「クリエイターとして、もっと多くの技術を身につけるために転職したい」「企業や組織にとらわれず個人の力を試したい」そんな想いを抱えているクリエイターの方もいるのではないでしょうか?
未来を想像しワクワクしたり、早く転職や独立の準備を進めたりしたいという気持ちもわかりますが、忘れてはいけないのが退職後の手続きです。うっかり忘れてしまうと後々自分自身が困ることになるので、確実に終わらせてしまいましょう。
この記事では「退職手続きってどうやればよいの?」という方に向けて、必要な手続きを紹介していきます。
- クリエイターが退職後に必要な手続きとは?
- 退職日の翌日に新しい会社へ入社する場合
- 新しい会社へ入社するまで1日以上あく場合、転職先が未定の場合
- フリーランスとして独立する場合
- 失業手当受給の手続き
- 健康保険の切り替えも必要
- 年金の切り替え手続きも必要
- 退職後、クリエイターとして独立する場合は次の手続きも必要
- 開業届を出すことで生まれるメリット
- 事前準備がスムーズな手続きのカギ
クリエイターが退職後に必要な手続きとは?
「退職に関わる手続きは、今の会社がすべてやってくれる」と思っている方もいるかもしれませんが、実はそうではありません。
今の会社が手続きを行ってくれるのは、あくまでも在職中に関わることだけです。
失業保険の申請・健康保険の切り替え・年金の切り替えに関しては、定められた期日までに自分で手続きを行う必要があります。
ただし、必要な手続きは退職後の進路によって次のように異なります。
退職日の翌日に新しい会社へ入社する場合
退職後、日にちをあけずそのまま新しい会社へ入社する場合は、健康保険や年金の手続きを転職先の人事担当者が行ってくれます。
会社から指示された書類を提出するだけで問題ありません。
新しい会社へ入社するまで1日以上あく場合、転職先が未定の場合
退職日翌日に入社しない場合は、失業手当の申請・健康保険の切り替え・年金の切り替えをすべて自分でおこなう必要があります。
この記事で紹介する内容を確認し、退職後は早めに手続きを行いましょう。
フリーランスとして独立する場合
転職ではなく、フリーランスとして個人で仕事をしていく場合は、失業手当の申請に代わって開業届の提出が必要です。
開業届の提出は法律で定められているだけでなく、提出することで受けられるメリットもあるため確認しておきましょう。
失業手当受給の手続き
働く意思があるにも関わらず次の職場が決まっていない方は、失業手当(雇用保険の基本手当)を受給することができます。
失業手当の申請には離職票が必要となるため、離職票がどのような形で(会社まで受け取りに行く必要があるか、自宅に郵送してくれるか)いつまでに届くか、退職前に確認しておきましょう。
失業手当申請の詳細は、以下となります。
- 申請期間
- 離職票が手元に届き次第、なるべく早めに(詳細は後述)
- 申請場所
- 居住地を管轄しているハローワーク
- 申請に必要なもの
- 雇用保険被保険者離職票-1
- 雇用保険被保険者離職票-2
- 雇用保険被保険者証
※会社が保管している場合があるため、退職前に確認しましょう。紛失した際は、ハローワークで再発行手続きができます。 - 本人名義の預金通帳もしくはキャッシュカード
- 身分証明書(運転免許証・マイナンバーカードなど)
- 個人番号確認書類(マイナンバーカード・記載のある住民票など)
- 証明写真2枚
- 印鑑
失業手当の申請期間はとくに決められていないため、必要書類が手元に届いてから手続きすれば問題ありません。
ただし、失業手当には受給期間というものが定められており、退職日の翌日から1年間を経過すると受給することができなくなります。自己都合での退職の場合、給付が受けられる日数は90日~150日間 、受給開始まで3ヵ月かかるため、申請自体が遅くなってしまうと満額受給ができなくなる危険性も。
また、失業手当はあくまでも、働く意思があるにも関わらず仕事に就けない状況にある人のための制度です。フリーランスクリエイターとして活動しているにも関わらず、失業手当を申請・受給することは不正受給とみなされる危険性があることを認識しておきましょう。
健康保険の切り替えも必要
退職翌日からすぐに新しい会社への入社が決まっていれば不要ですが、そうでない場合は健康保険の切り替えが必要です。
退職後の健康保険の選択肢としては、以下の3つがあります。
今まで加入していた健康保険を任意継続
任意継続の手続きをおこなうことで、退職後も今までと同じ健康保険に2年間加入することが可能です。ただし、今まで会社が折半してくれていた保険料を全額自分で納める必要があるため、保険料は2倍となります。
また、継続といっても、退職時に今までの保険資格は会社側で喪失手続きをおこなうため、退職後新たに自分で手続きをおこなう必要があります。
申出書(申請書)を提出後、保険証と初回保険料の納付書が郵送されてくるため、期日までに納付しましょう。
- 申請期間
- 退職日翌日から20日 以内
- 申請場所
- 各健康保険組合
- 申請に必要なもの(保険組合により異なる場合があり)
- 任意継続被保険者資格取得申出書(申請書)
- 印鑑
- 退職日が確認できる書類
- 初回保険料(納付書が届き次第)
家族の健康保険に扶養として加入
家族が会社の健康保険に加入しており被扶養者の条件を満たす場合は、同じ健康保険に加入することが可能です。
扶養になる場合は、保険料を納付する必要はありません。
- 申請期間
- 退職後5日 以内
- 申請場所
- 家族の勤務先
- 申請に必要なもの(保険組合により異なる場合あり)
- 被扶養者(異動)届
- 国民年金第3号被保険者該当届(20歳~60歳 の配偶者の場合)
- 印鑑
- 続柄が確認できる書類(被保険者の戸籍謄本など)
- 退職日が確認できる書類(離職票・離職証明書など)
国民健康保険に加入
上記2つに該当しない場合は、居住する市区町村の国民健康保険に加入することになります。
- 申請期間
- 退職後14日 以内
- 申請場所
- 居住する市区町村の役所窓口
- 申請に必要なもの
- 健康保険資格喪失証明書
- 印鑑
- 身分証明書(免許証・マイナンバーカードなど)
年金の切り替え手続きも必要
健康保険と同様、新しい会社への入社まで日数があく場合は年金の切り替えも必要です。
以下2つの方法から、自分に合うものを選択しましょう。
家族の厚生年金に扶養として加入
厚生年金の場合も、家族の扶養になれる場合は保険料の納付は不要です。
健康保険の手続きと併せて、手続きを依頼しましょう。
- 申請期間
- 退職後5日 以内
- 申請場所
- 家族の勤務先
- 申請に必要なもの
- 国民年金第3号被保険者該当届
- 印鑑
- 続柄が確認できる書類(被保険者の戸籍謄本など)
- 退職日が確認できる書類(離職票・離職証明書など)
国民年金に加入
扶養の対象にならない場合は、自分で国民年金に加入する手続きをおこなう必要があります。
国民健康保険の加入と同様に居住地の役所で手続きが可能なので、併せて申請しましょう。
- 申請期間
- 退職後14日 以内
- 申請場所
- 居住する市区町村の役所窓口
- 申請に必要なもの
- 年金手帳
- 印鑑
- 退職日が確認できる書類(離職票・離職証明書など)
退職後、クリエイターとして独立する場合は次の手続きも必要
ここまでの手続きを確認し、ほっと安心している方もいるかもしれませんが、まだ終わりではありません。
組織に属さずクリエイターとして独立し、自分の力で仕事をしていきたいという方が忘れてはいけないこと。それは、開業届(個人事業の開廃業届出書)の提出です。
開業届とは、個人事業の開始を申告するための書類で、税務署に対して提出することが法律で定められています。
フリーランスとしてクリエイターデビューしてから、1ヶ月以内に居住地管轄の税務署へ提出しましょう。
開業届を出すことで生まれるメリット
実は開業届を提出しないことで罰則を科されることはありません。
そのため、なかには提出を悩んでいたり、提出していなかったりする先輩クリエイターもいます。しかし開業届の提出は以下3つのメリットがあるため、提出することをおすすめします。
青色申告ができる
会社員の場合は所得税を会社が代わりに納めてくれますが、フリーランスは確定申告をおこない自分で納めなければなりません。
その際、節税に効果的なのが青色申告です。
青色申告をおこなうことで、38万円 の基礎控除に加えて65万円 の特別控除を受けることができます。もうひとつの申告方法である白色申告の場合、基礎控除のみの適用となるため、青色申告の節税効果は一目瞭然です。
なお、青色申告をおこなうためには、開業届とあわせて青色申告承認申請書の提出が必要となります。
屋号で銀行口座を開設できる
開業届提出時に屋号を申請することで、屋号+個人名の銀行口座を開設することが可能です。
個人口座と使い分けすることで、資金管理が分かりやすくなり確定申告時も楽になります。
屋号で銀行口座を開設する場合は、銀行での手続きの際に開業届の控えを持参しましょう。
クレジットカードやローンの審査時に役立つ
クレジットカードやローン申込時の審査に役立つことがあります。
フリーランスは、世間的に不安定なイメージが強く審査に不利といわれることもありますが、開業届の提出が信頼につながる場面もあるため、審査で難色を示された場合は控えを提示してみるものよいでしょう。
事前準備がスムーズな手続きのカギ
退職後は、緊張感から解放されて大切なことをうっかり忘れてしまったり、転職活動や独立準備などでやることが多く混乱してしまったりする方もいるかもしれません。
だからこそ、申請に必要なもので足りないもの・紛失したものがあればあらかじめそろえておく、人事担当者になるべく早く書類関係の手配をしてもらえるよう伝えておくなど、退職前の事前準備や手順の把握が大切です。
後々困らないように、スケジュールをうまく管理し対応していきましょう。