザー 計271名/男女/全国
方法:インターネット調査