ここ数年、新卒採用の売り手市場化が続く中、採用のトレンドも一昔前とは様変わりしました。テクノロジーの発達に伴いAI(人工知能)を導入した採用なども浸透しつつあるなど、より効率化を求めるような手法も求められる中、「実はアナログで地味な努力が功を奏する」と言う成功事例を持つ、弊社クリーク・アンド・リバー社を含めた4社が集まりディスカッション。
具体的な採用手法や市場動向を踏まえた今後の取り組みなどについてレポートします。
株式会社ビースタイル 人材開発部リクルーティングユニット採用責任者 中堂祥音
リスト株式会社 経営企画部 課長代理 佐藤心哉
株式会社プレシャスパートナーズ 専務取締役兼CSO 矢野雅
株式会社クリーク・アンド・リバー社 人事部 新卒採用セクション マネージャー 大関利幸
採用のための母集団形成ーもはや大手採用ナビサイトは使わない
就職活動で学生がまず最初に行うことの一つに、大手ナビサイトへの登録があげられるでしょう。説明会の情報収集、参加予約、人事担当との連絡までがサイト一つで完結できる使い勝手が魅力で、就職活動のマストアイテムと言っても過言ではありませんが、そうしたナビサイト一辺倒といったトレンドが崩れてきているようです。
「ナビサイトからのエントリー率がかなり落ちている」と言うのはクリーク・アンド・リバー社の大関。
「数年前に比べて半分以下にまで落ちている。ナビサイトに変わる母集団形成の手法が必要だと痛感しています」。
その意見に同調するのはリスト佐藤氏。
「うちもナビサイトに対して考えを変えてきています。現状は学生への連絡などに使う管理ツールとしての利用くらいに留まっていますね。多くの企業がナビサイトに情報を出して運用していく中で、我々は、直接お会いできた学生を大切にし、そこでは得られない価値を提供するようにしています」。
「完全に利用をやめてしまった」と言うのはビースタイルの中堂氏。
「20卒採用からナビサイトの利用をやめました。19卒ではある大手ナビサイトも利用しましたが、あまり効果が出ませんでした。その割にコストが高い。1500エントリーから300人くらい集まったが、さらにそこから3人に一人くらいしか説明会に来ないんです。それから内定まで考えると、実にコストに見合わない。やめて浮いた分をその他に投資してます」。
一方、「集客には欠かせないツール」として利用しているのがプレシャスパートナーズ矢野氏。
「ナビサイトはマストアイテム。うちは知名度が低いのでやはり大手ナビサイトの集客力には頼りたいところ。ただ、皆さんの指摘の通り数字は下がっていますので、ナビサイトに依存するのではなく、直接お会いする機会を重視して採用に誘導しています」。
今力を入れるべき新手法ーリファーラル採用は効く!
新卒ナビサイトの離脱と言うトピックスが出たところで、ではそれに変わる効果的な手法とは何だろうかというディスカッションへ。そこで出たキーワードは「リファーラルリクルーティング」。転職市場でもすでに注目されている手法ですが、新卒市場ではいかに効果を発揮しているのでしょうか?
「最近のトレンドはリファーラルリクルーティング。すでに効果も出てきています」というクリーク・アンド・リバー社大関。
「内定者からの紹介が多くなってきています。20卒でもすでに約100人との接触に成功しています。成功した理由の一つに、5人以上集めたら国内どこでも行って説明会しますというものがあります。これまでに一人で25人も集めた内定者もいるほどです。それで高知や新潟など、東京以外のエリアに行って説明会を開きましたね。リファーラルで当社を知ってもらう機会はかなり増えてます」。
リスト佐藤氏も「うちもリファーラルに力を入れています。コミュニティによって集まる層が違って面白いですよ。あとこれは不動産業界ならではですが、ご両親がうちから家を購入いただいたということでご両親からの紹介とかもあったりします」。
プレシャスパートナーズ矢野氏も同様にリファーラルで効果を実感しているといい、中でも内定者からの紹介が一番多いという意外な効果を挙げました。
そのほかにクリーク・アンド・リバー社大関は、「実は内定辞退者からの紹介にも取り組んでいて、これが結構、効果あるんですね。最後にうちか、もう1社かで悩むくらいに、自社への理解や愛着はある。そこで、うちのような会社に興味を持ってくれそうな後輩がいれば、ぜひクリーク・アンド・リバー社という会社があるよと紹介してくれると嬉しいとお願いしておくんです。翌年、その学生さんの後輩が来てくれたりという効果もありますよ」と内定者以外からのリファーラルの実績を紹介しました。
志望動機を聞くのはもはやナンセンス?オヤカク大事!ー新卒採用の現場で起こっていること7選!
他にもいくつかのテーマで熱いディスカションが交わされました。こんなことまでやっているの!?という採用担当の涙ぐましい努力も滲み出るような実例もあがりました。その中から一部をご紹介します。
- 「カスタマイズ就活」というのを実践している。面接の回数に制限を設けなかったり、学生から面接官を指名してもらったり。
- 志望動機は聞かない。その代わりに過去どんなことをやってきたのかをじっくり聞いて、その人の価値観を知り、うちのカルチャーにフィットするか、どう活躍できそうかをお互いに正直に話し合ったり。学生と一緒にうちで何がしたいか、できるか、一緒に志望動機を創り上げていくようなスタイル。
- インターンシップからの母集団形成が上手くいっている。
- 面接が不合格になっても何度でもチャレンジできる、再チャレンジ制度というのを実施している。なぜダメだったのかをフィードバックしてチャンスを提供するもので、過去5回チャレンジして入社した女性はトップセールスになった。
- 学生同士でお互いのことをヒアリングしてもらい、その内容をレポートしてもらうというワークショップのようなスタイルを取り入れている。学生には難しい課題ではあるが、そこが意外に好評。
- 内定時点でその学生の親御さんに手紙を出す。事業内容のほか、どんな活躍をしてくれそうなのかなど、親御さんにも理解を深めてもらい、会社のファンになってもらう。
- セミナーの様子を動画にしてサイトにアップ。親御さんがスマホでも手軽に見られるようにして、お子さんが受けた会社がどんなところかについて理解してもらう。
【参加者からお寄せいただいた感想】
最新の採用動向が分かり、大変勉強になりました。新卒採用は未来の企業業績にも反映する事なので非常に大事だなと感じました。ただ、採用する企業側にとっていかにいい人材を採用するかという視点ももちろん大事なのですが、一記者としてはそれよりも社会全体が今後どうなるか、という視点で考えてしまいますね。(週刊誌記者 Aさま)
入社はゴールではない!入社後のビジョンを共有できるかどうか
いかがでしたか?今や新卒採用は企業規模や事業の特色などによって、他社との差別化を図りながら、自社の魅力をいかに打ち出していくかを一般的な手法に依存するのではなく、試行錯誤しながら独自に泥臭く実施している”アナログ”な事例は、現場担当者の努力の結晶とも言えるでしょう。
今後もクリーク・アンド・リバー社では人材サービスから蓄積してきた様々な情報を発信していきます。
(CREATIVE VILLAGE編集部)