WebディレクターはWebサイト制作などのプロジェクトにおいて、案件の進行管理がメインの業務。顧客が望む納期に遅延することなく進行させるためにも、各工程の作業開始から終了まで要する期間を正確に予見することが必要です。最終納期を設定し、期日内に案件を納品するためにスムーズな進行を行う必要があります。スケジュール管理の精度によって制作進行の良し悪しが大きく変わるだけに、遅延が発生しないための手法を取り入れることをおすすめします。それがクリティカルパスの設定です。
納品までに一番時間がかかるシチュエーションの洗い出しとも言えるクリティカルパスを設定することには、どんな意味があるのでしょうか。多くのWebサイト納品に関わってきたベテランのWebディレクターに向けて、クリティカルパスを設定することの意義について解説します。
クリティカルパスで発見すべきは制作工程のボトルネック
制作進行を主戦場とするWebディレクターにとって、Webサイト制作の日程や工程管理は不可欠な業務です。顧客が求める成果物を納期までに納品することがWebディレクターの最大のミッションとなるだけに、スケジュールの管理能力が問われる職種だと言えます。納期遅延の発生を未然に回避し、制作の統率のために、Webディレクターは各業務や担当者の中でボトルネックになりそうな要因を早めに把握すべきだと言えるでしょう。そこで注目される手法が「クリティカルパス」です。
クリティカルパスとは
クリティカルパスとは、対応の所要時間が最長となる経路のことを指します。前工程の完了に伴い後工程が始まるという依存関係に従っていることから、1つの工程で遅延が発生するとプロジェクト全体のスケジュールに影響をおよぼす恐れがあるだけに、Webディレクターは重点ポイントとして進捗状況に目を光らせる必要があります。仮に他の工程を短縮できても、クリティカルパスを短縮できればければプロジェクトは完了には至りません。
一方、クリティカルパスを適切に把握することで、作業の優先度が明確になったり、スケジュール管理をしやすくなったりするなどのメリットがあります。つまり、重要な工程において何が懸念材料なのかを早めに掌握するためにも活用すべき手法なのです。
ボトルネックになりそうな要因を早期に見つける
Webディレクターやプロジェクトリーダーなどの案件管理者は、クリティカルパスを早期に設定して制作が遅延しない対策の立案が求められます。そのうえで重要になるのが、作業開始から終了までの期間を正確に把握することです。そして、その過程で何が順調なスケジュールを妨げるボトルネックになりそうなのか、その業務や担当者を事前にピックアップしておきましょう。
また、クリティカルパスの工程を担当するプロジェクトメンバーについてはできるだけ優秀な人材に依頼することをおすすめします。プロジェクトの根幹を担うだけに、進行遅延を出さないためにも計算のできるメンバーの選定が1つの鍵となります。遅延を起こしそうな要因は、あらかじめ排除することが重要です。
重要なのは最早開始日(ES)と最遅終了日(LF)
クリティカルパスを設定してスケジュールを考える際に、もっとも重要になるのが最早開始日(ES)と最遅終了日(LF)の把握です。つまり、その作業工程にかけられるMAXの期間を指します。それを明確に認識したうえで、期間内にどんな業務があるのかをすべてリストアップして、その間に起こり得るすべての事態を想定する準備がWebディレクターには必要となります。クリティカルパスの正しい設定の仕方や最早開始日と最遅終了日の考え方についても触れていきます。
クリティカルパスの正しい設定の仕方
クリティカルパスを正しく設定するための方法としては、PERT図の作成が挙げられます。PERTとは「Program Evaluation and Review Technique」の頭文字をとった略称です。作業タスクを項目ごとに明確にし、矢印で結んだうえで工数を記します。そして、タスクごとに日数を記入することでクリティカルパスを正しく設定できます。タスクごとの日数は、もっとも早くそのタスクに取り掛かれるタイミングと、タスク自体を終わらせる日数を示すことが一般的です。
クリティカルパスの最早開始日と最遅終了日
PERT図などを利用してクリティカルパスを設定しますが、重要なのは最早開始日と最遅終了日です。つまり、すべての作業工程に費やせる最大限の期間と認識できます。PERT図などのフレームワークでは最早開始日や最遅終了日のみならず、最早終了日、最遅開始日まで導いたうえであらゆる可能性を想定しておきましょう。
しっかりと予定を立ててクリエイターに進捗確認、遅延が出ていたら完了予定日を約束させて再度スケジュール調整をする。この繰り返しでクリティカルパスの設定から管理まで行えます。そこで意識するのが工程ごとの最早開始日や最遅終了日となるわけです。最早開始日や最遅終了日を定め、その期間内にすべきことをリストアップ、発生しうるリスクの想定をすべきでしょう。
Webディレクターによっては、特別なツールを使ったりPERT図を作成したりせずに管理をしている方もいます。具体的な方法としてはGoogleスプレッドシートで作業工程やスケジュールをガンチャート化する形です。
「なるはや」に対してバッファを持たせるのが力量
Webサイト制作を進めていくうえでは、どうしても日程や納期が間に合いそうにないケースが生じます。特に顧客からは「なるべくはやくお願いします!」と耳にタコができるくらい言われているWebディレクターも多いことでしょう。また、制作の現場においてもWebディレクターからクリエイターに「なるはやで!」と言いたくなるものです。しかしながら「なるはや」は具体的な指示ではありません。
バッファを持たした納期設定でメンバー調整を
各工程において工数と必要な日数を確保、さらに確実に仕上げるために日程を調整する必要があります。だからこそ、顧客にはバッファ(ゆとり、余裕)を持ったスケジュールの提示が重要です。顧客に対してバッファを持ったスケジュールを提示することに気が引ける方もいるかもしれません。しかし、現実的な対応をしつかりとイメージしたうえで、各工程のスケジュールを調整する力量がWebディレクターには求められます。
バッファを持ったスケジュールとはいっても、各クリエイターには必ず守るべきスケジュール感を事前に共有することがポイントです。スケジュール感は共有だけでは意味をなさないため、各クリエイターの進捗を適宜確認する必要があります。スケジュールに遅延が出ないように内部のクリエイターとの統制を積み重ねることで、顧客が望むスケジュールよりも早い対応が可能となり、そこで「なるはや」が実現するのです。
Webディレクターはスケジュール設計がすべて
【Webディレクター クリティカルパスのまとめ】
- クリティカルパスでは制作の実態を明確化する
- 最早開始日と最遅終了日の設定で期間が見える
- 納期のバッファを持たせることは必須スキル
Web制作においてWebディレクターにはさまざまなスキルが求められる職種です。その中でも肝となる制制作進行においては、クリティカルパスを設定して遅延なく制作を進めるノウハウが重要になるでしょう。クリティカルパスにおいては、最早開始日と最遅終了日を強く意識しましょう。それによって制作期間が明確になるはずです。
最早開始日と最遅終了日が明確になったら、納品までに一番時間がかかるシチュエーションの洗い出しをして、各クリエイターと密な進捗確認を行いましょう。Webディレクターの仕事は、計画と調整の繰り返しだと言えます。また、納期のバッファを持たせる場合は、顧客への伝え方を意識しましょう。クリエイターからのあがりの納期と提出日の違いなどはWebディレクターのコントロールの範疇となるので、社内外問わず連携とフォローを徹底することが制作進行には不可欠です。