どんなに高価な家具を買いそろえても、どんなに単体で見るとセンスの良いインテリアだとしても、部屋に配置すると「ショーディスプレーの時のように映えない」という経験がある方も多いのではないでしょうか。家具やインテリアはそれを置く空間からデザインすることが大切です。そうした観点で空間演出をしないと、せっかく取りそろえたアイテムも宝の持ち腐れになってしまうかもしれません。
空間に関するお悩みを抱える方は思いのほか多く、部屋という空間設計を丸っとインテリアデザイナーにお任せするケースも増えてきています。そのため、近年ではインテリアデザイナーという職種が注目されており、活躍の幅を広げています。家具が好き、空間プロデュースが好きという方は、インテリアデザイナーに向いているかもしれません。インテリアデザイナーになるために身につけておくべきスキルや資格、仕事内容について細かく紹介します。
インテリアデザイナーの仕事内容とは
インテリアデザイナーは、家具・雑貨・壁紙・照明といったインテリア全般を用いて室内空間を演出する仕事です。クリエイティブな感性はもちろん、建造物の構造や資材といった建築の知識も必要になります。デザインする対象は住宅に限らず、店舗・オフィス・ホテル・学校・病院・美術館・自動車・旅客機など人が過ごすさまざまな空間をプロデュースするのが特徴です。
住宅や店舗の空間デザインを手がける場合、建物の設計者や建築家、施工業者、依頼主と綿密な打ち合わせをし、完成イメージを共有します。配置するインテリアの設計や動線を考慮したレイアウトなど空間の監修を行いますが、要望やコンセプトによってはゼロから家具や内装を作り上げるのもインテリアデザイナーの仕事です。
インテリアデザイナーは「インテリアが持つ力を信じられるか」が重要
インテリアデザイナーはインテリアのセンスやスキルも必要ですが、一番大切なのはどれだけクライアントの要望をくみ取れるかという点です。インテリアは完成するまで実際に目で見て確かめることが難しいため、クライアントとの完成イメージの共有はとても重要になります。
ヒアリング力と洞察力を駆使して、クライアントがどんな想いで「その空間を過ごしたいのか」「なぜそのインテリアが必要なのか」を理解する姿勢が一番大切です。常にそうした姿勢で携わり、どんな要望にも応えられるようにアンテナを張り続け好奇心旺盛であることが、クライアントに信頼され依頼され続けるデザイナーと言えるでしょう。
また、どれだけインテリアが好きであるかも大きな要素です。自分が過ごす空間のインテリアをどれだけ大事にしているは、インテリアデザイナーとして長く携わっている人の共通項。自宅はもちろん、職場や宿泊先のホテルや、お気に入りのショップなど、インテリアによってその空間の心地よさを実体験しているからこそ、自信をもった提案ができます。
さらにインテリアが持つ力を信じている人は説得力が違います。インテリアによって「人生が変わった」「家族関係がより深まった」「集客力が上がった」「病状が軽減した」などクライアントからの言葉があるように、ただ要望をくみ取るだけでなく、クライアントの理想を超えた提案ができることが、大成している人の特徴と言えるでしょう。
インテリアデザイナーとインテリアコーディネーターの違い
インテリアデザイナーとインテリアコーディネーターは似ているようで異なります。インテリアデザイナーは、空間に対してインテリアの設計から仕上がりまで包括的に携わるのに対して、インテリアコーディネーターは設計士やインテリアデザイナーが設計した空間を、そのコンセプトをもとに内装材や家具・カーテン・照明器具・インテリア雑貨などといったインテリアエレメントを組み合わせ仕上げるのが一般的な役割です。
また、インテリアデザイナーは空間だけでなく、家具やファブリックなどのデザインも業務の中に含まれるなどあらゆる室内空間の環境設計や企画を手がけます。案件によってはインテリアコーディネーターも同様の業務を担うことも珍しくありません。また、インテリアコーディネーターが生活者目線に立って、あるいは、クライアントの生活スタイルを踏まえた視点で、設計サイドに間取りや動線のアドバイスをすることもあります。
インテリアデザイナーとインテリアコーディネーターの違いは、役割の上では分けて表現されることも多いですが、両者が揃って各々の役割を明確に分担した現場はほとんどないと言えるでしょう。インテリアデザイナーがコーディネート業務まで携わったり、インテリアコーディネーターが設計変更のたたき台を作ったりするなど、どちらもインテリアや建築の知識を幅広く要する業務です。現場や案件、所属・在籍する企業によって呼び名の違いがある程度で、業務内容においてはそう大差ないというケースもあります。
インテリアデザイナーになるには?スキル・資格・方法
向いている人
インテリアデザイナーに向いている人は、ズバリ「インテリアが好きであること」が大前提です。美的センスや流行を敏感にキャッチする感度は、インテリアデザインを好きだと思える気持ちに大きく影響されます。デザイナー全般に言えることですが、「好きこそものの上手なれ」が色濃く反映される職業です。
また、インテリアデザイナーはとても幅広い専門知識が必要な職種ですが、専門知識だけでなく、さまざまな経験が業務の役に立つ職種でもあります。一見すると、インテリアとは関係のない経験であっても、その経験をした人にしか提案できないインテリアがあります。インテリア業界は華やかなイメージを持たれることも多いですが、実は日々の何気ない生活体験がインテリアを作るうえで重要なヒントになることも非常に多いのが特徴です。
たとえば、他の分野との関わりが深いのが特徴であり、「食」とインテリア、「ファッション」とインテリア、「教育」とインテリア、「福祉」とインテリア、「医療」とインテリアなどさまざまな場面でインテリアは関わってきます。「インテリア」だけを学ぶのではなく、多角的な視点でインテリアを見ることを心がけることで、独自の提案ができるようになるでしょう。
必要なスキル
スキル面で特に重要なのがコミュニケーション能力です。空間をデザインする仕事とともに、依頼する人と柔軟に会話ができる能力は必要になります。お客様の要望を「聞き出す」「提案する」「家具や内装業者と交渉する」といった円滑なコミュニケーションスキルや、それを活かしたプレゼンテーション能力が問われます。クライアントとの信頼関係構築のためだけでなく、現場では施工業者やメーカー担当者など様々な業種の方々との連携も必須です。
インテリアの完成には各専門職との協働がほとんど。役割分担しつつフォローしあえる関係構築ができると完成度も高まります。コミュニケーションが苦手な方もいますが、上手く関係構築を築こうと気構え過ぎず、出会った人や関わった人の専門分野に興味を持ち、「この分野はこの案件とどのように関わるのだろう」と思いながら接するだけでも結果は違います。現場で専門家から学べる機会だととらえると、自身の技術も格段に向上するでしょう。
スキル全般を上達させる方法としては、常にチャレンジすることです。インテリアは完成するまで全体像を見ることはできないので、守りに入りがちな面があります。それだけに、試してみたいインテリアは、ぜひ挑戦することが大事です。理屈やセオリーだけで答えを出すのではなく、心地よい広さの感覚や明るさと色のバランス、家具の大きさと材質が持つ存在感やファブリックと空間の相性など、どれだけ自分の五感を使って実体験を積み重ねられるかがスキルを身につけるための秘訣です。
必要な資格
実は、資格がなくてもインテリアデザイナーになることはできます。しかし、資格を持っているほうがクライアントからの信用度が上がります。インテリアデザインの知識をまんべんなく得ることもできるため、資格を取得する人が多いのが一般的です。
- インテリアコーディネーター資格試験(公益社団法人インテリア産業協会)
- インテリアプランナー資格試験(公益財団法人建築技術教育普及センター)
- キッチンスペシャリスト資格試験(公益社団法人インテリア産業協会)
- 福祉住環境コーディネーター検定試験(東京商工会議所)
- 二級建築士(国家資格)
上記の中でも、インテリアデザイナーを目指す方におすすめなのが、インテリアコーディネーター資格試験です。インテリアの基礎知識を幅広く身につけられる点と、資格の認知度が高い点がおすすめの理由になります。1次試験と2次試験が実施され、合格後も定期的に研修を受けて更新する必要があるなど、信頼性の高い資格です。最近はさまざまなインテリア資格がありますが、未経験からインテリアデザイナーを目指すなら、取得していて損はない資格と言えます。
また、インテリアと関係が深いカラー(色彩)の勉強も併せてされると、現場に出たときにとても役立つのでお勧めです。空間設計に有益な資格にはインテリアプランナーや二級建築士があります。実務経験を重ねながら取得されるのも良いでしょう。
デザインやコーディネートの勉強法としては、上記の資格取得のための受験勉強などで基礎知識を学びながら、さまざまな施設やインテリアショップなどを実際に訪れてみたり、雑誌や専門書、Webサイトなどの各メディアからでも旬のインテリアを目にすることができたりするので、積極的に触れてみるのが一番です。
自分が惹かれたインテリアがあれば、その惹かれた理由やポイントを、苦手なインテリアがあればなぜ苦手なのか、自分だったらどうするかなど、意図をもって観察してみたり、そのインテリアのコンセプトを探ってみたりしましょう。優れたインテリアにたくさん触れていくことで、センスはおのずと身につきます。
インテリアデザイナーの魅力・やりがい
人間が生活するうえで絶対に欠かせない居住空間をゼロから作り上げるのが、インテリアデザイナーの仕事です。決してデザイナーの独りよがりな作品作りではなく、「ユーザーが心地よいと思ってもらえる空間」を意識して、クライアントの理想のイメージを実現することが求められます。クライアントの予想を大きく上回るものを提案して形に仕上げることで、完成品を喜んでもらえることが大きなやりがいと言えるでしょう。
こうした実績を重ねて、インテリアデザイン業界で評価を上げていくこともデザイナーの醍醐味です。時代やニーズに合わせて作り上げた空間や施設で多くの人が生活し働きます。その場所を利用した人からの感謝の声をもらえたり、その評判を聞いた別のクライアントから新しい仕事を依頼されたりすることもあります。
また、インテリアは必ずしも美しく仕上げさえすれば良いというものではありません。その空間にはその空間にふさわしいインテリアがあります。また、クライアントの数だけインテリアの数があります。さまざまな空間のインテリアを知るとともに、生活者視点からのインテリアの見方を意識されるのも良いでしょう。自分の実績やセンスが認められ、インテリアデザイナーとして成長して活躍できることは大きな達成感や喜びがあります。
インテリアデザイナーは生涯携われるやりがいのある職種
【インテリアデザイナー インテリアコーディネーター スキルのまとめ】
- インテリアデザイナーは、インテリア全般を用いて室内空間を演出する仕事
- インテリアコーディネーターは、インテリアエレメントを組み合わせ仕上げるのが役割
- 何気ない生活体験がインテリアを作るうえで重要なヒントになる
個人宅から公共の大型施設まで、幅広い分野や空間を手がけるインテリアデザイナー。クライアントの発注から始まるこの仕事は、クライアントや現場監督、施工職人、プランナーなどさまざまな人たちと働く中で信頼関係を築いていきます。デザインや建築の知識や技術だけでなく、人づきあいを大切にして人脈を広げていければ、一流のインテリアデザイナーとして成長できるでしょう。
インテリアデザイナーの求人情報を見ると、経験を重視するところや人物重視でやる気がある人を採用するなど、求める人材も会社によってさまざまです。十分に実績や経験を積んでからフリーランスとして活躍する人も多く、独立後は大幅に年収をアップさせることが夢ではありません。
インテリアデザイナーは生涯を通じて携われる、とてもやりがいのある職種です。専門知識は幅広く、学習は大変な面もありますが、地道な努力が実を結ぶ仕事でもあります。