Webデザイナーの主な仕事は、Webサイトやコンテンツの見た目や機能を設計する「デザイン」することです。しかし、近年では顧客折衝やコンセプトの説明を率先して対応できるスキルを有する「提案型Webデザイナー」が重宝される傾向にあります。「Webデザイナーにとって、プレゼンテーションスキルは必須」とまでは言い切れませんが、「提案力」は確実に強みになるので、身につけるに越したことはありません。
特にWebデザイナーとしてのキャリアを4~5年積んだ方であれば、顧客に対して自身のデザインの提案を行う機会も増えてくるでしょう。顧客との合意形成を得るためには、「ムードボード」や「ポートフォリオ」などのツールを使ってイメージを共有したり、自身のデザイン観をきちんと伝えたりするスキルが重要になります。
Webデザイナーが顧客に対して提案を行う機会が増加している
Webサイト制作における交渉・打ち合わせといった顧客折衝は、基本的にWebディレクターが窓口となって進行します。そのため、「Webデザイナーは、顧客対応に関して前面に出る機会はあまりない」と考えているかたもいるでしょう。しかしながら、近年ではデザイン思考の考えが一般にも浸透してきており、多くの企業が「デザインの重要性」を認識するようになりました。その結果、「デザインの意図」をWebデザイナー自ら説明を行う機会が増加傾向にあります。
つまり、Webデザイナーも顧客に対して説明やプレゼンを行うスキルが求められる時代になりつつあるのです。顧客から「なぜ、このデザインにしたのか」「この色味にした意図は何か」などと問われた際、Webディレクターは「デザインを行った本人」ではないため、上手く返答できないこともあるでしょう。その際にWebデザイナーが同席していれば、的確に説明・フォローすることができます。
プレゼンスキルはWebデザイナーの1つの武器になる
Webデザイナーにとっての本来の仕事は、「デザインをすること」です。顧客対応は営業やWebディレクターが担うこともあるので、プレゼンテーションスキルは必須とまでは言えせん。しかし、「提案力」は確実にWebデザイナーにとっての武器になることを認識しましょう。Webデザイナーとしては、自身が担当するデザインの主旨・意図についてきちんと顧客に説明できることが理想です。Webデザイナーとして成長するために、意識的に顧客との合意形成の機会を増やすことをおすすめします。
Webデザイナーの中には、顧客と直接対峙した際に「デザインが気に入らない」「イメージと違う」などと言われることを恐れている方もいるのかもしれません。しかし、「デザインが素晴らしい」「イメージ通り」などと褒められる場合も数多くあります。面と向かって賛辞を贈られると、Webディレクターから間接的に伝えられるよりもうれしく感じられるものです。
また、プレゼンテーションスキルを武器にして有名になったWebデザイナーもいることを留意しておきましょう。デザイン力に加えて、プレゼンテーション能力も身につけることで、今後のWebデザイナーとしてのキャリアの可能性が大きく開けるかもしれません。
デザインの提案に役立つ「ムードボード」と「ポートフォリオ」
デザインの提案を行う際には、「視覚的なイメージついて顧客と共通認識を持つこと」を目標に据えましょう。なお、「Webデザイナー本人しか意図が分からない」状態を避けるため、デザインのコンセプトに関する資料を作成し、顧客と折衝を行う前にWebディレクターなどと共有するのが丁寧なやり方です。
しばし顧客は抽象的な表現(「カッコいい見た目にして」「安心感のあるデザインが良い」など)でリクエストしますが、Webデザイナーとの間に「認識のズレ」が生じる恐れがあります。認識のすり合わせが不十分なままデザインを行うと、あとから作り直しを余儀なくされる事態に陥りかねません。そのため、提案時には「ムードボード」や「ポートフォリオ」などのツールを使ったイメージの共有が役立つでしょう。
デザインの方向性を決める際に役立つ「ムードボード」
「どのようにすればイメージを具体化し、漏れなく共有できるのだろうか」とお悩みのWebデザイナーは、「ムードボード」の活用を検討しましょう。ムードボードとは、紙面やスクリーンに「写真」「イラスト」「フォント」「ロゴ」「模様」「色味」などを集めてコラージュしたツールです。言語化することが困難な「イメージ」「雰囲気」「質感」などを相手に伝え、デザインの方向性を固めるために用いられます。
自身の制作実績をまとめた参考資料「ポートフォリオ」
自分の作品集とも言える「ポートフォリオ」を作成・提示することもご検討ください。Webデザイナーとして自身がどんなデザインを作れるのかを理解してもらいやすくなるので、同業のデザインがあるとよりイメージしやすくなるでしょう。なお、過去の実績を第三者に提示する際は、「顧客からの許諾」が必要になるケースや、「社外秘」のケースもあるので、資料ではなくパソコンの画面で見せるだけの共有にするなど扱い方に注意が必要です。
顧客に提示するムードボードやポートフォリオは、ボリュームが多くなり過ぎないように心がけましょう。できるだけコンパクトにまとめたうえで、デザインの裏づけとなる補足資料(「競合他社のデザインを配置したマトリックス図」「デザインのトレンドを解説した記事」「参考サイト集」など)も付け加えてください。
プレゼンテーションの際、「デザイン観」を伝えることが重要
Webデザイナーはデザイン作成の作業に没頭することも多いでしょうが、客先に出ずにパソコンの画面を見つめているだけではインスピレーションを得にくくなることもあるでしょう。顧客と率直な意見交換を行うことは、良いデザインを生み出すうえで欠かせません。顧客との対応をすべてWebディレクターに委ねるのではなく、デザインの方向性をまとめる局面や、相互理解が必要なシーンでは、Webデザイナーが自分自身で提案を行いましょう。なぜなら「デザイン観」を伝えることが重要な役割となるからです。
「デザイン観」における共感を得ることの重要性とは
Webデザイナーが率先してプレゼンテーションを実施することの価値は、「高い精度でデザイン観を顧客と共有できる」点にあります。「制作プロセス(作り方)の細かい説明」を行うことは、プレゼンテーションにおける「核」となる要素ではありません。それよりも、「どんなデザインを想定しているのか」「どんな意図を持って制作に励んでいるのか」という考え方を顧客と共有することに注力しましょう。
プレゼンテーションが得意なWebデザイナーは少数派かもしれませんが、デザイン観をきちんと顧客に伝えることも大切な業務の一環です。数をこなしていくうちに次第に慣れるので、過度の心配は無用だと言えます。「優れたデザインを行える能力」だけではなく、「顧客に正確に意図を伝えられる能力」も持ち合わせることは、Webデザイナーとしての強みです。
なお、Webデザイナーが自身でデザイン観を伝えることで、案件の合意を形成しやすくなることに加え、顧客との信頼関係をより強固にできます。別途「Webデザインが気に入ったので、パンフレットのデザインも追加で発注したい」「同じデザインで名刺を作りたい」といった申し出があるなど、売上や受注への貢献にもつながるケースもあることを認識しましょう。
プレゼンテーションのスキルは、Webデザイナーの武器になる
【Webデザイナー プレゼンについてのまとめ】
- 近年、「提案型のWebデザイナー」が求められる傾向にある
- デザインの提案の際は、「ムードボード」などで視覚情報の言語化・共通認識を
- Webデザイナーは「デザイン観」を顧客に伝達することに注力すべき
Webデザイナーにとっては、デザインのコンセプトを顧客に説明するスキルも非常に重要になります。「顧客に直接提案する機会」が皆無というわけではありません。近年では顧客との折衝やコンセプトの説明を率先して行う「提案型Webデザイナー」が重宝されているので、ステップアップを狙ううえではぜひ身につけておきたいスキルです。Webデザイナーにとっても「提案力」は確実に武器になります。
提案を行う際は、ムードボードやポートフォリオを提示し、視覚情報の言語化・共通認識を取ることを意識しましょう。何となくのイメージでデザインを作ると失敗するケースは多いので、顧客との打ち合わせの場でデザインの合意形成を取ることを習慣化できるとベストです。提案が当たり前にできるようになると、Webデザイナーとしての活躍の場がさらに開けるでしょう。