一般的なホームページだけではなく、近年ではブログやオウンドメディアなどのWebメディアで情報発信するケースが増えていますが、その中で利用する著作物に関する著作権について考えることも大切です。
これは、Webメディアに限らず、紙メディアにおいても共通する点は多いですし、例えばプレゼンのための資料などでも著作物を利用すると思いますので、クリエイターに限らず多くのビジネスパーソンにもぜひ参考にしていただければと思います。

記事中で画像を利用したいときの2つの方法

Webメディア記事内において最も利用される著作物といえば、やはり写真やイラストといった画像ではないでしょうか。
記事を構成する上で必要な画像はもちろん、今やどのブログやWebメディアでも、記事の内容に沿ったイメージ画像、いわゆる“アイキャッチ画像”を利用することが一般的となっています。
そのため、ブログを書く際には、記事内容と共に画像についても検討することになるのですが、その調達方法には「記事用に独自に撮影・作成する」場合と、「他人が撮影・作成した画像を利用する」場合という大きく2つの方法が挙げられます。

記事用に独自に撮影・作成する場合

記事執筆者などが自身で撮影するか、カメラマンに委託して撮影してもらうことになります。
誰が撮影する場合であっても、肖像権や商標権などに留意して被写体を選定する必要がありますし、著作権という点でも、他人の著作物を撮影(複製)しないよう注意することが原則です。
また、他人が撮影した写真を参考にして、それと同じような被写体と構図で撮影した場合には、著作権侵害だとみなされる可能性もあります。
※裁判例:同じような写真であるとして著作権侵害だとされた裁判には「スイカ写真事件」(東京高裁平成13年6月21日判決)などがあります。

加えて、外部のカメラマンなどに委託して撮影してもらう場合は、その写真の著作権者が誰になるのかという点も重要です。
写真の著作物の著作権は、原則としてその写真を撮影した者、つまりカメラマンのものとなりますので、メディア運営側が著作権を譲り受けるのか、カメラマンに著作権を残したままで利用を許諾してもらうのかなどについて、しっかりと合意しておくことが大切です。

他人が撮影・作成した画像を利用する場合

自分で撮影する時間が無い、またはカメラマンに委託するほど費用をかけられない場合もありますので、そういった場合に利用するのが、カメラマンが撮影した写真を有償・無償で提供している「ストックフォトサービス」です。
国内外で様々なストックフォトサービスが運営されており、その一部は無償でサービスを提供していますが、多くは有償で写真を販売しており、その販売価格も様々です。

ストックフォトサービスを利用する上で重要なのは、利用規約と、写真の権利処理状況をしっかり確認しておくことです。
写真を購入したからといって、どのような用途にも利用できるのではなく、利用規約においてある程度の制限(例えばアダルトサイトには利用しない、そのままの状態で販売しない、印刷部数の上限が設けられている、など)が設けられていることが一般的ですし、被写体が人物である場合は、その人物からストックフォトとして利用されることについての許諾(主に肖像権に関しての許諾で、「モデルリリース」と呼ばれています)が得られているのか、といった点も確認が必要です。
予めモデルリリースは取得しているケースが多いとは思いますが、もし取得されていない場合は、個別に交渉が必要となる場合もあります。

他人が撮影した写真を利用する場合の注意点は

写真を利用する場合は、ストックフォトなど予め利用が許諾されている写真を選ぶか、権利者からしっかりと許諾を得ることが重要です。検索エンジンの画像検索で見つけた写真を権利者の許諾なくそのまま利用するような行為は決して行わないようご注意ください。

いつどこで疑いがかけられるかわからない!紛争の備えのススメ

過去の裁判においても、ある法人(被告)が自社ホームページで利用していた写真が、実は大手ストックフォトサービスサイト(原告)の有料商品であったという件に対し、被告は無料のサイトから入手したと主張していましたが、それを立証できないことなどもあり敗訴し、著作権および著作者人格権の侵害に対し損害賠償などの支払いが命じられたというものがあります。(東京地裁平成27年4月15日判決)
もし本当に「無料だと謳っているサイト」から入手しており、それを証明できていれば、裁判の結果が変わっていたのかもしれません。

なお、この事件では、原告からの警告を受けた被告は不正使用画像を削除していますが、判決では削除したからといって損害賠償責任を免れる訳ではないとされています。警告されたら消せばいいだろうというのは通用しないということです。

利用記録をつけておくと安心!

このように、他人の写真を許諾なく利用したような場合は、裁判において損害賠償が命じられるケースは少なくありません。
実際にストックフォトサービスの写真を利用する際は、その写真を「いつ」「どこで」入手したのかを記録しておくことをお勧めします。
万が一利用中の写真に対して権利侵害の疑いが掛けられた際に、正当な手段にて入手し利用していることが証明できれば、紛争を最小限に抑えられることが期待できるためです。

SNS上の悪評・炎上「レピュテーションリスク」にも注意

また、近年では法人でもオウンドメディアにおいて記事を公開していくことも多いかと思いますが、利用する写真は法人が契約している特定のストックフォトサービス上にあるものに限定するなど、記事作成におけるルールとして正しく権利処理された写真の利用を徹底することは重要です。

権利が曖昧な写真の利用によって生ずる、正当な権利者からの賠償請求なども問題となりますが、それ以上に近年は「レピュテーションリスク」が無視できません。
例えば、新規に撮影した権利上問題の無い写真であっても、偶然に既存の写真と似てしまっていたような場合に、法的には問題が無くてもSNSなどから発生してしまう悪評・炎上などは、決して無視できない大きな問題となり得ます。
その点において、ストックフォトサービスを利用した写真であれば、こういったリスクの軽減も期待できます。

リンクだけなら問題ない?!

画像の利用において、画像を自分のPCやWebサーバーにコピーして利用する場合は、複製権や公衆送信権にかかる利用となるため、権利者の許諾が必要となるのが原則です。
しかし、コピーするのではなく、元の場所にある画像をそのまま利用する、いわゆる“直リン”の場合は、コピーしていないため複製権には抵触せず、また公衆送信しているのは画像がアップされているサーバーであることから利用した側は公衆送信権に抵触しないため、現在の著作権法では、こういった行為を直ちに著作権侵害であると言うことは難しいです。

ただし、この場合でも、財産権としての著作権では問題無くても、著作者人格権の氏名表示権や同一性保持権の侵害であると考えることもできますので、問題となる要素が全くない訳ではありません。

画像以外でも、例えばインラインフレームなどWebブラウザのフレーム機能を利用してホームページの一部を表示させるような場合も、原則的には複製や公衆送信には該当しませんが、利用形態によっては画像と同様に人格権に抵触する可能性があります。

SNS上のコンテンツを利用するには

利用に関する許諾は基本的に不要

TwitterやYouTubeなどのSNSサービス上にあるコンテンツは、そのサービスが提供する方法を利用することでWebメディアにおいて利用することができます。
この場合、権利者からの許諾は原則的には不要となります。
SNSサービスに動画や短文などの著作物を投稿した時点で、そのSNSサービス運営会社に対して投稿した著作物の利用を許諾したことになり、さらにそのSNSサービス会社が第三者に対して利用を許諾することも可能となるよう、利用規約において定められているためです。

違法動画には要注意

なお、YouTube動画の一部には、市販の映像作品やテレビ番組などをコピーするという違法行為によりアップされたと考えられるものも存在しますが、そういった動画のリンクを紹介したり、Webメディアなどに埋め込んで表示させる行為は、現在の著作権法では違法とはなりません。
先述の直リンと同様、複製も公衆送信も行っていないためです。
ただし、違法ではないからといっても、違法動画を広めるような行為は権利者にとって不利益となる場合も十分考えられますので、違法アップされたものだと思われる動画については慎重に対処されることをお勧めします。

権利処理されたものを利用しよう

Webメディアにおいては、写真や動画といった他人が制作した著作物を利用する場合も少なくありません。
権利関係が不明であったり曖昧なものを利用するのではなく、ストックフォトサービスを利用したり、“埋め込み”などのSNSサービスが提供する方法にて利用するなど、しっかり権利処理が行われているコンテンツのみを利用するようにしましょう。

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