YouTubeをはじめとしたWeb動画のプラットフォームが普及し、誰もが当たり前のようにWeb動画視聴を楽しめる時代になりました。その流れもあり、自社チャンネルを作ってブランディングや売上アップを目指す企業も増えています。しかし、Web動画においては各企業で共通の悩みを抱えているようです。「視聴回数が伸びない」「内容には自信があるのに興味を持ってもらえない」という声も珍しくはありません。

再生数が伸びない理由はさまざまですが、その1つとして「サムネイル」が挙げられます。サムネイルは「Web動画の顔」とも言えるだけに、動画のトップ画のインパクトや印象が動再生数とも密接に関わっていると考えられています。熟練の映像・動画クリエイターこそ、サムネイルの重要性について注目してみましょう。再生数や売上アップを促すサムネイルの作り方を解説します。

サムネイルはWeb動画で形成された表現の1つ

サムネイルの作り方_動画メディア

映像・動画クリエイターでもWebを生業にしてこなかった方にとっては、サムネイルはあまりお馴染みのものではないかもしれません。なぜならTVCMやサイネージで再生される映像・動画ではサムネイルは存在しなかったからです。YouTubeがインターネットユーザーに定着した後は、動画のトップ画としてサムネイルはもはや不可欠となりつつあります。サムネイルの概念が重要視されるWeb動画において、作る意味や効果について検証します。

サムネイルの歴史:YouTubeなどWeb動画で生まれた概念

サムネイルは、YouTubeをはじめとしたWeb動画が一覧表示される際に使われる画像です。本でいえば表紙、商品でいえばパッケージと表現するとイメージしやすいでしょう。YouTubeの場合はホーム画面・関連動画・検索結果画面の3つのシーンで表示されるだけに、動画再生に誘導するうえでも重要な意味を持ちます。一方で、他の動画媒体であるTVCMやサイネージではサムネイルが使われることがなかったという事実も今となっては驚きだと言えます。

サムネイル画像はコンテンツのハイライトや伝えたいこと、キャッチーで目立つ部分を画像にするのが一般的です。ユーザーの「視聴」という行動を促す表紙的な役割があることを考えれば、その重要度も当然のことかもしれません。

サムネイル画像を作る意味・効果とは

YouTubeの場合は画像を自ら作成しなくても、自動で動画内から切り取ってサムネイル化してくれる点が特徴です。しかし、動画の再生数や拡散を考えた場合、サムネイル画像を制作してカスタム設定するべきだと言えるでしょう。

そもそもYouTubeをはじめとしたWeb動画は、TVCMやサイネージのようにユーザーが自然視聴する「受動的コンテンツ」ではありません。ユーザー自身が興味を持ってアクションを起こすことで初めて視聴される「能動的コンテンツ」である点が決定的な違いです。つまり、目的に合った適切なサムネイル画像が設定されていれば、再生回数も向上しやすくなります。

また、サムネイルが高品質でクリック率が高いコンテンツは、「優良コンテンツ」と判定される可能性が高まります。「たくさんクリックされている=ユーザーが関心を持っているコンテンツ」とアルゴリズムが判断するためです。YouTubeにおいてはそうしたアルゴリズムを「ブラウジング機能」と言いますが、クリック率が5%以上だとブラウジング機能の恩恵を受けやすくなると言われています。

さらに、内容を分かりやすく伝えられるように作成されたサムネイル画像は、最後まで動画を視聴してもらいやすくなるでしょう。ユーザーはサムネイルの情報を確認して、動画の内容を想像したうえで再生します。つまり、興味を持ったからクリックしているため、無関心で視聴する際よりも内容を吟味するようになるのです。動画を面白いと思ってもらえれば、ファンになってくれたり、関連動画にも興味をもったり、自社サイトをチェックしてくれたりもしやすくなるでしょう。

サムネイル作成に押さえるべき用途目的の意識

サムネイルの作り方_動画視聴

Web動画コンテンツにおいて重要なサムネイルですが、単に作るだけでは思うような成果をあげられるとは限りません。たとえば、YouTube上のコンテンツと、他媒体での使用を前提とした映像・動画ではサムネイルの有用性が異なります。また、企業のYouTubeチャンネル用のコンテンツの場合は、最初からできる範囲は限られているので、用途目的の意識は常に重要になります。

対象と目的を明確にする

サムネイル画像を作る際、まずは「誰が対象なのか」「目的は何か」を明確にしましょう。たとえば、「自社サービスの新規利用者を増やしたい」「既存顧客にサービスへの知識を深めてもらいたい」といった対象・目的があったとします。この場合、それぞれでサムネイル画像の作り方は変わってきます。

前者であれば新規ユーザーを獲得するため、画像内に目を引くキャッチフレーズやトレンドのキーワード、なるべく目立つ配色・絵を使用することになります。後者であれば、すでに事前知識がある方に向けた少しニッチなフレーズを入れ込むのが一般的です。動画内の要点をまとめるのも効果的だと言えるでしょう。

また、「YouTube上のコンテンツ」なのか、それとも「他媒体に掲載する動画」なのかでもサムネイルの作り方は変わってきます。前者であれば、再生数を伸ばすために力を入れる必要がありますし、後者であればサイトのトンマナに合わせることにより注意を払う必要があるでしょう。このように対象と目的、さらにはシーンを考えたうえでサムネイルを作成することが大切です。

分かりやすく簡潔な文章を入れる

サムネイル画像は本でいえば表紙、商品ならパッケージです。つまり、ユーザーに興味を持ってもらうインパクトや表現でなければいけません。そのため、文字を入れる場合は長い文章を入れるのではなく、端的なフレーズを入れましょう。また、動画タイトルと動画内容に関連するフレーズを入れ込むことで離脱率の低下にもつながります。前述の通り、ユーザーはサムネイルで視聴を判断するため、動画内容と乖離があると途中で視聴をやめてしまう恐れがあるのです。

その他の細かい注意点

YouTuberの中には、動画内容と乖離させた衝撃的なサムネイルを作成する方もいます。いわゆる「釣り動画」と呼ばれるもので、キャッチーな画像・文章で視聴者にクリックさせて再生数を稼ぐ手法です。こういった手法は個人であれば自己責任ですが、企業の場合は炎上の危険性もあるのでおすすめできません。

ただし、戦略として尖ったコンセプトの動画を投稿し、バズらせることを第一にしている場合は「釣り」も1つの手法となります。自社ブランディングを傷つけることなく、視聴者にインパクトを与えるという二兎を追う必要があるので、「釣り」を狙う際は慎重に内容を精査することが重要です。

視聴数増につながるサムネイルの作るための4つのポイント

サムネイルの作り方_動画サムネイル

サムネイルはいわば「動画の顔」です。視聴者にとって再生するか否かの判断基準になるだけ、制作にはなるべくこだわるべきでしょう。ではサムネイル作成時にどんな点に力を入れるべきでしょうか。熟練の映像・動画ディレクターでも改めて意識したい4つのポイントを紹介します。

ポイント1:見やすく引きの良い言葉を目立たせるようにする

商品のパッケージにあたる部分であると考えた場合、サムネイル画像に入れる言葉のインパクトは重要です。「数字」「行動」「ターゲット」を意識して、ユーザーがサムネイルを見てより具体的なイメージが湧くかどうかを意識しましょう。また、あまりに専門性が高すぎる内容はコアなユーザーにしか届きません。新規獲得や再生数アップが目的であれば、「誰でもできる」のようにハードルを下げるフレーズも効果的です。

ポイント2:小さくても見える・分かるように意識する

サムネイル画像はYouTubeの場合だと「ホーム画面」「関連動画」「検索結果画面」の中で一覧表示される際に使われます。つまり、1つひとつの画像は決して大きくありません。しかも、競合と一緒に表示されるため、埋もれてしまう可能性もあります。再生数を伸ばすことを意識するのであれば、「小さくても見える・分かる」を意識することが大切です。同じフレーズ・文字数・画像を使っていても、配色やデザインによって見やすさは大きく変わります。特にWeb動画はスマホで視聴するケースも多いので、小さくても目立つサムネイル画像は再生数アップに欠かせません。

ポイント3:競合キーワードで再生数の多い動画を参考にする

多くの再生数を獲得している動画は、サムネイルもしっかり作り込んでいるケースがほとんどです。再生数を伸ばす目的があるならば、競合キーワードや競合他社のチャンネルのサムネイルを参考にしましょう。「どんなフレーズを用いているか」「文字の色や画像全体の配色バランス」「文字に使われているフォントの種類やサイズ」は要チェックのポイントです。また、余裕があれば動画を視聴し、内容とサムネイルのバランスも確認しましょう。他にも概要欄やタイトルも参考になります。

ポイント4:チーム内でフィードバックをしてもらう

サムネイルにこだわる理由は再生数や売上アップ実現です。つまり、企業にとって動画コンテンツは業績をアップさせるための1つの施策となります。大切な施策である以上、クオリティを高めるためにもチーム内で積極的にフィードバックをし合いましょう。さまざまな角度から指摘してもらえれば、自分では気がつかなかったポイントも見つかり、より良いサムネイルが作るはずです。

シンプルで分かりやすいサムネイルは高評価の傾向に

サムネイルの作り方_まとめ

【サムネイル 作り方についてのまとめ】

  • サムネイルはWeb動画特有の表現技法と言える
  • サムネイル作成時は基本を押さえつつ、用途目的に合わせることが大切
  • トンマナなど動画やWebサイトの方向性に合わせることが第一

誰もが気軽に動画視聴できるようになった現代。自社ブランディングや売上アップを目的にWeb動画を制作するケースが増えてきました。動画の目的はさまざまであり、再生数を必ずしも伸ばす必要はないケースもあります。しかし、Web動画は再生し、視聴してもらってこそ意味があります。最低限の再生数を確保するためには、動画の顔となるサムネイルにはこだわるべきです。

サムネイルはWeb動画の顔であり、対象や目的に合わせて工夫を凝らせば再生数アップも期待できます。また、一定の基準に沿って作成すればチャンネルの統一感も出すことができ、ブランディングにもつながることでしょう。