人手不足が叫ばれる昨今、新しい採用方法として注目を集めていますが、リファラル採用をうまく利用し、採用を成功させるためにはどんな方法があるのでしょうか。
この記事では人事担当者向けに以下のポイントについてご紹介します。
- リファラル採用の基礎知識と、注目されている背景
- リファラル採用を行うための準備、制度作り
- リファラル採用のメリット・デメリット
社員の家族や親戚を紹介する縁故採用と似ていますが、リファラル採用では社員の知人・友人など、より幅広い範囲の人が平等な採用試験を受けて、合否が決まるのが特徴です。
クリエイターのキャリアサポートを行っているクリーク・アンド・リバー社ならではのクリエイティブ業界の情報を取り入れた記事をお届けします。ぜひご一読ください。
リファラル採用とは?
リファラル(referral:委託・推薦・紹介)採用とは、自社の社員による紹介を通した採用活動のひとつです。
社員が友人・知人に声をかけたのち、候補者として正式な選考過程を経て採用されます。一般採用より内定率が高いとも言われています。縁故採用との違いは家族・親族だけでなく、友人・知人までに候補者の範囲が広がることと、平等かつ正式な選考過程を経ているかどうかです。
転職エージェントの紹介料や求人広告の掲載料がかからないため、採用コストを抑えられるというメリットがあります。紹介した社員にインセンティブを支払うとしてもコストダウンできるため、IT・ベンチャー企業を中心に活用されています。国内の成功事例としては、メルカリ、LIG、LINE、サイバーエージェントなどが挙げられ、サイバーエージェントではリファラル採用導入により、退職率を50%軽減できたそうです。
転職希望者からみた「リファラル採用」の認知度
株式会社ワークポートが全国の転職希望者371人に行った「転職希望者のホンネ調査」によると、リファラル採用を知らない転職希望者は全体の74.1%という結果でした。これまでリファラル採用を経験したことがある人は22.9%にとどまり、まだまだ認知度や活用度が高くないことがわかります。
リファラル採用が広がっている背景
エン・ジャパン株式会社のアンケートによると、リファラル採用を行っている企業は60%でした。かつては中途採用が中心でしたが、現在は新卒採用でもリファラル採用が行われるようになり、徐々に広がりを見せています。
リファラル採用が最初に注目され始めたのはアメリカで、日本でもベンチャー企業だけにとどまらず、大手メーカーにも導入が始まっています。では、なぜリファラル採用は広がっているのでしょうか。
理由は大きく2つあります。
- 労働力人口の減少
- 自社の社風に合う人材が確保できない
労働力人口の減少
1990年に6384万人いた労働力人口は2030年には6180万人になると予想されており、今後も減少していく見通しです。人材確保はさらに困難を極めるといえるでしょう。
自社の社風に合う人材が確保できない
転職が当たり前になった昨今、少しでも会社に合わないと早期離職してしまう社員も少なくありません。しかし、社員からの紹介であれば求職者も企業について理解しやすく、早期離職の防止につながります。また、企業側も転職サイトなどには登録していない優秀な即戦力と出会える可能性もあるのです。
リファラル採用は求人サイトへの掲載などと比べ、採用コストの削減につながりますが、不採用による紹介者と求職者の関係悪化が懸念されます。今後は紹介者と求職者に配慮するシステムが求められるでしょう。
リファラル採用のメリット・デメリット
導入する際は人事担当者だけでなく各部署にも関係するため、説明材料としても気になるリファラル採用のメリットとデメリット。ここではそれぞれについてご紹介します。
リファラル採用のメリット
リファラル採用のメリットは、求人広告の掲載料や制作費が減り、採用コストを大きく削減できることです。求職者の書類を選定する時間的コストも大幅に減らせます。
また、すでに働いている社員や内定者が求職者に会社のことを説明し、納得してから入社してもらえるため、離職率が低下しやすくなります。社風や企業理念に共感する人物も集まりやすくなる傾向があります。
また、友人・知人への紹介を考える社員側も自社の説明をしたり、どんな人材が必要か自然と考えられるようになったり、自らの仕事や役割に向き合う良いきっかけになるでしょう。転職サイトやエージェントに登録していない潜在層との出会いも期待できます。転職活動を積極的には行っていないが、「知人の紹介なら考えてみようかな」という人材もいるかもしれません。
リファラル採用のデメリット
新規事業部の立ち上げなどで人材を大量採用したいときには不向きなことです。社員からの紹介を待つことになるため、同一のタイミングでたくさんの求職者からの応募は見込めず、非効率です。
また、社員のつながりから人材を紹介してもらうと似たような思考の人物が増えやすくなる可能性があります。同一の特性を持つ人材ばかりが集まってしまうのも問題です。今の職場にはない異なる価値観や知識を持った人材が欲しい場合、リファラル採用だけに頼ってしまうと、多様性のある職場の実現は難しくなるかもしれません。
求職者が不採用になってしまった場合、紹介した社員とその人の関係が悪化するという懸念もあります。社員に「全員採用するわけではない。不採用の可能性もある」ということを事前に求職者に必ず伝えてもらうようにして、社員が友人・知人を紹介しやすい雰囲気を会社側も作っていく必要があるでしょう。
リファラル採用の成功ポイントとは?
採用コストの削減、内定者の入社後のギャップを少なくするリファラル採用ですが、会社に定着する、優秀な人材の採用を成功させるためのポイントが3つあります。
社員自身が魅力に感じる組織づくり
1つめは、紹介者の社員に自社をおすすめしたくなるようにすることです。例えば、「給与が著しく低い」「働く環境に不満が多い」といった企業体制では、転職を相談してくる友人・知人に自社を薦めてもらえないでしょう。社員が自社を魅力的に感じてもらえる組織作りを心がける必要があります。
また、エンゲージメントの高い社員をメンバーにした採用チームを作る方法もあります。愛社精神の高い社員が中心となることで、より採用効率が高まります。リファラル採用は人事戦略のひとつなので最適な形で実施していくのがベストです。
正しい求人情報を社員に理解してもらう
2つめは、採用したい人物像と採用方式を明確にし、紹介者となる社員に求める人物像や業務内容をきちんと理解してもらうことです。紹介者の人事評価やインセンティブについてもしっかり決めておきましょう。
紹介者へのインセンティブ・制度設計
3つ目は、紹介者へのインセンティブなどの制度設計をしっかり行うことです。リファラル採用は、友人・知人を紹介してくれた社員にインセンティブを支払います。
Referral Insight(運営:株式会社リフカム)掲載記事「気になるインセンティブ制度!他社事例をご紹介」によると、インセンティブの相場は1~30万円が多く、報酬制度自体がない会社や、50万円以上の高額を設定する企業もあります。人事評価に反映したり、1人紹介するごとに有給休暇を増やしたりする企業もあるようです。インセンティブを設定する場合は、就業規則や賃金規定に必ず制度を追加しましょう。
リファラル採用は職安法第30条、職安法第40条、労基法第11条の法律に該当します。
紹介者に支払われるお金が労基法第11条に書かれている「賃金」に該当すれば、職安法第40条の違反にはならないとは言われていますが、違法にならないよう細心の注意を払いましょう。
リファラル採用を成功に導く方法・制度・クラウドサービスとは
リファラル採用を実施するためには、円滑に人材を集めるための制度作りと、それを支えるツールの活用が重要です。
まずはプロジェクトチームなどを発足させ、社内全体でリファラル採用に対して積極的に動ける体制を準備します。そして、インセンティブ等の制度を設計し、問い合わせ窓口の設置などを行います。制度を作っても社員に浸透しなければ意味がないので、告知や情報のアップデートはきちんと行いましょう。
また、社員に自社のことを正しく広めてもらうため、自社の経営状況、戦略、企業理念などを改めて周知させる必要があります。リファラル採用の意義を社員と共有していくことで、採用成功に近づきます。
リファラル採用を活性化させるためのクラウドサービスもあるので、以下でご紹介します。
サービス名 | refcome |
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サービス概要・特長 | 募集要項のURLを友人・知人に転送するだけで済むクラウドサービス。システムのログインやメールアドレスの登録は不要です。リファラル採用の活性化に必要なデータの分析が行える機能もついている。 |
公式HP | https://jp.refcome.com/ |
サービス名 | TUNAG |
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サービス概要・特長 | 利用された制度が可視化されるクラウドサービスです。リファラル採用の告知のためのメール作成、ポスター掲示などを社内でカンタンに告知でき、アップデートもスムーズ。 |
公式HP | https://tunag.jp/ja/ |
サービス名 | MyRefer |
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サービス概要・特長 | 既存の求人票を一括で取り込み、社員に告知。求人情報以外にも活動状況や多くの人を紹介した社員のランキングなどの機能がある。 |
公式サイト | https://i-myrefer.jp/ |
まとめ
リファラル採用を成功させるためには、制度作りやツールの準備なども必要です。しかし、それ以前にブランディングによって社内外に自社の情報開示がしっかりと行われており、Webサイトなどで自社の魅力を正しく伝えられている点も大切です。自社のブランディング・情報開示がしっかりしていることで、社員が社外の友人・知人に魅力や業務内容を伝えやすくなるというメリットがあります。
紹介者と求職者の関係や、インセンティブについても考慮し、効率よく人材を確保できるよう戦略的に考えていくことがリファラル採用を成功させる上での重要なポイントになるのです。
クリーク・アンド・リバー社はクリエイティブ業界に特化した人材エージェンシー事業を行っています。
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