ライフシフトとは従来の「学び→仕事→余生」の3ステージ人生から、多様な選択を可能にする「マルチステージ型」へ生き方を変えることです。
今回は、2022年6月1日にオンライン開催された“ポジティブに「ライフシフト」して人生100年時代に備える”のイベントレポートをお届けします!
この記事で得られる学び
- 「人生100年時代」を生きるうえでのモチベーションが向上する
- 自分の「ありたい姿」がイメージできる
- 理想に近づくための、具体的な一歩が分かる
- 1.ポジティブに「ライフシフト」して人生100年時代に備える
- 2.登壇者紹介
- 3.環境の変化を考える
- 4.ポジティブなライフシフト1―転機という捉え方―
- 5.ポジティブなライフシフト2―無形資産を蓄える―
- 6.ポジティブなライフシフト3―ありたい姿実現のためのチャンスを生み出す方法―
- 7.まとめ
1.ポジティブに「ライフシフト」して人生100年時代に備える
「人生100年時代」に向けて、これからどう生きていこうか、このままの生き方で良いのか、と悩んでいる方もいるのでは? ここでは2級キャリアコンサルティング技能士の吉田那都子氏 が、 “ポジティブ”なライフシフトについて解説。人生100年時代をより良く生きる方法を探っていきます。
2.登壇者紹介
吉田那都子(よしだなつこ)氏
大学中退後、人材派遣会社に勤務。200名規模のプロジェクトリーダーとして企画・運営・教育などを担当。家業の手伝いのためUターンし、再上京後ワーカホリック気味に。自分の人生を見つめ直す機会を得て、ライフシフト型の生き方を模索。キャリアコンサルティング技能士2級に3度目の挑戦で合格し、現在は、行政、企業、教育現場でキャリアコンサルタントとして従事する傍ら、アートセラピーなどワークショップも開催している。
3.環境の変化を考える
今回のテーマは「100年時代に備えて」なので、まずは「環境の変化」について見ていきたいと思います。
私達を取り巻く環境は、非常に早いスピードで変化しています。IT化やグローバル化の進展、超高齢社会など環境の変化に合わせ、社会のニーズも変化しているのです。
また、社会ニーズの変化に合わせ、専門的なスキルが必要なのでは、と思っている方も多いのではないでしょうか。しかし実際には、専門スキルだけでは社会のニーズに応えるには難しいのです。同時に「生きるスキル」も必要だと認識してください。
「環境の変化」という言葉を聞いて私が思い出すのが、ダーウィンの言葉です。
生き残る種とは、もっとも 強いものではない。もっとも知的なものでもない。それは、変化にもっともよく適応したものである。
このように柔軟な思考で人生100年時代を捉えることは、大事な要素ではないでしょうか。
4.ポジティブなライフシフト1―転機という捉え方―
ポジティブなライフシフトを実現するために、まずは環境の変化を自分事として考える方法、そして変化を人生における転機の訪れとしてポジティブに捉え、適切に対処する方法を探っていきたいと思います。
トランジション論(ウィリアム・ブリッジス)
ここでは、ウィリアム・ブリッジス氏が自身の著書『トランジション論』で展開しているキャリア理論を紹介していきます。簡単に言うと、ブリッジス氏は転機には3つの段階があること、そして「何かを終わらせることで、何かが始まる」と語っています。
第一段階「何かが終わる」
第一段階に「何かが終わる」という変化があります。たとえば退職後、自分が組織に属していない「離脱」の状態になることが挙げられます。アイデンティティを失うと、人生の方向が見えなくなることも。これは非常に苦しい体験ですが、これを拒否すると前に進めなくなってしまいます。そこで移行するのが、転機の第二段階です。
第二段階「ニュートラルゾーン」
ここでは、「一時的な喪失感に耐える」「喪失に伴う空虚感を味わい受け入れる」というフェーズに移ります。喪失感を覚えても、それを無視するのではなく、自分の中で受け入れてください。そして自分の中で何が起きているのか、自分の正解と向き合うようにしましょう。すると、「自分の内面世界に向き合う段階」に移ることができます。
第三段階「何かが始まる」
第三段階では、まず「内面の再統合」が始まります。ここでは、「自分が何者であるか」が少しずつ見えてきます。次に起こるのが、「内的・外的な抵抗」です。これまでの自分とは違う価値観・考え方を持つようになると、抵抗が発生します。自分が変化することによって、周りのパートナーや家族、友人からも抵抗が生じます。その内的・外的な抵抗ともしっかり対応することで、偶然の出会いや出来事が始まるのです。
5.ポジティブなライフシフト2―無形資産を蓄える―
続いて、ポジティブなライフシフトを実行するうえで重要なポイントの2点目を、有名な『LIFE SHIFT-100年時代の人生戦略』という本に書かれているテーマの1つ「無形資産を蓄える」にフォーカスしながらお伝えしていきます。
長い人生を支えてくれる無形資産
無形資産には、「生産性資産」「活力資産」「変身資産」があり、それぞれメンテナンス、投資をする必要があります。なので、ご自身の人生を振り返りながらメンテナンス・投資のポイントを探っていただければと思います。ここでは、私の人生を例に挙げながら説明していきます。
生産性資産
私は実家がハンバーグ屋さんだったので、それを手伝うことで「働く楽しさ」を、実家に戻った20代半ばでは、事業を継続するための販路拡大の方法や事業存続の難しさを知りました。これは生産性資産の「スキル・知識」に該当します。
そして30代後半には、キャリアコンサルタントという新しいキャリアを始めるため、 自分の人生を見つめ直す機会に恵まれました。これが、無形資産を語るうえで重要な要素である、「投資とメンテナンス」のタイミングだったのではと思います。
キャリアチェンジしたてのころは実績がなかったので、報酬よりも実績重視で仕事をしていました。しかし、実績を積むと良い「評判」を得、新しい仕事が見つかり、最終的には報酬につながるという良いサイクルを生めるように。さらに、キャリアコンサルタントとして学びを深める中で、同じ志を持った「仲間」を増やすことができました。
活力資産
私は幼少期から父と筋トレをしていたので、体力にはかなり自信がありました。これは「健康」という大きな活力資産でした。しかし、40代を過ぎて筋力が低下しているので、メンテナンスが必要だとも感じています。
変身資産
従来、人生は10代で学び、20~60代で働き、その後は余生を楽しむという、3ステージで構成されてるとされていました。しかし、「LIFE SHIFT-100年時代の人生戦略」の著者リンダ・グラットン氏は、「人生100年時代」においては「マルチステージ型」に変わっていくと述べています。
人生が長期化すれば、その過程で大きな変化を経験し、変身を遂げることになります。そうした時、自分自身についての知識が非常に重要になるでしょう。なぜなら、一時の流行に合わせてキャリア開発をすることは、非常に危険だからです。
私の場合、自分についての知識を、強みや弱み、興味関心・価値観を言語化して見極め、新しい経験に対し開かれた姿勢を持つことも大切にしています。たとえば「頼まれごとは試されごと」とし、新しい領域の依頼にもチャレンジするなどしてききました。
人生のテーマ、ビジョン、方向性を知る方法
自身の無形資産を把握できたら、人生のテーマ、ビジョン、方向性を知る具体的な方法を見ていきましょう。
「WILL」「CAN」「MUST」で方向性を探る
「WILL(やりたいこと)」「CAN(できること)」「MUST(やるべきこと)」を書き出し、自身の方向性を探っていきましょう。
まず、「WILL(やりたいこと)」では、幼少期の夢や、諦めたことを書き出してみましょう。もし、「野球選手になりたかった」という夢があった場合、なぜそう思っていたのかを掘り下げてみてください。なぜその選手をかっこいいと思っていたのか言語化できれば、「それは野球選手でなくてもできるのでは?」と変換できます。
続いて「CAN(できること)」では、自分にしかない能力・知識・特性など過去の経験をすべて言語化していきましょう。
最後は「MUST(やるべきこと)」です。これに押しつぶされてしまいそうな方もいるかもしれませんが、しっかり書き出してみてください。それにより、「あ、こんなものなのか」と思えるかもしれません。
上図のように、「WILL」「CAN」「MUST」それぞれの円が重なりあう部分が大きくなるほど、やりがい、生きがいが見つかりやすくなります。
もし言葉がなかなか見つからないようなら、以下のような「言葉」の一覧から自分にフィットするものを見つけるのも、1つの方法です。
4つの段階に分けて考える
次に、人生のテーマ、ビジョン、方向性を知る方法を、4つの段階に分けて考えていきましょう。まずは、何を大切に生きるのかを再考してください。次に、大切なものを軸に自分のありたい姿を描き、その要素を分析しましょう。大きなものに取り組もうと思うと挫折してしまいますが、それを細かく分けて計画的に並べていけば、実行可能な小さな一歩が見つかり、達成できるのではないでしょうか。
アートセラピー(絵画療法・芸術療法)
やりたいことを言語化するのが難しいという方はアートセラピーも試してみましょう。雑誌からイラストや写真を切り抜き画用紙に貼り付けることでも、自分自身を作品に投影できます。テーマを決めて貼り付けるのも良いですし、出来上がった絵を見て自分が何を欲しているか見える化するのも良いでしょう。
6.ポジティブなライフシフト3―ありたい姿実現のためのチャンスを生み出す方法―
それでは、最終セクションに移っていきましょう。以下ではありたい姿を生み出すための「計画された偶発性」について見ていきます。
Planned Happenstance Theory-計画された偶発性―
「100年時代」の到来とともに、世の中は先が見えづらくなっています。パンデミックや戦争などで自分の計画が前に進まないこともあるでしょう。しかし、そんな時代だからこそ、自分のキャリアを邪魔されることなく進めるためには「計画された偶発性」、つまり予期せぬ機会を作り出すことが大事である、そして「好奇心」「継続性」「柔軟性」「楽観性」「冒険心―リスクテイキングー」という5つの力を磨き、偶発性を創出するべきだと、心理学者のクランボルツ氏は言っています。私の人生でも、それに当てはまることがありました。
まずは「柔軟性」。望んでいないこと、想定外の出来事が起きても、チャンスを運んでくれる可能性があると考え、もったいない精神を持って受け入れてきました。
次が「楽観性」です。苦しい時、諦めそうになった時も、成長の機会を与えられているんだ、逆境は神様からのプレゼントなんだと思って何事も取り組んできました。
最後が「継続性」。私は、自分がほしいものを直接取りに行くのではなく、「1つ前のことに取り組む」ことを大事にしてきました。そうすれば、次のステップに自然な流れで進めるんですね。たとえば、SNSツールで自分の活動を伝えたことで、それを知った人から仕事が入って来る、というサイクルがそれに該当します。
7.まとめ
ここまで、ポジティブなライフシフトを実現する方法として、「環境変化を自分事(転機)として捉える」「無形資産を確認し、メンテナンスする」「自己実現のチャンスを生み出す」ことを紹介してきました。
人が死ぬ前にもっとも後悔することは「挑戦しなかったこと」とされています。なので、ぜひ皆さんも、勇気を振り絞って一歩前に進んでいただければと思います。どうやったら夢を実現できるかしっかり情報を集めて考えれば夢は叶うと、私は考えています。
【出典】
リンダ・グラットン、アンドリュー・スコット著「LIFE SHIFT-100年時代の人生戦略」